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ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen ) [外国映画]

 このミュージカル映画のテーマは「心の病」です。これは数々の賞を受賞したブロードウェイミュージカルを映画化したものです。一昔前のミュージカルだったら、心の病をテーマにしたものは考えられなかったと思います。恋愛や文芸作品やファンタスティックなものがテーマでした。「ディア・エヴァン・ハンセン」は、とても現代的なテーマの作品です。


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 学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいる少年エヴァン(ベン・プラット)は孤独だった。彼は、カウンセラーから自分自身に手紙を書くようにと勧められる。「Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を自分に書いて、自身を見つめなおすのだ。


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  コナー・マーフィー(コントン・ライアン)&エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)


 ある日エヴァンは、自分宛てに書いた手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。この手紙は、エヴァンの心の声が書かれた、誰にも見られたくないものだった。コナーは、友人や家族に対して、大声で威喝したり、怒鳴ったりする性質をもっていて、いつも感情が安定しない若者だった。
 エヴァンは手紙を取り返すことができなくて、困っていた。ところが後日、エヴァンは校長から呼び出され、コナーが自ら命を絶った事を知らされる。

 悲しみに暮れるコナーの両親は、息子が持っていたエヴァンの手紙を見つけ、彼とエヴァンが親友だったと思い込む。

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コナーの家族 義父ラリー(ダニ・ピノ)母シンシア(エイミー・アダムス)、妹ゾーイ(エイトリン・デバー)

 エヴァンはコナーの家族をこれ以上苦しめたくなくて、思わず話を合わせてしまう。そして促されるままに語った「想像上のコナーとの思い出」は学校の同級生や先生などの心を打ち勇気を与え、SNSを通じて世界中に広がっていく。


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 エヴァンの嘘の話に感動して、心の病を抱えた人を助ける色々なプロジェクトを、立ち上げる同級生たち

 思いがけず人気者になったエヴァンは心の底では良くないと思いながらも、コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)とも仲良くなり、充実した学校生活を送るが、思いやりでついた嘘は彼の人生を大きく動かし、やがて事態は思いもよらぬ方向に進む。


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 コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)&エヴァン(ベン・プラット)
(ゾーイはかわいいので、エヴァンは気に入っていたのだが、やはりエヴァンが嘘をついていたのがあだとなって、別れてしまう。まぁ、嘘から出たまこと的なことがあったのですが……。)

 映画化にあたり、主演のエヴァン・ハンセン役を、ミュージカル版と同じくベン・プラットが務めた。劇中曲で唯一ステージ上でライブ演奏された「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」の歌唱シーンが収められている。この曲がすばらしいし、ベン・プラットの歌声も本当に美しい。
 これは、エヴァンが多くの学生らが集まる講堂で行われたコナーの追悼式の舞台上で、「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」をささやき声で歌い始めるシーン。同曲は、グラミー賞を獲得したミュージカルアルバムの代表曲だ。歌詞にもあるように「どんなに孤独だと感じても、決して見捨てられたわけじゃない」というメッセージを届ける重要な場面となっている。

 今までなら、こういうテーマの作品は普通の映画にしかなりえなかったと思う。しかしミュージカルに仕立てて、セリフの途中で歌いだすのが、少しも不自然ではなかったのが、すごいと思った。

 さて、エヴァンはその後どうなったのか。彼はコナーの両親に気に入られ、大学入学の資金を出すといわれるが、エヴァンの母親でシングルマザーのハイディ(ジュリアン・ムーア)が自分のプライドにかけても、それはできないと断る。
 個人的には、シングルマザーのハイディの気持ちはわかる気がします。自分の息子のことは自分が責任をもって解決してやりたいという思いでしょう。


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    ベン・プラット&エヴァンの母親ハイディ役のジュリアン・ムーア

 それで一時彼ら二家族は、ちょっと嫌なムードになるが、SNSでエヴァンの話が拡散したことによってSNS上に、コナーが診療所のグループワークで静かにギターを弾く動画が誰かから挙げられ、コナーが感情の激しい性格を、何とかしようと努力していたことがわかる。二家族は和解し、事態は良い方向へと向かうのだった。

 この映画がミュージカルではなくて、普通の作品になっていたら、かなり深刻なものになるだろうと思う。それをミュージカルにしたので、歌のお蔭でシビアな作品にはならなかった。観客にとっては観やすいものになっているのではないだろうか。
 そして劇中で歌われる孤独な人々への応援歌「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」はとても心にしみる歌詞とメロディーでした。歌の力を感じるいい映画でした。
  
「YOU WILL BE FOUND」

 (歌の埋め込みが遅れてすみませんでした。 ココより)

原題:Dear Evan Hansen  監督:スティーブン・チョボスキー  出演:ベン・プラット、
ケイトリン・デバー、 ジュリアン・ムーア、 エイミー・アダムス、 ダン・ピノ、
コントン・ライアンetc.
2021年製作/アメリカ

  

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coco030705

芝浦鉄親父さんへ
こんばんは。nice!とご訪問ありがとうございます♪

鉄腕原子さんへ
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ふるたによしひささんへ
こんばんは。nice!とご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2021-12-21 20:59) 

coco030705

@ミックさんへ
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by coco030705 (2021-12-22 00:06) 

lequiche

こういう題材をミュージカル映画にできるというのが
すごいですね。
現実にこれに近いことはあるかもしれません。
今の時代、いろいろな種類の病が跋扈しているように思えます。
ミュージカルにすることによって、
深刻さが軽くなる、というのは秀逸なアイデアですね。
by lequiche (2021-12-22 00:59) 

coco030705

lequicheさんへ
こんばんは。nice!&コメントありがとうございます♪

筋書きとしては結構複雑で、色々な要素が含まれているのです。なので普通の映画として描いたら、かなり深刻な作品になって、なかなか観てもらえないかもしれないのに、ミュージカルとしてみせたらセリフが歌になり、その音楽の良さが観客の心を解放するところがあるなと思います。やはり音楽は魅力的で、人の心を自由にする力がありますね。
by coco030705 (2021-12-22 02:10) 

きさ

これはいい映画でした。
主人公の心のつぶやきが歌となる設定が面白い。
学校で孤独な思いを歌っていても誰も反応しないのが主人公の孤独さを表しています。
主人公を演じたベン・プラットの歌が素晴らしく演技も良かったです。
ヒロイン役のケイトリン・デヴァーはじめ俳優陣も好演しています。
エイミー・アダムス、ジュリアン・ムーアも出演して歌っています。
パセク&ポールの音楽がとてもいいです。
久々に素晴らしいミュージカル映画を見ました。
今年のベストテンに入る名作だと思います。
by きさ (2021-12-22 10:07) 

coco030705

きささんへ
こんにちは。nice!&コメントありがとうございます♪

いい映画でした。筋書きはまさに現代の問題を取り上げたもので、興味を引きますし、音楽がとてもすばらしかったですね。ベン・プラットの歌声が美しかったです。ケイトリン・デヴァ―はかわいくて歌も上手いし、これから活躍しそうですね。
ベテランの俳優陣も皆、歌が上手かったですね。もちろん歌える人を起用していると思いますが。よく知っている俳優さんでも歌はあまり聴く機会がないから、面白かったです。
映画の終わり方もよかったし、本当にいい作品でした。もっと色々な作品をミュージカルにできそうですね。期待します。
by coco030705 (2021-12-22 12:12) 

coco030705

xml_xslさんへ
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じーバトさんへ
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平凡な生活者さんへ
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tarouさんへ
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SORIさんへ
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ゆきちさんへ
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by coco030705 (2021-12-22 12:19) 

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angie17さんへ
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アルファルハさんへ
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Inatimyさんへ
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by coco030705 (2021-12-22 23:32) 

coco030705

sanaさんへ
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ネオ・アッキーさんへ
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by coco030705 (2021-12-23 21:06) 

coco030705

Taekoさんへ
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おぉ!次郎さんへ
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by coco030705 (2021-12-23 21:09) 

nachic

いいお話ですね。
ミュージカルって、あんまり好きじゃないんですけど、今度見てみますね。あ、ブロードウェイミュージカルなのですね。
by nachic (2021-12-25 11:44) 

coco030705

nachicさんへ
こんにちは。nice!&コメントありがとうございます♪

これはレビューを書くのが難しかったです。エヴァンは、結局嘘をついていたので、観客はどう受け止めるのかなと思っていました。
それにしても、ミュージカルにこういうテーマを持ってくるというのが現代的で、しかもSNSとか、シングルマザーの心情とか、そういうのも現代の注目すべき現象ですものね。
私は「YOU WILL BE FOUND」の歌がとても好きになってミュージカルも観たいなと思っています。コロナが収まったら、日本に来るかもしれませんね。
by coco030705 (2021-12-25 14:21) 

kontenten

またまた、Amazonの欲しいモノリストが充実しそうです^^;Aアセアセ
 ミュージカルを映画化と申せば、アマデウスを思い出します。
結構ハマりましたので、これもハマるかも知れません(^_-)
by kontenten (2021-12-27 13:07) 

coco030705

kontentenさんへ
こんばんは。nice!&コメントありがとうございます♪

そういえば、アマデウスってありましたね。モーツアルトの映画でしたね。この作品はストーリーは本当に現代的なテーマをとりあげているのですが、音楽は明るくてとてもいい感じです。もし↑のYouTubeの曲がお好きでしたら、ぜひ映画もご覧になってみてくださいね。
by coco030705 (2021-12-27 19:36) 

coco030705

てんてんさんへ
こんばんは。nice!とご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2022-01-03 23:43) 

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