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永遠のマリア・カラス [外国映画]

監督:フランコ・ゼフィレッリ    出演:ファニー・アルダン、  ジェレミー・アイアンズ、
ジョーン・プロウライト、 ジェイ・ロダンetc.
2002年  伊・仏・英・ルーマニア・スペイン

 マリア・カラスといえば、エキセントリックでわがままな天才オペラ歌手というイメージがある。この映画は、生前マリア・カラスの親友だったという、フランコ・ゼフィレッリが、想像上の話として描いたものだそうだ。彼は、かつてマリアに映画の企画を持ち込み、断られたという経緯があったらしい。
 
 最盛期を過ぎ、歌声も衰えたマリア・カラス(ファニー・アルダン)が、パリで隠遁生活を送っているときに、昔の仕事仲間ラリー(ジェレミー・アイアンズ)がマリアを訪問する。彼は、ある企画をマリアに話す。それは、マリアの最盛期のオペラの録音を用いて、映画を製作するというものだった。最初はその企画を拒否したマリアだったが、「カルメン」ならやってみてもいいと思い始める。そして、マリアの中に、オペラに対する情熱が蘇ってくるのだった。

 この映画のマリアは、確かに感情の起伏の激しい人として描かれていたが、それは仕事に対する情熱がそうさせるのだった。
 あくまでも、自分の完璧なオペラを追及するがゆえに、そうなってしまうのだ。妥協を許さない性格。ほんとうのマリア・カラスも、きっとこんな人だったに違いないと思わせる。老いというものを背負いながらも、どこまでも魅力的で多くのスタッフを魅了する人物であるマリア・カラスを、ファニー・アルダンが美しく演じていた。

 「カルメン」を演じるファニーは、大変魅力的だった。
マリアは、カルメンの相手役の若い男優を気に入って、心をよせかけるのだが、自分の年齢にふと気づいて、あきらめるところは、少しかわいそうな感じがした。ファニーはとても素敵だったので、あきらめなくても大丈夫だったのに、と思わせた。

 また、以前の恋人オナシスがジャクリーンと仲良く写っている雑誌を見て、涙するシーンもあった。このあたりは、マリア・カラスも普通の女性なのだということが表現されていて好感が持てるシーンだった。

 映画はすばらしいできで完成する。しかし、公開直前になって、マリアは、「この映画は嘘だ。」と気がついて、公開を取り止めさせてしまうのだった。演じている自分は本物でも、声は昔の自分の声である。そのことに、マリアは耐えられなくなってしまうのだった。

 まさに完璧主義で、正直者で、自分に厳しいマリアの生き様が集約された場面だった。この最後のマリアの決断で、彼女は伝説のオペラの女王として歴史の中に名を残したのだろう。といっても、これは創り物の作品なので、監督がマリア・カラスならこう決断するだろうということを描いたのであるが。

 本物のマリア・カラスは、もっとすばらしい人だったに違いない。なにしろ、この映画の企画そのものを断ったのだから。

 この映画の中で、マリア・カラスが映画のプロデューサーのラリーと公園で語り合う場面がある。もっと普通の生活をしていたなら、こんなに悩むこともなかったのに、というようなことをマリアが言うのだ。しかし、彼女は選ばれた人である。だから、人が手にできないような栄光を手中にすることもできたかわりに、凡人の何倍もの苦しみや悩みも味わわなければならなかったのだ。それこそが、選ばれた人の宿命なのだと感じた。

 作品中のファニー・アルダンの衣裳は全て、シャネルのデザインである。あの独特のジャラジャラした模造真珠のネックレスを身につけているファニーも美しかったが、私は最後の紺のシンプルなワンピースに、あのカメリアの造花をつけて、同系色のスカーフを巻いたスタイルが一番好きだ。虚飾を捨てて、自分に正直に生きたマリア・カラスをよく現していると思った。

 私は、この作品をTVのビデオ録画でみたのだが、このことを後悔している。たとえ標準で撮っても、画面がきれいではないので、映画の魅力が半減するからだ。やはりスクリーンか、せめてDVDで見るべきだったと思った。


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コメント 6

gillman

ゼフィレッリの「椿姫」も素晴らしかったのでこれも見てみたいですね
現実の世界でいえばオナシスをジャクリーンのような女にとられた悔しさってあったでしょうね
by gillman (2006-01-16 21:26) 

coco030705

gillmanさんへ
nice&コメントありがとうございます。
「カルメン」は本当によかったですよ。ぜひご覧になってくださいませ。
オナシスもやはり男だったってことかな。新しい女性に目移りしちゃう
のかしら?(笑)
by coco030705 (2006-01-16 21:37) 

ベビーフェイス

マリア・カラス本人について、この映画から想像することはとても楽しいことですよね。
彼女の自分に対する厳しさ、完璧主義、人並み外れた努力、そして才能。
これらの要素が彼女を輝かせたのでしょうね。
いい映画だと思います。
TBありがとうございました。
by ベビーフェイス (2006-02-05 16:44) 

coco030705

こんばんは。
コメント&TBありがとうございました。
ゼフィレッリはマリア・カラスの親友だけあって、彼女の魅力と人間性を
余すところなく伝えていると思いました。
とにかく、ファニー・アルダンがすばらしかった。こんな素敵な熟年女性に
なれたらいいなと思いました。あこがれますね。
by coco030705 (2006-02-05 22:57) 

TaekoLovesParis

ココさん、ファニー・アルダン、メイクでとてもカラスに似ていましたね。
ゼフィレリは大好きな監督&演出家です。
ビスコンティの弟子だっただけあって、貴族社会の絢爛さの演出が上手。
オペラ椿姫の第一幕の演出は息をのむほど豪華です。
ちょっと古い映画だけど、ゼフィレリの「ムッソリーニとお茶を」もマギースミス主演でよかったです。
by TaekoLovesParis (2006-02-11 17:21) 

coco030705

TaekoLovesPa.. さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
「椿姫」はぜひ見てみたいと思っています。DVDを捜してみます。
「ムッソリーニとお茶を」もよさそうですね。マギー・スミスも好きなので、
時間のあるときに見てみますね。
by coco030705 (2006-02-11 17:40) 

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