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もの食う人びと by 辺見庸 [本・雑誌]

 これはとても面白い本だった。この著者の辺見庸さんは、とにかく勇気のある人だと思った。地球上の辺境の地や、戦争などが実際に起こっている危険な地域、また、チェルノブイリ原発事故現場にも出かけている。 そこで住民が食べているものを一緒に食べながら、ルポルタージュエッセイを書いていくのだ。まさに、身体を張った仕事である。
 この本は、色々な国での食の体験を、短い31のエッセイで綴ったものだ。

 彼は、共同通信社の海外特派員記者だった人で、外国での暮らしも長かったようだ。そして、1991年「自動起床装置」で、芥川賞を受賞して作家生活に入った。

 この本のなかで、「食と想像力」というエッセイがあるが、これは猫のキャットフードをタイの工場で生産する様子が描かれている。
 まずは蒸しカツオを、ゴム長に、白い帽子、白い制服のタイ人女性が立ちづめで手作業で、解体していく。臭気と熱気が充満する中、カツオの骨を抜き、小骨除去にはピンセットも使うそうだ。根気がいる作業だ。さらに血合いと白身を指先で分類する。この作業になれるのに、2ヶ月はかかる。これが、人間用と猫用の缶詰に分類されていく。(本文より引用)
 単純計算して、猫のひと月の食費代が、猫缶製造労働者の平均月収の3分の1以上にあたるらしい。

 こんな風に、著者は淡々とそこで行われていることリポートする。そして、工場労働者の女の子の食べているものを一緒に食べながら、話をきいたりするのだ。

 うちの猫が食べている缶詰も贅沢なものなのだと思った。私達は同じアジア人を知らない間に搾取しているのかもしれない。

 このように、この本によって、「食」というものを通して、世界中で起こっている戦争や、大事故をもう一度思い出し、貧困や日本の戦争責任ということについて考えるよい機会を与えられたと思う。

 最後のエッセイで著者が、従軍慰安婦だった韓国人の自殺未遂をした女性達3人といっしょにお酒を飲んで、泣きながら彼女達に「死ぬのはもうやめてください」といったと書いてあった。ここには、辺見さんの真剣さとやさしさがにじみでているようだった。


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zilwan

ども、おひさしぶりです。
この本読まれたんですね。
自分も気になっていて、いつか読もうと思ってたんですが、やっぱりおもしろかったですか?
「食」って人が見えますよねぇ。
という訳で、久々にのぞいてみると、画像がアップされてたりして、少しびっくりしたzilwanでした。
by zilwan (2005-12-10 22:00) 

coco030705

zilwanさんへ
どもども~。ほんとにお久しぶりですね。
猫の写真みていただけましたか?かわいいでしょ。
この本は、短いエッセイに分かれているので、とても読みやすいですよ。
それに、淡々と事実を書いてあって、感傷的ではないので、いいと思います。
ぜひ、読んでみてくださいね。
by coco030705 (2005-12-10 22:42) 

coco030705

うりくまさんへ
こんばんは。nice!とご訪問ありがとうございます♪

この記事は、ブログ開始8カ月後に書いています。昔はなかなかいい本を読んでいたのだなぁ、今はブログをサボっているなと思います。
by coco030705 (2022-03-21 19:28) 

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