ドライブ・マイ・カー [日本&アジア映画]
先日の米国第94回アカデミー賞で「ドライブ・マイ・カー」が、本映画史上初となる作品賞にノミネートされ、ほかに監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネート。結果的には「国際長編映画賞」を獲得しました。すばらしいことですね。作品賞をとれなかったのは残念でしたが。
前から観に行こうと思っていて、ようやく観ることができました。私は大阪の郊外に住んでいます。京都方面の映画館に観に行ったのですが、普段人の少ない映画館が、かなりの観客でうまっていたのには、驚きました。アカデミー賞の宣伝効果ってすごいですね。
作品は、村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、濱口竜介監督・脚本により映画化したものです。
小説はさほど面白いとは思わなかったのですが、映画はかなり物語を膨らませていました。主人公・家福(かふく)を西島秀俊、寡黙なドライバーみさきは三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音(おと)を霧島れいかがそれぞれ演じています。ほかに、劇中劇の場面で活躍する海外キャスト(中国、韓国、ヨーロッパ)もかなりたくさん出演していました。
家福(西島秀俊)と みさき(三浦透子)
舞台俳優で演出家の、家福有介は、脚本家の妻・音(おと)と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま、くも膜下出血で他界してしまう。家福が帰宅したときには、妻は息をしていなかった。家福は朝、家を出るとき妻に「話したいことがある」といわれたのに、遅く帰宅したことを悔やんでいた。
家福(西島秀俊)と 妻・音(霧島れいか)
2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで家福は、劇団のコーディネイターから寡黙な女性、みさきを紹介される。家福の住まいから、稽古をする舞台までの毎日の送り迎えをしてくれるプロのドライバーだった。
高槻(岡田将生)
ある日、俳優の高槻(岡田将生)が家福の舞台のオーディションを受けに来る。彼は妻・音(おと)が付き合っていた男性だった。家福はそのことを知りながら、高槻をキャストに選んだ。
家福は、高槻(岡田将生)から一度はなしがしたいといわれ、バーで高槻に会う。
高槻(岡田将生)と家福(西島秀俊)
しかし、家福は妻の音が高槻と付き合っていたのを知りながら、高槻に何も言わず、そのことを追求しようとはしなかった。高槻も何も言わず、ただ演劇のことをお互いに話すだけだった。
劇の台本を読む、本読みの場面
家福の演出する舞台は、色々な国の俳優をオーディションで選び、多言語劇であり、中には聾啞者の女優(手話で会話する人)もいた。そして稽古は順調に進んで、初日を迎える日が迫ったある日、大事な役の高槻が、飲んだ後暴力沙汰を起こし、相手が亡くなってしまうという事件を起こす。
ロケ地の呉市大崎下島の御手洗地区
高槻は警察に連行されるとき、家福に向かって「音さんは本当に素敵な人でした。あんな素敵な人と長く一緒に暮らせたことは幸福だと思わなくてはいけない」という言葉を家福に残していく。
初舞台の日が迫っていたので、悩んだのち家福が高槻の代役で舞台に立ち、成功裡をおさめる。それから、家福は、寡黙なドライバーのみさきの不幸な過去を知り、北海道のみさきの実家があったところ(いまはなにもないところ)に一緒に行く。
二人はお互いの過去から、自分自身が目を背けてきたことに気付く。
みさき(三浦透子)
ようやく家福は自分の過去を振り返り、妻の音が高槻と浮気をしていたとき、自分がそれを本気でうけとめなかったことを悔いる。そしてみさきは、昔自分をひどい目にあわせた亡き母を許す気持ちになる。二人はそれぞれに、新しい一歩を踏み出すのだった。
前評判はよかったのだが、トレイラーを見たらかなり暗い映画だろうかという印象があった。けれども、作品は淡々と描かれるが暗くはなく、西島秀俊の感情を表に出さない演技がよかったし、三浦透子は寡黙なドライバーを上手く演じていたと思う。そして高槻を演じた岡田将生が魅力的だった。かなり複雑は役だと思う。
映画の中で劇中劇が少し出てくるのだが、色々な国の俳優が多言語でまた、手話で演じるという変わった趣向だった。日本語以外と手話の部分は字幕スーパーがでるので、違和感なく観ることができた。
人間は正すべきことをただし、許すべき人を許すことで、過去を乗り越えて一歩ふみだせるというのが、この映画のメッセージなのだと思う。
約3時間の作品だが、途中、中だるみすることもなく、かなり面白く観ることができた。
主演の西島秀俊は「1冊の台本を読んだ時の密度が、他の本とは全く違いました。気持ちの流れ、言葉の量――当然、演じる側は大変なことになる。でも、挑戦したくなるような本でした」と振りかえっている。
原題:ドライブ・マイ・カー 監督・脚本:濱口竜介 出演:西島秀俊、 三浦透子、
岡田将生、 霧島れいか、 パク・ユリム、 ジン・デヨン、 ソニア・ユアン、 ベリー・ディゾン、
アン・フィテ、 阿部聡子
2021年製作/179分/PG12/日本
この映画は、2022年のアカデミー賞国際長編映画賞以外にも、2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、日本映画では初となる脚本賞を受賞。その他、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞。また、2022年第79回ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞受賞や、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞受賞など全米の各映画賞でも大きく注目を集めた。日本アカデミー賞でも最優秀作品賞はじめ、計8冠に輝いた。
前から観に行こうと思っていて、ようやく観ることができました。私は大阪の郊外に住んでいます。京都方面の映画館に観に行ったのですが、普段人の少ない映画館が、かなりの観客でうまっていたのには、驚きました。アカデミー賞の宣伝効果ってすごいですね。
作品は、村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、濱口竜介監督・脚本により映画化したものです。
小説はさほど面白いとは思わなかったのですが、映画はかなり物語を膨らませていました。主人公・家福(かふく)を西島秀俊、寡黙なドライバーみさきは三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音(おと)を霧島れいかがそれぞれ演じています。ほかに、劇中劇の場面で活躍する海外キャスト(中国、韓国、ヨーロッパ)もかなりたくさん出演していました。
家福(西島秀俊)と みさき(三浦透子)
舞台俳優で演出家の、家福有介は、脚本家の妻・音(おと)と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま、くも膜下出血で他界してしまう。家福が帰宅したときには、妻は息をしていなかった。家福は朝、家を出るとき妻に「話したいことがある」といわれたのに、遅く帰宅したことを悔やんでいた。
家福(西島秀俊)と 妻・音(霧島れいか)
2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで家福は、劇団のコーディネイターから寡黙な女性、みさきを紹介される。家福の住まいから、稽古をする舞台までの毎日の送り迎えをしてくれるプロのドライバーだった。
高槻(岡田将生)
ある日、俳優の高槻(岡田将生)が家福の舞台のオーディションを受けに来る。彼は妻・音(おと)が付き合っていた男性だった。家福はそのことを知りながら、高槻をキャストに選んだ。
家福は、高槻(岡田将生)から一度はなしがしたいといわれ、バーで高槻に会う。
高槻(岡田将生)と家福(西島秀俊)
しかし、家福は妻の音が高槻と付き合っていたのを知りながら、高槻に何も言わず、そのことを追求しようとはしなかった。高槻も何も言わず、ただ演劇のことをお互いに話すだけだった。
劇の台本を読む、本読みの場面
家福の演出する舞台は、色々な国の俳優をオーディションで選び、多言語劇であり、中には聾啞者の女優(手話で会話する人)もいた。そして稽古は順調に進んで、初日を迎える日が迫ったある日、大事な役の高槻が、飲んだ後暴力沙汰を起こし、相手が亡くなってしまうという事件を起こす。
ロケ地の呉市大崎下島の御手洗地区
高槻は警察に連行されるとき、家福に向かって「音さんは本当に素敵な人でした。あんな素敵な人と長く一緒に暮らせたことは幸福だと思わなくてはいけない」という言葉を家福に残していく。
初舞台の日が迫っていたので、悩んだのち家福が高槻の代役で舞台に立ち、成功裡をおさめる。それから、家福は、寡黙なドライバーのみさきの不幸な過去を知り、北海道のみさきの実家があったところ(いまはなにもないところ)に一緒に行く。
二人はお互いの過去から、自分自身が目を背けてきたことに気付く。
みさき(三浦透子)
ようやく家福は自分の過去を振り返り、妻の音が高槻と浮気をしていたとき、自分がそれを本気でうけとめなかったことを悔いる。そしてみさきは、昔自分をひどい目にあわせた亡き母を許す気持ちになる。二人はそれぞれに、新しい一歩を踏み出すのだった。
前評判はよかったのだが、トレイラーを見たらかなり暗い映画だろうかという印象があった。けれども、作品は淡々と描かれるが暗くはなく、西島秀俊の感情を表に出さない演技がよかったし、三浦透子は寡黙なドライバーを上手く演じていたと思う。そして高槻を演じた岡田将生が魅力的だった。かなり複雑は役だと思う。
映画の中で劇中劇が少し出てくるのだが、色々な国の俳優が多言語でまた、手話で演じるという変わった趣向だった。日本語以外と手話の部分は字幕スーパーがでるので、違和感なく観ることができた。
人間は正すべきことをただし、許すべき人を許すことで、過去を乗り越えて一歩ふみだせるというのが、この映画のメッセージなのだと思う。
約3時間の作品だが、途中、中だるみすることもなく、かなり面白く観ることができた。
主演の西島秀俊は「1冊の台本を読んだ時の密度が、他の本とは全く違いました。気持ちの流れ、言葉の量――当然、演じる側は大変なことになる。でも、挑戦したくなるような本でした」と振りかえっている。
原題:ドライブ・マイ・カー 監督・脚本:濱口竜介 出演:西島秀俊、 三浦透子、
岡田将生、 霧島れいか、 パク・ユリム、 ジン・デヨン、 ソニア・ユアン、 ベリー・ディゾン、
アン・フィテ、 阿部聡子
2021年製作/179分/PG12/日本
この映画は、2022年のアカデミー賞国際長編映画賞以外にも、2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、日本映画では初となる脚本賞を受賞。その他、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞。また、2022年第79回ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞受賞や、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞受賞など全米の各映画賞でも大きく注目を集めた。日本アカデミー賞でも最優秀作品賞はじめ、計8冠に輝いた。