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リバティーン [外国映画]


(風に揺れるハナミズキ)


監督:ローレンス・ダンモア    出演: ジョニー・デップ、 サマンサ・モートン、
ジョン・マルコヴィッチ、 ロザムンド・パイク、 トム・ホランダーetc.
2005年  イギリス   スクリーン

 ジョニー・デップ、やはり彼はすごい役者だ。このところ、まともな役が多かった彼だが、この作品では度肝を抜かれるメーキャップで登場する。「ラスベガスをやっつけろ」で、ジョニー・デップの坊主頭を見たときは、すごいショックを受けたのだが、これはそんななまやさしいものではなかった。

 この作品は、1660年のロンドンが舞台だ。ジョニーの役は、第2代ロチェスター伯爵こと、破天荒な放蕩詩人ジョン・ウィルモットである。この人は実在の人物である。
 物語の最初に、貴族の扮装であらわれたジョニーは、「初めに断っておく。諸君は私を好きになるまい。・・・」というようなセリフを述べる。この衣裳のジョニー・デップはとても美しい。

 ジョン・ウィルモットは、国王チャールズⅡ世(ジョン・マルコヴィッチ)とも親しかった。しかしジョンは、国王の大事な客人の前で猥雑な政府批判の詩を披露するなどして、しばしば王の怒りを買っていた。
 ジョンの美しい妻エリザベス・マレットは、彼を心から愛していた。しかし彼には、なじみの娼婦がいたり、彼のどんな言動も持ち上げる悪友に囲まれて、勝手気ままな生活を送っていた。

 ある日、いつものように悪友たちとロンドンの芝居小屋へ繰り出した彼は、そこで女優の卵、エリザベス・バリーと出逢う。彼女は芝居が下手だという理由で、劇場主に解雇されかけていた。しかし、ジョンは彼女の才能を一目で見抜き、劇場主に彼女を演技指導したいと申し出る。
 これこそが、ジョンにとっての運命の出会いだったのである。エリザベス・バリーはジョンの厳しく執拗な演技指導を受けて、見る見るうちにその才能を開花させ、舞台でも絶賛を浴びるまでに成長する。そしてジョンとエリザベス・バリーの仲も恋愛関係へと発展する。

 ジョンは国王に頼まれた、大切なフランス大使の歓迎式典で、彼の戯曲を上演する。しかしその舞台は、男性と女性の象徴が露骨な模型で登場する衝撃的なもので、途中で中止に追い込まれてしまう。
 こういうのは、日本の地方のお祭でも時々見かけるが、日本のはユーモラスだけれど、ここに登場したものは、ちょっとびっくりさせられるようなものだった。

 だが、その後ジョンは酒毒と梅毒を発症する。そしてだんだんと病み衰えていくのだった。ここからの、J.デップのメーキャプがすごい。顔はデキモノだらけ、鼻がノーズキャップをつけないといけないくらい崩れてしまう。そして、片目は白濁する。よくぞここまでやってのけたものだ。J.デップの勇気に感服した。

 ジョン・ウィルモットは女優エリザベス・バリーを本心から愛していた。彼は病み衰えた姿で彼女に会いに行き、「ほんとうは、おまえを愛人ではなく、妻にしたかった。」という。しかし、女優エリザベスは「私は不確実な愛よりも、確実な(女優としての)名声を選んだのよ!」と敢然と言い放つのだ。なんと強い女性だろうか。

 とうとうジョンは田舎の自分の屋敷に戻る。そこには、彼に惚れていてどうしても、彼を見捨てることができなかった妻エリザベス・マレットと、忠実な召使がいたのだった。

 この2人のエリザベスの存在がおもしろかったと思う。サマンサ・モートン演ずる女優エリザベス・バリーは、世渡りのうまいしたたかな賢い女である。そして、ロザムンド・パイク演ずる妻エリザベス・マレットは、貞淑で夫への一途な愛に生きた女性だ。

 どちらの女性も、魅力的に描かれていたと思う。女優エリザベスは、ジョン・ウィルモットとの間に子供を1人もうけた。しかし、生涯独身を通し、裕福な女優生活をおくったとのこと。まさに、「確実」なものをしっかりと見極めて生きた強い女性なのだろう。
 一方、妻エリザベス・マレットは、放蕩者の主人から最後まで離れることができなかった。心底彼に惚れていたのだ。損な生き方のようだが、女性として1人の人を一途に愛するというのは素晴らしいことではないだろうか。
 
 このロチェスター伯爵ことジョン・ウィルモットは、死後、マイナーなポルノ詩人として日の目を見なかったが、1962年にある研究家によりその作品が評価され、その後、グレアム・グリーンや、現代英国の詩人ピーター・ポーターなどに認められたそうだ。

 この映画の最後に、再びJ.デップが最初の扮装で登場する。ここで、あの醜いジョン・ウィルモットの姿は払拭され、彼は魅力的な一詩人として印象付けられるのである。このジョニー・デップの存在なくして、この映画を創ることはできなかったと強く思ったのだった。


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gillman

今日、18年一緒に暮らしたタマが死んでしまいました
by gillman (2006-05-03 14:46) 

coco030705

gillman さんへ
タマちゃんのご冥福を心からお祈り申し上げます。合掌
by coco030705 (2006-05-03 15:54) 

クリス

私はこれ、スコットランドにいた時に観たんですが、少し難しかったです、英語が。でも、それ以上にストーリーに入り込んで観れなかった気もします。ジョニデも自業自得だし。ただ、役者陣はジョニデを筆頭に良かったですね。彼の綺麗な顔をあんなに迄してしまうなんて、驚きますよね。役者1人1人は良かったし、それぞれの物語を切り取るとドラマチックな気がするのに、1つのストーリーとしてまとめるとこじんまりとしてしまうなんてもったいないな~って感じでした。
by クリス (2006-05-03 21:59) 

coco030705

蟻銀さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
そうですか、スコットランドでご覧になりましたか。さすが!
でも、やっぱり欧米は公開が早いですよね。日本は何でこんなに
遅れるのかしら。「マッチポイント」も今夏の公開だそうです。
映画もなかなか100点満点の作品はありませんね。(^^)
by coco030705 (2006-05-03 23:01) 

bunka

こんにちは。
GW中にこれ見てきました。
ジョニデらしいといえばらしい映画だと思いますが、もう一回見てみないと
内容はよくわからないなぁ、とも思いました。
ジョニーさんの“時代モノ”だったら、私は『フロム・ヘル』が好きですね。
by bunka (2006-05-05 10:21) 

coco030705

bunkaさんへ
コメントありがとうございます♪
ジョニー・デップは芸のためなら、どこまでもとことんやる人だなと思いました。改めて、ジョニーの素晴らしさに気付かされた思いです。
「フロム・ヘル」もよかったですね。彼の美しさがよくでていました。
by coco030705 (2006-05-05 18:23) 

coco030705

Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2006-05-06 08:04) 

磯野うに

niceとコメントありがとうございました!
もうちょっとエロなジョニーが見たかったなぁ・・・・
by 磯野うに (2006-05-06 22:10) 

coco030705

磯野うにさんへ
こちらこそ、nice&コメントありがとうございました♪
ジョニーの存在そのものが、「エロかっこいい」のかも
しれませんが、ビジュアル的にも、もうちょっとサービスが
あったらよかったですね。(^^)


t2o's logさんへ
ほんとに、一般受けはしそうにない役でしたね。
TBありがとうございました☆
by coco030705 (2006-05-07 01:27) 

詳細な内容に感服しました。
映画を選ぶときの参考にさせていただきたいと思います。
by (2006-05-25 17:46) 

coco030705

sky-walkさんへ
nice!&コメントありがとうございます♪
私は、好きな映画のレビューしか書かないので、
偏っているかもしれません。よかったら、また気軽に
遊びにいらしてください。私も時々お邪魔しますね。
by coco030705 (2006-05-25 19:37) 

shiro_taka

はじめまして。
cocoさんのレビュー、とっても丁寧で、興味深く拝見しました。
こういう映画こそ、ジョニー・デップの得意分野なのでは?と思います。
また遊びに来ますね。TBもさせてください。
by shiro_taka (2006-12-11 09:38) 

coco030705

shiro_takaさんへ
はじめまして。コメント&TBありがとうございます♪
ジョニー・デップの演技力に感心しました。
これからも宜しくお願いいたします。
by coco030705 (2006-12-11 14:18) 

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