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ふたりの女王 メアリーとエリザベス(DVD) [外国映画]

 16世紀の英国、スコットランドの女王メアリー(シアーシャ・ローナン)とイングランドを統治する女王エリザベス(マーゴット・ロビー)は、王位継承権をめぐってライバルであった。


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 メアリーは16歳でフランス王妃となったが、フランス王フランソワ2世崩御により18歳で未亡人となる。故郷のスコットランドに帰国し、再び王位の座に就く。しかし、当時のスコットランドではプロテスタント教徒の勢力が増していた。


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    Mary Queen of Scots farewell to France by Robert Herdman

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    メアリーのスコットランド上陸シーン

 政治顧問として、父の庶子(正式な結婚以外で生まれた子供)で異母兄のマリ伯ジェームズ・ステュアート(ジェームス・マッカードル)とウィリアム・メイトランドを、メアリーが任命する。当時のスコットランドは宗教改革が進み、多くの貴族がプロテスタントに改宗していたが、カトリックの貴族も相当数残っていた。マリ伯とメイトランドはともにプロテスタントであったが、メアリーは宗教の選択には寛容で、両派の融和を図った。

 彼女は、ダーンリー卿ヘンリー(ジャック・ロウデン)との結婚を考えるようになる。彼はメアリーと同じくイングランド王ヘンリー7世の王女マーガレットの孫であり、テューダー家の血を引いている。加えて、カトリック教徒であった点も、メアリーにとっては都合が良かった。


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 ダーンリー卿ヘンリー(ジャック・ロウデン)&メアリー(シアーシャ・ローナン)


 この結婚にマリ伯やエリザベス1世が強硬に反対した。特にエリザベス1世は、イングランドの有力な王位継承権を持つダーンリー卿との結婚によって、メアリーの王位継承権が強化されることを恐れた。


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  メアリー(シアーシャ・ローナン)とエリザベス1世(マーゴット・ロビー)


 エリザベス1世は、ダーンリー卿の母マーガレット・ダグラス(エリザベス1世の従姉)をロンドン塔に幽閉したが、ダーンリー卿は従わなかった。


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 メアリーの左隣で乗馬しているのが、ダーンリー卿ヘンリーを演じたジャック・ロウデンで、イケメンが多いこの作品中でも、注目の人。キャラクターはアカン男ですが、ハンサムで惹きつけられる柔らかさがあります。


 1565年7月29日、メアリーはダーンリー卿ヘンリーと再婚した。女王はヘンリーに対し、王位継承もあらためて与えるなどして、多くの貴族の反感を買った。

 結婚し妊娠したものの、両親から甘やかされてきたヘンリーの傲慢な性格がわかるにつれて、彼女の愛情は冷めていった。


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  デイヴィッド・リッチオ(イスマエル・クルス・コルドバ)
  リッチオは多彩な人物で、ユニークな存在。この人物を演じたイスマエルがとても魅力的 で、メアリーがお気に入りであったのがわかるようだった。いい俳優だと思う。  

 メアリーは、ピエモンテ人の音楽家で、有能で細やかな気づかいをする秘書のデイヴィッド・リッチオ(イスマエル・クルス・コルドバ)を寵愛し、重用するようになった。

 しかし、1566年3月9日、女王が皆とホリールード宮殿で食事をとっているとき、武器を手にした数人の貴族達がリッチオを拉致し、ダーンリー卿の部屋に近い謁見室、しかもメアリーの目前で殺害するという事件が起きた。


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    The Murder of David Rizzio
 
 女王は流産の危機を迎えたが、6月19日無事に息子ジェームズ(後のイングランド王兼スコットランド王ジェームズ1世(6世))を出産した。

 その後、メアリーはボスウェル伯(マーティン・コムストン)に心を寄せるようになった。そして1567年2月10日、エディンバラのカーク・オ・フィールド教会でダーンリー卿が殺害されているのが発見された。(所説あるが、誰がダーンリー卿を殺したのかは藪の中)
 ボスウェル伯はメアリーに結婚を申し込み、その数日後ダンバー城にメアリーを連行し、結婚に踏み切らせ、5月15日に2人は結婚式を挙げた。カトリック・プロテスタント双方がこの結婚に反対した。


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 間もなく、反ボスウェル派の貴族たちが軍を起こした。メアリーは反乱軍に投降し、ロッホ・リーヴン城へ移され、廃位された。


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  エリザベス1世(マーゴット・ロビー)&寵臣レスター伯爵(ジョー・アルウィン)
  このレスター伯爵を演じたジョー・アルウィンは、この作品中でも出色のイケメンだと、私は思います。(エリザベスにもこんないい人がいて、よかった!)

 一方、イングランドを統治するエリザベス(マーゴット・ロビー)は、自分と違い美しく、結婚もして子どもを産んだメアリーに、複雑な思いを抱いてた。


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 映画の中では、メアリーが軟禁されていた城を脱走し、兵を集めて軍を起こすが敗れ、イングランドのエリザベス1世に助けを求めるため、2人が会うシーンがある。そこでは2人は同じ女王として、トップに立つ者同士の孤独をわかり合う。
 監督ジョージー・ルークが女性なので、想像力をたくましくして、こういうシーンを創ったように感じた。男性社会の中で孤軍奮闘する女性ふたりを魅力的に描いたのだ。


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 1568年5月、ロッホ・リーヴン城を脱走したメアリーは6千人の兵を集めて軍を起こすが、マリ伯の軍に敗れ、イングランドのエリザベス1世の元に逃れた。
 メアリーはイングランド各地を転々としたが、軟禁状態とは思えないほど自由に近い、引退した老婦人のような静かな生活を送ることを許された。


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 けれども、彼女はたびたびイングランド王位継承権者であることを主張し、またエリザベス廃位の陰謀に関係した。やはり、スコットランドとイングランド両方の王女であるという信念とプライドが、メアリーを常に突き動かしていたのだろう。


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 彼女は1586年のバビントン事件(カトリックのアンソニー・バビントンがエリザベスの暗殺を狙った事件)の裁判で、メアリーが関与した証拠を提示され、有罪・死刑を言い渡された。


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      エリザベス1世

 1587年2月8日、フォザリンゲイ城のグレートホールでメアリーは露と消えた。この事態を受けて、スペイン王フェリペ2世は無敵艦隊をイングランドへ派遣し、アルマダの海戦(1588年)に繋がったとのことだ。

 こういう宮廷対決ものは、登場人物が多く、それらが複雑に絡み合っているので、頭が混乱しそうになるが、やはり面白い。
 シアーシャ・ローナンの演じた女王メアリーは、女性として結婚も恋愛も経験し、息子ジェームズ(後のイングランド王兼スコットランド王ジェームズ1世(6世))をも出産した。その血は歴代に受け継がれることとなる。一方、マーゴット・ロビーが演じたエリザベスは、疱瘡を患い、そのあとを隠すため白塗りになる。彼女は結婚もせず子供ももたなかった。しかしその権力は絶大なものとなった。どちらが上かは甲乙つけがたい。

 シアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビーの演技対決も、どちらのほうがいいなどどはいえないほど、両者ともすばらしい演技だった。この2人は今後も映画界を引っ張っていく大きな存在であるのは間違いがないとだろう。これからの活躍がいっそう楽しみだ。

 この作品は、2019年アカデミー賞の衣装部門を受賞した。ほんとうにゴージャスで素敵なコスチュームがみられて楽しかった。2人を描いた絵画を観たら、もっと豪華なのに驚く。


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 スコットランド女王メアリーとイングランド女王とエリザベス1世


 この映画を観て、メアリー・スチュワートに興味を持ったので、何か関連した本を読んでみたいと思っている。

 なお、このブログ中の写真映像は、eiga.com、TSUTAYAのサイトからお借りし、絵画はWikipediaからお借りしました。

原題:Mary Queen Of Scots 監督:ジョージ―・ルーク 出演:シアーシャ・ローナン、
マーゴット・ロビー、 ジェームス・マッカードル、 ジャック・ロウデン、
イスマエル・クルス・コルドバ、 ジョー・アルウィン、 ガイ・ピアーズetc.
2018年 イギリス





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運び屋(クリント・イーストウッド)2019DVD [外国映画]

 クリント・イーストウッドが10年ぶりに主演を務めた作品。もちろん監督も兼ねた。ストーリーは、87歳の老人がひとりで大量のコカインを長年運んでいたという、実際のニュースを映画に仕立てたものだ。最初にイーストウッドが出てきたときは、ヨボヨボな感じだったので、さすがの彼も年をとったなと思っていた。ところが、DVD特典で後でインタビューで彼が話しているのをみると、すごく元気で映画とは全く様子が違ったので、クリントが90歳近い老人を演じていたのだとわかった。さすがである。


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 90歳の老人アール・ストーンは、仕事一筋で生きてきたがゆえに家族に見放され、しかも園芸の商売に失敗して、事業はたたまざるを得なくなった。いまは金もなく、孤独な生活をしていた。


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アール・ストーン(クリント・イーストウッド)


 途方に暮れていたときアールは、車で指示されたところへ品物を運ぶだけで大金がもらえる、という仕事をひきうける。しかし実はその仕事は、メキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だった。


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    麻薬捜査官(ブラッドリー・クーパー)とアール(クリント・イーストウッド)

 アールは危ない橋をわたりながらも、バレることなく仕事を続ける。ときには、ドライブインで自分より年下の男に、「家族を大切にしろ」とアドバイスするくらいだった。だが、その男は麻薬捜査官だったのだ。


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    妻メアリー(ダイアン・ウィースト)&アール
 
 妻とは離婚していて、家族の大事な集まりにも呼ばれなくなっていた。数年ぶりに会った娘にも、冷たくされる。


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  アールの娘アイリス(アリソン・イーストウッド)とアール(クリント・イーストウッド)

 ある日、娘のアイリスから連絡があり、妻がもう余命いくばくもないことを知らされる。アールは麻薬を運んでいる途中だったが、急いで妻のもとへ駆けつけるのだった。そして妻にいままでの不在と自分の不実を心から謝り、彼がその栽培に情熱を傾けたユリの花デイリリーを、妻に手渡すのだった。


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  デイリリー(昼に咲き夜にはしぼんでしまうユリ)

 最後のほうで、アールが運び屋家業の男たちにやられ、とうとう麻薬捜査官と警察に逮捕されるまでのちょっと凄みのある怖い場面や、カーチェイスなど終わりまで色々と楽しませてくれる作品だ。クリント・イーストウッドがブラッドリー・クーパーに「何をおいても家族を大事にしろ」と劇中でアドバイスするところは、彼の本心がにじみ出ているように感じた。ほんとうに面白い映画だった。

 ブラッドリー・クーパーはじめ、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシアら実力派が脇役で出演しているのも豪華だ。

 今回は、買ったDVDでの鑑賞だったが、クリントをはじめ数人の出演俳優のコメントが聞けた。
 クリントは実の娘のアリソンと親子役をやることが嬉しかったらしく、娘に「パパ」といわれるとつい、「なんだい」といつもの会話になってしまうといってた。
 また、アールが栽培していたデイリリーというユリの花畑を撮影するのに、ユリがすぐしぼんでしまうので、一晩で植え替えるのが大変だったそうだ。
 こんな撮影の裏側も垣間見ることができて、映画はスクリーンとDVDとで2度鑑賞するのがいいなと思った。

 音楽もとてもよかったですよ。クリント・イーストウッドが好きな曲ばかりなので、レトロでスローテンポなのが私は好きでした。エンディングテーマ曲の「Don't Let The Old Man In by Toby Keith」をお聴きください。


https://youtu.be/E7mfTU6Rzzg


原題:The Mule 監督:クリント・イーストウッド 出演:クリント・イーストウッド、
ブラッドリー・クーパー、 ローレンス・フィッシュバーン、 アンディ・ガルシア
アリソン・イーストウッドetc.

2018年 アメリカ



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スキャンダル [外国映画]

 この映画は、2016年にアメリカで実際に起こった女性キャスターへのセクハラ騒動を映画化したものです。シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーの人気3女優が共演。


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 メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)&グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)&ケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)


 アメリカの有名テレビ局Foxニュースの元人気キャスター、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、FoxのCEOロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)を提訴した。これが全世界のメディア界を震えあがらせた。


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    シャーリーズ・セロン


 FOXニュースの看板番組を担当するキャスターのメーガン・ケリーは、過去を思い返し、現在の地位まで上り詰めるまでに、ロジャーから受けたセクハラ行為を思い出し、平静ではいられなくなっていた。


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    マーゴット・ロビー


 そんな中、メインキャスターの座のチャンスを狙う野心家の若手のケイラ(マーゴット・ロビー)が、ロジャーに呼ばれて、CEOの部屋へ行くのだが……。

 大会社のCEOがセクハラ行為がをしていたのは、信じられないことだが、権力者は何でも意のままにできると信じ込んでいるその現状が、よくわかるように描かれていた。


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 仕事を大切に思うがゆえに、あえてセクハラ行為に耐えてきた女性たちが、ついに立ち上がるところはとても爽快だった。これがたった3年前の出来事であることに、ショックを受けた。

 2016年と言えば、ドナルド・トランプがまさかの大統領に躍進した年で、世界中の多くの人が驚いたものだ。このとき、知の最前線で働く美しい女性たちが、上司やライバルと壮絶な戦いを繰り広げていたのである。自分の未熟さに愕然とする思いがした。


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     ニコール・キッドマン

 この作品のシャーリーズ・セロンとニコール・キッドマンは、セロンお気に入りの、日本出身の巨匠カズ・ヒロ(アメリカに帰化し“辻一弘”から改名)の特殊メイクににより、実物の人物にそっくりになっている。ほんとに特殊メイクってすごい。カズ・ヒロは第92回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。


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 シャーリーズ・セロンは、制作にも名を連ねている。才能があって、美しくカッコイイ女性で、大好きな女優のひとりである。

 この作品に込められた裏メッセージは"嫌トランプ"なのだそうだ。今年のアメリカ大統領選挙の結果はどうなるのだろう。この映画が今年封切られたことは、やはり権力との戦いを象徴している。アメリカという国は間違ったこともたくさんして来たが、言論の自由はまだ健在なのだと思うと、少しアメリカを見直す気になるのである。そして、我日本はどうなのかと、見直してみるきっかけになった。

 映画として、面白く飽きさせない展開で、きれいな女優さんの衣装やスタイリングも参考になると思う。早くコロナ騒ぎが収まって、オシャレをして颯爽とでかけたいものだ。 


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原題:BOMBSHELL 監督:ジェイ・ローチ  出演:シャーリーズ・セロン、
ニコール・キッドマン、 マーゴット・ロビー、 ジョン・リスゴー、 ケイト・マッキノン
2019年 カナダ・アメリカ



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スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け [外国映画]

「スター・ウォーズ」の新たな3部作としてスタートした「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(2015)、「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」(17)に続く3部作の3作目。完結編です。


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「スター・ウォーズ」サーガのエピソード9にあたり、1977年のシリーズ1作目から計9作品を通して語られてきたスカイウォーカー家の物語が完結する。「フォースの覚醒」を手がけたJ・J・エイブラムスが再びメガホンをとり、主人公のレイを演じるデイジー・リドリーほか、ジョン・ボイエガ、アダム・ドライバー、オスカー・アイザックら3部作の主要キャラクターを演じてきたキャストが集結。


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初期3部作の「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」(80)、「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」(83)に登場した、ビリー・ディー・ウィリアムズ演じるランド・カルリジアンが再登場するほか、シリーズを通して重要な役割を担ってきた、16年12月に急逝したキャリー・フィッシャー演じるレイア・オーガナも、「フォースの覚醒」製作時に撮影されていたものの未使用だった映像を用いて登場する。
やはりレイア姫は、この物語の中でも特別な存在ですね。とても編集した映像とは思えない、リアルなものでした。レイア姫、フォーエバー☆


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次々と新しいロボットも登場しましたが、やはりC-3POとR2-D2は、長い付き合いですから、親近感があります。


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そして、忘れちゃいけないのが、チューバッカ。愛嬌があって、いいキャラクターでした。よく活躍しましたね。


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この子たちも後発組ながら、なかなかのもの。結構かわいかった、BB-8&D-O。


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ミレニアム・ファルコン号はよく壊れてました!好きです。これは日本人のCGクリエイターが今回CGクリエイトしているのですが(オリジナルデザインは別人)、彼は宇宙戦艦ヤマトからデザインのヒントを得たとTVの番組で答えていました。面白いですね、さすが日本人!


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こんな場面もありましたね。


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SWは、特殊効果の進化に貢献しました。最後のほうに、CGIやデジタルエフェクトの最新形、シリーズ最大規模の艦隊バトルがあります。ドラマのストーリーは軽い感じで、アナログを主とする舞台セットにたくさんの異星クリーチャーの登場など、J・J・エイブラムスの演出も原点回帰そのもの。その効果音と映像に浸りながら、ひとつの大きな世界が区切りを迎えたことを実感しましょう。フォースと共にあれ!


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原題:Star Wars: The Rise of Skywalker 監督:J.J. エイブラムス
出演:デイジー・リドリー、 アダム・ドライバー、 ジョン・ボイエガ、 
オスカー・アイザック、 マーク・ハミル、 キャリー・フィッシャー、
ビリー・ディー・ウィリアムズ
2019年製作/142分/アメリカ




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ラスト・クリスマス [外国映画]

 1984年のワム!の「ラスト・クリスマス」をモチーフに、エミリア・クラークとヘンリー・ゴールディング主演で描いたクリスマスムービー。ありふれたロマコメかと思いきや、最後がちょっと感動的な、いい映画でした。この作品、原案、脚本、出演がエマ・トンプソンなんですよ。だから、ただでは終わらせませんでした。ジョージ・マイケルの素敵な歌声も、ストーリーにマッチしています。


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 ロンドンのクリスマスショップで働くケイト(エミリア・クラーク)。華やかな店内で妖精エルフのコスチュームに身をまとうケイトは仕事に身が入らず、乱れがちな生活を送っていた。


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 ケイトは、子ども時代に旧ユーゴスラビアからイギリスに逃れてきた移民。母親(エマ・トンプソン)、自らの過去そのものなど、多くのものを嫌いながらも、歌手を夢見てオーディションを受ける日々を送っている。しかし努力不足が露呈して落選し続ける。母親とも仲が悪く、自暴自棄になって家を飛び出し、友人たちに頼るが、無軌道で自分勝手な彼女は、皆にさじを投げられてしまう。


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 そんなある日、ケイトの前に不思議な青年トム(ヘンリー・ゴールディング)が現れる。トムはケイトに、自分が力になるといってくれ、ケイトが勤めているクリスマスショップでツリーのデコレーションを手伝ってくれた。そしてケイトの悩みにも、耳を傾けてくれる優しい青年だった。


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 そんなトムにケイトは心をときめかせるが、トムは不思議にも連絡先を教えずケータイすら持っていなかった。それに彼は、ボランティアとしてホームレスの人たちを世話しているというが、ケイトがその施設へ訪ねていくと、そこにはいないのだった。けれども、トムの優しさにケイトのとんがった心は、癒されていくのだが……。


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 ケイトはトムからいい影響を受けて、身勝手な行動を慎むようになっていく。そして最後はホームレスの人たちと一緒に、世話になった家族や店のオーナー、友達、通りすがりの人々のためにクリスマスのコンサートを施設の前の路上で開くのだった。

 ケイトを演じたエミリア・クラークは、本当に歌が上手く最後のワム!の「ラスト・クリスマス」を熱唱するシーンは、すばらしかった。エマ・トンプソンはエミリアの母親役だが、東欧なまりの英語が、笑いを誘うような役。さすがの演技力だった。共演者の人達も、上手い人ばかり。いいキャスティングだと思う。

 ロンドン市内を走るダブルデッカー(2階建てバス)の中で、クロアチア語を話すカップルに、イギリス人の男が、「国へ帰れ!お前たちのような者いらない」というような嫌味をいうシーンがあり、ケイトがそのカップルにクロアチア語で「私はあなたたちを歓迎するわ」というのだが、これは、イギリスの移民問題をうまく取り入れている場面だった。

 ところで、トムのことだが、いったい彼はどうしたんでしょうね。それは映画を観てのお楽しみ。最後に感動的な場面が待っていますよ。

 エマ・トンプソンのインタビューで彼女はこういっています。「自分自身を愛し、人生に責任を持つこと。それは簡単ではないわよね」この作品でエマが伝えたかったことですね。なかなか深い言葉だと思いました。

原題:LAST CHRISTMAS  監督:ポール・フェイグ  原案・脚本:エマ・トンプソン
出演:エミリア・クラーク、 ヘンリー・ゴールディング、 エマ・トンプソンetc.
2019年 イギリス

大阪の方々、「TOHOシネマズなんば別館」(オリエンタルホテルの向かい側)で
12/26(火)まで上映します。


クリスマスプレゼント

映画のサウンドトラックより、エミリア・クラークの熱唱をお聴きください。
https://youtu.be/GxdHPzoZaaQ



本家本元、ジョージ・マイケルの魅力的な歌声です。
Wham!-Last Christmas(4k Video)
https://youtu.be/bwNV7TAWN3M



珍しいクイーンのクリスマスソングです。フレディの静かで力強いボーカルをどうぞ。
Queen "Thank God It's Christmas"
https://youtu.be/EIfZXSXRsYI



やはりジョン・レノンのも聴きたいですよね。ヨーコ・オノの声も入っています。
Jhon Lennon "Happy Xmas (War Is Over)"
https://youtu.be/y1FlCzVaJew

皆様がよいクリスマスを過ごされることを願っています。







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君の名前で僕を呼んで(DVD +本) [外国映画]

 舞台は1980年代のイタリアの避暑地。緑の風景が美しく、池や石造りのプールの水、澄んだ海が、爽やかさを演出します。街には人が少なく、別荘は広いけれども華美ではありません。必要最小限のアンティーク家具が置かれているからか、とても素敵です。こんなところだったら、本当にゆったりした時間を過ごせると思います。



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 アンドレ・アシマンの同名小説を原作に、「日の名残り」「眺めのいい部屋」の名匠ジェームズ・アイボリーが脚本を執筆しました。第90回アカデミー賞脚本賞受賞。さすが、ジェームス・アイボリーですね。恋愛を描くことに長けている人だと思います。



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         ティモシー・シャラメとアーミー・ハマー



 夏。家族と北イタリアの避暑地にやって来た17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、クラシック音楽のピアニスト&編曲家だった。そして、大学教授の父(マイケル・スタールバーグ)が別荘に招いた24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と出会う。



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  エリオの家族、母、父、エリオ(後ろ向きのストライプシャツの人、ティモシー・シャラメ)、オリヴァー(ブルーのTシャツの人、アーミー・ハマー)


 エリオは、オリヴァーに会ってから、今まで同性にいだいたことのない感情を彼にいだく。しかしオリヴァーは、ぶっきらぼうに「あとで(Later)」というのが口癖で、すぐにどこかへ去っていき、なかなか優しくエリオと関わってくれなかった。



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 別荘には近隣の人達も出入り自由で、きれいな女の子たちもよく来ていた。オリヴァーはハンサムなので、女の子たちにとても人気があった。エリオもまた付き合う女性がいた。彼らは皆で一緒にテニスをしたり、庭のプールで泳いだりして楽しんだ。



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       (映画のロケ地、イタリアの都市クレマのセリオ川)


 オリヴァーはある日の夕食のあと、家族の前で「映画でも観に行かないか」とエリオに声をかけてきた。自分はまだ来て間もないので、一緒に行く人がいないからと。
 それから2人は自転車で町まで行き、書店に行って本を買ったり、散策したり、カフェでお茶を飲みながら過ごしたりするようになった。エリオにとって、これは幸福な時間だった。しかし、オリヴァーはほとんど話さないし、態度を変えることもなかった。



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 あるとき、エリオとオリヴァーは、父やその仕事仲間の教授たち、友人と海に行き、古い石像が沈んでいるのを引き揚げる作業を手伝った。それはとても美しい像だった。彼らが来る前に、エリオのつまらない一言で、オリヴァーが怒ってしまった。
 オリヴァーの無言に耐えられず、エリオは思い切って「停戦しようよ」といって、オリヴァーに握手を求めた。彼は笑いながら、石像の腕を自分の手の代わりに差し出すのだった。


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   このシーンは美しく、しかもユーモラスなのでとても好きなシーン。


 エリオの気持ちはもう限界に来ていた。彼は何度も書き直したメモを、自分の部屋の隣のオリヴァーの部屋のドアの下にすべり込ませた。「沈黙には耐えられない。話がしたい」。それから、しばらくして部屋に戻ると、机の上に自分がオリヴァーに書いたメモが置かれてあって、エリオの字の下に、オリヴァーの返事があった。「もっと大人になれ。真夜中に会おう」。この夜、2人の恋は成就する。

 けれども、オリヴァーがニューヨークへ帰るときがとうとうやってきた。2人はイタリアの都市で最後のバカンスを楽しむ小旅行を計画し、その旅行は理解ある両親からプレゼントされた。そして二人は……。

 クリスマス、オリヴァーから久しぶりの電話があり、エリオが受話器を取った。そして、オリヴァーから告げられたことに、エリオが流す涙が、心に残るラストシーンだった。


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 オリヴァーはエリオの彼に対する想いを利用して、彼を自分に引き付けようとはしなかった。むしろ、世話になっている教授の息子を、大切にしているだけだとでも言いたいかのように、彼はエリオに接していく。繊細で純粋な相手のことを思いやり、傷つけないように自制心を持つ。しかし、自制心を上回るものが、エリオから彼に告げられた時、2人は結ばれる。

 とても感動的な作品だった。これこそが、恋愛なのだと思った。障害があるからこそ、想いは深くなっていく。なんと切ない物語だろう。本当の恋愛とは、相手のことを自分のことのように想うこと。この映画の題名は、自分と相手が混然一体となってしまい、何の垣根もなくなるという意味なのだそうだ。「君は僕で僕は君」という意味。



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 映画を観てから小説を読みました。小説は、エリオの気持ちの動きや変化を細かく描写しています。一方、オリヴァーの気持ちの描写はほとんどありません。ほんの短い言葉でやっと彼の気持ちがわかりました。映画は、セリフとしてのオリヴァーの気持ちはほとんど描かれていませんが、演技によって伝わるところがあります。
 小説を読み進むと、風景描写や登場人物の顔が映像となって浮かんできます。そして、心理描写もわかりやすいです。映画を2度楽しめる感じ。けれど、長い小説なので、途中ちょっとダレるかもしれません。が、細かく描写されているからこそ、主人公たちの気持ちがよくくみとれるように思いました。

 この本の続編も出版されています。タイトルは「Find Me」。翻訳はまだ出ていませんし、映画になるかどうかもわかりませんけれど、ぜひ映画で続きをみたいものです。


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 ティモシー・シャラメの次の作品は「The King(キング)」。ヘンリー5世のことを描いた映画です。Netflixで11/1から配信。彼の麗しい王族スタイル&たくましい甲冑姿が観られます。予告編も観ましたが面白かったです。この作品は、東京では映画館上映もされていたそうですが、大阪ではなかったのが残念です。

 一方、アーミー・ハマーが演じたオリヴァーですが、小説の中では彼は近所の白血病の少女を可愛がって、いつも散歩に行ったり話し相手になっていたというというエピソードも盛り込まれています。映画ではカットされていましたが、これがオリヴァーの人間的な優しさをよく表現していました。


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 アーミーは元々、真面目でシャイな人のように感じました。シャラメ君よりずっとシャイで、優しい感じがしました。映画の最後のほうに、駅に電車が到着して、プラットフォームで二人が離れ離れになるとき、オリヴァーはエリオを抱きしめます。そのシーンは、兄でもなく友達でもない優しさが込められていて、アーミー・ハマーの演技の確かさをみたように思いました。

 この魅力的な俳優二人だからこそ創れた、いつまでも心に残る名作だと思います。
  
原題:CALL ME BY YOUR NAME 監督:ルカ・グァダニー 脚本:ジェームス・アイボリー
出演:ティモシー・シャラメ、 アーミー・ハマー、 マイケル・スタールバーグ、
アミラ・カサール、マルシアetc.
2017年度 イタリア / フランス / ブラジル / アメリカ




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永遠の門 ゴッホの見た未来 [外国映画]

 フィンセント・ファン・ゴッホは、大好きな画家の1人である。今、ゴッホの伝記映画が公開されていることを知って、観に行ってきた。主演のウィレム・デフォーのゴッホは、画家本人が生きて行動しているかのようだった。


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 画家としてパリで全く評価されないゴッホ(ウィレム・デフォー)は、出会ったばかりの画家ゴーギャン(オスカー・アイザック)の助言に従い南仏のアルルにやってくるが、地元の人々との間にはトラブルが生じるなど孤独な日々が続く。


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 ゴッホ(ウィレム・デフォー)とゴーギャン(オスカー・アイザック)

 やがて弟テオ(ルパート・フレンド)の手引きもあり、待ち望んでいたゴーギャン(オスカー・アイザック)がアルルを訪れ、ゴッホはゴーギャンと共同生活をしながら創作活動にのめりこんでいく。しかし、その日々も長くは続かず……。


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 作品が世に理解されず、まったく売れなかったが、ゴッホは決して描くことを止めなかった。その陰には、弟テオの尽力があった。このすばらしい兄弟愛に心を打たれる。


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 この映画は、ゴッホの視点を映像化したシーンが多くあった。観客は、ゴッホの目(感受性)を通して、風景、静物、人物、色彩、アングルがどう映っていたのかを画面で体感できる。それが面白かった。ポスターの写真のオレンジ色に輝く麦畑、糸杉、黒い雲など、そして彼の見た青空。それらは、限りなく美しかった。


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 登場人物は、半分が接写だった。ゴッホが見ている相手がアップで映し出される。これも、ゴッホの視点からの映像なのだそうだ。


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 最後のほうの場面で、ゴッホが入院していた病院に訪ねてきて、ゴッホの話を聞いてくれる聖職者役のマッツ・ミケルセンもアップ映像でした。(けっこう好きな俳優さんです)

 監督のジュリアン・シュナーベルは、自身が現代美術のアーティストである。だからこそ、監督は「なぜ絵を描くのか?」という画家の命題を、ゴッホ対ゴーギャン、2人の医者、聖職者との対話を通して、彼自身に語らせている。「私(ゴッホ)のやっていることは種まきなんだ。収穫は未来のものなんだ」というセリフ(正確ではないです)が、とても納得がいった。「描かずにはいられないから、描くのだ」という言葉も。色々なジャンルの才能あるアーティストは、皆そうなのだろう。

 映画の中のゴッホの人生は、絵も売れないし、人や飲酒に依存的で、常識で考える幸福な人生とは程遠いように思えた。けれども、ゴッホがやっていることは種まきなんだ、と思うとゴッホが単に不幸だったとは言い切れないと感じた。

 描かずにはいられないからたくさんの絵を描いたことは、人生を思い切り生きたということではないか。彼は人生を生き切った。そして、未来の私たちにたくさんの名画を残してくれたのだ。その美しく魅力的な絵画をみて、私達は感動する。これこそ、ゴッホが魂を命を賭して、残してくれた収穫なのだと思った。


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 ジュリアン・シュナーベル監督とウィレム・デフォー(来日時の写真。監督が草履をはいているのが、笑える)


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 「ゴッホ展」は今、「上野の森美術館」で開催中。2020年1月13日(月・祝)まで。その後関西の「兵庫県立美術館」に巡回し、2020年1月25日(土)~3月29日(日)の期間開催です。
 ぜひ、映画を観てから、美術展へ行かれることをお勧めいたします。

原題:AT ETERNITY'S GATE 監督:ジュリアン・シュナーベル 出演:ウィレム・デフォー、
ルパート・フレンド、 オスカー・アイザック、 マッツ・ミケルセン、 
マチュー・アマルリック
2018年 イギリス・フランス・アメリカ





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イエスタディ [外国映画]

The Beatles-Yesterday
https://youtu.be/wXTJBr9tt8Q 


 昨年の「ボヘミアン・ラプソディー」以来、音楽映画にハマっている私です。本作品のストーリーは、かなり荒唐無稽ですが、ビートルズの名曲とともに、楽しく展開するコメディです。


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  言わずと知れた、アビー・ロード


 イギリスの小さな海辺の町で暮らす、シンガーソングライターのジャック・マリク(ヒメーシュ・パテル)は、幼なじみの親友エリー(リリー・ジェイムス)から献身的に支えられているものの全く売れず、音楽で有名になる夢を諦めかけていた。


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  ヒメーシュ・パテル&リリー・ジェイムス


 そんなある日、世界規模の瞬間的な停電が発生し、真っ暗闇の中、ジャックは交通事故にあい、昏睡状態に陥ってしまう。目を覚ますとそこは、史上最も有名なはずのバンド「ザ・ビートルズ」が存在しない世界になっていた。彼らの名曲を覚えているのは世界でただひとり、ジャックだけで……。


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 そんなばかなこと、ありえない!なんて思いながらも、意外と面白く観てしまった。映画の中で、ジャックが自分が作曲したものとして演奏するビートルズが、とても懐かしく嬉しい気持ちになった。どの曲も口ずさむことができたからだ。


The Beatles-While My Guitar Gently Weeps
https://youtu.be/rp7dMLeSTT0


 若いとき、音楽に詳しい友達がいて、ビートルズ、 エルトン・ジョン、ポール・サイモンやその他色々な音楽を教えてくれた。そのとき友達は、クイーンを教えてくれなかった。それは私にはクイーンはムリだろうと思ったのだと思う。でもその人のお蔭で、今色々な音楽映画を楽しむことができているのだと感謝!

 話が横にそれたが、この作品、コメディとしてとてもよくできている。主演のヒメーシュ・パテルは、イギリスのテレビドラマ「イーストエンダーズ」で人気を博し、この映画に抜擢されたそうだ。なかなかうまい役者だと思う。

 エリーことリリー・ジェイムスは、ジャックのために一生懸命働くマネージャー役。ジャックを好きなのに、なかなか自分の願っている方向に行かないもどかしさを、うまく演じていたと思う。


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 ヒメーシュ・パテルとエド・シーラン(本人)


 そして、観客へのビッグプレゼントその1は、今をときめくエド・シーランが、本人役で登場すること。この映画を観る前に、エド・シーランの曲をyou tubeで聴いてみたら、すごくよかったので、CDを買うつもり。エドは、ジャックに自分のコンサートの前座を頼む。
 

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 それから、私はそれほど詳しくビートルズのことを知らないので、見逃してしまったのだが、ザ・ビートルズの最後の歴史的なライブパフォーマンスであるルーフトップ・コンサートの場面や、映画『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!/ハード・デイズ・ナイト』(63)のファンが駆ける様子も完璧に再現されている場面など、様々なオマージュが盛りだくさんあったみたいだ。


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 ジャックのしていることは、そしてリリーとの関係は、最後はどうなってしまうのか、それは映画を観てのお楽しみです。それから、観客へのビッグプレゼントその2もありますので、お楽しみに。(私はおもわず声をあげてしまいました)


The Beatles- Let It Be
https://youtu.be/QDYfEBY9NM4


原題:YESTERDAY 監督:ダニー・ボイル 出演:ヒメーシュ・パテル、 リリー・ジェイムス、
エド・シーラン(本人役)、 ジョエル・フライetc.
2019年 イギリス




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ガーンジー島の読書会の秘密 [外国映画]

 第2次世界大戦中にイギリスで唯一、ドイツの占領下にあったチャンネル諸島の1つ、ガーンジー島が舞台です。そこでは、ナチスには秘密裏に、不思議な読書会が催されていました。


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 1946年、終戦直後のロンドンで、作家のジュリエット(リリー・ジェイムス)は1冊の本をきっかけに「ガーンジー島の読書会」のメンバーと手紙を交わすようになる。戦時中ナチスドイツに占領されていた島で、読書会と創設者の女性エリザベスは人々の心をつなぐ存在だった。このエピソードに魅了されたジュリエットは、取材のためガーンジー島を訪れるが、エリザベスの姿はなく、やがて読書会メンバーが隠す重大な秘密に気付く。


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  読書会(The Guernsey Literary & Potato Peel Pie Society)メンバー


 島での読書会メンバーの歓待とはうらはらに、記事を書きたいという思いをメンバーに伝えると、「書かないで!絶対に」と拒絶されてしまう。やがてエリザベス不在の謎や、メンバーが胸に秘めた過去が明らかになっていく。


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 ジュリエットことリリー・ジェイムス(美人ですね!)


 その秘密は、読書会の中心人物だったエリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)が、島に滞在していたナチスの兵士と恋愛して、子供を出産したものの、島から出て行方不明になっていることだった。


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   ジュリエット(リリー・ジェイムス)と婚約者マーク(グレン・パウエル)


 ジュリエットはマークにエリザベスのことを調べてくれるように頼む。彼女の心には、ガーンジー島に住み着いて、読書会とエリザベスのことを書きたいという、物書きとしての意欲が沸々とわいて来たのだった。


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 敏腕編集者のシドニー・スターク(マシュー・グード)とジュリエット


 謎があり、恋もあり、なかなか面白い映画だった。けれども、私は婚約者のマークが気の毒に思えた。豪華な婚約指輪をプレゼントし、ジュリエットに会うために、空軍の飛行機を使って島までやってくる。それにジュリエットの「読書会の中心人物だったエリザベスの行方を探して」という頼みに、手を尽くして真面目にやってくれる。にもかかわらず、最後は振られてしまうのだ。
 
 ジュリエットが作家として歩んでいくためには、マークという上流階級の男性とは結婚しないほうがいいのかもしれない。けれど、そこに至るまでの、彼女の心の葛藤の描き方が浅いため、マークを振る理由が納得できなかった。だから、上記のような感想を持ちました。

 謎の人物エリザベスが登場したシーン(過去の出来事として)は、かなりのおもしろさだった。そして、リリー・ジェイムスをはじめ、出演者の何人かがTVの「ダウントンアビー」に出ていた人なのだそうだ。ベテラン俳優たちの上手さが際立っていたと思う。やはりイギリスの役者は、シェイクスピアの舞台を経験しているからなのかと思いました。


原題:THE GUERNSEY LITERARY AND POTATO PEEL PIE SOCIETY
監督:マイク・ニューウェル  出演:リリー・ジェイムス、 ミキール・ハースマン、
グレン・パウエル、 ジェシカ・フラウン・フィンドレイ、 キャサリン・パーキンソン、
マシュー・グード、 トム・コートネイ、 ペネロープ・ウィルトンetc.
2018年 フランス/イギリス





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ロケットマン [外国映画]

 エルトン・ジョンの曲はとても好きでよく聴いていたので、「ロケットマン」を観てみました。私はコンサートは一度も行ったことがなく、ド派手な衣装に驚きましたが。彼は、グラミー賞を5度受賞しているんですね。すごい才能の持ち主だったんだと、改めて思いました。


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 この映画はちょっと変わっていて、普通にストーリーが進行して行って、歌の部分になると突然ミュージカルになる。そして、エルトンを演じているタロン・エガートン自身が歌うのだ。彼の声はエルトンに似ていて、上手いと思う。


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 オレンジの衣装で立っているのがエルトン・ジョン(タロン・エガートン)
 

 イギリス郊外の町で育った少年レジナルド(レジー)・ドワイト(後のエルトン・ジョン)は、音楽の才能には恵まれていた。しかし、母親は子供に無関心で、遊び歩くのが好きな女性、父親も自分の趣味に没頭して、子供には興味がなかった。そんな中、祖母だけは、エルトンをかわいがってくれ、王立音楽学校にも送り迎えしてくれる。彼は学校でもピアノの才能を発揮した。


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  祖母とレジー(エルトン・ジョンの少年時代)


 やがてロックに傾倒し、ミュージシャンを目指すことを決意したレジーは、「エルトン・ジョン」という新たな名前で音楽活動を始める。そして、後に生涯の友となる作詞家バーニー・トーピンとの運命的な出会いをきっかけに、成功への階段を昇り詰めていくのだが……。


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ピアノの前のエルトンの右後ろにいるのが、バーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)

 ↑のシーンは、ユア・ソングをエルトンが作曲している場面。エルトン・ジョン本人の歌う「ユア・ソング」をおききください。


https://youtu.be/GlPlfCy1urI
  ユア・ソング(僕の歌は君の歌)


 エルトンの人気はすごいものになり、マネージャーはジョン・リード(リチャード・マッデン)に変わる。ジョンはホモセクシャルで、エルトンがホモであることを見抜いていた。彼はマネージャーとして、エルトンをリードしていく中で、2人は恋人同士になる。


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 エルトン・ジョンとジョン・リード


 しかし、仕事のプレッシャーはエルトンの心と身体を蝕んでいった。彼は次第にお酒におぼれ、薬に頼るようになり、怒りを抑えられなくなっていった。そして、買い物依存症になった。この場面はある程度リアルに描かれていたので、見るのがちょっと辛くて、胸が苦しくなるくらいだった。


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 そんなエルトンの様子を見かねて、親友のバーニー・トーピンは彼に、こんな暮らしを止めて、田舎の静かなところで暮らさないかと心からのアドバイスをする。そのとき、バーニーがエルトンに渡した歌詞に彼が曲をつけたのが「グッバイ・イエローブリックロード」であった。これも私の大好きな曲なので、ご本人のすばらしい歌声をどうぞ、。


https://youtu.be/EgkBx8csEws
グッバイ・イエローブリックロード


 けれども、エルトンの生活はほどんど改善されなかったので、バーニーは嫌気がさして、1人田舎に帰ってしまう。エルトンは、自分を馬車馬のように働かせるマネージャーのジョン・リードともいざこざがあり、ジョン・リードもエルトンのもとを去る。

 ついにエルトンは、立ち直りのための施設に入り、アルコール依存症やドラッグ依存症と闘い、アンガーマネージメントの処方を受ける。

 こうして時が過ぎ、彼の状態がよくなり、自分を取り戻しつつあるとき、自分のもとを去っていったバーニー・トーピンが施設を訪ねてくる。そして、また再びタッグを組んで、いい音楽を創り続けようと、励ますのだった。


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   エルトン・ジョンご本人とタロン・エガートン


 若くして成功をつかんだエルトン・ジョンだったが、家族や思いを寄せる人からの愛に飢えていた。その心の穴を埋めるように、アルコールやドラッグに溺れ、荒んだ生活を送った。
 ステージ上での派手な衣装やエネルギッシュなパフォーマンスとは裏腹に、隠された自分をほんとうに愛してくれる人を見つけられないし、自分自身をも愛せないということが、孤独な人生を歩ませたのだった。

 あのすばらしく美しい、たくさんの曲を創った人が、こんなにも孤独だったとは。なんだが、クイーンのフレディ・マーキュリーの生き方とも重なって、心が痛かった。エルトンにとって、作詞家のバーニー・トーピンは、フレディのとってのメアリーのような存在だったのかと思った。

 そして、エルトンのマネージャーのジョン・リードは、クイーンにとっては救世主的なマネージャーだったが、この映画の中ではかなり強引で、あまりよくない人物として描かれている。立場が違うと同じ人間もこう描かれるのだなというのが、とても興味深かった。人間の関係とは、複雑なものだと感じた。

 ところで、現在のエルトン・ジョンは、アルコール依存症とドラッグから抜け出し、アンガーマネージメントも成功した。そして、愛する男性と2人で、養子を育てているそうだ。バーニー・トーピンとは今も仲良く仕事をし、喧嘩はまったくしないらしい。ただひとつ、買い物依存症からは、今も抜け出せていないとのこと。(フレディも買い物依存症でしたネ)

 この映画で、エルトン・ジョンが好きな方は、22曲もの彼の名曲がきけます。エルトン・ジョンを知らない人は、彼の名曲を知り、楽しむチャンスですよ。

原題:Rocketman  監督:デクスター・フレッチャー(「ボヘミアン・ラプソディー」)  
製作総指揮:エルトン・ジョン
出演:タロン・エガートン、 ジェイミー・ベル、 リチャード・マッデン、
ジェマ・ショーンズetc.
2019年 イギリス・アメリカ





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