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ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen ) [外国映画]

 このミュージカル映画のテーマは「心の病」です。これは数々の賞を受賞したブロードウェイミュージカルを映画化したものです。一昔前のミュージカルだったら、心の病をテーマにしたものは考えられなかったと思います。恋愛や文芸作品やファンタスティックなものがテーマでした。「ディア・エヴァン・ハンセン」は、とても現代的なテーマの作品です。


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 学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいる少年エヴァン(ベン・プラット)は孤独だった。彼は、カウンセラーから自分自身に手紙を書くようにと勧められる。「Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を自分に書いて、自身を見つめなおすのだ。


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  コナー・マーフィー(コントン・ライアン)&エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)


 ある日エヴァンは、自分宛てに書いた手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。この手紙は、エヴァンの心の声が書かれた、誰にも見られたくないものだった。コナーは、友人や家族に対して、大声で威喝したり、怒鳴ったりする性質をもっていて、いつも感情が安定しない若者だった。
 エヴァンは手紙を取り返すことができなくて、困っていた。ところが後日、エヴァンは校長から呼び出され、コナーが自ら命を絶った事を知らされる。

 悲しみに暮れるコナーの両親は、息子が持っていたエヴァンの手紙を見つけ、彼とエヴァンが親友だったと思い込む。

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コナーの家族 義父ラリー(ダニ・ピノ)母シンシア(エイミー・アダムス)、妹ゾーイ(エイトリン・デバー)

 エヴァンはコナーの家族をこれ以上苦しめたくなくて、思わず話を合わせてしまう。そして促されるままに語った「想像上のコナーとの思い出」は学校の同級生や先生などの心を打ち勇気を与え、SNSを通じて世界中に広がっていく。


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 エヴァンの嘘の話に感動して、心の病を抱えた人を助ける色々なプロジェクトを、立ち上げる同級生たち

 思いがけず人気者になったエヴァンは心の底では良くないと思いながらも、コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)とも仲良くなり、充実した学校生活を送るが、思いやりでついた嘘は彼の人生を大きく動かし、やがて事態は思いもよらぬ方向に進む。


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 コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)&エヴァン(ベン・プラット)
(ゾーイはかわいいので、エヴァンは気に入っていたのだが、やはりエヴァンが嘘をついていたのがあだとなって、別れてしまう。まぁ、嘘から出たまこと的なことがあったのですが……。)

 映画化にあたり、主演のエヴァン・ハンセン役を、ミュージカル版と同じくベン・プラットが務めた。劇中曲で唯一ステージ上でライブ演奏された「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」の歌唱シーンが収められている。この曲がすばらしいし、ベン・プラットの歌声も本当に美しい。
 これは、エヴァンが多くの学生らが集まる講堂で行われたコナーの追悼式の舞台上で、「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」をささやき声で歌い始めるシーン。同曲は、グラミー賞を獲得したミュージカルアルバムの代表曲だ。歌詞にもあるように「どんなに孤独だと感じても、決して見捨てられたわけじゃない」というメッセージを届ける重要な場面となっている。

 今までなら、こういうテーマの作品は普通の映画にしかなりえなかったと思う。しかしミュージカルに仕立てて、セリフの途中で歌いだすのが、少しも不自然ではなかったのが、すごいと思った。

 さて、エヴァンはその後どうなったのか。彼はコナーの両親に気に入られ、大学入学の資金を出すといわれるが、エヴァンの母親でシングルマザーのハイディ(ジュリアン・ムーア)が自分のプライドにかけても、それはできないと断る。
 個人的には、シングルマザーのハイディの気持ちはわかる気がします。自分の息子のことは自分が責任をもって解決してやりたいという思いでしょう。


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    ベン・プラット&エヴァンの母親ハイディ役のジュリアン・ムーア

 それで一時彼ら二家族は、ちょっと嫌なムードになるが、SNSでエヴァンの話が拡散したことによってSNS上に、コナーが診療所のグループワークで静かにギターを弾く動画が誰かから挙げられ、コナーが感情の激しい性格を、何とかしようと努力していたことがわかる。二家族は和解し、事態は良い方向へと向かうのだった。

 この映画がミュージカルではなくて、普通の作品になっていたら、かなり深刻なものになるだろうと思う。それをミュージカルにしたので、歌のお蔭でシビアな作品にはならなかった。観客にとっては観やすいものになっているのではないだろうか。
 そして劇中で歌われる孤独な人々への応援歌「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」はとても心にしみる歌詞とメロディーでした。歌の力を感じるいい映画でした。
  
「YOU WILL BE FOUND」

 (歌の埋め込みが遅れてすみませんでした。 ココより)

原題:Dear Evan Hansen  監督:スティーブン・チョボスキー  出演:ベン・プラット、
ケイトリン・デバー、 ジュリアン・ムーア、 エイミー・アダムス、 ダン・ピノ、
コントン・ライアンetc.
2021年製作/アメリカ

  

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007 ノータイム・トゥ・ダイ 2021 [外国映画]

 ようやく日の目をみた「007ノータイム・トゥ・ダイ」ですが、6代目ジェームス・ボンドをを15年間演じてきたダニエル・クレイグが、いよいよ見納めとなります。


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 このポスターの、ジェームス・ボンドの背景にあるロケ地は、イタリア南部バジリカータ州に位置する「マテーラ」で、石器時代から人が暮らす洞窟住居が建ち並ぶ風光明媚な世界遺産の街。もちろん、ボンドはバイクで縦横無尽にこの美しい街を走り回ります。


 前作「スペクター」では、孤児のジェームズと兄弟として育てられた男が黒幕だったことが判明したが、そこに殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィン(ラミ・マレック)との因縁も絡みあい、物語の展開は、観客の予想をはるかにこえるものとなる。


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 現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたボンドだが、CIA出身の旧友フィリックス・ライター(ジェフリー・ライト)が助けを求めにやってきたことから、またもや平穏な日常は終わりを告げ、新たな敵と対決することとなる。


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 ボンドの使命は、誘拐された科学者の救出で、新たな最新技術を有した黒幕を追うことになる。その前に「カジノ・ロワイヤル」でボンドと愛し合ったが、最後に亡くなってしまう恋人ヴェスパー(エヴァ・グリーン)のお墓参りをするシーンが出てくる。こういう感傷的なシーンは、今までになかったが、ここからが007アクションの始まりだった。


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 今回の007の恋人は、マドレーヌ(レア・セドゥー)。彼女は「007 スペクター」で初お目見えした。007の仇敵Mr.ホワイトの娘だが、ボンドに危ういところを助けられる。それから彼女の心には007が住み着いてしまうのだった。

 レア・セドゥ―は、前回はモデルっぽい美しさだったが、今回はかわいい女の子のお母さんとして登場する。ジェームス・ボンドにまたもや危ないところを助けられるのだが、彼女は母親であり、彼の恋人であり、1人の女性であり、その表情も色々な風に変わるのが、とても魅力的だったと思う。

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 他のボンド・ガールもこの作品では、添え物的ではなく、大いに活躍していた。この中でも一番目立っていたのが、パロマという役を演じたアナ・デ・アルマス。

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   ジェームス・ボンドとパロマ(アナ・デ・アルマス)

 パロマはジェームスと同じM16に属する諜報部員。イブニングドレス姿で、機関銃をぶっ放すのがとてもカッコよかった。


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            アナ・デ・アルマス

 パロマ役のアナ・デ・アルマス以外にも、ナオミ・ハリスやラシャーナ・リンチなどの女優たちも活躍していた。007に最新の武器を提供したり、コンピューターを駆使してジェームスを手助けする「Q」のベン・ウィショーも健在だった。そして、007のボス「M」のレイフ・ファインズも。

 そして後半に、あのクイーンの映画「ボヘミアン・ラプソディー」でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックが、殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィン役で登場する。


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          サフィン(ラミ・マレック)

 見るからに不気味な人物で、ちょっとゾッとするような役柄だった。フレディ・マーキュリー役とのギャップが大きすぎな感じ。

 そしてマドレーヌ(レア・セドゥ)とその娘が、サフィン(ラミ・マレック)の囚われの身となり、
007がサフィンと対決し、ものすごい戦いが繰り広げられるのだった。007はいったいどうなるのか、そしてマドレーヌと幼い娘の運命は……。ブルーアイを持つ女の子はいったい誰の子なのだろうか。


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 ダニエル・クレイグのジェームス・ボンドとこれでお別れかと思うと寂しい気がします。それほど、彼のボンドはカッコよく、不死身の男を体現していました。

 やはり007シリーズはおもしろいですね。色々な要素が入っている玉手箱のような映画ではないでしょうか。風光明媚な風景、カッコいいアクション、最新のスタイリッシュな車、女性との恋の駆け引きなど、ワクワク感と、ストーリーも予想できないような展開で、他の映画ではなかなか見られないほどよくできていると思います。

 ダニエル・クレイグはアクションが得意なので、かなりシリアスな作品になりましたが、意外と女性との恋愛もちゃんと描かれていますよね。そういうところが楽しいです。ただのアクションだけではない、娯楽映画としての面白さです。

 また数年後に新しい007が登場するでしょう。いったい誰が新しいジェームス・ボンドを演じるのでしょうか。私は相当若い人だと期待しています。皆さんは誰が、新ボンドにふさわしいと思いますか。今人気が出てきている若い人か、それとも全くの新人か。色々考えながら楽しみに待ちたいと思っています。


原題:No Time to Die  監督:キャリー・ジョージ・フクナガ(「ビースト・オブ・ノー・ネーション」の日系アメリカ人)
出演:ダニエル・クレイグ、 ラミ・マレック、 レア・セドゥー、 ベン・ウィショー、 
ナオミ・ハリス、 ロリー・キニア、 レイフ・ファインズ、 アナ・デ・アルマス、 
ラシャーナ・リンチetc.
2021年製 アメリカ




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MINAMATA (ミナマタ) [外国映画]

 ジョニー・デップが製作・主演を務めた作品です。水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いています。

 私はずいぶん前にTVの水俣病のドキュメンタリー番組で、苦しむ人々や動物をの姿を延々と流しているのを観て、みるに忍びない気持ちになりました。

 この作品はジョニー・デップの主演なので、行かないといけない、行きたいという想いから、ある程度覚悟していったのですが、映像がとても美しく、水俣病の人々や動物のシーンはパッパッと瞬間的に映しているので、思っていたよりイヤな感じはしませんでした。


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 1970年代のニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたフォト・ジャーナリストのユージン・スミス(ジョニー・デップ)が「LIFE」の編集長ボブ(ビル・ナイ)に、自分の回顧展のオープニング・スピーチで、最高の写真家だとスピーチしてくれと頼んでいる。だが、ボブは断る。というのも、スミスの最盛期は終わり、今はお金もなく、酒に溺れる日々を送っていたからだった。

 そんなある日、日本のカメラマンと通訳のアイリーン[美波(みなみ)]がCM撮影のためユージンのスタジオにやってくる。

 ユージンはアイリーンから、日本の大企業チッソが、熊本県水俣市の海に流す工場排水が原因で、病に苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。


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         アイリーン(美波)とジョニー・デップ

 しかしユージンは第二次世界大戦のとき、沖縄戦の撮影のため来日し、大けがを負ったので、二度と日本には行かないと拒絶する。
 けれどもユージンは、アイリーンが置いていった水俣の写真を見て言葉も出ないくらい驚いた。そして翌日「LIFE」の編集長ボブに水俣の写真を見せ「特集記事」をと迫る。最初はユージンを拒んでいたボブも事の深刻さに気付き、ユージンの申し出を受けるのだった。


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       ビル・ナイとジョニー・デップ

 水俣市に到着したユージンとアイリーンを、松村夫妻(浅野忠信・岩瀬晶子)が自宅で温かく迎えた。


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       浅野忠信、 美波、 ジョニー・デップ

 松村夫妻の長女のアキコも、胎児性水俣病で、夫妻はチッソを訴え出ていたが、チッソ側は「脳性マヒだ」と主張して、何の保証もしていない。松村は胸の内を語ってくれた。でもユージンがアキコの写真を撮りたいと願いでたとき、松村は頭をさげるのみだった。


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    加瀬亮

 次の日、ユージンはチッソ闘争の中心メンバーの一人、キヨシ(加瀬亮)を紹介される。彼の息子シゲル(青木柚)も胎児性水俣病で、手足が不自由だった。しかし、シゲルはユージンのカメラに興味を示し、ユージンから貸してもらったカメラを手に、曲がった指先を駆使して、ユージンや海の風景を撮り始めるのだった。


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         ジョニー・デップ & 青木柚

 チッソ工場の前では、キヨシ(加瀬亮)と一緒に闘争の先頭に立つ山崎(真田広之)が演説していた。彼は同志たちに、「声をあげて世界に訴えよう」と呼びかけるのだった。


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      真田広之

 ユージンはアイリーンの協力で、海岸沿いに写真を現像するための小屋(暗室)を建てる。そして、二人はキヨシ(加瀬亮)とともに、チッソ水俣工場附属病院へ潜入し、水俣病ということで入院している、身体の変形やけいれんに苦しむ人々を撮影。さらに、ラボで動物実験レポートを発見し、チッソが15年前から廃水が水銀中毒を引き起こすと知っていたことを突き止める。


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 あるとき、チッソ工場の前で山崎(真田広之)の演説を取材していたユージンは、会社の職員に強引に社長(國村隼)の所へ連れていかれる。社長はユージンに5万ドルの札束と引き換えに、ネガを渡すように偉そうな態度で迫る。しかし彼は、その申し出を受けることは決してなかった。


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    ジョニー・デップ、 國村隼


 ユージンは買収されそうになったことに怒りが爆発し、自分の暗室小屋で、身を粉にして写真のネガを引き延ばして、水俣病の現実を写真に焼き付ける作業に没頭する。


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暗室での作業に没頭するユージン(ジョニー・デップ)とアイリーン(美波)

 ようやくネガも写真の現像も整い、作品の出来栄えにも確信を持ったユージン。しかしその夜、何者かが暗室小屋に火を放ち、全てのものが焼き尽くされてしまう。


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 ユージンの落胆は大きく、一度は帰国も考えるが、振り返ってみると今やユージンは、水俣の人々の苦しみを自分のこととして感じていたのだった。そのとき、何者かがユージンに封筒を渡しに来て、走り去っていった。封筒の中身は、焼けたはずのネガフィルムだった。

 ユージンは、最初に合った松村夫妻の長女のアキコを被写体とした写真を撮る決心をしていた。その写真は、後の世にも語り継がれる作品になった……。


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 本当にすばらしい映画だった。この映画については、水俣市は後援しないとか、熊本県は後援したとか色々な噂が流れていたので、水俣市で撮影できたのかなと疑問に思っていたところ、ロケ地は水俣ではなくセルビアとモンテネグロに70年代の水俣を再現したとのことだった。理由は、水俣の街そのものが、1970年代以降に大きく変化したためだった。

 このロケ地の映像がとても美しく、日本としか思えなかった。そして、水俣病の人々の映像を見せつけるようなことはせず、ほんの瞬間をつなぎ合わせたような映像を何度か見せただけだった。こういう見せ方は、さすが映画だなと思った。

 キャスティングが最高で、ジョニー・デップのうまさはもちろんのこと、ビル・ナイの編集長もよかったし(ジョニデとビル・ナイは「パイレーツ・オブ・カリビアン」で共演)、闘争のリーダーの真田広之の迫力ある演技、アイリーン役の美波も魅力的だった。その他の俳優たちも、誰もかれもが熱のこもったいい演技だった。

 この水俣病の事件を映画にすることで、皆がよりわかりやすく、そして見やすくこの戦いを理解できると感じました。

 そして人間の温かさや狡さ、親子の愛、男女の心が通じ合う瞬間などを映像は自然にみせてくれたと思います。

 エンドロールでは、MAN-MADE DISASTERS(人為的な事件)として、世界各地で起こった(起こっている)公害などが一覧表として流されます。今も様々な国で色々な人々が苦しみ闘っているのだということを知り、愕然としました。

 今作で、映画の力というものを、改めて感じました。本当にいい映画でした。音楽は坂本龍一さんで、彼は産業公害に強い関心を抱いている方なのだそうです。人の心を癒してくれるような美しい曲です。

(写真は「映画com.」からお借りしました)

原題:MINAMAYA  監督:アンドリュー・レヴィタス  出演:ジョニー・デップ、
真田広之、 美波、 加瀬亮、 浅野忠信、 岩瀬昌子、 青木柚、and ビル・ナイetc.
音楽:坂本龍一
2020年 アメリカ

 

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追想(Anastasia) (クラシックムービー) [外国映画]

 BSPで「追想」(アナスタシア)という映画を観ました。クラシック作品で、イングリッド・バーグマンとユル・ブリンナーの共演です。ロシア革命のとき、パリに亡命したといわれているロシア大皇女アナスタシアの話です。自分が本物のアナスタシアだと言い張る謎の女(イングリット・バーグマン)と、その女を利用しようとする男(ユル・ブリンナー)の物語です。
 イングリット・バークマンの美しさもさることながら、ユル・ブリンナーもなかなかいい俳優だったのだなと思いました。
 ストーリーも面白く、衣装、インテリア、ロケ地もすばらしかったです。たまにはクラシック作品をみるのもいいなと思いました。


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イングリット・バークマンvsユル・ブリンナー


 1928年、パリ在住のボーニン(ユル・ブリンナー)を首謀者とする4人の白系ロシア人は、ロシア革命のとき、独り亡命したという噂の大公女アナスタシアが生存していると宣伝、彼女を敵から救出する名目で旧貴族から資金を集め出した。


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         アンナとボーニン

 そして彼らは、セーヌ河に身を投げようとしたアンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)をアナスタシアに仕立て、ロシア皇帝ニコラス2世が生前、大公女のために英国銀行に預金した3600万ドルの金を引き出そうと企む。
 
 アンナは謎の女で、以前入院していたとき、自分はアナスタシアだと打ち明けたことがあった。しかし自分の過去を殆ど記憶していないのだった。ボーニンらの巧みな演出で、アンナはアナスタシアとして在パリの旧ロシア宮廷の要人たちに引き合わされるが、要人の1人は彼女を本物とは認めなかった。


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          ポール公とアンナ

 ボーニンは、アンナをポール公(大皇妃の甥)と対面させようとする。が、これには失敗した。そこで、ボーニンは、大皇妃(ヘレン・ヘイズ)の侍女を買収し、劇場でポール公とアンナを会わせ、これは成功した。ポール公はアンナをアナスタシアかどうかは疑ったが、彼女の美しさに惹かれた。

 次の晩もポール公に再び会ったアンナは、自分を(偽?の)アナスタシアでなく唯の女として扱って欲しいと打ち明けた。一方、ボーニンも、ポール公に自分の欲しいのはアナスタシアの金だけだと明けすけに話した。


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    劇場でのボーニンとアンナ


 経済力がなく、大皇妃に頼って生活しているポール公は、この話に乗り、大皇妃とアンナの対面に手を貸す。


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 大皇妃(ヘレン・ヘイズ)と面会するアンナ(イングリット・バークマン)

 大皇妃と会ったアンナは少女時代のことを聞かれ、ドギマギして帰ろうとするが……。


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       大皇妃とボーニン

 さて、アンナは本当のアナスタシア大皇女だったのだろうか。そして彼女はポールと結婚するのか、それとも……。

 現代の映画に比べ、のんびりしたところはあるが謎があり、アンナの運命がどうなるのか最後まで惹きつけられるストーリーだ。それに豪華な衣装やインテリアが目を引く。

 こうしてクラシックムービーを観ると、昔から主役も脇役にもいい俳優が居たのだということがよくわかる。主役のイングリット・バークマンとユル・ブリンナーはスターだが、大皇妃を演じたヘレン・ヘイズもとてもよかった。大皇妃という人物の、凛とした姿と立ち居振る舞い、そして人間としての大きさを余すところなく演じていたと思う。

 こういうすばらしい俳優たちに支えられて、映画界は今日まで脈々といい作品を創り続けてきたのですね。今は映画界も大変で、コロナのため休業せざるを得ないかもしれないけれど、これからもスクリーンで映画を公開し続けてほしいものです。また映画館に行けるようになったら、最新の映画を観に行こうと思います。

原題:ANASTASIA   監督:アナトール・リトバク  出演:イングリット・バークマン、
ユル・ブリンナー、 ヘレン・ヘイズetc.
1956年 アメリカ

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イングリット・バークマン:左、14歳のとき、 右、29歳のとき




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007 カジノロワイヤル(BS-TBS) [外国映画]

 毎週火曜日の21:00~23:00に、BS-TBSで映画007シリーズが放映されています。先日から、ダニエル・クレイグのジェームス・ボンドが登場しました。昔のシリーズも放映していたのですが、やはり新しいほうが何かとすごいですね。再見なのですが、何度見ても面白いです。


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 6代目ジェームズ・ボンドにダニエル・クレイグを迎え、イアン・フレミングによる最初の原作を元にジェームズ・ボンドが007になるまでを描くシリーズ第21作。脚本はポール・ハギスが参加。監督はマーティン・キャンベル。


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 ダニエル・クレイグは、歴代ボンドの中でスタント能力が非常に高いように思った。最初から、すごいシーンの連続。こんなに凄かったかなと思うぐらいだった。
 映画の前半部分は、血だらけになりながらの、かなりハードなアクションで、どちらかというと、ハードボイルドな感じだった。ダニエル・クレイグの容姿が、前ボンド役のピアーズ・ブロスナンと違って、甘さがなく、ボディービルダーのような体つきも、今までの007のイメージとは違っている。


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 ジェームス・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、最初の任務で、世界中のテロリストの資金源となっている“死の商人”ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)の存在を突き止める。高額掛金のポーカーで、資金を稼ごうとするル・シッフルと勝負するため、モンテネグロに向かうボンドの前に、国家予算である掛金1500万ドルの監視役として財務省から送り込まれた美貌の女性ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)が現れる。


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    エヴァ・グリーン


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    カジノでのJ.ボンド
 
 まずは、ボンドと対峙する大悪人ル・シッフルだが、これをマッツ・ミケルセンが演じている。だから、その怖さと極悪ぶりが、普通ではないのだ。やはり悪役がよくないと、映画は面白くならない。


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    マッツ・ミケルセン


 そして007シリーズになくてはならない美女登場から、いっきに話がおもしろくなる。エヴァ・グリーンがすばらしく美しく、最初はお互いに頑なだった態度が、だんだんとロマンチックな関係に変わっていくところが、素敵だった。


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 カジノのある豪華ホテルで、彼女の着るドレスがとてもセンスがよかったし、ジェームス・ボンドが着ているスーツも、最高に仕立ての良いかっこいいタキシードだった。


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 この2人の関係の描き方が、今までのシリーズと違ってかなり丁寧で、ボンドとヴェスパーが本気で愛し合っているという雰囲気を出すのに成功していたと思う。


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 アクションのほうもすごかったし、またボンドが捕まって拷問されるところも、ハードボイルドな感じだった。それに、ジュディ・デンチのMも健在。

 これからダニエル・クレイグのボンドが続く。BS-TBSで今週11月17日(火)21:00~23:00「007 慰めの報酬」である。日頃のウサを吹き飛ばし、スカッとしましょう!

原題:CASINO ROYAL 監督:マーティン・キャンベル 出演:ダニエル・クレイグ、 
エヴァ・グリーン、 マッツ・ミケルセン、 ジュディ・デンチetc.
2006年製作 イギリス・アメリカ・チェコ





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オン・ザ・ロック [外国映画]

 ソフィア・コッポラ監督の新作で、ビル・マーレイが主演、2人が長編映画で組むのは、2003年の「ロスト・イン・トランスレーション」以来。新作「On the Rocks」(邦題は「オン・ザ・ロック」)は、昨年11月に複数年契約を結んだ米アップルとA24が共同製作した。


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 ニューヨークに暮らすローラ(ラシダ・ジョーンズ)は、いつも育児や仕事に追われ、自分を見失ってしまいそうだった。夫も忙しくて出張が多く、ローラの誕生を忘れてしまう始末。ローラは、新しく夫の会社に入社した女性と夫が、よく同行しているのを知り、彼の行動にうたがいの目をむける。そして、往年のプレイボーイである父フェリックス(ビル・マーレイ)といっしょに、夫(マーロン・ウェイアンズ)の尾行を開始するのだ。フェリックスは愛車の真っ赤なフィアット(尾行には不向き?)を運転し、2人はキャビア&クラッカーをかじりながら、双眼鏡で夫を追いかける。そして、ときどき車の中で、口笛を吹く。もう、笑っちゃいますよ。


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 ビル・マーレイのそこはかとない、ユーモラスな感じが以前から好きだった。この映画のビルは、元プレイボーイらしく、すごくお洒落。それに悩んでいるローラを案内するバーもとっても素敵。このバーへ行ってみたいです。


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 フェリックスは顔が広く、誰とでもすぐ友達になるタイプ。尾行の時も、スピード違反してポリスにつかまるが、そのポリスの父親とフェリックスが友達とわかり、無罪放免になる。

 そうこうしていると、夫ディーンがメキシコに海外出張をすることになり、ローラはフェリックスにそそのかされて、隠れて夫の出張先に行く。そして……結末はいかに?


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ローラ(ラシダ・ジョーンズ)&ディーン(マーロン・ウェイアンズ)

 なかなか面白い映画だった。ソフィア・コッポラのニューヨーク愛が感じられ、アップタウンのパーティやダウンタウンのホットスポットを色々楽しむことができる。ウディ・アレンとはまた違ったカメラアングルだし、ストーリーはコメディぽいが、女性の悩みをうまく表現していた。
 
 ローラ役のラシダ・ジョーンズは、ストライプシャツや無地の服を着ていてさえない感じなのだが、これは人生にちょっと疲れていて、ワクワクすることがない女性を表現しているのだろうと思った。でも若いモデルみたいに細すぎることもないところが、私は好きだ。

 夫役のマーロン・ウェイアンズがとても素敵だった。スーツの着こなしもよくカッコイイ男性だ。

 監督のソフィア・コッポラは、きれいな人だと思う。好きな監督の1人である。


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   ソフィア・コッポラ

 この作品は、父親と娘、そして妻と夫の関係を面白く描いていて笑えるところもあり、結婚した女性が直面する悩みも現実的に描いているので、共感をもってみることができると思う。楽しい作品である。

原題:ON THE ROCKS 監督:ソフィア・コッポラ 出演:ビル・マーレイ、
ラシダ・ジョーンズ、 マーロン・ウェイアンズ
2020年 アメリカ





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グッバイ、リチャード [外国映画]

 ジョニー・デップが主演。リチャード(J.デップ)は大学教授で、ある日余命180日を宣告される。いままで何不自由なく暮らしてきたが、残された時間をやりたいことをやって生きることにしたリチャードの、ハチャメチャともいえる、全く暗さのない、コメディタッチの映画だった。いつでも、どんなときも、ジョニー・デップはジョニー・デップなのである。


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 美しい妻ヴェロニカ(ローズ・マリー・デウィット)や素直な娘クレア(ゾーイ・ドゥイッチ)と何不自由ない暮らしを送る大学教授リチャード(ジョニデ)は、医師からある日思いもかけない余命宣告を受ける。落ち込むリチャードに妻が突然不倫を告白する。


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リチャード(ジョニー・デップ)/クレア(ゾーイ・ドゥイッチ)/ヴェロニカ(ローズマリー・デウィット) 

 死を前に怖いものなしとなった彼は、残りの人生を自分のために謳歌することを決意。ルールや立場に縛られない新しい生き方はこれまでにない喜びをリチャードに与え、そんな彼の自由な言動は学生たちも変化を与えていく。


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 リチャードは、妻に「不倫は知っていたが、今まで黙っていただけだ。でもこれからは、好きなようにさせてもらう」といって、飲んだくれて、ウエイトレスをナンパし、学生たちにマリファナの売人を紹介してほしいという。


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 リチャード(ジョニー・デップ)とクレア(ゾーイ・ドゥイッチ)


 しかしながら、その型破りな行動が、かえって学生たちに受け入れられ、人気が高まる。リチャードは、学生たちに「人生にもがいて失敗して正面からぶちあたれ。自分だけのストーリーを生きるんだ」という。


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 妻ヴェロニカの不倫相手は、リチャードとも親しい男で、その家でパーティーが開かれ家族3人で行くことになった。そしてその場でリチャードは、自分がガンで余命180日とパーティー参加者に明らかにする。娘クレアはショックを受けると同時に、父親のことを理解するのだった。
 この場面のクレア役のゾーイ・ドゥイッチの演技がとてもよかった。父親に対する愛情が沸き上がるのを自然に演じていた。
 そして「やられたらやり返す!」じゃないですけど、リチャードは全員の前で、妻の不倫相手の奥さんに強烈なキスをするのだった。(相手の奥さんはうっとりしてました(^^♪)


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 リチャードは愛犬と一緒に家を出て、夜の月明かりに浮かび上がる、銀色の道へ向かうのだが、その道を左にも右にも行かず、真っすぐに突き進む、ような気がした。この最後の場面がよくわからなかったので、もう一度観てみたいのだが。私の解釈ではリチャードはこのとき、天に召されたのかなと感じたのである。

 2年ぶりの新作公開となったが、ジョニー・デップはどんな映画にでていても、彼の存在感が前面に出て来る役者で、役になりきって演じるというタイプではないように思う。ジョニー・デップはそこに居るだけで、とてつもなく魅力的なのである。

原題:THE PROFESSOR(Richard Says Goodby) 監督:ウェイン・ロバーツ
出演:ジョニー・デップ、 ローズマリー・デウィット、 ダニー・ヒューストン、
ゾーイ・ドゥイッチ、 ロン・リビングストン、 オデッサ・ヤング
2018年 アメリカ

 ジョニー・デップは、1984年「エルム街の悪夢」でデビューして、今年で俳優人生36年、出演(監督作も含む)の作品は70本になります。いままでジョニー・デップの作品をほとんどみていますが、その中で私の好きな映画をあげておきます。

 1993年 妹の恋人
      ギルバート・グレイプ
 1995年 ニック・オブ・タイム
 1999年 ナインスゲート(オカルトチックは映画でなぞ解きもあり)
 2000年 ショコラ(ジプシーの青年役がカッコイイ)
 2001年 耳に残るは君の歌声
 2004年 シークレット・ウインドウ(スティーブン・キングのホラー)
 2010年 アリス・イン・ワンダーランド
 2017年 パイレーツ・オブ・カリビアン最後の海賊
      オリエント急行殺人事件
 2018年 グッバイ・リチャード 

 私がブログを始めたのが2005年からなので、それ以前の記事は「ナインスゲート」を除いてかいていません。他のは、ブログのサイドにある記事検索欄に、映画のタイトルを書き込んでクリック、で出てきます。その際、映画の太字タイトルをクリックしていただくと、記事の全文が表示されます。よろしかったらごらんください。

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WAVES/ウエイブス (新作) [外国映画]

 20日の月曜日はいい天気で、しかも湿度が低いのか、わりあいサラッとしていました、それに朝から蝉の声が響き、あぁ夏だなと感じました。今年は大阪の天神祭もなく、京都の祇園祭もないので、夏らしさが感じられなかったのですが、思いがけず夏がやって来てくれたようにおもいました。この日「WAVES(ウェイブス)」という映画をみました。アメリカの黒人の4人家族の物語です。


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 最初からカメラワークに凝っていて、一部手持ちカメラなども使って撮っている。また音楽もその折々の主人公の気持ちをあらわすかのような色々な音楽を使っていた。

 フロリダで暮らす高校生タイラー(ケルビン・ハリソン・Jr.)は、父親からレスリングのスパルタ教育を受けて、レスリング部のスター選手になった。厳しい父親には素直になじめないが、生活に問題もなく、父と再婚の母親もいい人だった。

 しかし、タイラーは大事な試合の前に肩を壊してしまう。父にそのことを知られたくない彼は、1人で医者に行き診断をあおぐ。結果は悪く、またレスリングで肩を使うようなことをしたら、二度と治療ができなくなるといわれる。彼はそのことを隠して試合に出るが、やはり負けてしかも、肩が悪いことも家族に知られてしまう。気持ちのやり場を失った彼は、恋人のアレクシスといかがわしいクラブに出入りするようになる。
 
 このあたりの、タイラーが恋人とドライブするときに使われた音楽は、サイケデリックというのだろうか、私にはちょっと聴くのが辛いような音だった。どうしてこんな音楽を使うのかと思ったが、これが、このときのタイラーの気持ちを表現しているのだと、あとで理解した。
 

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  海の中での、タイラー(ケルビン・ハリソンJr)と恋人のアレクシス(アレクサ・デミー)

 こうして、タイラーは夜遊びをし、そのうえ大量の飲酒、ドラッグとだんだんその生活が崩れていく。そうこうしているうちに、恋人から思いがけないことを告げられる。それは、彼女の妊娠だった。

 電話では、タイラーが興奮して怒鳴るので、アレクシスは、iPhoneのメッセンジャーで込み入ったやりとりをする。ここは、本当に現代の若者のそのままが描かれていて、おもしろかった。
 とうとうアレクシスは、タイラーとは別れるとのメッセージを残して、iPhoneをブロックしてしまう。

 彼は、色々なグラブを探し回って、アレクシスを見つけ、話しあおうとするが、アレクシスが応じないため、思わず……。タイラーは大きな過失を起こしてしまう。

 ここで、いきなり画面が白っぽくなり、「え、これで終わり?!」と思うが、すぐに次の場面に切り変わる。これが2,3度あった。

 こうして、前半のストーリーは終わり、後半はタイラーの妹エミリー(テイラー・ラッセル)に焦点を当てた話になる。
 彼女は、兄の不始末のせいで、家では両親の仲が悪くなり、学校でも孤独に過ごしていた。そんなある日、エミリーに声をかけてきた男子がいた。ルーク(ルーカス・ヘッジズが)は、最初はぎこちなくエミリーを誘うが、エミリーの兄タイラーの不始末もすべて理解したうえで、エミリーに優しく接してくれる。二人は段々に親しくなり、やがて恋人同士になる。ここで使われる音楽も、私好みのものだった。


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 ある日ルークは、自分の父親のことを話し始める。酒浸りで家族に暴力をふるう父とは、幼い時に別れたきりだとルークはいう。そして、2人が別の日にドライブしていた時、ルークのケータイにある病院から電話がかかってきて「お父さんが不治の病で長くないから、看取ってくれ」とのこと。2人はそのまま、病院へ直行し数日間病院に泊まるうちに、父親は心安らかに旅立った。
 エミリーとルークはお互いに、なくてはならない存在になり、そのことがいがみ合っているエミリーの両親にもいい影響を与え、バラバラになっていた家族は再び心を寄せ合うようになっていく。


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      エミリーことテイラー・ラッセル

 このエミリーという妹役のテイラー・ラッセルがとても可愛くて、素直な妹役を好演していた。後半は、エミリーとルークの愛が皆を一つにまとめていくというホッとする終わり方だったが、前半は、崩れていくタイラーがかなり怖くて、どうなるのかしらと不安になった。

 映像や色、音楽、場面展開に凝った映画で、新しい試みだと思うが、ストーリーとしては、描き足りないところがあったと感じた。

原題:Waves 監督:トレイ・エドワード・シュルツ  出演:ケルビン・ハリソン・Jr.、
タイラー・ラッセル、 ルーカス・ヘッジズ、 アレクサ・デミーetc.
2019年 アメリカ




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ストーリー・オブ・マイ・ライフー私の若草物語(新作) [外国映画]

 シアーシャ・ローナンが、生き生きと主役のジョーを演じてました。ルイザ・メイ・オルコットの「若草物語」です。1ヶ月半ぐらい前だったか、旧作の「若草物語」をBSプレミアムシネマで観たのですが、こちらは古き良き時代の雰囲気がとてもよかったです。ただ旧作は四姉妹が主役で、少しジョーが目立っていた程度でした。新作のほうは、まさにジョーを中心に据えた物語でした。


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 若草物語は、19世紀に生きる四姉妹が、自分の生き方をさぐり、しかも強い意志を持って、1人1人が自分の道を生きていく姿が描かれる。
 愛する人がお金のない男性であるがゆえに、苦労もあるが、一緒に生きていくことを願う長女メグ(エマ・ワトソン)、小説家になり自立することを目指すジョー(シアーシャ・ローナン)、病弱だが繊細な感性と芯の強さを持ったベス(エリザ・スカンレン)、そして画家を目指しながらも、現実的に自分には画家の才能がないことをはっきりと自覚する末っ子エイミー(フローレンス・ビュー)。
 この四人のキャラクターが、みごとに描かれ、それぞれの女優さんの持ち味が充分引き出されていたと思う。監督&脚色のグレタ・ガーウィグの、新鮮な感覚が新しい物語を創り出したかんじだった。


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        ジョー(シアーシャ・ローナン)


 4人なかでもやはり、シアーシャ・ローナン扮するジョーが魅力的だった。負けん気が強く、お転婆でエネルギッシュ。ガーウィグの前作「レディ・バード」でも、シアーシャ・ローナンは主役を務めた。彼女は「ふたりの女王」のスコットランド女王メアリー役で、すばらしい演技をみせてくれた。今、乗りに乗っている女優さんだと思う。この作品でも、すごく躍動感があり、明るくて、彼女を目で追うのが楽しかった。ジョーは小説家になるために、ニューヨークへ行く。そしてNYでロングスカートをたくしあげて、NYの街を駆け巡る。この時代、女性への社会的圧力は厳しいものがあった。それに抵抗し、自分の人生を生きていこうという活力に満ちていた。


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 出版社に自身の小説を持ち込んだジョーは、そこで編集長に「もっと売れるものを書け」「ヒロインは結婚しないのか」といった、不本意な言葉を浴びせられる。女の幸せはつまるところ結婚だという世間一般の考え方は間違っていると、ジョーは確信するのだった。


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  ローリー(ティモシー・シャラメ)とジョー(シアーシャ・ローナン)

 彼女は、幼馴染みでいわばソウルメイトでもある隣家の金持ちの貴公子、ローリー(ティモシー・シャラメ)の熱烈なプロポーズを断ってしまう。
 このシーン、ローリーに扮するティモシー・シャラメの口説きが情熱的であまりにもすばらしいため、私自身はかなり違和感を持った。彼にプロポーズされて、断る人っている?!


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ジョー(シアーシャ・ローナン)とローリー(ティモシー・シャラメ)

 けれども冷静に考えてみると、ローリーという人(役)は、優しい男性ではあるが何かこれというものを、自分自身に持っているというほどでもない。だからジョーがパートナーに選ばなかったのは理解できる。
 この作品では、男優さんは脇に徹しているのだ。ルイ・ガレルもジョーと最後に結婚する役どころだった。


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 とにかく、純粋で気を張って生きているジョーであるが、とうとう末っ子のエイミーとローリーが婚約したことを知り、ショックを受ける。


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 エイミー(フローレンス・ビュー)とローリー(ティモシー・シャラメ)

 ジョーはひとり置き去りにされたような気持ちになり、「わたしはなんて孤独なのかしら」と落ち込む。しかし彼女には、創作という目標があった。ジョーは自分の作品をペンとインクで書き上げるのに、没頭するのだった。


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 長女のメグ(エマ・ワトソン)は貧乏だが心優しい男性と結婚し、エイミー(フローレンス・ビュー)はローリーと結婚する。けれども天使のようなべス(エリザ・スカンレン)は、慰問に行った困窮家庭の子供から猩紅熱をうつされて、その短い人生を閉じることになった。
 ジョーは、長編小説を書き上げ出版にこぎつける。そして、NYで知り合った、自分の小説を批評してくれた男性(ルイ・ガレル)と結婚するのだった。


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 メグ(エマ・ワトソン)、ジョー(シアーシャ・ローナン)、エイミー(フローレンス・ビュー)、ベス(エリザ・スカンレン)

 紆余曲折がありながらも、家族が仲良く助け合い、理解し合いながら暮らしていくことのすばらしさが、作品の基軸となっている。観終わって、温かい感動が胸の中に広がっていった。


原題:LITTLE WOMEN 監督:グレタ・ガーウィグ 出演:シアーシャ・ローナン、 エマ・ワトソン、 フローレンス・ビュー、 エリザ・スカンレン、 ティモシー・シャラメ、 
ルイ・ガレル、 ローラ・ダーン、 メリル・ストリープetc.
2019年 アメリカ




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アルティメット2マッスル・ネバー・ダイ(リュック・ベッソン)2009年 DVD [外国映画]

 のっけから、アクションの連続、それもCGなど使っていない、生身の度肝を抜くスタント・パフォーマンスの連続です。そして、出だしから早回しのような場面展開があり、それも面白かったです。


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 近未来のパリ郊外“バンリュー13地区”で起きた新たな危機に立ち向かう主人公2人、ダミアン(シリル・ラファエリ)とレイト(ダヴィッド・ベル)の活躍を描く。


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 レイト(ダヴィッド・ベル)とダミアン(シリル・ラファエリ)


 近い未来のパリ郊外。バンリュー13地区は相変わらずの無法地帯だった。そんな中、警官射殺事件が発生する。これを機に、政府は13地区の一掃に乗り出す。しかしその裏には醜き巨大な陰謀が。それに気づいた潜入捜査官のダミアン(シリル・ラファエリ)だったが、罠にハメられ投獄されてしまう。その危機をかつての相棒レイト(ダヴィッド・ベル)が救い、2人は再び手を組み、巨悪から13地区を守るべく立ち上がる。


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 潜入捜査官の二人ともが、すごいスタント・パフォーマンスだった。レイト(ダヴィッド・ベル)が、このビル3階程度の高さから飛び降りたり、距離の離れたビルに飛び移ったり、それをCGもスタントマンもワイヤーも使わず、本人が切れ目なく演じるというのが、すばらしい。ダミアン役のシリル・ラファエリも同様なのだが、ダヴィッドのほうが最初にやり始めたらしい。彼はスタントマン出身だそうだ。


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ダヴィッド・ベル


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シリル・ラファエリ

 バンリュー13地区の無法地帯を権力から守る面々。ちょっとコワイ?

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写真ではわかりにくいので、予告編をどうぞ。
https://youtu.be/n-6ATBsFTec


 ハリウッドのアクションとは一味違います。観終わって、スッキリすることまちがいなし!
もしまだでしたら、ぜひ。

原題:BANLIEUE13-ULTIMATUM  監督:パトリック・アレッサンドラン  製作・脚本:
リュック・ベッソン  出演:シリル・ラファエリ、 ダヴィッド・ベル、 ウォルター・ガストン、 タオetc.
2009年 フランス


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