SSブログ

Touch the Sound [外国映画]


(奈良の藤の花です。)

監督:トーマス・リーデルシェイマー  出演:エヴリン・グレニー、 フレッド・フリス(ギター)、オラシオ・エルナンデス(ドラム)、鬼太鼓座etc.
2004  ドイツ    スクリーン

 この映画はドキュメンタリーである。主演は、パーカッションの演奏者として成功を収めたグラミー賞受賞アーティスト、エヴリン・グレニーである。彼女は聴覚障害を持つため、体のあらゆる感覚を通して音を感じている。彼女の音楽世界を、スクリーンを通して体感することができる。監督はドイツ出身のドキュメンタリー作家、トーマス・リーデルシェイマーだ。

 まず、大きな太鼓(中国のもの)の表面が映し出され、それをカメラがひいて行くと、そこは廃墟となった巨大な工場あとだった。エヴリンは、世界的ギタリスト、フレッド・フリスとの新しいCDの録音スタジオに、工場あとを選んだのだった。
 彼らにとっては、その工場にある全てのものが楽器のようなもので、機械や手すりなどをたたいては音をだし、それが音楽になっていくのだった。

 そしてエヴリンの「音」の旅が始まる。それが音楽と映像で綴られていくのだ。そこに観客も参加する。彼女は色々なところへ旅をする。ケルンの空港での様々な音、空港のアナウンスなど、大都市ニューヨークでの音。ビルの解体工事現場の音、高速道路を走る車の音、ケータイやラジカセから人々の発する音。そしてセントラルパークで、あるグループが演奏するアフリカ民族音楽、また、有名なドラマー、オラシオ・エルナンデスとのビルの屋上での共演。
 それらは、必ずしも心地よい音ばかりではなく、不快なサウンドもたくさん混じっていた。

 興味深かったのは、日本でのドキュメンタリーだ。まずは富士山の見える富士市で、鬼太鼓座の若者達と、即興で共演する。彼らは太鼓をたたき、エヴリンはドラムを演奏する。その音楽がとってもすばらしかった。息がぴったりだった。鬼太鼓座の若者達が大変かっこいいのだ。どうして太鼓をたたいている男の人って、こんなにも魅力的なのだろう。

 それから、彼女は東京へ行く。ここは秋葉原だろうか、たくさんの電気店が並び、店員さんが声を張り上げて呼び込みをしていた。そして、パチンコ店の映像。パチンコ玉のじゃらじゃらという、うるさい音が響いていた。
 場面は変わって、どこかの居酒屋のようなところで、突然エヴリンが、アルミの灰皿やコップや、ひしゃげたビール缶、お皿などを床に並べて、お箸をスティックに演奏を始める。これがまた、すごく楽しい音楽になっていた。彼女にとっては音の出るものは全てが楽器で、それがエヴリンの鋭い感覚によって、素晴らしい音楽になるのだと思った。

 その次は京都だ。ここでは、デパ地下の惣菜コーナーでの呼び込みや、エレベーターガールの階を知らせるセリフが映像としてとらえられていた。こういう日本人にとっては日常茶飯事のことが、映像を通してみると、とてもおもしろいものに感じられた。
 そして、お寺の静かな環境の中での音もあった。静寂の中で聞こえてくる、小さな流れの音。竜安寺だったか、白砂の上に竹箒で模様を描く音なども聞くことができた。

 エヴリンの生まれ故郷のスコットランドの実家も少し出てくる。ここは、かなり古ぼけた牧場だった。彼女のお兄さんが経営していらっしゃるのだが、彼女が訪ねた数日後に火事にあって、建物が焼けてしまった。その映像も挟み込んであった。幸い、お兄さんとペットの動物は無事だったそうだ。

 ドキュメンタリーなのでストーリーはないのだが、結構おもしろく見ることができた。私たちは多種多様な音に囲まれて、生活しているのだなという事を改めて感じることができた。うるさい音、神経に響く音、行儀の悪い音、楽しい音、明るい音、活動的な音、そして静かな音、安らぐ音・・・。こんなにたくさんの音があるなんて意識していなかった。

 この映画は、2004年度ロカルノ国際映画祭批評家賞を受賞している。そして来年、
エヴリン・グレニーの来日コンサートが開かれるそうだ。機会があったらぜひ行きたいと思った。



nice!(6)  コメント(12)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 6

コメント 12

acid_bloom_8322

ちょっときになりますねー
さいきんまた映画からはなれてしまっているもので…
前回にひきつづき、今回もお花すてきですね!
こころ なごみます
by acid_bloom_8322 (2006-04-28 23:59) 

イバン族

かなり注目していた1本ですが、まだ見てません
参考になりました
by イバン族 (2006-04-29 00:34) 

coco030705

Lilyさんへ
コメントありがとうございます♪
お花ほめてもらって嬉しいです。これから、しばらくこんな感じで
花の写真をアップして行こうかなと思っています。
この映画、かなりLilyさん好みじゃないかしらね。
テレビの日にち、ぜひ教えてくださいね☆


イバン族さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
もしお時間があったら、ご覧になってください。
イバン族さんも音楽がお好きなようだから。
ジャンルは違いますが、興味は持てると思います。
by coco030705 (2006-04-29 01:37) 

TaekoLovesParis

Cocoさん、こんばんは
え~っと、どこかでこの映画の紹介記事読みました。
いい映画みたいと思っていたけれど、Cocoさんのおすすめなら、
太鼓判 ( ^ _ - ) v
藤色のスキンに藤の花で、、( ^ _ - ) vv
質問です。エヴリンさんは聴覚障害といっても少しは聞こえるんでしょ?
by TaekoLovesParis (2006-04-29 23:06) 

coco030705

おのこうさんへ
nice! ありがとうございます♪


Taekoさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪
エヴリンさんは、少女の頃に聴覚障害を発症されたらしいです。
しかし、音楽家への勉強を続け、身体を通して音を感じるように
なっていったとのことです。ほんの少しの音は聞こえるのだと思いますが、そのことは映画の中では詳しく言っていなかったように記憶してます。エヴリンさんご自身も、とっても素敵な女性ですよ。
by coco030705 (2006-04-30 00:54) 

jin_ndr114

おひさしぶりです。
ドキュメンタリーはあまりみないので、じっくり拝見させていただきました。
普段、日常にあって当たり前になっている物にクローズアップするのっておもしろいですよね
by jin_ndr114 (2006-04-30 22:35) 

coco030705

ジンさんへ
おひさしぶりです。お元気ですか。コメントありがとうございます。
そうですね。視点を変えてみたら、日常生活も、結構興味深いことが詰まっているというのがわかりました。
ドキュメンタリーというのも、おもしろい手法ですね。
by coco030705 (2006-04-30 23:41) 

KANAchanMaMa

cocoさんの解説文に 惹き込まれて、見たくなりますネ~。(^^♪
確かに、音響の“響く”部分は、聴覚障がいが あったとしても、肌に
ビンビン(!?)感じますものね。
ところで。今後 「花」が Featureされていくのですか !? それも 楽しみ
です!
by KANAchanMaMa (2006-05-02 19:33) 

coco030705

KANAchanMaMaさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
この映画は、ほんとに興味深い映画でしたよ。
どこかで、ご覧になれるといいですね。
KANAchanMaMaさんみたいに、素敵な写真は
撮れないんですが、色々な写真を一枚だけ載せていこうかなと・・・。
これからもよろしくお願いします。(^^)
by coco030705 (2006-05-02 22:00) 

coco030705

Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2006-05-03 07:36) 

non_0101

こんにちは。
この映画は気になっていたのですが、とても仕事が忙しいときだったので
見逃してしまいました…
色でも音でも、五感で感じるものってダイレクトに伝わってきますよね。
今度、機会があったら、ぜひ観てみたいです。
by non_0101 (2006-05-05 18:04) 

coco030705

nonさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
この映画はドキュメンタリーなので、どうかなと思ったのですが、
主役のエヴリン・グレニーさんが、とても素敵な方だったので、
いい映画になったと思います。ぜんぜん聴覚障害なんて気がつきませんよ。機会があったら、ぜひご覧になってみてくださいませ。
by coco030705 (2006-05-05 18:35) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0