ウディ・アレンの夢と犯罪 [ウディ・アレン]
この映画のチラシで、白いクルーザーに乗っているユアン・マクレガーとコリン・ファレルを見て、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」に似ていると思った。確かに野望から犯罪へ発展しそして破滅へと、作品のテーマは同じだが、内容的にはまったく違う映画だった。
きらびやかなビジネスの世界での成功を夢見るイアン(ユアン・マクレガー)と、酒とギャンブルと恋人と過ごす日々にそれなりの充足感を得ているテリー(コリン・ファレル)。そんな兄弟が「カサンドラズ・ドリーム号」と名付けた小型クルーザーを購入したことから、彼らの人生は思わぬ方向へと動き出す……。
コリン・ファレルとユアン・マクレガー
いつもは最初からジャズのスタンダードが流れるのが、ウディ・アレン映画の決まりだが、今回は重々しい感じのクラシックのような曲が流れた。この曲は現代音楽の巨人フィリップ・グラスに依頼したオリジナル・スコアだそうだ。この曲によって、作品が悲劇なのだと想像がつく。
ユアン・マクレガーとコリン・ファレルは、顔が違いすぎるので、兄弟らしくないという批判があったのだそうだ。けれども、作品中ではいい兄弟のように思えた。二人は「役者」なんだなと思った。
ユアンの整った顔が素敵だった。それにかっこいい役者が、野望を抱いている男を演じるのが魅力的だった。けれども、コリン・ファレルも小心者の弟を表現するのがとてもうまかったと思う。コリン・ファレルに関して、今までの役と違う一面を見た思いがした。また、ウディの作品はセリフ劇なのだが、この2人のセリフのやりとりはかなり自然で、役者としての力量を感じた。
アレン監督作品では、小道具類が非常にお洒落であるのが特徴的で、これが映画を観る楽しみの一つである。例えば、兄弟が乗るクルーザーは、クラシカルな木製のニコルソンボートという美しいヨットである。またイアン(ユアン)が恋人にいいカッコするために、弟である自動車整備工のテリー(コリン)から、客の自動車を借りるのだが、それはジャガーのXK120というモデルで、国際的な名声を得ている車だそうだ。往年のハリウッドスターも愛用した名車なのである。それに、ユアンとコリンのファッション、彼らの恋人のファッションもよかった。
ストーリーのほうは、兄弟が野望のために殺人を犯すという話で、弟テリーは小心者なので、「一線を越えてしまったら、もう引き返せない。」といって殺人をためらうのだが、兄のイアンが強気でとうとう押し切られてしまう。しかし一線を越えたことから、弟は精神に異常をきたし、2人はどんどん破滅に向かっていく。
ウディ・アレンは「人を破滅に導くのは野望だ。」といっている。貧乏だが平凡で人の良い両親の元で育った兄弟。兄は、より上のクラスの生活を夢み、美しい恋人を手に入れたいと望み、無理をしていく。弟はギャンブルで多額の借金を背負い、それをいっきに帳消しにしようと考えた。そこに人生の落とし穴があった。
洒落た世界の中に、アレン流の皮肉が利いている。教訓的でなく、さらりと悲劇を描いているところが、ウディならではのうまさだと思った。
監督&脚本:ウディ・アレン 出演:ユアン・マクレガー、 コリン・ファレル、 トム・ウィルキンソン、
サリー・ホーキンズ
2007年 イギリス
きらびやかなビジネスの世界での成功を夢見るイアン(ユアン・マクレガー)と、酒とギャンブルと恋人と過ごす日々にそれなりの充足感を得ているテリー(コリン・ファレル)。そんな兄弟が「カサンドラズ・ドリーム号」と名付けた小型クルーザーを購入したことから、彼らの人生は思わぬ方向へと動き出す……。
コリン・ファレルとユアン・マクレガー
いつもは最初からジャズのスタンダードが流れるのが、ウディ・アレン映画の決まりだが、今回は重々しい感じのクラシックのような曲が流れた。この曲は現代音楽の巨人フィリップ・グラスに依頼したオリジナル・スコアだそうだ。この曲によって、作品が悲劇なのだと想像がつく。
ユアン・マクレガーとコリン・ファレルは、顔が違いすぎるので、兄弟らしくないという批判があったのだそうだ。けれども、作品中ではいい兄弟のように思えた。二人は「役者」なんだなと思った。
ユアンの整った顔が素敵だった。それにかっこいい役者が、野望を抱いている男を演じるのが魅力的だった。けれども、コリン・ファレルも小心者の弟を表現するのがとてもうまかったと思う。コリン・ファレルに関して、今までの役と違う一面を見た思いがした。また、ウディの作品はセリフ劇なのだが、この2人のセリフのやりとりはかなり自然で、役者としての力量を感じた。
アレン監督作品では、小道具類が非常にお洒落であるのが特徴的で、これが映画を観る楽しみの一つである。例えば、兄弟が乗るクルーザーは、クラシカルな木製のニコルソンボートという美しいヨットである。またイアン(ユアン)が恋人にいいカッコするために、弟である自動車整備工のテリー(コリン)から、客の自動車を借りるのだが、それはジャガーのXK120というモデルで、国際的な名声を得ている車だそうだ。往年のハリウッドスターも愛用した名車なのである。それに、ユアンとコリンのファッション、彼らの恋人のファッションもよかった。
ストーリーのほうは、兄弟が野望のために殺人を犯すという話で、弟テリーは小心者なので、「一線を越えてしまったら、もう引き返せない。」といって殺人をためらうのだが、兄のイアンが強気でとうとう押し切られてしまう。しかし一線を越えたことから、弟は精神に異常をきたし、2人はどんどん破滅に向かっていく。
ウディ・アレンは「人を破滅に導くのは野望だ。」といっている。貧乏だが平凡で人の良い両親の元で育った兄弟。兄は、より上のクラスの生活を夢み、美しい恋人を手に入れたいと望み、無理をしていく。弟はギャンブルで多額の借金を背負い、それをいっきに帳消しにしようと考えた。そこに人生の落とし穴があった。
洒落た世界の中に、アレン流の皮肉が利いている。教訓的でなく、さらりと悲劇を描いているところが、ウディならではのうまさだと思った。
監督&脚本:ウディ・アレン 出演:ユアン・マクレガー、 コリン・ファレル、 トム・ウィルキンソン、
サリー・ホーキンズ
2007年 イギリス
何となくWアレンっぽくない作品な気がして、ちょっと躊躇気味な私です(もっとも札幌では未だ公開されてませんが)。Wアレンのファンなんですけどねぇ…
by 丹下段平 (2010-04-04 03:12)
丹下段平さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
ウディはでていませんが、いつも通りのセリフ劇ですし、
脇の俳優さんがうまい人ばっかりで、まちがいないって感じですよ。
それにイアンとコリンの恋人役の女優さんがキレイでかわいいの。
ストーリーは暗めですが、おもしろいです。ウディ・アレン節が
堪能できますよ。
by coco030705 (2010-04-04 11:11)
DSilberlingさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-04-04 11:13)
xml_xslさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-04-04 17:50)
こんばんは!
重厚な音楽、登場人物のファッション、車もヨットも素敵でしたね。
そしてごっついコリン・ファレルがちょっと情けない感じの弟!という
キャスティングも最高で、困った表情良かったです〜。
なんとなく悲劇って分かってるけど、どうなるの・・・?と
ちょっとハラハラするストーリーもとても楽しめました。
by トミュウ (2010-04-04 20:12)
こんにちは。
ウディ・アレン監督、邦題にも名前があるってすごいですよね。^.^
先週末からの公開で私も観に行こうかと思ってます。
今回はお気に入りのスカーレット・ヨハンソンは出ていないんですね。
by キキ (2010-04-04 20:13)
トミュウさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
トミュウさんもいかれたんですね。
そうそう、いつもなんとなく元気なイメージのコリン・ファレル、
気の小さい弟を好演していましたね。また違う一面を見たようで、
よかったです。イアンは、持ち味はあんまり変わらなかったけど、
やはり兄って感じが出てて素敵でした。
ストーリー展開もよかったですね。さすがウディ・アレンだと思わずに
いられませんでした。
by coco030705 (2010-04-04 21:01)
キキさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
この原題は、「Cassandra's Dream」というのです。
2人のヨットの名前なのね。カサンドラはギリシャ神話に
登場する、予言能力を持つ女王のことなんですって。
神話の中で悲劇的な運命をたどるのだそうです。
だから、ここでも2人の行く末が暗示されているんです。
日本人にはわかりにくいから、こんな邦題になったのかな。
今回はスカーレットはでてないんですけど、イアンの恋人は
正統派美人、コリンの恋人はかわいい感じの美人で、
やっぱりアレン監督は美女好きなんですね。(^^)
by coco030705 (2010-04-04 21:09)
いつも以上にコリンの八の字眉毛が凄かったですね☆
状況が悪くなればなるほど、
なんだか喜劇にも思えて来て、おもしろかったです☆
ラストのさらっとした感じも絶妙でした!
by ジジョ (2010-04-05 01:06)
ジジョさんへ
nice&コメント&TBありがとうございます♪
コリン・ファレルの八の字眉毛、確かに!(^^)
でもそれが、弟の苦悩をよく表現していましたね。
そうですよね。悲劇なんだけど、ユーモラスなところが
ウディ・アレン映画ですね。
ラストは警官が「よくある事件さ。」といったので、
落ち込まずにさらりと終われたのかもしれません。
さすがですね。
by coco030705 (2010-04-05 01:48)
タケルさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-04-05 08:57)
Taekoさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-04-05 20:36)
ぼんぼちぼちぼち さんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-04-07 20:20)
「太陽がいっぱい」かぁ。そういえば、そうですね。野心的なところとか。
ユアンは、役柄も顔つきも、ドロンより優しすぎたんですよね。そこが
致命傷だったとも思います。
インパクトはちょっと弱かったけど、ウディらしく仕上げた作品でした。
それに、ロンドンを舞台にしたウディ作は、観ているだけでいろいろ思いだして、
楽しいです。
by クリス (2010-04-13 07:09)
クリスさんへ
こんにちは!nice&コメントありがとうございます♪
ロンドンいいですね。ロンドンが舞台というだけで、嬉しくなっちゃいますね。
>ユアンは、役柄も顔つきも、ドロンより優しすぎた
そうですね、ユアンはアクの強さがないですものね。でもそれはそれで
よかったような。あのスッキリ感が、ウディの作品のサラッとした、悲劇でも
コメディの要素がはいっているような雰囲気に合ってるみたいな気がします。
だから逆に、ウディ作品は一般受けしないのでしょうね。
やはり「太陽がいっぱい」を見直してみなくちゃ!と思いました。
by coco030705 (2010-04-13 10:36)
Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-04-29 09:23)
W・アレンらしい映画でしたね。
悲劇と言えども、どこか滑稽でもあり、その辺りの対比の描写がさすがだと思いました。
by hash (2010-04-30 21:32)
hashさんへ
nice&コメント&TBありがとうございます♪
そうなんです。ウディ・アレンらしさが全編に行き渡っていて、
なんともいえないユーモアも感じられ、おもしろかったです。
新作も楽しみですね!
by coco030705 (2010-05-01 00:16)
コメディじゃないけど作家の個性は出ている作品でした。
でも、実はいまだにWアレンのヨーロッパ作品に馴染めない私…
by 丹下段平 (2010-07-05 02:12)
丹下段平さんへ
二度目のコメント、ありがとうございます♪
やはりWアレンといえばニューヨーク、というイメージが頭の中に定着していますものね。アメリカで撮った作品は、それが風景と溶け込んでいるような気がします。反対にヨーロッパの作品は、ウディが外国人の目で捉えた風景であり、それは、
私は彼が故意にそういう風に、楽しんで撮っている気がします。
いずれにしろ、おもしろい監督だと思います。
by coco030705 (2010-07-05 19:32)
こんばんは^^
ユアン&コリンの兄弟、
言われてみれば似てないけど、とても良かったですね。
ユアンは前から好きなんだけど、
コリン・ファレルは苦手なほうだった~。
でも、本作でイメージがガラっと変わったのは確か。
とても良い役者さんだと思います。
そういうのを引き出すのも、ウディ・アレンは上手いですよね^^
by てくてく (2010-11-04 20:28)
てくてくさんへ
こんばんは!nice&コメント&TBありがとうございます♪
コリン・ファレルは、私もてくてくさんと同じで今まであまりいいと
思ったこともなかったんですが、この作品を観て、彼への見方が
変わりました。アレン監督は役者の隠れた面を引き出すのが本当に
うまいですね。だから役者さんがこぞってアレン監督の映画に出たがるの
ですね。(^^)
by coco030705 (2010-11-04 23:51)