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ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 国立国際美術館(大阪中之島) [アート・カルチャー]

 イギリス・ロンドンの中心部にあるロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する名品を集めた「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に、最終日の1日前、’21.1/30に行ってきました。どうしようかと迷いましたが、展示作品61点すべてが日本初公開なので、ぜひ観なくてはという思いで行きました。


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   イギリスロンドンのナショナルギャラリー


 ナショナル・ギャラリーがこれまで世界のどの場所でも開催したことがない、大規模な所蔵作品展です。ルネサンスから19世紀ポスト印象派までの名品を一挙に公開です。画像はすべて、ロンドンナショナルギャラリー展画像サイトや、美術のサイトなどからお借りしました。また絵画の解説は、展覧会の説明板の解説、ロンドンナショナルギャラリー展のサイト、美術のサイトなどからお借りしたものです。何点かは自分の感想を書いているのもあります。
 それでは作品をお楽しみくださいませ。

Ⅰ イタリア・ルネサンス絵画の収集

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   カルロ・クリヴェッリ 「聖エミディウスを伴う受胎告知」
 このコーナーでもひときわ目を引く、精緻で美しい絵です。絵全体をくまなく観るのに、時間がかかりました。


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   ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴァルト 「マグダラのマリア」
  マグダラのマリアとは、もと娼婦だったが、イエスと出会い改悛してその後イエスに従い、そののち聖女となった人物だそうです。


Ⅱ オランダ絵画の黄金時代

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    レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「34歳の自画像」
    若く自信にあふれたレンブラントのように感じます。
 

フェルメール ヴァ―ジナルの前に座る若い女性.jpg  
       ヨハネス・フェルメール「ヴァ―ジナルの前に座る若い女性」
 ヴァ―ジナルは楽器の名前でチェンバロと同じようなものです。女性の着ているドレスのブルーは、フェルメールブルーと呼ばれるもので、とても高価な岩石から作られていました。フェルメールは、裕福だったため、このブルーをよく使っていたのだそうです。私も大好きな色です。


Ⅲ ヴァン・ダイクとイギリス肖像画


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アンソニー・ヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」

 この作品でキューピッドがバラを渡している女性は、ヴィーナスに見立てられています。実在する登場人物が理想化された形で描かれているとのことです。ドレスが艶々して、絹の肌触りを思い起こさせますね。


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    トマス・ゲインズバラ「シドンズ夫人」
この女性は当時人気のシェイクスピア女優、サラ・シドンズ(1755-1831)で、流行のファッションを身に着けています。とても美しい人だと思います。


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       ジョシュア・レイノルズ 「レディ・コーバーンと3人に息子」
 レノルズは18世紀イギリスを代表する肖像画家です。3人の幼子を持つ慈愛に満ちた母親が美しく、子供も天使のようですね。


Ⅳ グランド・ツアー


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       カナレット「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」
 これは、大運河で行われるレガッタの一環として開催されたゴンドラの競漕が描かれています。こうした催し物はカーニヴァルの祭典の一部として行われていたのですが、時には町を訪れる高名な賓客の歓迎イヴェントとして開かれることもあったとのことです。


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       カナレット 「イートン・カレッジ」(1754年頃の作品)
 イートン・カレッジはイギリスの有名な私立の学校で、多くの有名人を輩出しています。


V スペイン絵画の発見


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    フランシス・デ・ゴヤ「ウェリントン公爵」
 スペインを救ったイギリス将校の英雄。ゴヤが描いた姿は、戦いが終わってやや疲れている自然な表情ですが、それをご本人は気に入らず、描き直しのあとがかなりあると展覧会の説明板に書かれていました。


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       エル・グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」
 エル・グレコは、大好きな画家のひとりです。この絵は、イエス・キリストが祈る者のためにある神殿で、生贄用の動物の売買や両替をしていた商人たちを追い出している絵だそうです。イエスの厳しい表情が好きです。


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       ディエゴ・ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」
 ベラスケスが19歳の時に描いた絵だそうです。「宗教的主題に描かれた、泥臭くリアルな庶民の生活」なのだそうです。


ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」と「窓際に身を乗り出した農民の少年」」.jpeg
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」と「窓際に身を乗り出した農民の少年」
ムリーリョも大好きな画家です。ムリーリョは聖人を描くとともに、庶民の子供の絵もたくさん残したとのことです。


Ⅵ 風景画とピクチャレスク


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    ジョン・コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」
  コンスタブルは風景画家で、この記念碑は同郷の偉大なる先輩画家を弔うものだそう。


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  ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」
ギリシャ神話に基づいたエピソードが描かれているらしいです。太陽の光の描写がすばらしい。


Ⅶ イギリスにおけるフランス近代美術受容


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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「アンジェリカを救うルッジェーロ」
 本作で描かれている場面は、16世紀の叙事詩「狂えるオルランド」内の物語が元となっていて、伝説上の生き物に乗っている騎士がルッジェーロです。


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     ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「西方より望むアヴィニヨン」
 コローがフランス南部アヴィニョンを訪れた時、描いた風景画。コローの風景画を観ていると気持ちが落ち着きます。


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          カミーユ・ピサロ 「シデナムの並木道」
 ピサロが、戦禍を逃れ訪れたロンドンで描いた、郊外の街並みだそうです。ピサロの風景画も本当にすばらしいです。


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    ピエール・オーギュスト・ルノワール「劇場にて(初めてのおでかけ」
 若い女性が初めて劇場デビューですね。初々しさが絵の色彩からも感じられます。手に持ったスミレは、この女性を表しているような、世間ずれしていない美しさを感じました。大好きな画家です。


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          エドガー・ドガ「バレエの踊り子」
  ドガのお気に入りの主題「オペラ座の踊り子」の肉体表現や構図に優れた作品とのこと。



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        クロード・モネ「睡蓮の池」
 モネは日本への興味が深い画家でした。自邸の睡蓮の池に、太鼓橋がかかっているモネお気に入りの構図だそうです。


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        フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」
 ゴッホの情熱がそそぎこまれた「ひまわり」。たくさん「ひまわり」の絵がありますが、このひまわりは、ゴーガンとの友情の証として描かれました。


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  ポール・ゴーガン「花瓶の花」
 これはタヒチの花なのでしょうか。この絵にとても惹かれました。色は鮮やかですが、暗さがあります。タヒチでの生活の「哀愁」が感じられます。


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   ポール・セザンヌ「プロヴァンスの」丘
 セザンヌが愛した南仏プロヴァンスの田園風景です。


 「この展覧会の展示は61点と、少ないと思われるかもしれないが、すべてが主役級。見終わった後は満足感でいっぱいになるはず」と国立国際美術館の方がおっしゃっていたそうです。
 見終わって、本当に満足しました。コロナが気になりましたが、やはり行ってよかったと思いました。

 皆さんはどう感じられましたか。お好きな絵はありましたでしょうか。
 私が特に好きな絵は、フェルメール「ヴァ―ジナルの前に座る若い女性」、ゴヤ「ウェリントン公爵」、ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」と「窓際に身を乗り出した農民の少年」、エル・グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」、ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」、
ルノワール「劇場にて(初めてのおでかけ」、モネ「睡蓮の池」、ゴッホ「ひまわり」、ゴーガン「花瓶の花」です。
 
 美術の記事は、とても時間がかかります。自分に美術的な知識が乏しいので、色々調べたり、写真をアップしたりするからです。半年に1回ぐらい書けたらいいですね。
 今はコロナ禍で、美術館に行くのも勇気がいるのですが、またいい展覧会があったら、足を運びたいと思っています。



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ゴッホ展2020 兵庫県立美術館 [アート・カルチャー]

 閉館していた兵庫県立美術館が、3/17から再開したので、意を決して3/19に行って来ました。チケット購入だけでも20分並ぶほどの大盛況。帽子、眼鏡、マスクの3点セット、肌身離さずに、何カ所かにおいてあるアルコール消毒剤で手を消毒しながらの鑑賞。

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     薔薇

 1880年、27歳の時に画家を志したファン・ゴッホ(Vincent van Gogh, 1853-1890)は、画業の初期にハーグ派の影響を受けました。特に、中心的な画家のひとり、アントン・マウフェ(Anton Mauve, 1838-1888)が縁戚関係にあったことから直接の指導を仰ぎ、その後、ハーグに移住して他の画家たちとも交流します。
 ヨゼフ・イスラエルス(Jozef Israels, 1824-1911)やヤコプ・マリス(Jacob Maris, 1837-1899)、マテイス・マリス(Matthijs Maris, 1839-1917)らマリス兄弟を中心としたこのグループは、街の近辺で出会う身近な風景を描きました。対象を正確に写し取るのではなく、示唆に富んだ筆致で仕上げた彼らの絵には、時としてスケッチのような趣が残されています。このように、細部ではなく印象を重視した手法をファン・ゴッホはまず身につけたのです。
(兵庫県立美術館サイトより)

 ゴッホは、画家になることを決心してから、独学で学び始めた。色彩理論や素描について描かれた本を読み、それを実践する場としてホルバインやミレーなどの過去の巨匠作品を模写した。(ゴッホ展図録より)


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   疲れ果てて         ファン・ゴッホ

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   ジャガイモを食べる人々   ファン・ゴッホ

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   器と洋梨のある静物     ファン・ゴッホ

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   白い帽子を被った女の頭部  ファン・ゴッホ
 
 ゴッホは農民画家として、上記の作品を描き、友人たちに披露したが、反応はそれほどよいものではなかったようです。

 この展覧会では、ゴッホが影響を受けたハーグ派の画家たちの絵も展示されていたのがとてもよかったと思う。私はなかなか観る機会がないからだ。その中から数人の画家の絵をご紹介します。


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   4頭の曳き馬       アントン・マウフェ
 

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   縫物をする若い女     ヨゼフ・イスラエル


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   街の眺め         ヤコブ・マリス


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   出会い(仔ヤギ)      マティス・マリス     


 これらの絵は、派手さはないがどの絵も、人間の温かみを感じることができると思う。

ー「『芸術は自然に付け加えられた人間だ』僕は芸術という言葉についてこれ以上の定義を知らない。」by ゴッホー弟テオへの手紙より抜粋ー


 1886年、ゴッホは弟テオを頼って突然パリに出た。ファン・ゴッホは、初めて目にする印象派の作品に大きく衝撃を受けるのだった。


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   陶器壺の花     アドルフ・モンティセリ

 モンティセリはゴッホがパリに出てすぐに心酔した画家だそうです。暗い背景と明るく鮮烈な花の色の対比、盛り上がった厚塗りに筆遣いなど、多くを彼から学んだとのこと。


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    花瓶の花        ファン・ゴッホ


 それまで写実主義的な絵を描いていたファン・ゴッホは、印象派の作品に大きく衝撃を受け、その明るい色遣いや筆触を取り入れるようになった。


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   エラニーの牛を追う娘   カミーユ・ピサロ

 大好きなピサロの絵の展示もありました。

ーピサロが言っていることは本当だ。色を調和させたり、また不調和にすることで生まれた効果は、思い切って強調しなければならない。ーテオへの手紙よりー


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   クールブヴォアのセーヌ河岸  クロード・モネ

 モネのすばらしい風景画です。何と美しいのでしょう。

ー……今や彼らの作品を見てきて、その一員でないにしても、印象派の絵のいくつかに大いに感服している。例えば、ドガの裸婦やクロード・モネの風景画なんかそうだ。-友人の画家リヴェンスへの手紙より-


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   水飼い場    ポール・ゴーギャン

ーデッサンについてゴーギャンが教えてくれたことに僕が多くを負っていること、それに彼が自然を愛するその方法を常に高く評価しているのは確かです。僕の意見では、彼は芸術家である以上に人としてすばらしいー友人の画家、ジョン・ピーター・ラッセルへの手紙よりー


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   タンギー爺さんの肖像   ファン・ゴッホ

 モンマルトルのテオとファン・ゴッホの住まいの近くにタンギー爺さんの画材屋があった。この店主は画家たちの面倒をよく見て「タンギー爺さん」と慕われていた。……(ゴッホ展図録より)

ータンギー爺さんのところに小さな部屋を借りて、かなりの数の作品をそこにおくことにした。(……)こうすることで、爺さんはいつでもとても簡単にきみの作品を飾ることになる。ブドウ畑や夜景の効果に使われている色遣いに、爺さんがどれほど夢中になっているか想像できるだろう。いつかきみにも、ぜひ彼の賞賛を聞いてほしいよ。-テオからの手紙よりー

 タンギー爺さんのことを、原田マハさんが「ジヴェルニーの食卓」という短編集に書いています。タンギー爺さんの人柄がリアルに感じられるように描かれていますので、ご興味があればどうぞ。


 南仏の光溢れる景色の中で、ファン・ゴッホは独自の技法を打ち立てていきます。自然を観察し、原色を使い、絵の具を厚く塗り重ね、風景や人々を描きとめました。
(兵庫県立美術館サイトより)


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   河岸の木々   ファン・ゴッホ


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   麦畑    ファン・ゴッホ


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   サン=マリー=ド=ラ・メールの風景  ファン・ゴッホ   


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   麦畑とポピー   ファン・ゴッホ


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   パイプと麦藁帽子の自画像  ファン・ゴッホ


ーそれに自分自身を描くことは簡単ではない。それは決して写真とは違う何か?それにほら、それこそが印象派がほかのものに特に勝っている点だ。それはありふれたものではない。人々は絵の中に写真よりもずっと深いところで類似したものを探している。-妹ウィルへの手紙よりー


 自らに起きた精神病の発作によって、1889年5月ゴッホは自発的にサン=レミの精神療養院に入った。けれども、制作する手をとめず次々と作品を産み出していった。


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   サン=レミの療養院の庭   ファン・ゴッホ
 この作品はとても美しく、大好きな絵です。


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   糸杉   ファン・ゴッホ


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   蔦の絡まる幹  ファン・ゴッホ


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   オリーブを摘む人々  ファン・ゴッホ


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   曇り空の下の積み藁  ファン・ゴッホ


 ゴッホは、1890年5月20日、パリ北部に位置するオーヴェール=シュル=オワーズに移った。そして旅館ラヴ―に宿泊し、神経系の病気を専門とするガシュ博士という理解者を得た。彼は同年7月29日、37歳で亡くなるまで、自分自身の芸術を追い求めた。


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   ポピー畑  ファン・ゴッホ (1890年オーヴェール=シュル=オワーズにて)


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   ガシュ博士の肖像  ファン・ゴッホ

ーガシュ博士はもう友達みたいなものだし、新しい兄弟のような関係にもなるだろう。僕らは身体的にも精神的にもたくさんの共通点がある。彼はとても神経質で風変わりで、新たな一派の芸術家たちと友情をはぐくみ、彼らのために可能な限り世話を焼いてやっている。-妹ウィルへの手紙よりー

ー旅から戻ると、きみからの手書きとエッチングを見つけた。(……)ガシュ博士のことはよく知らないが、ピサロ爺さんが彼についてよく話している。それに、きみの作品や考え方に理解を示してくれるような人がそばにいるというのは、心地よいことだろう。-友人の画家ゴーギャンからの手紙よりー


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   薔薇   ファン・ゴッホ 


 私は幸運にも、「ゴッホ展2020」を鑑賞することができました。本展は、ファン・ゴッホの画業の初期から、印象派の洗礼を受けて独自のスタイルを確立するまでを追っています。

 ゴッホの絵は以前からとても好きでしたが、彼がこれほどまでに努力家で、新しいことを吸収する精神を持った勉強家だったということは、知りませんでした。

 この展覧会のすばらしいところは、彼自身の絵画やドローイング約50点に合わせて、彼の絵の基礎になり、そして方向性を決定づけたハーグ派と印象派の作家たちの作品約30点も展示されたところだと思います。そして、弟や妹、友人たちに宛てた手紙の抜粋を、作品の横に展示したことも観るものの理解を深めたと感じました。

 これだけの準備をされたゴッホ展(上野の森美術館&兵庫県立美術館)の学芸員さんや関係者の方々に、感謝と尊敬の気持ちをささげたいと思います。心から、ありがとうございましたと申し上げます。

 本物には到底及びませんが、短くも豊かなゴッホの画家としての人生を、皆さんが彼の作品と言葉を通して味わってくだされば、とても嬉しく思います。




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浮世絵ねこの世界展(大阪) [アート・カルチャー]

 猫ブームに合わせて、猫の催しが多い昨今です。先日、大阪歴史博物館で「浮世絵ねこの世界展」を観てきました。会場に入ると、まず第1章の解説には、「猫は神様が創造した一番かわいい動物とも云われています」という一文があり、気をよくしました。


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 ネズミ除けとして大陸から持ち込まれたとされる猫は、江戸時代の頃にはすでに多くの人々の懐に潜り込み、広く親しまれるようになっていました。


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 歌川 広重   「名所江戸百景 浅草田圃酉の街詣」


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 月岡 芳年   「古今比売鑑 薄雲」

 浮世絵の題材にもしばしば取り上げられ、当時一大ジャンルであった美人画の片隅に登場してからは、擬人化され役者絵やおもちゃ絵の登場人物となって愛されたり、おどろおどろしい化け猫として人々の背筋を震えさせたりと多彩な活躍を見せます。


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 歌川 芳藤   猫の怪(猫絵で怪しい猫を描いています。よくご覧ください)


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 歌川 国芳   「流行猫の手まり」


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 歌川 国芳   「猫の当字」


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 歌川 国芳   「たとゑ尽の内」


 本展では、無類の猫好きで知られる歌川国芳(うたがわくによし)をはじめ広重(ひろしげ)、国貞(くにさだ)、豊国(とよくに)、英泉(えいせん)ら浮世絵師の作風の個性を楽しむことができます。特に国芳の浮世絵が圧倒的に多かったです。

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 歌川 国芳   「猫とねずみの酒盛り」
 これは、危ない人(猫)と酒盛りをする、考えなしの人(ねずみ)を風刺した絵らしいです。


 展覧会を通して、人々が猫とどう関わってきたのか、また人が猫にどのようなイメージをもっていたのかを読み解きます。また、大阪会場特設コーナーとして、飼い猫の取り扱いに関する古文書や江戸時代の土人形(つちにんぎょう)といった資料なども紹介されていました。


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 とにかく浮世絵だけでも、約150点もの展示がありました。浮世絵の美しさとそこに猫が描かれていることの面白さ、嬉しさに浸りました。帰りには足が棒になりました。でも、本当に満足感のある展覧会でした。暑い中を行ってよかったと思います。





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フェルメール展(大阪天王寺美術館) [アート・カルチャー]

 今月の12日が、大阪のフェルメール展の最終日でした。朝の用を済ませ、お昼前に、長蛇の列に並ぶのを覚悟で、「大阪天王寺美術館」へ急ぎました。この美術館は「あべのハルカス」の近くにあります。少し並びましたが、すぐに入館できました。

 フェルメールは、静謐な作風と、特徴的な光の表現で知られ、世界中を魅了する17世紀オランダの画家です。本展では、そのフェルメールの作品を、同時代のオランダ絵画とともに紹介していました。まずは、同時代のオランダ絵画を紹介します。


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 「手紙を読む女」  ハブリエル・メツー 1664- 年頃 
  これは、手紙を読む女性と、その召使が描かれていて、背景の海の荒れ模様が、手紙の内容を知らしめているとのこと。


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 「人の居る裏庭」  ビーテル・デ・ホーホ  1663-1665年頃


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 「本を読む老女」  ヘラウト・ダウ     1631-1632年頃
この老女の顔や服装、装飾品が大変精密に描かれている。高価な様の衣装やアクセサリーから、老女がお金持ちであることが、想像できる。
 

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 「家族の情景」   ヤン・ステーン     1665-1675年頃


 展示されていた同時代のオランダ絵画は、ネット上にも画像がなくて、ホームページ上もこの4点しか、表示されていませんでした。色々いい絵がありました。


 そして細い通路を抜けると、フェルメールの部屋です。照明を少し落とした部屋に、作品が浮かび上がっていました。今までの部屋とは違って、絵が光を放っているように感じました。
 他のオランダ絵画は、フェルメールの絵のように、それ自体が光を放っていると感じることはありませんでした。やはりフェルメールは特別だと思います。この記事の絵の写真では、はっきりわからないかもしれませんが、人物を浮かび上がらせるような手法は、フェルメールが確立させたのだろうと思います。



 ところで、現存するフェルメール作品は35点ともいわれていますが、本展では日本初公開となる「取り持ち女」など6点が集結。西日本では過去最大規模のフェルメール展でした。では年代順に観ていきましょう。


 フェルメール作品の中で、最も大きく、最初期作のひとつ。画中ではキリストが、家事を心配するマルタをよそに、座ってキリストの教えを聞こうとするマリアを讃えている。光と影の戯れ、人物の特徴づけ、幅広で厚く絵の具をのせた筆さばき。ユトレヒト派の画家からインスピレーションを受けたと考えられる。フェルメールにはめずらしい大きなサイズや主題から、特別な依頼を受けて制作されたものと推測される。

「マルタとマリアの家のキリスト」158.5×141.5 1654 - 1655年頃 
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 次の「取り持ち女」(日本初公開)は、宗教画から風俗画への転換期に当たる重要な作品で、画面の左端に描かれた男性はフェルメールの自画像であるという説が有力だそうです。
 初期作の1つである本作は、フェルメールがはじめて描いた風俗画。女性は今まさにお客から金貨を受け取るところです。彼女を明るく照らす光、表情や手の動きなど、後にフェルメールが確立する表現の萌芽がすでに見られます。

「取り持ち女」143×130 1656年
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 薄暗い室内に一人腰掛ける女性はリュートを抱え、弦をかき鳴らす。左手でペグをつまみ、音階を整えている。遠く窓の方に視線を向ける様子は、窓越しに何かを見つめているのか、それとも耳を澄まし、音を追うことに注力しているのか。机の上には楽譜らしきものが重なるように置かれ、壁には、ときに絵の中で、愛する人が遠い彼方にいることを示唆する地図が描き込まれている。

「リュートを調弦する女」51.4×45.7    1662 - 1663年頃
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 17世紀のオランダでは郵便制度の発達に伴い手紙でのやり取りが盛んに行われました。毛皮付きの黄色い上着姿の女性は、机に向かい羽ペンを走らせている真っ最中である。ふと筆を休めた彼女は、絵の前に立つ我々を見つめるかのようにこちらに顔を向けます。穏やかな光の中で優しく微笑む女性。耳元の真珠のイヤリングに光の粒が輝く。当時、人々が憧れ、親しんだ手紙をめぐる情景を、フェルメールは美しい女性像を通じて描き出しています。 私ココは、この絵の印刷版を買いました。これに合う額を見つけなくては。

「手紙を書く女」45×39.9 1665年頃
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 「恋文」は大阪展のみの公開。後期作のひとつである本作は、部屋の手前からまるで中を覗き込むように描かれている。 明るい室内でシターンを膝に乗せ、手紙を受け取る女主人。 訳ありげな表情を浮かべる女主人に、お手伝いの女性はいたずらっぽく微笑み、どこか親しげな雰囲気がただよう。 練り込まれた構図と物語性の高さが際立つ本作は、1971年、盗難の憂き目に遭うが13日後に発見され美術館に戻されたそうです。よくぞ戻ってきてくれましたね。そうでないと、今回観られなかったのですから。

「恋文」44×38.5 1669 - 1670年頃
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 幻想のような現実を描き出すことにおいて、フェルメール作品は、他に類を見ない芸術的なレベルに到達した。描かれる人物はしばしば寡黙で動きが少なく、絵画に厳粛でミステリアスな雰囲気をもたらしている。この絵画はフェルメール後期の最も独創的な作品のひとつ。召使いの女性が窓の外を眺めている間に女主人が手紙を書いている。床には、この時代のやりとりで使われたであろう赤い封印、スティック状のシーリングワックス(封蝋)などが落ちている。

「手紙を書く婦人と召使い」71/1×60.5 1670 - 1671年頃
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 世界屈指の人気を誇る画家フェルメールですが、熱狂ぶりが始まったのは、実は近年になってのこと。フェルメールは作品点数が少ないことから、美術ファンの間でもルーベンスやレンブラントほどには知られていませんでした。世界的なブームは、1995-96年に米国ワシントンとオランダのデン・ハーグで開かれたフェルメール展に端を発します。この展覧会でフェルメール人気が一気に広まったそうです。

 やはり最終日に行けてよかったです。でなければ、次はいつまとまったものが観られるのか、わかりませんから。ラッキーで幸せな1日でした。

 (なお、絵画の解説は、美術館のホームページによります。)






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東京旅行2 ビュールレ・コレクション(国立新美術館) [アート・カルチャー]

 次の日は国立新美術館の「ビュールレ・コレクション」を観に行ってきました。今回は地下鉄千代田線乃木坂駅から行ってみたら、すぐでした! 

 スイスの大実業家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956年)は、主に17世紀オランダ絵画から20世紀の近代絵画に至る作品を集めました。中でも印象派・ポスト印象派の作品は傑作が揃い、そのコレクションの質の高さゆえ世界中の美術ファンから注目されています。彼は武器商人として財を成し、それを絵画のコレクションに注ぎ込みました。(チラシ&サイトより)


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 コレクションはチューリヒ湖そばにある瀟酒なビュールレの自邸に飾られていました。彼の死後遺族が、長年暮らしたチューリヒに財団を設立し、作品を自邸の隣の邸宅に移し、1960年から個人美術館としてオープンさせました。ところが、盗難事件があり、今度新館が建てられるチューリヒ美術館に移管されることになったということです。それが完成するまでのあいだ、このコレクションは各国に貸し出される予定とのことです。この展覧会がすごいのは、コレクションの約半数は日本初公開の作品だからです。


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 ルノワール 「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」
 絵画史上最も有名な少女像ともいわれる作品です。いつまでも観ていたい、という人が多いので、すごい人だかりでした。


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 セザンヌ 「赤いチョッキの少年」
 セザンヌの肖像画の中で一番有名な絵だそうです。


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 モネ 「睡蓮の池、緑の反映」
 モネの大回顧展がチューリヒで開催されたときに、ビュールレがモネの遺族から購入したのだそうです。スイス国外に初めて貸し出されることになった4メートルを超えるモネ晩年の睡蓮の大作。撮影OKでしたので、自分でも撮ってみました。

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 アングル 「アングル夫人の肖像」(日本初)
 アングルの奥様、なんてきれいな人なんでしょう。見惚れますね。


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 ルノワール 「アルフレッド・シスレーの肖像」(日本初)
 ルノワールによるシスレーの肖像というだけですごいと思いました。


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 アントーニオ・カナール(カナレット)「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂」(ヴェネツィア)
 明るく輝く水と細かい描写が美しいです。


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 モネ 「陽を浴びるウオータールー橋」(ロンドン)(日本初)
 モネはターナーの作品に感銘を受けたそうです。光にあふれていますが、霧がかっているところがロンドンですね。


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 ドラクロワ 「モロッコのスルタン」(日本初)
 1832年 ドラクロワはフランスの使節団によるモロッコ訪問に随行し、同国のスルタンに謁見したそうです。異国情緒漂う絵です。いい絵ですね。


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 ピサロ 「ル-ヴシエンヌの雪道」(日本初)
 普仏戦争前の平和な日常風景。こういう景色は実際にはもう見られないでしょうね。


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 シスレー 「ハンプトン・コートのレガッタ」(日本初)
 夏場のボート遊び。いかにもイギリスという風景。


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 モネ 「ジヴェルニーのモネの庭」
 モネは、なくなるまでの43年間ジヴェルニーに住み続けました。


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 マネ 「ベルヴェの庭の隅」(日本初)
 モネとマネの絵はかなりタッチがちうがうのが、2枚を比べてみてよくわかりました。


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 ドガ 「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」


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 ルノワール 「泉」 (日本初)
 65歳のルノワールの作品で、リウマチで苦しんでいたとは思えないみずみずしさですね。


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 セザンヌ 「自画像」 (日本初)


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 セザンヌ 「庭師ヴァリエ(老庭師)」 (日本初)
 ヴァリエは最後のモデルで、この絵は未完だそうです。


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 ゴッホ 「花咲くマロニエの枝」
 なんてきれいな色なんでしょう。それに背景のブルーが細かく絵がかれ、白い花が印象的に見えます。


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 ゴッホ 「日没に種まく人」
 構図といい、すばらしいの一言です。


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 ゴーギャン 「贈りもの」 (日本初)
 

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 ロートレック 「コンフェッティ」 (日本初)
 コンフェッティはカーニバルの時に使用される紙吹雪のことだそうです。


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 ブラック 「ヴァイオリニスト」
 なるほど、ブラックの目を通すと、ヴァイオリニストはこんな風にみえるのですね。


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 ピカソ 「花とレモンのある静物」 (日本初)
 いい絵ですね。レモンの黄色が鮮やかで、絵を引き立てていると思います。


 この後美術館のB1にある「カフェテリア カレ」でお食事しました。

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 この日はかなりの寒さだったせいか、人が少なかったので、お料理も大盛りで出てきたので、びっくりしました。(*_*; これはドラクロアが最も大きな影響をうけた「モロッコ」の名物料理だそうです。クスクスと牛肉の煮込みがよく合って、とっても美味でした。@1200円です。




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ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(京都国立近代美術館) [アート・カルチャー]

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 ファン・ゴッホ(1853-1890)と日本の関係に焦点をあてた展覧会。ファン・ゴッホが日本に関する文献や浮世絵を通して思い描いた理想郷としての〈日本〉と、日本の芸術家や知識人による聖地オーヴェール巡礼を通して築かれた〈ゴッホ〉という夢の交差をひも解き、今もなお絶大な人気を誇る画家の魅力を紹介します。(チラシの解説より)


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 「花魁」 1987年
 これは渓斎英泉の浮世絵をとても魅力的に模写しています。周囲の竹やガマ、蛙などは別の浮世絵からの引用だそうです。


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 「画家としての自画像」 1987年
 きれいな色ですね、真面目そうな表情、いい絵だと思います。


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 「雪景色」
 この風景は私はちょっと日本の冬景色のように感じたりして、好きな絵です。


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 「アイリスの咲くアルル風景」 1888年
 手前のアイリスが生命力あふれるタッチで描いてあって、真ん中は太い点描、その後ろにまた木がありすばらしいですね。本物の絵を観ると写真では感じられない迫力と力強さを感じました。


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 「夾竹桃と本のある静物」 1888年 (日本初公開)
 静物もゴッホらしさがあふれている絵だなと思います。力強い静物画ですね。


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 「ポプラ林の中の二人」 1890年 (日本初公開)
 林の中の静けさが伝わってきます。カップルの二人の会話を聴いてみたいです。

 
 あわせてコレクション・ギャラリーでは京都限定企画として、大阪を拠点に活躍する現代美術家・森村泰昌によるファン・ゴッホ関連作品や他の色々な画家のゴッホにちなんだ作品がありました。

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 「寝室」1888年
 この絵画をもとにつくった実物大のゴッホの寝室が展示されていておもしろかったです。森村泰昌さんの作品です。

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 「ファン・ゴッホ兄弟のお墓」

 テーマが面白くていい展覧会でした。改めてゴッホの絵画の魅力に気づくことができました。





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フランス近代絵画と珠玉のラリック展(ユニマットコレクション) [アート・カルチャー]

 神戸の六甲アイランド公園内にある神戸市立小磯記念美術館で「フランス近代絵画と珠玉のラリック展(ユニマットコレクション)」を開催しています。ユニマットグループというのは、オフィスコーヒーや介護、リゾートなどの事業を幅広く展開している会社だそうで、その創業者、高橋洋二氏が長年にわたって収集した美術品の中から選りすぐりの精華を紹介する展覧会です。

 バルビゾン派、印象派、エコール・ド・パリの画家たち、それにアール・デコのルネ・ラリックのガラス工芸のすばらしい作品が揃っていました。

 バルビゾン派のミレー、コロー、ドービニーの絵は風景画が主で、その静かな美しい風景に心が落ち着いてきました。その中でジャン=フランソワ・ミレーの「犬を抱いた少女」

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 目の大きな可愛らしい少女で品のあるたたずまい。

 バルビゾン派の画家の風景画がたくさんあって、その風景の中で静かに座って瞑想しているような気分になりました。画像のアップができないのが残念です。


 19世紀のサロンで活躍したジャン=ジャック・エンネルの「マグダラのマリア」はすばらしく美しい絵でした。心惹かれてしばらく足をとめました。

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 自然体のポーズが女性の美しさを引き立てているようです。


 印象派の画家の絵もかなりありました。次の絵はエドガー・ドガの「4人の踊り子たち」

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 そしてオーギュスト・ルノワールの「母子像(アリーヌと息子ピエール)」

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 これは柔らかい色彩が、ルノワールの妻と息子への限りない愛情をあらわしているような、素敵な作品です。


 エコール・ド・パリのアメデオ・モディリアーニの「ルニア・チェホフスカの肖像」

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 モダンで個性的な絵ですね。いつまで経っても古さを感じません。


 藤田嗣治の「長い髪のユキ」です。

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 ちょうどフジタとユキが結婚したばかりの時の絵で、ユキの透き通るような美しさが魅力的です。

 同じくフジタの「バラ」

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 枯れかけているバラのようですが、惹きつけられる絵です。
 このほか、ユトリロやデュフィのいい絵もありました。

 絵画作品だけでなく同じコレクションから、アール・デコを代表する工芸家ルネ・ラリックのガラス作品も27点展示されていました。置物、花瓶、燭台、水差し、鉢など。次の作品は「立像 笛奏者」です。

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 それから、ラリックのお嬢さんをモデルにした置物です。

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 とても美しい作品の数々でした。絵画といい、ガラス作品といい、どれもこれもいいものばかりで、満足感の高い展覧会でした。


 そして、小磯良平作品も違う展示室に15点公開されていました。

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 自画像

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 マヌキャン

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 踊り子

 小磯はドガの影響を受けて、踊り子の絵をたくさん残しています。

 台風の影響で雨がかなり降っていたので人も少なく、本当にゆっくりといい時間を過ごすことができました。





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miniなできごと17「スラヴ叙事詩」 [アート・カルチャー]

 4月末に国立新美術館の「ミュシャ展」へ行って来ました。全く何のインフォメーションもなしに行ってきたんですが、すばらしい展覧会でした。とにかく絵の大きさにびっくりしました。(*_*;
6m×8mとか、4m×5mなどというサイズの巨大な油絵が20枚もあったんですよ。こんなにすごい美術展はそうそう見たことがないと感動しました。


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 原故郷のスラブ民族


 1911年、ムハ(ミュシャ)はプラハ近郊のズビロフ城にアトリエを借り、晩年の約16年間を捧げた壮大なプロジェクト《スラヴ叙事詩》に取り組みます。故郷を愛し、人道主義者でもあった彼は、自由と独立を求める闘いを続ける中で、スラヴ諸国の国民をひとつにするため、チェコとスラヴ民族の歴史から主題を得た壮大な絵画の連作を創作したのです。


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 クロムニェジシーシュのヤン・三リーチ


 当初、《スラヴ叙事詩》は、本作を美術館に常設展示することを条件にプラハ市に寄贈することになっていました。 チェコスロヴァキア独立10周年にあたる1928年には、19点がプラハのヴェレトゥルジュニー宮殿で公開されました。


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 ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師


 未来の世代のためにという画家の願いも空しく、若い世代からは、保守的な伝統主義の産物だとのレッテルを貼られてしまいます。さらに、経済危機や複雑な政治状況が追い打ちをかけ、予定されていた《スラヴ叙事詩》展示のための美術館も建設されることはありませんでした。画家の没後、第二次世界大戦が終結すると、この連作は、画家の生まれ故郷近くのモラフスキー・クルムロフ城に寄託されます。ようやく作品が現在展示されているプラハのヴェレトゥルジュニー宮殿に戻されたのは、2012年のことでした。


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 聖アトス山


ということで、絵が認められ公開されるまでにも、色々なエピソードがあったんだと思い、感慨深かったです。この巨大な絵画を一枚描くだけでも、ものすごいエネルギーと忍耐が必要だったことでしょう。それが20枚もあったので、圧巻でした。ミュシャのスラヴ民族に対する深い愛と情熱をかんじ、胸が熱くなりました。

 次の写真は私がケータイで撮ったものです。
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 この日は、他にも美術館を2館まわって帰途につきました。本当に観に行ってよかったです。また東京へ行きます。Love Tokyo♡



 
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拝啓 ルノワール先生 ―梅原龍三郎が出会った西洋美術 [アート・カルチャー]

 あべのハルカス美術館で「拝啓ルノワール先生」展を観てきました。ここはお気に入りの美術館です。アクセスがいいし、天井が高いのが好きです。

 本展は、オーギュスト・ルノワールと梅原龍三郎の作品だけでなく、梅原画伯が蒐集した作品、彼と親交のあったピカソやルオーらの作品約80点により、近代絵画における東西の交流を紹介しています。とても見ごたえのある面白い企画の展覧会でした。


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 梅原画伯「バラ、ミモザ」


 絵からもわかるように、梅原龍三郎はその豪快な性格から“画壇のライオン”と呼ばれていたそうです。パリでは、安井曾太郎、津田青楓に迎えられ、当初は彼らと交わるがすぐ、高村光太郎や山下新太郎らとも知り合い交流しました。


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 梅原画伯「読書」


 梅原龍三郎はサロン・ドートンヌなどで物議をかもしていたジョルジュ・ルオーに注目。作品を購入します。そしてついにピエール=オーギュスト・ルノワールに出会った梅原画伯は、ルノワールを師と仰ぎ、師との対話や制作現場から多くを学び、ルノワールの家族たちとも親密な関係を築いていきました。会場には彼あてのルノワールの自筆の手紙なども展示されていました。ルノワールの直筆がみれるとは思っていなかったので、とても感激しました。


 ルノワールの「パリスの審判」とそれを模写した梅原画伯の「パリスの審判」です。二人の個性の違いがはっきりと見てとれますね。どちらもすばらしい作品だと思います。

 ルノワールの「パリスの審判」
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 梅原龍三郎の「パリスの審判」
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 西洋絵画の模倣ではない、独自の油彩画として確立した梅原画伯の画業がよくわかりました。さらに、優れた鑑識眼を持つ「蒐集家」梅原龍三郎が愛蔵したルノワール、ピカソ、ルオーらの作品がまとめて展示されているのもこの展覧会の興味深いところでした。以下はその一部です。

【ルノワールの作品集】
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 麦藁帽子の若い娘

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 バラ

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 バラ色のブラウスを着けた女
 
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 勝利のヴィーナス(ブロンズ像)


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 ヴェールを持つ踊り子(ブロンズ像)

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 横たわる浴女

 【ジョルジュ・ルオー】
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 エバイ(びっくりした男)

 【ポール・セザンヌ】
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 リンゴとテーブルクロス

 梅原龍三郎の絵はあまり好きではなかったのですが、この展覧会を見てすばらしい画家だなと思いました。またどこかで梅原画伯の展覧会があったら、観に行きたいです。



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バロックの巨匠たち展(姫路市立美術館) [アート・カルチャー]

先日、兵庫県姫路市の県立歴史博物館で、落語家の桂米朝さんの展覧会があり行って来ました。


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 高座の米朝師匠

「人間国宝桂米朝とその時代」展です。米朝さんの仕事(上方落語の復興)がどんなに偉大な業績であったかを思い知りました。今は息子の米團治(長男)さんがいい落語家になってこられました。その御兄弟がこの米朝展が催された歴史博物館の学芸員中川渉さん(三男)で、渉さんの企画でこの展覧会ができたというわけです。3月20日まで展示しています。

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 文化勲章受賞記念の写真と米朝さんのアンドロイド
 
 米朝さんのアンドロイドロ、そっくりです!

 このとき、ちょうどすぐ隣の市立美術館で「バロックの巨匠たち」展をやっていたので、ついでに観てきました。


 この展覧会はバロックの絵画を、16世紀末から18世紀初頭にかけて西洋の広汎な地域に表れた多様な美術様式ととらえて、この展覧会ではイタリア絵画、オランダ絵画、フランドル絵画、ドイツ・フランス・スペイン絵画の44点が展示されていました。

 オランダの代表はやはりレンブラントですね。その精緻な描写力に改めて魅せられました。しかもこの女性の顔がほんのりとした血の気の通った顔色で、まるで息遣いが聞こえてきそうな気がしました。普通の古典絵画とは違うなと感じました。


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レンブラント・ファン・レイン 「襞襟を着けた女性の肖像」


 次はブリューゲルの風景画ですが、色が美しく人々も動きがありますね。ブリューゲルは親子の画家だったのでしょうか。よく知りませんが……。

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ピーテル・ブリューゲル(子) 「フランドルの村」


 かの有名なルーベンスの絵です。やはりキリストを題材にした絵画が多いですね。このキリストはいばらの冠をかぶせられているのですが、穏やかな人格がその表情からうかがえました。

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ベーデル・パウル・ルーベンス 「十字架への道」


 美しい静物画(?)です。ブットーとは仏頭だと思います。子供がブットーに花冠をささげているところです。左右対称っぽいですが、少しづつ違いますね。

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ヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘーム  「花束と果実とブットー」

 
 何と美しい女性なんでしょう!昔から美人は絵になりますね。ずっと見ていたかったです。ドレスも素敵でした。

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パオロ・ヴェロネーゼ  「女性の肖像」


 ムリーリョの聖母子、静かな絵ですがとても魅力的だと思います。イエス・キリストもマリア様もとても人間的に描かれていますね。

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バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 「聖母子」

 
 こちらもブリューゲルの絵画です。キリスト教のことをあまり知らないので、こういう時ちょっと恥ずかしい気もします。

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ピーテル・ブリューゲル(子) 「東宝三博士の礼拝」

 バロックの絵画は古典絵画と似ているのですが、もっと色彩が美しく人間味がある感じがしました。


 このあと明石へ行って、大学の後輩の案内で「明石焼き」を食べて帰りました。明石には「魚ん棚」という有名な商店街があって、明石港でとれとれの魚介類が買えます。
 
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 JR明石駅と魚ん棚商店街

 明石焼きは別名玉子焼きともいいます。タコ焼きと似ているのですが、中にはタコだけが入っています。それをお出汁に付けて、おネギや紅ショウガととともにいただきます。

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 卵がとてもいいお味で、それが出汁とあいまって、薬味とともにいただくと、えもいわれぬ美味しさでした。大阪にも明石焼きの店がありますが、全く違う味でした。やはり本場でいただかないとね。ということで、充実した一日でした。





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