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ウィンターソング [日本&アジア映画]

監督:ピーター・チャン  出演:金城武、 ジョウ・シュン、 ジャッキー・チュン、 チ・ジニ

 試写会というものにはめったに当選しないのに、珍しく当たったのである。私の好きな俳優、金城武が出演しているのだから、絶対見なきゃ!ということで、次の日の仕事の準備もそこそこに、試写会に駆けつけた。

 映画監督を夢見る貧乏な青年リン・ジェントン(金城武)と女優を夢見る女性スン・ナー(ジョウ・シュン)が北京で出会い、恋に落ちる。しかしその恋愛は突然のスン・ナーの失踪で終わりになる。10年後、リン・ジョントンは俳優として成功、スン・ナーも女優として活躍していた。この2人が映画で共演することになる。しかし、スン・ナーはすでに監督ニエ・ウェン(ジャッキー・チュン)の恋人となっていた。10年前の記憶と愛を取り戻すかのように、2人は厳寒の北京へ向かうが・・・。

 リン・ジョントンとスン・ナーが上海のスタジオで共演するのはミュージカルである。その筋書きは、記憶を無くしてサーカス団のブランコ乗りになった女と、彼女を捜していた男の物語。このミュージカルシーンが非常に華やかである。色とりどりの雨傘が舞うシーンは、「シェルブールの雨傘」のパクリかなと思ったが。ダンスもハリウッドには及ばないがかなりのものである。しかし、私が気になったのは、その色彩感覚である。いわゆる満艦飾。すごくごちゃごちゃしていた。中国の感覚だなと思った。
 建物や町の色彩はレトロな雰囲気でとてもよかったのだが、このミュージカルシーンの色は、私にはちょっと満腹すぎる色彩だった。

 金城武演ずる男リン・ジョントンは、恋人スン・ナー(ジョウ・シュン)に去られてからも、10年もの間彼女をひたすら思い続ける。しかし、スン・ナーは今は監督の恋人になっている。だが2人は思い出をよみがえらせるかのように、北京へ逃避行する。この厳寒の北京の撮影が、とってもすっきりしていてよかった。それもそのはず、北京は撮影がクリストファー・ドイルだったのだ。(恋する惑星、花様年華、HERO,2046、レディ・イン・ザ・ウォーターetc.)
 この映画では北京でのシーンが秀逸だった。ただ、ジョウ・シュンがメイクを落とすと子供みたいな顔になってしまうので、金城武との釣り合いがとれなかったのが残念だ。

 リンとスンは映画の最後のシーンを撮影するために、俳優として再び上海に戻る。そこで女の今の恋人で映画の監督のニエ・ウェン(ジャッキー・チュン)が、自ら映画出演してスン・ナーとの空中ブランコのシーンを撮影する。この人、ジャッキー・チュンは香港の歌手なのだそうだ。ミュージカルで脚光をあびるのは、やはり歌のうまい人だろう。この映画でも金城武とジュウ・シュンを争うのだが、やっぱり歌のうまいほうに分があるのが当然の成り行きだ。

 ピーター・チャンはなぜ、全編をミュージカル仕立てにしたのだろう。ミュージカルは、この劇中劇である上海のシーンだけでよかったのにと思う。
 せっかく金城武を起用しながら、ミュージカル仕立てにしてしまったがために、金城の歌う部分に無理があったように感じた。普通の恋愛映画だったら、金城武の魅力がもっと発揮されて、気持ちを揺さぶられる作品になっていたはずだ。北京での逃避行も、感動が薄められていまひとつ消化不良で終わってしまった。

 この映画で一番得をしたのは、香港の歌手、ジャッキー・チュンではないだろうか。役柄の設定もよかったし、最後の映画を撮るシーンで自分の女に対する気持ちをはっきりと見せ付ける場面があったので、ここで完全に勝負ありという感じだった。

 リン・ジョントンのスン・ナーに対する気持ちの描き方がよくなかった。10年間も思い続けてきたのに、最後にもっとしっかりと女を自分に引きつけなくては。あるいは、2人が別れるにしても、もっと心に沁みるような別れ方があったはずだ。主役の金城武より、ジャッキー・チュンのほうがよく見えてしまう脚本は納得できなかった。辛口のコメントになったが、色々不満の残る作品だった。
 


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コメント 9

ken

名作「ラブソング」のピーター・チャン監督ですよね。
今日、大崎のホームに大きなポスターが貼ってあるのを見ました。
期待しちゃいけないんだろうけど、期待しちゃってます(笑)。
by ken (2006-11-03 14:24) 

coco030705

kenさんへ
コメントありがとうございます♪
私の目が曇っていたのかもしれません。(^^)
kenさんご覧になったら、ぜひ感想をアップしてくださいね。
by coco030705 (2006-11-03 14:51) 

TaekoLovesParis

はじめジャッキー・チュンをジャッキー・チェンと読みまちがえていたため、
ずいぶんおいしい役で、、、と思ったら、香港の歌手と書いてあったので、
大まちがいだったとわかりました(苦笑)

私も金城武、結構好きです。ウォン・カーウェイとクリストファー・ドイルの
コンビ作品にはまっていた時期がありました。特に「恋する惑星」よかったです。金城武が電話ボックスで何ヶ国語かを縦横にあやつって話してましたね。
地味な「アンナ・マグダレーナ」というバッハのメヌエットを題材にした作品
もほんわか、、で印象に残っています。CD買ったりしましたっけ。寝る前に
聴くのにぴったりでした。

この映画、ミュージカルだから歌のうまい方に軍配があがるようにできて
いるんですね。金城武は不利な立場でも、そう、Cocoさんのおっしゃるように
心にしみる別れの名場面を、、ってファンなら思いますよね。多分演出がマズ
い、って思おう。(←見てないのにこんなこと言っちゃいけない)
by TaekoLovesParis (2006-11-04 09:58) 

キキ

こんにちは。試写会当選うらやましいです。ラッキーでしたね。
しかも、ミュージカルで歌う金城武が観れるなんて。 ^・^
by キキ (2006-11-04 10:05) 

coco030705

Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
Taekoさんも金城武ずきでいらっしゃったなんて、うれしい!
実は私も最初、「ジャッキー・チェン」が出ると思い込んでたんです。(^^)
ウォン・カーウェイいいですよね~。花様年華、好きです。
カーウェイ監督作品はだいたい好きな作品ばかり。
ウィンターソングに関して、文句いってしまいましたが、
やっぱりヒットはしてほしいなあ。(ファン心理ってフクザツ)


キキさんへ
コメントありがとうございます♪
試写会はよく応募するんですが、ほんとに当たりませんね。
今回はとってもラッキーでした。(^^)
金城武って、もともと歌も歌う人なんですよね。ウィンターソング、ちょっと
けなしすぎたかも・・・。誰かに怒られたらどうしよう、なんて思ってます。
by coco030705 (2006-11-04 19:03) 

non_0101

こんばんは。
この秋は哀しいラブストーリーの映画が多いですね。
未見の邦画もあるし、この映画もどうしようかなあ~と考えています。
cocoさん的にも、ちょっと微妙な感じですね。
でも、映画の感想は十人十色で良いのですから
誰も怒りはしませんよ(笑) 
by non_0101 (2006-11-10 22:36) 

coco030705

nonさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
nonさん、本当によくご覧になってますね。記事は読んでるんですが、
映画をみていないので、なかなかコメントがつけられません。お許しください。
もし、金城武がお嫌いじゃなかったら、ご覧になってみてください。そして、
記事をアップしてください。ぜんぜんちがう感想をお持ちになるかも
しれませんよ。(^^)
by coco030705 (2006-11-10 23:57) 

non_0101

こんばんは。遅くなりましたが、ようやく観てきました~
先に観た友達も「泣こうと思って行ったのに泣けなかった…」と言ってました。
歌はいまいちでしたね。ミュージカルは歌が命だと思うのですけど(^_^.)
だから余計に泣けなかったのかなあと思いました。
あと、ジョントンの行動は正直ちょっと怖いなあと思ってしまいました。
あれは愛というよりも執念ではないのかなあ。
でも彼も最後に心の区切りが出来たようで、ちょっとほっとしました(^^ゞ
by non_0101 (2006-12-07 00:31) 

coco030705

nonさんへ
TB&コメントありがとうございます♪
そうですよね、歌がイマイチですよね~。ジャッキー・チュンだけが
よかったでしょ?(本職なんだからとうぜんですけどネ)
リン・ジョントンはせっかく彼女と思い出の北京へ行っておきながら、
復讐心(?)のために彼女を残して旅立とうとするでしょう。あそこが
いやだったわ。なんて男らしくない男って思っちゃいました。
監督から彼女を奪い取るためにも、しっかりと彼女を捕まえて、
片時もはなさないでほしかったです。
金城武のために、ヒットしてほしかったんですけど、どうだったんでしょうね。


Soraさんへ
nice! ありがとうございました♪
by coco030705 (2006-12-07 18:41) 

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