パリタクシー [外国映画]
この映画の主役は、92歳の魅力的なマダムマドレーヌ(リーヌ・ルノー)でありまた、映画の随所に出てくるパリの美しい風景も名脇役といえるだろう。

住み慣れたパリの住居を離れ、老人ホームに向かうマダム(リーヌ・ルノー)を乗せたタクシー運転手シャルル(ダニー・ブーン)が、彼女の人生をめぐるパリ横断の小旅行に付き合ううちに、自分の生き方に対する考え方にも、影響をうけるというドラマ。

シャルル(ダニー・ブーン)とマダム(リーヌ・ルノー)
無愛想なタクシー運転手シャルル(ダニー・ブーン)は、お金も休みもなく免停寸前で、家族関係もうまくいかず、人生最大の危機に陥っていた。そんな折、彼はタクシー会社からの依頼で、92歳の女性マドレーヌをパリの反対側の老人ホームまで送ることになる。

オペラ座
マドレーヌは、シャルルに次々と寄り道を依頼する。彼女が人生を過ごしたパリの街には多くの秘密が隠されており、寄り道をするたびに、マドレーヌの意外な過去が明らかになる。
車の中で語られる身の上話は壮絶そのもの。若いころに恋し、子どもを身籠るも、恋人は戦争終結とともに、故郷の国に帰ってしまい、彼女は1人で子供を育てた。その後、別の男性と結婚するが、夫がDV男だったので、その家庭内暴力を何年も受けてきたこと、そして夫への過激なリベンジ(夫を殺しはしなかった)が裁判沙汰となり、25年の刑が下った。
マドレーヌは映画の中で、1950年代の社会は裁判官は全員男性で彼女の、夫の暴力に対する正当防衛の訴えは聞き入れられなかったと、シャルルに語るのだった。彼女は女性の権利獲得のための社会活動もしたという。

若いころのマドレーヌ


そして、彼らは最後のディナーに向かう。マドレーヌの行きつけのレストランで。

この作品を観るとパリが好きになるような、素敵な風景やシーンがたくさん盛り込まれ、マドレーヌとシャルルの会話劇というべきストーリーです。
けれどもマドレーヌが出所して、青年になった息子と会うと、彼はベトナム戦争に志願して出兵すると、久方ぶりにあった母に告げます。その後、1場面だけの展開で、この息子が戦死したと告げられます。これは、観客にとって、感情移入できないなと思いました。ただのセリフだけで済まされては。映画なので、やはりこの息子が戦死する場面を映像としてみせるべきだったと思います。
この映画の中にはDVとか正当防衛とか、女性の権利主張とか、色々な問題がほんのちょっと描かれているのですが、これでよかったのかなとも思います。
とにかく、美しいパリの場面がたくさん出てきて楽しかったです。またパリに行きたくなりました。
ただし、この映画は最後にサプライズがあります。ただ楽しいだけの作品ではないのですよ。
マドレーヌを演じるのは、女優、社会活動家としても知られる現在94歳の現役シャンソン歌手リーヌ・ルノー。タクシー運転手シャルルは大物コメディアンのダニー・ブーン。二人は実生活でも友達同士だそうです。
「パリタクシー予告編」
原題:Une belle course 監督:クリスチャン・カリオン 出演:リーヌ・ルノー、
ダニー・ブーンetc,
2022年製作/91分/G/フランス

住み慣れたパリの住居を離れ、老人ホームに向かうマダム(リーヌ・ルノー)を乗せたタクシー運転手シャルル(ダニー・ブーン)が、彼女の人生をめぐるパリ横断の小旅行に付き合ううちに、自分の生き方に対する考え方にも、影響をうけるというドラマ。

シャルル(ダニー・ブーン)とマダム(リーヌ・ルノー)
無愛想なタクシー運転手シャルル(ダニー・ブーン)は、お金も休みもなく免停寸前で、家族関係もうまくいかず、人生最大の危機に陥っていた。そんな折、彼はタクシー会社からの依頼で、92歳の女性マドレーヌをパリの反対側の老人ホームまで送ることになる。


オペラ座
マドレーヌは、シャルルに次々と寄り道を依頼する。彼女が人生を過ごしたパリの街には多くの秘密が隠されており、寄り道をするたびに、マドレーヌの意外な過去が明らかになる。
車の中で語られる身の上話は壮絶そのもの。若いころに恋し、子どもを身籠るも、恋人は戦争終結とともに、故郷の国に帰ってしまい、彼女は1人で子供を育てた。その後、別の男性と結婚するが、夫がDV男だったので、その家庭内暴力を何年も受けてきたこと、そして夫への過激なリベンジ(夫を殺しはしなかった)が裁判沙汰となり、25年の刑が下った。
マドレーヌは映画の中で、1950年代の社会は裁判官は全員男性で彼女の、夫の暴力に対する正当防衛の訴えは聞き入れられなかったと、シャルルに語るのだった。彼女は女性の権利獲得のための社会活動もしたという。

若いころのマドレーヌ


そして、彼らは最後のディナーに向かう。マドレーヌの行きつけのレストランで。

この作品を観るとパリが好きになるような、素敵な風景やシーンがたくさん盛り込まれ、マドレーヌとシャルルの会話劇というべきストーリーです。
けれどもマドレーヌが出所して、青年になった息子と会うと、彼はベトナム戦争に志願して出兵すると、久方ぶりにあった母に告げます。その後、1場面だけの展開で、この息子が戦死したと告げられます。これは、観客にとって、感情移入できないなと思いました。ただのセリフだけで済まされては。映画なので、やはりこの息子が戦死する場面を映像としてみせるべきだったと思います。
この映画の中にはDVとか正当防衛とか、女性の権利主張とか、色々な問題がほんのちょっと描かれているのですが、これでよかったのかなとも思います。
とにかく、美しいパリの場面がたくさん出てきて楽しかったです。またパリに行きたくなりました。
ただし、この映画は最後にサプライズがあります。ただ楽しいだけの作品ではないのですよ。
マドレーヌを演じるのは、女優、社会活動家としても知られる現在94歳の現役シャンソン歌手リーヌ・ルノー。タクシー運転手シャルルは大物コメディアンのダニー・ブーン。二人は実生活でも友達同士だそうです。
「パリタクシー予告編」
原題:Une belle course 監督:クリスチャン・カリオン 出演:リーヌ・ルノー、
ダニー・ブーンetc,
2022年製作/91分/G/フランス
生きる LIVING [外国映画]
この映画は、黒澤明監督の名作映画「生きる」(主演:志村喬)を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本により、イギリスでリメイクした作品です。私はビル・ナイのファンで、黒澤明監督の「生きる」もかなり前に観たので、ぜひという思いで観に行きました。

(アカデミー賞では、カズオ・イシグロさんが脚色賞、ビル・ナイが主演男優賞にノミネートされましたが、無冠に終わりました。残念!)
1953年、第2次世界大戦後のロンドン。仕事一筋に生きてきた公務員ウィリアムズは、自分の人生を空虚で無意味なものと感じていた。

(余談ですが、これは1953年当時のイギリスのサラリーマンの出勤風景です。彼らは、山高帽をかぶり、ピンストライプのスーツやダークスーツを着て、汽車で都心の会社へ通勤していたのです)
ウィリアムズは息子夫婦と同居していたが、息子とはあまり話すこともなかった。
そんなある日、彼はガンに冒されていることがわかり、医師から余命半年と宣告される。手遅れになる前に充実した人生を過ごしたいと考えたウィリアムズは、仕事を放棄し、海辺のリゾート地のパブで酒を飲んで、スコットランド民謡の「ナナカマドの木」を歌うが、誰も聴いてくれないと彼は思った。(ビル・ナイの歌は、すごくハリがあって上手でした。歌手でもあるのかも最後に添付しています)そして、慣れないショウを観たりするが、まったく溶け込めなくて、満たされない。

ロンドンへ戻った彼は、部下の若い女性マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)と偶然道で会い、彼女が役所をやめて、カフェで働くことを知る。そして、マーガレットがウィリアムズに次の職場で雇ってもらうのに、推薦状がいると相談を持ち掛けてくるのを承諾し、彼女をフォートナム・アンド・メイソンのカフェに誘う。そこで推薦状を書くためだ。

ウィリアムズ(ビル・ナイ)&マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)
(フォートナム&メイソンはロンドンの老舗百貨店で、そのティールームは有名です。紅茶も有名)
マーガレットは明るくて、よく話す楽しい女性だった。彼女は前の職場で密かにみんなにあだ名をつけて楽しんでいて、ウィリアムズのことは「ゾンビ」と呼んでいたと、悪気もなく打ち明ける。ウィリアムズはとても細くて静かだからとのこと。

エイミー・ルー・ウッドは、とても明るく健康的で、お茶目で優しさもある女性、 マーガレットをうまく体現して演じていた。
ウィリアムズは、元気でバイタリティーにあふれたマーガレットに好感を抱き、映画やパブに誘ったり、彼女の新しい職場であるカフェにも行ったりする。マーガレットはだんだん「え?」という気持ちになるが、親切にも彼につきあうのだった。そしてウィリアムズは、息子にも言っていない、自分がガンに侵されて、長くは生きられないことを、マーガレットにだけ、伝えるのだった。

若く明るいマーガレットとつきあうことによって、ウィリアムズは気持ちも明るくなり、自分もまだ残されたやるべきことがあると考え、新しい一歩を踏み出すことを決意し再び出勤する。彼は、部下に指図をして、棚上げになっていた案件を実行に移すことにする。

部下の中で、ピーター(アレックス・シャープ)は、ウィリアムズを慕っていて、彼がいないと職場は締まりがなくなると感じていた。

ピーター(アレックス・シャープ)
ウィリアムズは、以前から女性3人が再三、陳情に来ていた「子供たちのために公園をつくってほしい」という願いを実現させようと思った。その土地を下見に行くと、そこは大きな水たまりができていて、歩行も困難な場所だった。

彼は、この案件をまたしても後回しにしようとする上司に、この工事に必要な書類を入れた箱を持っていき、上司がそれに目を通すまでは、梃子でも動かないことをしめすのだった。
こうして彼の努力によって、ようやく公園は造られた。そしてウィリアムズは雪の日に、公園のブランコを微笑みながら漕ぐのだった、「ナナカマドの歌」を歌いながら。
場面は変わって、ウィリアムズの葬儀が行われている。陳情に来ていた女性達、マーガレットやピーターをはじめ、たくさんの会社の同僚や上司がその場に駆けつけて、ウィリアムズのことを思い出し、彼の最後の仕事を称えた。

本当に心を打たれる作品でした。ビル・ナイが武骨な紳士そのもので、すばらしかったです。「生きる」とはどういうことなのか、人は命が制限されるとき、何をなすべきなのか、その答えがこの作品にあると思いました。ぜひ、ご覧ください。
「ナナカマドの木」
原題:Living 監督:オリバー・ハーマナス 出演:ビル・ナイ、 エイミー・ルー・ウッド、
アレックス・シャープetc.
2022年製作/103分/G/イギリス

(アカデミー賞では、カズオ・イシグロさんが脚色賞、ビル・ナイが主演男優賞にノミネートされましたが、無冠に終わりました。残念!)
1953年、第2次世界大戦後のロンドン。仕事一筋に生きてきた公務員ウィリアムズは、自分の人生を空虚で無意味なものと感じていた。

(余談ですが、これは1953年当時のイギリスのサラリーマンの出勤風景です。彼らは、山高帽をかぶり、ピンストライプのスーツやダークスーツを着て、汽車で都心の会社へ通勤していたのです)
ウィリアムズは息子夫婦と同居していたが、息子とはあまり話すこともなかった。
そんなある日、彼はガンに冒されていることがわかり、医師から余命半年と宣告される。手遅れになる前に充実した人生を過ごしたいと考えたウィリアムズは、仕事を放棄し、海辺のリゾート地のパブで酒を飲んで、スコットランド民謡の「ナナカマドの木」を歌うが、誰も聴いてくれないと彼は思った。(ビル・ナイの歌は、すごくハリがあって上手でした。歌手でもあるのかも最後に添付しています)そして、慣れないショウを観たりするが、まったく溶け込めなくて、満たされない。

ロンドンへ戻った彼は、部下の若い女性マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)と偶然道で会い、彼女が役所をやめて、カフェで働くことを知る。そして、マーガレットがウィリアムズに次の職場で雇ってもらうのに、推薦状がいると相談を持ち掛けてくるのを承諾し、彼女をフォートナム・アンド・メイソンのカフェに誘う。そこで推薦状を書くためだ。

ウィリアムズ(ビル・ナイ)&マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)
(フォートナム&メイソンはロンドンの老舗百貨店で、そのティールームは有名です。紅茶も有名)
マーガレットは明るくて、よく話す楽しい女性だった。彼女は前の職場で密かにみんなにあだ名をつけて楽しんでいて、ウィリアムズのことは「ゾンビ」と呼んでいたと、悪気もなく打ち明ける。ウィリアムズはとても細くて静かだからとのこと。

エイミー・ルー・ウッドは、とても明るく健康的で、お茶目で優しさもある女性、 マーガレットをうまく体現して演じていた。
ウィリアムズは、元気でバイタリティーにあふれたマーガレットに好感を抱き、映画やパブに誘ったり、彼女の新しい職場であるカフェにも行ったりする。マーガレットはだんだん「え?」という気持ちになるが、親切にも彼につきあうのだった。そしてウィリアムズは、息子にも言っていない、自分がガンに侵されて、長くは生きられないことを、マーガレットにだけ、伝えるのだった。

若く明るいマーガレットとつきあうことによって、ウィリアムズは気持ちも明るくなり、自分もまだ残されたやるべきことがあると考え、新しい一歩を踏み出すことを決意し再び出勤する。彼は、部下に指図をして、棚上げになっていた案件を実行に移すことにする。

部下の中で、ピーター(アレックス・シャープ)は、ウィリアムズを慕っていて、彼がいないと職場は締まりがなくなると感じていた。

ピーター(アレックス・シャープ)
ウィリアムズは、以前から女性3人が再三、陳情に来ていた「子供たちのために公園をつくってほしい」という願いを実現させようと思った。その土地を下見に行くと、そこは大きな水たまりができていて、歩行も困難な場所だった。

彼は、この案件をまたしても後回しにしようとする上司に、この工事に必要な書類を入れた箱を持っていき、上司がそれに目を通すまでは、梃子でも動かないことをしめすのだった。
こうして彼の努力によって、ようやく公園は造られた。そしてウィリアムズは雪の日に、公園のブランコを微笑みながら漕ぐのだった、「ナナカマドの歌」を歌いながら。
場面は変わって、ウィリアムズの葬儀が行われている。陳情に来ていた女性達、マーガレットやピーターをはじめ、たくさんの会社の同僚や上司がその場に駆けつけて、ウィリアムズのことを思い出し、彼の最後の仕事を称えた。

本当に心を打たれる作品でした。ビル・ナイが武骨な紳士そのもので、すばらしかったです。「生きる」とはどういうことなのか、人は命が制限されるとき、何をなすべきなのか、その答えがこの作品にあると思いました。ぜひ、ご覧ください。
「ナナカマドの木」
原題:Living 監督:オリバー・ハーマナス 出演:ビル・ナイ、 エイミー・ルー・ウッド、
アレックス・シャープetc.
2022年製作/103分/G/イギリス
映画 ホイットニー・ヒューストン [外国映画]
「ホイットニー・ヒューストン」を観てきました。とてもよかったです。ホイットニーの自伝的作品です。世紀の歌姫でしたが、その人生は、色々あって起伏の激しいものでした。
「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」のナオミ・アッキーが主演を務め、ホイットニー・ヒューストンを見いだした伝説の音楽プロデューサー、クライブ・デイヴィスを「プラダを着た悪魔」のスタンリー・トゥッチが演じる。この二人、最高にいい演技だった。

クライブ・デイヴィス(スタンリー・トゥッチ)&ホイットニー・ヒューストン(ナオミ・アッキー)
ホイットニー(ナオミ・アッキー)は、11歳の時にジュニア・ゴスペル・クワイアに入り、教会で歌い始めた。ニューヨークのナイトクラブで、母親とパフォーマンスをしていたところを、アリスタ・レコードの社長クライヴ・デイヴィス(スタンリー・トゥッチ)にスカウトされた。
1985年のデビュー・アルバム「そよ風の贈りもの」(Saving All My Love for You)は大ヒットとなった。
ホイットニーの母親シシー・ヒューストンは、スイート・インスピレーションズ のリード・ボーカルで、後にはエルヴィス・プレスリーやアレサ・フランクリンのツアーにバック・コーラスとしても参加していた。そして、ホイットニーにとっては、仕事をする上での大きな支えとなった。のちに夫(ホットニーの父親)とは離婚している。

シシー・ヒューストン(タマラ・チュニー)
ホイットニーは、1991年の第25回スーパーボウルで試合前に国歌を斉唱。この斉唱は史上最高の国歌斉唱と絶賛された。後にシングルとしても発売され、またその10年後にアメリカ同時多発テロ事件のチャリティとして再リリースされ、ヒットしている。
ホイットニーの国歌斉唱
1992年には、初主演映画「ボディガード」が公開される。映画のサウンドトラックは1994年のグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞するなど、高い評価を受け、アルバムからのリカット・シングル「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は自身最大のヒットとなった。
これはとてもおもしろい、いい映画でしたね。映画の中では、ホイットニーは最初「ボディーガード」に出演することには乗り気じゃなかったのに、相手役がケビン・コスナーと聞いて二つ返事でOKするという場面がでて来ます。お茶目ですね。
ホイットニーは同年R&B歌手、ボビー・ブラウンと結婚。翌年には一人娘ボビー・クリスティーナ・ブラウンを出産した。

ホイットニー&ボビー・ブラウン(アシュトン・サンダース)
1998年、オリジナルアルバムとしては実に7年ぶりとなる『マイ・ラヴ・イズ・ユア・ラヴ』をリリース。翌年にはVH1 Divas Live 99に出演して高評価を得るなど、再び歌手活動を本格化させた。
My Love Is Your Love
2000年にベスト・アルバム『ザ・グレイテスト・ヒッツ』を発売したが、このころ、大麻所持で拘束された。健康を害し、その後大麻やコカイン等の常用を告白している。夫のボビー・ブラウンも暴行などで度々逮捕され、浮気も発覚。
2004年から、クライブ・デイヴィスのアドバイスにより、リハビリ生活を続けた。娘とプールで楽しそうに泳いだり。けれども、2006年、ボビー・ブラウンとの結婚生活に終止符を打つ。
2008年6月には年末にクライヴ・デイヴィスのプロデュースの元、ニュー・アルバムをリリースすると発表した。しかし、この発売は延期され、実際には8月31日、米国アルバム『アイ・ルック・トゥ・ユー(英語版)』が発売され、1週目で30万枚以上を売り上げビルボード200の初登場1位を獲得、復活を果たした。
2010年2月の東京公演を皮切りに11年ぶりのワールドツアーも実施した。 しかしコンサートで息が切れ
たり、呼吸器の感染症で入院するなど、トラブルが相次ぎ、2011年7月にアルコール・薬物依存からの復帰プログラムを再開した。
2012年2月11日、ホイットニーは、カリフォルニア州のビバリーヒルトン・ホテル4階客室の浴槽の中に倒れていたところを発見され、死亡が確認された。48歳だった。彼女は、グラミー賞の授賞式を翌日に控え、クライヴ・デイヴィスが主催する恒例の前夜パーティに参加するために、同ホテルに滞在していた。死因は浴室での不慮の溺死であり、遺体からコカインが検出された。
最後は悲しい死だった。これほどの声量と魅力的な歌声を持ちながら、その人生は決して平たんなものではなかった。実の父親がホイットニーの会社で働いていたが、彼女の稼ぎを使い込んでいたことがわかり、結婚したボビー・ブラウンは色々事件を起こしたり、浮気が発覚したり、ついには離婚に至った。
そして、麻薬との闘いがあった。麻薬は一度使うと止められなくなるという。この映画とは関係ないが、現代の若者が、麻薬を断ち切るために過ごすリハビリ施設のドキュメントをみたことがあるが、麻薬を使わないで1日過ごすことが、ものすごく大変なのだそうだ。それほど薬の誘惑は激しいものがあるのだそうだ。
ホイットニーが居た時代は、イギリス勢が席巻しミュージック・ビデオが隆盛を誇り、ハード・ロックが台頭しヒップホップの本格的胎動が始まる時代だった。
クライヴ・デイヴィスは、ホイットニーを、ゴスペルのルーツを土台に、卓抜した技量と何よりも豊かな感情表現を持つ唯一無二のヴォーカリストに育て上げた。
亡くなりかたこそかわいそうだったが、歌うことが生きることだったホットニーは、やはり幸せな人だったと思う。こんなにもすばらしい曲をたくさん残すことができて、私たちを感動させたり、喜ばせたりできるのは、やはり並大抵の人間ではないだろう。一般的な幸せの規準には当てはまらないけれど、私は彼女の歌を聴くと、感動するし楽しくなる。きっと天国でも、多くの仲間を歌で喜ばせていることだろう。もちろん、現代でもホイットニーからパワーをもらう人はたくさんいるに違いない。
映画はホイットニー・ヒューストンの魅力やすばらしい歌声を感じることができるし、ドラマティックな人生も楽しめると思う。ぜひ映画の世界に浸ってほしいと思っている。
原題:Whitney Houston: I Wanna Dance with Somebody
監督:ケイシー・レモンズ 出演:ナオミ・アッキー、 スタンリー・トゥッチ、
アシュトン・サンダース、 タマラ・チュニー
2022年製作/144分/PG12/アメリカ
Whitney Houston: I Wanna Dance with Somebodyのトレイラー
「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」のナオミ・アッキーが主演を務め、ホイットニー・ヒューストンを見いだした伝説の音楽プロデューサー、クライブ・デイヴィスを「プラダを着た悪魔」のスタンリー・トゥッチが演じる。この二人、最高にいい演技だった。

クライブ・デイヴィス(スタンリー・トゥッチ)&ホイットニー・ヒューストン(ナオミ・アッキー)
ホイットニー(ナオミ・アッキー)は、11歳の時にジュニア・ゴスペル・クワイアに入り、教会で歌い始めた。ニューヨークのナイトクラブで、母親とパフォーマンスをしていたところを、アリスタ・レコードの社長クライヴ・デイヴィス(スタンリー・トゥッチ)にスカウトされた。
1985年のデビュー・アルバム「そよ風の贈りもの」(Saving All My Love for You)は大ヒットとなった。
ホイットニーの母親シシー・ヒューストンは、スイート・インスピレーションズ のリード・ボーカルで、後にはエルヴィス・プレスリーやアレサ・フランクリンのツアーにバック・コーラスとしても参加していた。そして、ホイットニーにとっては、仕事をする上での大きな支えとなった。のちに夫(ホットニーの父親)とは離婚している。

シシー・ヒューストン(タマラ・チュニー)
ホイットニーは、1991年の第25回スーパーボウルで試合前に国歌を斉唱。この斉唱は史上最高の国歌斉唱と絶賛された。後にシングルとしても発売され、またその10年後にアメリカ同時多発テロ事件のチャリティとして再リリースされ、ヒットしている。
ホイットニーの国歌斉唱
1992年には、初主演映画「ボディガード」が公開される。映画のサウンドトラックは1994年のグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞するなど、高い評価を受け、アルバムからのリカット・シングル「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は自身最大のヒットとなった。
これはとてもおもしろい、いい映画でしたね。映画の中では、ホイットニーは最初「ボディーガード」に出演することには乗り気じゃなかったのに、相手役がケビン・コスナーと聞いて二つ返事でOKするという場面がでて来ます。お茶目ですね。
ホイットニーは同年R&B歌手、ボビー・ブラウンと結婚。翌年には一人娘ボビー・クリスティーナ・ブラウンを出産した。

ホイットニー&ボビー・ブラウン(アシュトン・サンダース)
1998年、オリジナルアルバムとしては実に7年ぶりとなる『マイ・ラヴ・イズ・ユア・ラヴ』をリリース。翌年にはVH1 Divas Live 99に出演して高評価を得るなど、再び歌手活動を本格化させた。
My Love Is Your Love
2000年にベスト・アルバム『ザ・グレイテスト・ヒッツ』を発売したが、このころ、大麻所持で拘束された。健康を害し、その後大麻やコカイン等の常用を告白している。夫のボビー・ブラウンも暴行などで度々逮捕され、浮気も発覚。
2004年から、クライブ・デイヴィスのアドバイスにより、リハビリ生活を続けた。娘とプールで楽しそうに泳いだり。けれども、2006年、ボビー・ブラウンとの結婚生活に終止符を打つ。
2008年6月には年末にクライヴ・デイヴィスのプロデュースの元、ニュー・アルバムをリリースすると発表した。しかし、この発売は延期され、実際には8月31日、米国アルバム『アイ・ルック・トゥ・ユー(英語版)』が発売され、1週目で30万枚以上を売り上げビルボード200の初登場1位を獲得、復活を果たした。
2010年2月の東京公演を皮切りに11年ぶりのワールドツアーも実施した。 しかしコンサートで息が切れ
たり、呼吸器の感染症で入院するなど、トラブルが相次ぎ、2011年7月にアルコール・薬物依存からの復帰プログラムを再開した。
2012年2月11日、ホイットニーは、カリフォルニア州のビバリーヒルトン・ホテル4階客室の浴槽の中に倒れていたところを発見され、死亡が確認された。48歳だった。彼女は、グラミー賞の授賞式を翌日に控え、クライヴ・デイヴィスが主催する恒例の前夜パーティに参加するために、同ホテルに滞在していた。死因は浴室での不慮の溺死であり、遺体からコカインが検出された。
最後は悲しい死だった。これほどの声量と魅力的な歌声を持ちながら、その人生は決して平たんなものではなかった。実の父親がホイットニーの会社で働いていたが、彼女の稼ぎを使い込んでいたことがわかり、結婚したボビー・ブラウンは色々事件を起こしたり、浮気が発覚したり、ついには離婚に至った。
そして、麻薬との闘いがあった。麻薬は一度使うと止められなくなるという。この映画とは関係ないが、現代の若者が、麻薬を断ち切るために過ごすリハビリ施設のドキュメントをみたことがあるが、麻薬を使わないで1日過ごすことが、ものすごく大変なのだそうだ。それほど薬の誘惑は激しいものがあるのだそうだ。
ホイットニーが居た時代は、イギリス勢が席巻しミュージック・ビデオが隆盛を誇り、ハード・ロックが台頭しヒップホップの本格的胎動が始まる時代だった。
クライヴ・デイヴィスは、ホイットニーを、ゴスペルのルーツを土台に、卓抜した技量と何よりも豊かな感情表現を持つ唯一無二のヴォーカリストに育て上げた。
亡くなりかたこそかわいそうだったが、歌うことが生きることだったホットニーは、やはり幸せな人だったと思う。こんなにもすばらしい曲をたくさん残すことができて、私たちを感動させたり、喜ばせたりできるのは、やはり並大抵の人間ではないだろう。一般的な幸せの規準には当てはまらないけれど、私は彼女の歌を聴くと、感動するし楽しくなる。きっと天国でも、多くの仲間を歌で喜ばせていることだろう。もちろん、現代でもホイットニーからパワーをもらう人はたくさんいるに違いない。
映画はホイットニー・ヒューストンの魅力やすばらしい歌声を感じることができるし、ドラマティックな人生も楽しめると思う。ぜひ映画の世界に浸ってほしいと思っている。
原題:Whitney Houston: I Wanna Dance with Somebody
監督:ケイシー・レモンズ 出演:ナオミ・アッキー、 スタンリー・トゥッチ、
アシュトン・サンダース、 タマラ・チュニー
2022年製作/144分/PG12/アメリカ
Whitney Houston: I Wanna Dance with Somebodyのトレイラー
スペンサー ‐ダイアナの決意‐ [外国映画]
ダイアナさんは、なぜ亡くなったのだろう、その疑問はいつまでも心の片隅にあります。

この作品は、「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」のパブロ・ラライン監督がメガホンをとり、ダイアナ妃が、その人生を変える決断をしたといわれる、1991年のエリザベス女王の私邸サンドリガム・ハウスでのクリスマス休暇の3日間を描く。

ラライン監督は「ダイアナ妃のキャラクターを作っていく上で常に心掛けていたことは、彼女がもつミステリアスな面と脆い面をバランスよく捉えて、彼女の内面的な世界を作り上げることだった」と言っている。ダイアナさんが美しく壊れていくシーンを切り取っていて、映像で描かれるのはすべてダイアナ妃の幻想であり、王室に閉じ込められていると感じるその心の中を映像化している。
作品中、子どもから大人になるまでのダイアナさんが、力いっぱい、楽し気に人生を歩んでいる様子が描かれる場面がある。彼女はとても幸せな、子どもらしい子ども時代を過ごしていた。
運命が一転したのは、ダイアナさんが英王室に嫁ぐことが決まってからである。絢爛豪華な結婚式の後に待っていたのは、王室のしきたりを重圧と感じ、それがストレスとなっていったこと。そして、チャールズ皇太子の愛人問題であった。

この作品は、ダイアナさんの心象風景を描いているので、かなり不思議な雰囲気があり、映像もミステリアスです。私は面白いと思いました。

ドキュメンタリーでは、彼女の結婚式風景やパパラッチに追いかけられているところなどが、繰り返し放映されますので、私は彼女の心の中は知るよしもなかったです。
映画はダイアナさんが主人公で、しきたりの重圧や夫の不倫の発覚などによって、拒食症になり苦しむ様子が、つぶさに描かれます。どんなに苦しかったかがよくわかりました。

ダイアナ妃は幼い頃よりバレエを習っていて、ダンスを愛していたという事実もよく知られているそうです。人気ドラマ「ザ・クラウン」シーズン4でも、大勢の前でダンスを披露するシーンが登場し、そのシーンは実際にあった出来事となっており、2500人もの観客の前で、サプライズでダンスを披露したダイアナ妃に、チャールズ皇太子は苦虫を噛み潰したような顔をしていたという逸話もあります。


ダイアナさんにとっての唯一の救いは、二人の王子と過ごす時間だったようだ。だからこそ、かろうじて、自分を保っていたのだろう。
よくぞ離婚したと思ったのに、若くして亡くなったのがとても残念です。映画では、最後までは描かれません。
主演のクリステン・スチュワートは、ほんとうにダイアナ妃そのものだった。彼女はアメリカ人なので、ダイアナ妃のクイーンズイングリッシュをものにするのに、大変苦労したようだ。表情が本当によく似ていた。ラライン監督は、クリステンはダイアナ妃がもっていたミステリアスな雰囲気を持つ、数少ない女優だと言っている。クリステン・スチュワートは、第94回アカデミー賞(2022年)の主演女優賞にノミネートされています。
この作品のダイアナ妃の衣装は、全て「シャネル」が手掛けました。すばらしい衣装でした。
ダイアナさんが亡くなったとき、実兄のスペンサー氏が、「ダイアナは英王室に殺された」と、TVのインタビューで答えておられたのが、印象的でした。

本物のダイアナ妃
原題:Spencer 監督:パブロ・ラライン 出演:クリステン・スチュワート、サリー・ホーキンス、
ショーン・ハリスetc.
2021年製作/117分/G/ドイツ・イギリス合作

この作品は、「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」のパブロ・ラライン監督がメガホンをとり、ダイアナ妃が、その人生を変える決断をしたといわれる、1991年のエリザベス女王の私邸サンドリガム・ハウスでのクリスマス休暇の3日間を描く。

ラライン監督は「ダイアナ妃のキャラクターを作っていく上で常に心掛けていたことは、彼女がもつミステリアスな面と脆い面をバランスよく捉えて、彼女の内面的な世界を作り上げることだった」と言っている。ダイアナさんが美しく壊れていくシーンを切り取っていて、映像で描かれるのはすべてダイアナ妃の幻想であり、王室に閉じ込められていると感じるその心の中を映像化している。
作品中、子どもから大人になるまでのダイアナさんが、力いっぱい、楽し気に人生を歩んでいる様子が描かれる場面がある。彼女はとても幸せな、子どもらしい子ども時代を過ごしていた。
運命が一転したのは、ダイアナさんが英王室に嫁ぐことが決まってからである。絢爛豪華な結婚式の後に待っていたのは、王室のしきたりを重圧と感じ、それがストレスとなっていったこと。そして、チャールズ皇太子の愛人問題であった。

この作品は、ダイアナさんの心象風景を描いているので、かなり不思議な雰囲気があり、映像もミステリアスです。私は面白いと思いました。

ドキュメンタリーでは、彼女の結婚式風景やパパラッチに追いかけられているところなどが、繰り返し放映されますので、私は彼女の心の中は知るよしもなかったです。
映画はダイアナさんが主人公で、しきたりの重圧や夫の不倫の発覚などによって、拒食症になり苦しむ様子が、つぶさに描かれます。どんなに苦しかったかがよくわかりました。

ダイアナ妃は幼い頃よりバレエを習っていて、ダンスを愛していたという事実もよく知られているそうです。人気ドラマ「ザ・クラウン」シーズン4でも、大勢の前でダンスを披露するシーンが登場し、そのシーンは実際にあった出来事となっており、2500人もの観客の前で、サプライズでダンスを披露したダイアナ妃に、チャールズ皇太子は苦虫を噛み潰したような顔をしていたという逸話もあります。


ダイアナさんにとっての唯一の救いは、二人の王子と過ごす時間だったようだ。だからこそ、かろうじて、自分を保っていたのだろう。
よくぞ離婚したと思ったのに、若くして亡くなったのがとても残念です。映画では、最後までは描かれません。
主演のクリステン・スチュワートは、ほんとうにダイアナ妃そのものだった。彼女はアメリカ人なので、ダイアナ妃のクイーンズイングリッシュをものにするのに、大変苦労したようだ。表情が本当によく似ていた。ラライン監督は、クリステンはダイアナ妃がもっていたミステリアスな雰囲気を持つ、数少ない女優だと言っている。クリステン・スチュワートは、第94回アカデミー賞(2022年)の主演女優賞にノミネートされています。
この作品のダイアナ妃の衣装は、全て「シャネル」が手掛けました。すばらしい衣装でした。
ダイアナさんが亡くなったとき、実兄のスペンサー氏が、「ダイアナは英王室に殺された」と、TVのインタビューで答えておられたのが、印象的でした。

本物のダイアナ妃
原題:Spencer 監督:パブロ・ラライン 出演:クリステン・スチュワート、サリー・ホーキンス、
ショーン・ハリスetc.
2021年製作/117分/G/ドイツ・イギリス合作
エルヴィス [外国映画]

「キング・オブ・ロックンロール」、エルヴィス・プレスリーの人生を、「ムーラン・ルージュ」「華麗なるギャツビー」のバズ・ラーマン監督のメガホンで映画化。

エルヴィス・プレスリーは知っていたが、太っていて、派手な衣装を着ていた歌手、ぐらいの印象だった。もちろん、「好きにならずにいられない」「Love Me Tender」という名曲は知っていたが、ほとんど関心がなかった。
何年前か忘れたが、エルヴィスブームがまたやってきて、小泉元首相がエルヴィスファンで自分でセレクトしたアルバムを出したりして、すごく人気のあった人なんだなと感心したりしていた。

エルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)
今回の映画は、主演がアメリカ人のオースティン・バトラー、30歳。歌もオースティンが歌っていて、腰を小刻みに揺らし、つま先立ちする独特でセクシーなダンスを交えたパフォーマンスでロックを熱唱するエルヴィスの姿を再現。

「世界で最も売れたソロアーティスト」としてギネス認定もされているエルヴィス・プレスリーに、女性客を中心とした若者たちは興奮し、小さなライブハウスから始まった熱狂はたちまち全米に広がっていった。

エルヴィスとマネージャーのトム・パーカー(トム・ハンクス)
しかし、瞬く間にスターとなった一方で、保守的な価値観しか受け入れられなかった時代に、ブラックカルチャーを取り入れたパフォーマンスは世間から非難を浴びてしまう。やがて故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムでライブを行うことになったエルビスだったが、会場は警察に監視された。

マネージャー、トム・パーカー(トム・ハンクス)
エルヴィスのマネージャー、トム・パーカーを、トム・ハンクスが演じているが、強欲でエルヴィスを翻弄する悪人として登場。実物に似せるため激太りした。まったくトム・ハンクスとは思えなかった。役者魂というは、すごいものだ。

エルヴィス(オースティン・バトラー)とプリシラ(オリビア・デヨング)
1958年1月20日に、プレスリーはアメリカ陸軍への徴兵通知を受けた。彼は西ドイツのアメリカ軍に入隊する。そこで、エルヴィスはプリシラ・アン・ボーリューと知り合う。プリシラは、エルヴィスの所属部隊の部隊長の継子だった。
彼は1960年3月5日に満期除隊しアメリカに戻り、1968年にプリシラと結婚する。(しかし、4年後の1972年には離婚)

本物のエルヴィスとプリシラ、そして娘のリサ(1986)(写真はウィキペディアより)
エルヴィスは、ますますステージにエネルギーを注ぐようになるが、お金のことや仕事の方向性などは、すべてマネージャーのトム・パーカーに任せっきりだった。そしてトムは、エルヴィスの出演料の50%を自分のものとし、エルヴィスが体調が悪くても、専任の医者に注射をさせ、彼を休ませることはなかった。その薬は、違法なものは使っていなかったが、エルヴィスの身体には合っていないので、彼はいつも不調をかかえていたという。

エルヴィスは、ヨーロッパの国々や日本でツアーをしたいという希望を抱いていて、イギリス系のマネージングを手掛ける2人の男性に会い、そのことを彼らに語った。二人はぜひエルヴィスの望むところで、ツアーができるよう手を貸すといった。しかし彼らとの契約は、トム・パーカーによって阻止された。

トム・パーカーは、ラスベガスのホテルでエルヴィスのショーを行う契約を、本人の承諾を得ず更新し続けていて、もしその契約を破ったら、多額の違約金を支払わなくてはならない状態にしていた。
映画では、トムがエルヴィスのことを心配するのではなく、どんなに体調が悪くてもステージに立たせるために、医者に投薬させたり注射させたりを繰り返していたように描かれていた。

エルヴィスの自宅グレイスランド(テネシー州メンフィス)
1977年、エルヴィスはテネシー州メンフィスの自宅グレイスランドで突如亡くなった。死因は、処方薬の極端な誤用による不整脈だったそうだ。スターとして人気絶頂のなかの死は、世界中に驚きを持って知らされた。
彼の没後、遺族はトム・パーカーを訴え、トムは処分を受けたとのことである。

ビートルズやクイーンにも影響を与えたすばらしいロック歌手エルヴィス・プレスリー。そのお墓には、今もファンの人々が花を絶やすことがない。
これは本当に悲しい映画だった。優れた才能がありながら、悪いマネージャーに操られて、非業の死を遂げたエルヴィスの孤独を思うと胸が痛む。
比較するのもなんだが、クイーンのフレディ・マーキュリーも、悪いマネージャーに操られた時期もあり、エイズという不治の病に苦しんだが、紆余曲折はあったものの、信頼できる仲間に支えられて、最後までやりたい仕事を続けることができたのは、本当に幸せだったと思う。
エルヴィスはやりたいことをやり切れずに亡くなったが、その魅力的な歌声とすばらしいメロディーは、これからも多くの人々に語り継がれることだろう。
映画のトレイラー。オースティン・バトラーのなりきり振りをご覧ください。
本物のエルヴィスの歌もどうぞ。
「好きにならずにいられない」
「監獄ロック」
「ラブ・ミー・テンダー」
原題:Elvis 監督:バズ・ラーマン 出演:オースティン・バトラー、 トム・ハンクス、
ヘレン・トムソン、 リチャード・ロクスバーグ、 オリビア・デヨングetc.
2022年製作/159分/G/アメリカ
ハウス・オブ・グッチ (House of Gucci) [外国映画]
ファッションの世界は、浮き沈みが激しいと思う。「Gucci」という高級ブランドを創業し、超一流ブランドに押し上げた一族だが、それを維持していくのは、親戚関係だけでは誠に難しいことなのだということがよく理解できた。といっても、この作品はサスペンスドラマで、キャスティングがすばらしく、しかもグッチのファッションを主演のレディ・ガガとアダム・ドライバー、そして他の俳優陣もが素敵に着こなしているので、とても楽しめた。

この並びの俳優陣、誰が誰だかわかりますか?左から、
ジャレッド・レト、アル・パチーノ、レディー・ガガ、アダム・ドライバー、ジェレミー・アイアンズ
ファッションブランド「GUCCI(グッチ)」の創業者一族の崩壊を描いたサスペンスドラマです。監督はリドリー・スコット、原作はサラ・ゲイ・フォーデン。世界のトレンドを作り出すファッションブランドのファミリーヒストリー(実話)をもとに映画化された話題作です。

グッチ創業一族の三代目マウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)は、パーティーで知り合った一般女性パトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)と結婚し、乗り気ではなかったファッションビジネスに乗り出した。彼は元々弁護士になりたかったが、妻パトリツィアの勧めもあって、家業に乗り出すことにした。

アダム・ドライバーといえば、スター・ウォーズのカイロ・レンのイメージが強いと思いますが、
こんなファッショナブルな男性の役もこなせるなんて、ちょっと素敵ですね。

アダム・ドライバーとレディー・ガガ
たぶん、撮影の合間のツーショットだとおもいます。レディー・ガガの黒の衣装がセンスいいですね。レディー・ガガは、撮影の間中、写真には笑顔で写らないと決めていたそうです。というのも、彼女は悪女を演じるので、笑顔は要らないと思っていたとのこと。それだけ徹底して役に打ち込んでいたのでしょうね。

映画のポスターやトレイラーを見ただけでは、レディー・ガガが演じるグッチ家に嫁ぐ女性(パトリツィア)のファッションのインパクトが強い。けれども話が進むにつれてグッチ家の人々のファッションが、それぞれの役柄を表現しているようだった。どの俳優さんもとてもおしゃれでよかった。

パトリツィア(レディ・ガガ)とパオロ・グッチ(ジャレッド・レト)
このパオロを演じる俳優が、ジャレッド・レトとは誰も気づかないでしょうね。J・レトは役を創り込むので有名な人で、このパオロ役も特殊メイクをほどこしているそうです。毎日6時間もかけて、メイクしたとのこと、すごいですね。ちなみにパオロはグッチのデザイナーの1人です。
ところで、次の人は誰でしょう。アル・パチーノです。最初はわからなかったのですが、アルド・グッチ(長男)を演じています。先ほどのパオロ・グッチの父親ですが、パオロとは衝突し、それがブランドに不協和音をもたらします。

アルド・グッチ(アル・パチーノ)

正真正銘のグッチブランドですね。

グッチ家は三代でイタリアのファッション業界のトップにのぼり詰めた。けれども、そのブランドが現在は創業家の人が一人もいないコングロマリット(企本来の業種とは関係のない業種の企業を買収合併して巨大化した複業企業)のなかの1ブランドになってしまった。それは、イタリア的な家族愛の二面性がかみ合った結果ともいえる。

家族を大事にして、株式を他の企業に売り渡すまいとするけれども、結局はお金に困った者が株式を他の業種に売り渡して、なしくずしに家族経営ができないようになってしまう。マウリツィオ・グッチもスキー場で知り合った女性と不倫関係に陥り、他に経営を任せて、大金がころがりこんだので、贅を極めた生活に没頭する。それを、そのときの経営者から指摘されても、一向に反省しようとしない。

マウリツィオの不倫相手のカミーユ(パオラ・フランキ)
ブランドのデザインもだんだん人気がなくなって、買収企業からトム・フォードというアメリカのテキサス出身の新進気鋭のデザイナーを起用することを提案される。グッチ家は不満だったが、トム・フォードはグッチブランドのクリエイティブ・ディレクターとして、活躍する。

言い争いをするマウリツィオとパトリツィア
こうして二人は悲劇的な最終章へと突入するのだった。こんな事実があったとは、つゆ知らずだった。人間の憎しみとは、本当に怖いものだ。

左から二人目(ブルーのスーツ)がジャレッド・レト、真ん中の紫の衣装がレディー・ガガ
パトリツィアは、結婚当初グッチ家に入っていこうと努力したが、一族から無視されたりした。自分なりに、かなりがんばったのだろうが、最後はマウリツィオが不倫して捨てられそうになる。相当かわいそうな人ともいえるけれど、人間怒りをためこむと本当によくないことになる。気を付けなくては。
(映像は映画com.のサイトからお借りしました)
原題:House of Gucci 原作:「ハウス・オブ・グッチ」(ノンフィクション小説)
著者:サラ・ゲイ・フォーデン
監督:リドリー・スコット 出演:レディー・ガガ、 アダム・ドライバー、 アル・パチーノ、
ジェレミー・アイアンズ、 ジャレッド・レト、 パオラ・フランキetc.
2021年製作/159分/PG12/アメリカ

この並びの俳優陣、誰が誰だかわかりますか?左から、
ジャレッド・レト、アル・パチーノ、レディー・ガガ、アダム・ドライバー、ジェレミー・アイアンズ
ファッションブランド「GUCCI(グッチ)」の創業者一族の崩壊を描いたサスペンスドラマです。監督はリドリー・スコット、原作はサラ・ゲイ・フォーデン。世界のトレンドを作り出すファッションブランドのファミリーヒストリー(実話)をもとに映画化された話題作です。

グッチ創業一族の三代目マウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)は、パーティーで知り合った一般女性パトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)と結婚し、乗り気ではなかったファッションビジネスに乗り出した。彼は元々弁護士になりたかったが、妻パトリツィアの勧めもあって、家業に乗り出すことにした。

アダム・ドライバーといえば、スター・ウォーズのカイロ・レンのイメージが強いと思いますが、
こんなファッショナブルな男性の役もこなせるなんて、ちょっと素敵ですね。

アダム・ドライバーとレディー・ガガ
たぶん、撮影の合間のツーショットだとおもいます。レディー・ガガの黒の衣装がセンスいいですね。レディー・ガガは、撮影の間中、写真には笑顔で写らないと決めていたそうです。というのも、彼女は悪女を演じるので、笑顔は要らないと思っていたとのこと。それだけ徹底して役に打ち込んでいたのでしょうね。

映画のポスターやトレイラーを見ただけでは、レディー・ガガが演じるグッチ家に嫁ぐ女性(パトリツィア)のファッションのインパクトが強い。けれども話が進むにつれてグッチ家の人々のファッションが、それぞれの役柄を表現しているようだった。どの俳優さんもとてもおしゃれでよかった。

パトリツィア(レディ・ガガ)とパオロ・グッチ(ジャレッド・レト)
このパオロを演じる俳優が、ジャレッド・レトとは誰も気づかないでしょうね。J・レトは役を創り込むので有名な人で、このパオロ役も特殊メイクをほどこしているそうです。毎日6時間もかけて、メイクしたとのこと、すごいですね。ちなみにパオロはグッチのデザイナーの1人です。
ところで、次の人は誰でしょう。アル・パチーノです。最初はわからなかったのですが、アルド・グッチ(長男)を演じています。先ほどのパオロ・グッチの父親ですが、パオロとは衝突し、それがブランドに不協和音をもたらします。

アルド・グッチ(アル・パチーノ)

正真正銘のグッチブランドですね。

グッチ家は三代でイタリアのファッション業界のトップにのぼり詰めた。けれども、そのブランドが現在は創業家の人が一人もいないコングロマリット(企本来の業種とは関係のない業種の企業を買収合併して巨大化した複業企業)のなかの1ブランドになってしまった。それは、イタリア的な家族愛の二面性がかみ合った結果ともいえる。

家族を大事にして、株式を他の企業に売り渡すまいとするけれども、結局はお金に困った者が株式を他の業種に売り渡して、なしくずしに家族経営ができないようになってしまう。マウリツィオ・グッチもスキー場で知り合った女性と不倫関係に陥り、他に経営を任せて、大金がころがりこんだので、贅を極めた生活に没頭する。それを、そのときの経営者から指摘されても、一向に反省しようとしない。

マウリツィオの不倫相手のカミーユ(パオラ・フランキ)
ブランドのデザインもだんだん人気がなくなって、買収企業からトム・フォードというアメリカのテキサス出身の新進気鋭のデザイナーを起用することを提案される。グッチ家は不満だったが、トム・フォードはグッチブランドのクリエイティブ・ディレクターとして、活躍する。

言い争いをするマウリツィオとパトリツィア
こうして二人は悲劇的な最終章へと突入するのだった。こんな事実があったとは、つゆ知らずだった。人間の憎しみとは、本当に怖いものだ。

左から二人目(ブルーのスーツ)がジャレッド・レト、真ん中の紫の衣装がレディー・ガガ
パトリツィアは、結婚当初グッチ家に入っていこうと努力したが、一族から無視されたりした。自分なりに、かなりがんばったのだろうが、最後はマウリツィオが不倫して捨てられそうになる。相当かわいそうな人ともいえるけれど、人間怒りをためこむと本当によくないことになる。気を付けなくては。
(映像は映画com.のサイトからお借りしました)
原題:House of Gucci 原作:「ハウス・オブ・グッチ」(ノンフィクション小説)
著者:サラ・ゲイ・フォーデン
監督:リドリー・スコット 出演:レディー・ガガ、 アダム・ドライバー、 アル・パチーノ、
ジェレミー・アイアンズ、 ジャレッド・レト、 パオラ・フランキetc.
2021年製作/159分/PG12/アメリカ
ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen ) [外国映画]
このミュージカル映画のテーマは「心の病」です。これは数々の賞を受賞したブロードウェイミュージカルを映画化したものです。一昔前のミュージカルだったら、心の病をテーマにしたものは考えられなかったと思います。恋愛や文芸作品やファンタスティックなものがテーマでした。「ディア・エヴァン・ハンセン」は、とても現代的なテーマの作品です。

学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいる少年エヴァン(ベン・プラット)は孤独だった。彼は、カウンセラーから自分自身に手紙を書くようにと勧められる。「Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を自分に書いて、自身を見つめなおすのだ。

コナー・マーフィー(コントン・ライアン)&エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)
ある日エヴァンは、自分宛てに書いた手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。この手紙は、エヴァンの心の声が書かれた、誰にも見られたくないものだった。コナーは、友人や家族に対して、大声で威喝したり、怒鳴ったりする性質をもっていて、いつも感情が安定しない若者だった。
エヴァンは手紙を取り返すことができなくて、困っていた。ところが後日、エヴァンは校長から呼び出され、コナーが自ら命を絶った事を知らされる。
悲しみに暮れるコナーの両親は、息子が持っていたエヴァンの手紙を見つけ、彼とエヴァンが親友だったと思い込む。

コナーの家族 義父ラリー(ダニ・ピノ)母シンシア(エイミー・アダムス)、妹ゾーイ(エイトリン・デバー)
エヴァンはコナーの家族をこれ以上苦しめたくなくて、思わず話を合わせてしまう。そして促されるままに語った「想像上のコナーとの思い出」は学校の同級生や先生などの心を打ち勇気を与え、SNSを通じて世界中に広がっていく。


エヴァンの嘘の話に感動して、心の病を抱えた人を助ける色々なプロジェクトを、立ち上げる同級生たち
思いがけず人気者になったエヴァンは心の底では良くないと思いながらも、コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)とも仲良くなり、充実した学校生活を送るが、思いやりでついた嘘は彼の人生を大きく動かし、やがて事態は思いもよらぬ方向に進む。

コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)&エヴァン(ベン・プラット)
(ゾーイはかわいいので、エヴァンは気に入っていたのだが、やはりエヴァンが嘘をついていたのがあだとなって、別れてしまう。まぁ、嘘から出たまこと的なことがあったのですが……。)
映画化にあたり、主演のエヴァン・ハンセン役を、ミュージカル版と同じくベン・プラットが務めた。劇中曲で唯一ステージ上でライブ演奏された「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」の歌唱シーンが収められている。この曲がすばらしいし、ベン・プラットの歌声も本当に美しい。
これは、エヴァンが多くの学生らが集まる講堂で行われたコナーの追悼式の舞台上で、「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」をささやき声で歌い始めるシーン。同曲は、グラミー賞を獲得したミュージカルアルバムの代表曲だ。歌詞にもあるように「どんなに孤独だと感じても、決して見捨てられたわけじゃない」というメッセージを届ける重要な場面となっている。
今までなら、こういうテーマの作品は普通の映画にしかなりえなかったと思う。しかしミュージカルに仕立てて、セリフの途中で歌いだすのが、少しも不自然ではなかったのが、すごいと思った。
さて、エヴァンはその後どうなったのか。彼はコナーの両親に気に入られ、大学入学の資金を出すといわれるが、エヴァンの母親でシングルマザーのハイディ(ジュリアン・ムーア)が自分のプライドにかけても、それはできないと断る。
個人的には、シングルマザーのハイディの気持ちはわかる気がします。自分の息子のことは自分が責任をもって解決してやりたいという思いでしょう。

ベン・プラット&エヴァンの母親ハイディ役のジュリアン・ムーア
それで一時彼ら二家族は、ちょっと嫌なムードになるが、SNSでエヴァンの話が拡散したことによってSNS上に、コナーが診療所のグループワークで静かにギターを弾く動画が誰かから挙げられ、コナーが感情の激しい性格を、何とかしようと努力していたことがわかる。二家族は和解し、事態は良い方向へと向かうのだった。
この映画がミュージカルではなくて、普通の作品になっていたら、かなり深刻なものになるだろうと思う。それをミュージカルにしたので、歌のお蔭でシビアな作品にはならなかった。観客にとっては観やすいものになっているのではないだろうか。
そして劇中で歌われる孤独な人々への応援歌「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」はとても心にしみる歌詞とメロディーでした。歌の力を感じるいい映画でした。
「YOU WILL BE FOUND」
(歌の埋め込みが遅れてすみませんでした。 ココより)
原題:Dear Evan Hansen 監督:スティーブン・チョボスキー 出演:ベン・プラット、
ケイトリン・デバー、 ジュリアン・ムーア、 エイミー・アダムス、 ダン・ピノ、
コントン・ライアンetc.
2021年製作/アメリカ

学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいる少年エヴァン(ベン・プラット)は孤独だった。彼は、カウンセラーから自分自身に手紙を書くようにと勧められる。「Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を自分に書いて、自身を見つめなおすのだ。

コナー・マーフィー(コントン・ライアン)&エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)
ある日エヴァンは、自分宛てに書いた手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。この手紙は、エヴァンの心の声が書かれた、誰にも見られたくないものだった。コナーは、友人や家族に対して、大声で威喝したり、怒鳴ったりする性質をもっていて、いつも感情が安定しない若者だった。
エヴァンは手紙を取り返すことができなくて、困っていた。ところが後日、エヴァンは校長から呼び出され、コナーが自ら命を絶った事を知らされる。
悲しみに暮れるコナーの両親は、息子が持っていたエヴァンの手紙を見つけ、彼とエヴァンが親友だったと思い込む。

コナーの家族 義父ラリー(ダニ・ピノ)母シンシア(エイミー・アダムス)、妹ゾーイ(エイトリン・デバー)
エヴァンはコナーの家族をこれ以上苦しめたくなくて、思わず話を合わせてしまう。そして促されるままに語った「想像上のコナーとの思い出」は学校の同級生や先生などの心を打ち勇気を与え、SNSを通じて世界中に広がっていく。


エヴァンの嘘の話に感動して、心の病を抱えた人を助ける色々なプロジェクトを、立ち上げる同級生たち
思いがけず人気者になったエヴァンは心の底では良くないと思いながらも、コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)とも仲良くなり、充実した学校生活を送るが、思いやりでついた嘘は彼の人生を大きく動かし、やがて事態は思いもよらぬ方向に進む。

コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)&エヴァン(ベン・プラット)
(ゾーイはかわいいので、エヴァンは気に入っていたのだが、やはりエヴァンが嘘をついていたのがあだとなって、別れてしまう。まぁ、嘘から出たまこと的なことがあったのですが……。)
映画化にあたり、主演のエヴァン・ハンセン役を、ミュージカル版と同じくベン・プラットが務めた。劇中曲で唯一ステージ上でライブ演奏された「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」の歌唱シーンが収められている。この曲がすばらしいし、ベン・プラットの歌声も本当に美しい。
これは、エヴァンが多くの学生らが集まる講堂で行われたコナーの追悼式の舞台上で、「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」をささやき声で歌い始めるシーン。同曲は、グラミー賞を獲得したミュージカルアルバムの代表曲だ。歌詞にもあるように「どんなに孤独だと感じても、決して見捨てられたわけじゃない」というメッセージを届ける重要な場面となっている。
今までなら、こういうテーマの作品は普通の映画にしかなりえなかったと思う。しかしミュージカルに仕立てて、セリフの途中で歌いだすのが、少しも不自然ではなかったのが、すごいと思った。
さて、エヴァンはその後どうなったのか。彼はコナーの両親に気に入られ、大学入学の資金を出すといわれるが、エヴァンの母親でシングルマザーのハイディ(ジュリアン・ムーア)が自分のプライドにかけても、それはできないと断る。
個人的には、シングルマザーのハイディの気持ちはわかる気がします。自分の息子のことは自分が責任をもって解決してやりたいという思いでしょう。

ベン・プラット&エヴァンの母親ハイディ役のジュリアン・ムーア
それで一時彼ら二家族は、ちょっと嫌なムードになるが、SNSでエヴァンの話が拡散したことによってSNS上に、コナーが診療所のグループワークで静かにギターを弾く動画が誰かから挙げられ、コナーが感情の激しい性格を、何とかしようと努力していたことがわかる。二家族は和解し、事態は良い方向へと向かうのだった。
この映画がミュージカルではなくて、普通の作品になっていたら、かなり深刻なものになるだろうと思う。それをミュージカルにしたので、歌のお蔭でシビアな作品にはならなかった。観客にとっては観やすいものになっているのではないだろうか。
そして劇中で歌われる孤独な人々への応援歌「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」はとても心にしみる歌詞とメロディーでした。歌の力を感じるいい映画でした。
「YOU WILL BE FOUND」
(歌の埋め込みが遅れてすみませんでした。 ココより)
原題:Dear Evan Hansen 監督:スティーブン・チョボスキー 出演:ベン・プラット、
ケイトリン・デバー、 ジュリアン・ムーア、 エイミー・アダムス、 ダン・ピノ、
コントン・ライアンetc.
2021年製作/アメリカ
007 ノータイム・トゥ・ダイ 2021 [外国映画]
ようやく日の目をみた「007ノータイム・トゥ・ダイ」ですが、6代目ジェームス・ボンドをを15年間演じてきたダニエル・クレイグが、いよいよ見納めとなります。

このポスターの、ジェームス・ボンドの背景にあるロケ地は、イタリア南部バジリカータ州に位置する「マテーラ」で、石器時代から人が暮らす洞窟住居が建ち並ぶ風光明媚な世界遺産の街。もちろん、ボンドはバイクで縦横無尽にこの美しい街を走り回ります。
前作「スペクター」では、孤児のジェームズと兄弟として育てられた男が黒幕だったことが判明したが、そこに殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィン(ラミ・マレック)との因縁も絡みあい、物語の展開は、観客の予想をはるかにこえるものとなる。

現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたボンドだが、CIA出身の旧友フィリックス・ライター(ジェフリー・ライト)が助けを求めにやってきたことから、またもや平穏な日常は終わりを告げ、新たな敵と対決することとなる。

ボンドの使命は、誘拐された科学者の救出で、新たな最新技術を有した黒幕を追うことになる。その前に「カジノ・ロワイヤル」でボンドと愛し合ったが、最後に亡くなってしまう恋人ヴェスパー(エヴァ・グリーン)のお墓参りをするシーンが出てくる。こういう感傷的なシーンは、今までになかったが、ここからが007アクションの始まりだった。

今回の007の恋人は、マドレーヌ(レア・セドゥー)。彼女は「007 スペクター」で初お目見えした。007の仇敵Mr.ホワイトの娘だが、ボンドに危ういところを助けられる。それから彼女の心には007が住み着いてしまうのだった。
レア・セドゥ―は、前回はモデルっぽい美しさだったが、今回はかわいい女の子のお母さんとして登場する。ジェームス・ボンドにまたもや危ないところを助けられるのだが、彼女は母親であり、彼の恋人であり、1人の女性であり、その表情も色々な風に変わるのが、とても魅力的だったと思う。



他のボンド・ガールもこの作品では、添え物的ではなく、大いに活躍していた。この中でも一番目立っていたのが、パロマという役を演じたアナ・デ・アルマス。

ジェームス・ボンドとパロマ(アナ・デ・アルマス)
パロマはジェームスと同じM16に属する諜報部員。イブニングドレス姿で、機関銃をぶっ放すのがとてもカッコよかった。

アナ・デ・アルマス
パロマ役のアナ・デ・アルマス以外にも、ナオミ・ハリスやラシャーナ・リンチなどの女優たちも活躍していた。007に最新の武器を提供したり、コンピューターを駆使してジェームスを手助けする「Q」のベン・ウィショーも健在だった。そして、007のボス「M」のレイフ・ファインズも。
そして後半に、あのクイーンの映画「ボヘミアン・ラプソディー」でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックが、殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィン役で登場する。

サフィン(ラミ・マレック)
見るからに不気味な人物で、ちょっとゾッとするような役柄だった。フレディ・マーキュリー役とのギャップが大きすぎな感じ。
そしてマドレーヌ(レア・セドゥ)とその娘が、サフィン(ラミ・マレック)の囚われの身となり、
007がサフィンと対決し、ものすごい戦いが繰り広げられるのだった。007はいったいどうなるのか、そしてマドレーヌと幼い娘の運命は……。ブルーアイを持つ女の子はいったい誰の子なのだろうか。

ダニエル・クレイグのジェームス・ボンドとこれでお別れかと思うと寂しい気がします。それほど、彼のボンドはカッコよく、不死身の男を体現していました。
やはり007シリーズはおもしろいですね。色々な要素が入っている玉手箱のような映画ではないでしょうか。風光明媚な風景、カッコいいアクション、最新のスタイリッシュな車、女性との恋の駆け引きなど、ワクワク感と、ストーリーも予想できないような展開で、他の映画ではなかなか見られないほどよくできていると思います。
ダニエル・クレイグはアクションが得意なので、かなりシリアスな作品になりましたが、意外と女性との恋愛もちゃんと描かれていますよね。そういうところが楽しいです。ただのアクションだけではない、娯楽映画としての面白さです。
また数年後に新しい007が登場するでしょう。いったい誰が新しいジェームス・ボンドを演じるのでしょうか。私は相当若い人だと期待しています。皆さんは誰が、新ボンドにふさわしいと思いますか。今人気が出てきている若い人か、それとも全くの新人か。色々考えながら楽しみに待ちたいと思っています。
原題:No Time to Die 監督:キャリー・ジョージ・フクナガ(「ビースト・オブ・ノー・ネーション」の日系アメリカ人)
出演:ダニエル・クレイグ、 ラミ・マレック、 レア・セドゥー、 ベン・ウィショー、
ナオミ・ハリス、 ロリー・キニア、 レイフ・ファインズ、 アナ・デ・アルマス、
ラシャーナ・リンチetc.
2021年製 アメリカ

このポスターの、ジェームス・ボンドの背景にあるロケ地は、イタリア南部バジリカータ州に位置する「マテーラ」で、石器時代から人が暮らす洞窟住居が建ち並ぶ風光明媚な世界遺産の街。もちろん、ボンドはバイクで縦横無尽にこの美しい街を走り回ります。
前作「スペクター」では、孤児のジェームズと兄弟として育てられた男が黒幕だったことが判明したが、そこに殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィン(ラミ・マレック)との因縁も絡みあい、物語の展開は、観客の予想をはるかにこえるものとなる。

現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたボンドだが、CIA出身の旧友フィリックス・ライター(ジェフリー・ライト)が助けを求めにやってきたことから、またもや平穏な日常は終わりを告げ、新たな敵と対決することとなる。

ボンドの使命は、誘拐された科学者の救出で、新たな最新技術を有した黒幕を追うことになる。その前に「カジノ・ロワイヤル」でボンドと愛し合ったが、最後に亡くなってしまう恋人ヴェスパー(エヴァ・グリーン)のお墓参りをするシーンが出てくる。こういう感傷的なシーンは、今までになかったが、ここからが007アクションの始まりだった。

今回の007の恋人は、マドレーヌ(レア・セドゥー)。彼女は「007 スペクター」で初お目見えした。007の仇敵Mr.ホワイトの娘だが、ボンドに危ういところを助けられる。それから彼女の心には007が住み着いてしまうのだった。
レア・セドゥ―は、前回はモデルっぽい美しさだったが、今回はかわいい女の子のお母さんとして登場する。ジェームス・ボンドにまたもや危ないところを助けられるのだが、彼女は母親であり、彼の恋人であり、1人の女性であり、その表情も色々な風に変わるのが、とても魅力的だったと思う。



他のボンド・ガールもこの作品では、添え物的ではなく、大いに活躍していた。この中でも一番目立っていたのが、パロマという役を演じたアナ・デ・アルマス。

ジェームス・ボンドとパロマ(アナ・デ・アルマス)
パロマはジェームスと同じM16に属する諜報部員。イブニングドレス姿で、機関銃をぶっ放すのがとてもカッコよかった。

アナ・デ・アルマス
パロマ役のアナ・デ・アルマス以外にも、ナオミ・ハリスやラシャーナ・リンチなどの女優たちも活躍していた。007に最新の武器を提供したり、コンピューターを駆使してジェームスを手助けする「Q」のベン・ウィショーも健在だった。そして、007のボス「M」のレイフ・ファインズも。
そして後半に、あのクイーンの映画「ボヘミアン・ラプソディー」でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックが、殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィン役で登場する。

サフィン(ラミ・マレック)
見るからに不気味な人物で、ちょっとゾッとするような役柄だった。フレディ・マーキュリー役とのギャップが大きすぎな感じ。
そしてマドレーヌ(レア・セドゥ)とその娘が、サフィン(ラミ・マレック)の囚われの身となり、
007がサフィンと対決し、ものすごい戦いが繰り広げられるのだった。007はいったいどうなるのか、そしてマドレーヌと幼い娘の運命は……。ブルーアイを持つ女の子はいったい誰の子なのだろうか。

ダニエル・クレイグのジェームス・ボンドとこれでお別れかと思うと寂しい気がします。それほど、彼のボンドはカッコよく、不死身の男を体現していました。
やはり007シリーズはおもしろいですね。色々な要素が入っている玉手箱のような映画ではないでしょうか。風光明媚な風景、カッコいいアクション、最新のスタイリッシュな車、女性との恋の駆け引きなど、ワクワク感と、ストーリーも予想できないような展開で、他の映画ではなかなか見られないほどよくできていると思います。
ダニエル・クレイグはアクションが得意なので、かなりシリアスな作品になりましたが、意外と女性との恋愛もちゃんと描かれていますよね。そういうところが楽しいです。ただのアクションだけではない、娯楽映画としての面白さです。
また数年後に新しい007が登場するでしょう。いったい誰が新しいジェームス・ボンドを演じるのでしょうか。私は相当若い人だと期待しています。皆さんは誰が、新ボンドにふさわしいと思いますか。今人気が出てきている若い人か、それとも全くの新人か。色々考えながら楽しみに待ちたいと思っています。
原題:No Time to Die 監督:キャリー・ジョージ・フクナガ(「ビースト・オブ・ノー・ネーション」の日系アメリカ人)
出演:ダニエル・クレイグ、 ラミ・マレック、 レア・セドゥー、 ベン・ウィショー、
ナオミ・ハリス、 ロリー・キニア、 レイフ・ファインズ、 アナ・デ・アルマス、
ラシャーナ・リンチetc.
2021年製 アメリカ
MINAMATA (ミナマタ) [外国映画]
ジョニー・デップが製作・主演を務めた作品です。水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いています。
私はずいぶん前にTVの水俣病のドキュメンタリー番組で、苦しむ人々や動物をの姿を延々と流しているのを観て、みるに忍びない気持ちになりました。
この作品はジョニー・デップの主演なので、行かないといけない、行きたいという想いから、ある程度覚悟していったのですが、映像がとても美しく、水俣病の人々や動物のシーンはパッパッと瞬間的に映しているので、思っていたよりイヤな感じはしませんでした。

1970年代のニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたフォト・ジャーナリストのユージン・スミス(ジョニー・デップ)が「LIFE」の編集長ボブ(ビル・ナイ)に、自分の回顧展のオープニング・スピーチで、最高の写真家だとスピーチしてくれと頼んでいる。だが、ボブは断る。というのも、スミスの最盛期は終わり、今はお金もなく、酒に溺れる日々を送っていたからだった。
そんなある日、日本のカメラマンと通訳のアイリーン[美波(みなみ)]がCM撮影のためユージンのスタジオにやってくる。
ユージンはアイリーンから、日本の大企業チッソが、熊本県水俣市の海に流す工場排水が原因で、病に苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。

アイリーン(美波)とジョニー・デップ
しかしユージンは第二次世界大戦のとき、沖縄戦の撮影のため来日し、大けがを負ったので、二度と日本には行かないと拒絶する。
けれどもユージンは、アイリーンが置いていった水俣の写真を見て言葉も出ないくらい驚いた。そして翌日「LIFE」の編集長ボブに水俣の写真を見せ「特集記事」をと迫る。最初はユージンを拒んでいたボブも事の深刻さに気付き、ユージンの申し出を受けるのだった。

ビル・ナイとジョニー・デップ
水俣市に到着したユージンとアイリーンを、松村夫妻(浅野忠信・岩瀬晶子)が自宅で温かく迎えた。

浅野忠信、 美波、 ジョニー・デップ
松村夫妻の長女のアキコも、胎児性水俣病で、夫妻はチッソを訴え出ていたが、チッソ側は「脳性マヒだ」と主張して、何の保証もしていない。松村は胸の内を語ってくれた。でもユージンがアキコの写真を撮りたいと願いでたとき、松村は頭をさげるのみだった。

加瀬亮
次の日、ユージンはチッソ闘争の中心メンバーの一人、キヨシ(加瀬亮)を紹介される。彼の息子シゲル(青木柚)も胎児性水俣病で、手足が不自由だった。しかし、シゲルはユージンのカメラに興味を示し、ユージンから貸してもらったカメラを手に、曲がった指先を駆使して、ユージンや海の風景を撮り始めるのだった。

ジョニー・デップ & 青木柚
チッソ工場の前では、キヨシ(加瀬亮)と一緒に闘争の先頭に立つ山崎(真田広之)が演説していた。彼は同志たちに、「声をあげて世界に訴えよう」と呼びかけるのだった。

真田広之
ユージンはアイリーンの協力で、海岸沿いに写真を現像するための小屋(暗室)を建てる。そして、二人はキヨシ(加瀬亮)とともに、チッソ水俣工場附属病院へ潜入し、水俣病ということで入院している、身体の変形やけいれんに苦しむ人々を撮影。さらに、ラボで動物実験レポートを発見し、チッソが15年前から廃水が水銀中毒を引き起こすと知っていたことを突き止める。

あるとき、チッソ工場の前で山崎(真田広之)の演説を取材していたユージンは、会社の職員に強引に社長(國村隼)の所へ連れていかれる。社長はユージンに5万ドルの札束と引き換えに、ネガを渡すように偉そうな態度で迫る。しかし彼は、その申し出を受けることは決してなかった。

ジョニー・デップ、 國村隼
ユージンは買収されそうになったことに怒りが爆発し、自分の暗室小屋で、身を粉にして写真のネガを引き延ばして、水俣病の現実を写真に焼き付ける作業に没頭する。

暗室での作業に没頭するユージン(ジョニー・デップ)とアイリーン(美波)
ようやくネガも写真の現像も整い、作品の出来栄えにも確信を持ったユージン。しかしその夜、何者かが暗室小屋に火を放ち、全てのものが焼き尽くされてしまう。

ユージンの落胆は大きく、一度は帰国も考えるが、振り返ってみると今やユージンは、水俣の人々の苦しみを自分のこととして感じていたのだった。そのとき、何者かがユージンに封筒を渡しに来て、走り去っていった。封筒の中身は、焼けたはずのネガフィルムだった。
ユージンは、最初に合った松村夫妻の長女のアキコを被写体とした写真を撮る決心をしていた。その写真は、後の世にも語り継がれる作品になった……。

本当にすばらしい映画だった。この映画については、水俣市は後援しないとか、熊本県は後援したとか色々な噂が流れていたので、水俣市で撮影できたのかなと疑問に思っていたところ、ロケ地は水俣ではなくセルビアとモンテネグロに70年代の水俣を再現したとのことだった。理由は、水俣の街そのものが、1970年代以降に大きく変化したためだった。
このロケ地の映像がとても美しく、日本としか思えなかった。そして、水俣病の人々の映像を見せつけるようなことはせず、ほんの瞬間をつなぎ合わせたような映像を何度か見せただけだった。こういう見せ方は、さすが映画だなと思った。
キャスティングが最高で、ジョニー・デップのうまさはもちろんのこと、ビル・ナイの編集長もよかったし(ジョニデとビル・ナイは「パイレーツ・オブ・カリビアン」で共演)、闘争のリーダーの真田広之の迫力ある演技、アイリーン役の美波も魅力的だった。その他の俳優たちも、誰もかれもが熱のこもったいい演技だった。
この水俣病の事件を映画にすることで、皆がよりわかりやすく、そして見やすくこの戦いを理解できると感じました。
そして人間の温かさや狡さ、親子の愛、男女の心が通じ合う瞬間などを映像は自然にみせてくれたと思います。
エンドロールでは、MAN-MADE DISASTERS(人為的な事件)として、世界各地で起こった(起こっている)公害などが一覧表として流されます。今も様々な国で色々な人々が苦しみ闘っているのだということを知り、愕然としました。
今作で、映画の力というものを、改めて感じました。本当にいい映画でした。音楽は坂本龍一さんで、彼は産業公害に強い関心を抱いている方なのだそうです。人の心を癒してくれるような美しい曲です。
(写真は「映画com.」からお借りしました)
原題:MINAMAYA 監督:アンドリュー・レヴィタス 出演:ジョニー・デップ、
真田広之、 美波、 加瀬亮、 浅野忠信、 岩瀬昌子、 青木柚、and ビル・ナイetc.
音楽:坂本龍一
2020年 アメリカ
私はずいぶん前にTVの水俣病のドキュメンタリー番組で、苦しむ人々や動物をの姿を延々と流しているのを観て、みるに忍びない気持ちになりました。
この作品はジョニー・デップの主演なので、行かないといけない、行きたいという想いから、ある程度覚悟していったのですが、映像がとても美しく、水俣病の人々や動物のシーンはパッパッと瞬間的に映しているので、思っていたよりイヤな感じはしませんでした。

1970年代のニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたフォト・ジャーナリストのユージン・スミス(ジョニー・デップ)が「LIFE」の編集長ボブ(ビル・ナイ)に、自分の回顧展のオープニング・スピーチで、最高の写真家だとスピーチしてくれと頼んでいる。だが、ボブは断る。というのも、スミスの最盛期は終わり、今はお金もなく、酒に溺れる日々を送っていたからだった。
そんなある日、日本のカメラマンと通訳のアイリーン[美波(みなみ)]がCM撮影のためユージンのスタジオにやってくる。
ユージンはアイリーンから、日本の大企業チッソが、熊本県水俣市の海に流す工場排水が原因で、病に苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。

アイリーン(美波)とジョニー・デップ
しかしユージンは第二次世界大戦のとき、沖縄戦の撮影のため来日し、大けがを負ったので、二度と日本には行かないと拒絶する。
けれどもユージンは、アイリーンが置いていった水俣の写真を見て言葉も出ないくらい驚いた。そして翌日「LIFE」の編集長ボブに水俣の写真を見せ「特集記事」をと迫る。最初はユージンを拒んでいたボブも事の深刻さに気付き、ユージンの申し出を受けるのだった。

ビル・ナイとジョニー・デップ
水俣市に到着したユージンとアイリーンを、松村夫妻(浅野忠信・岩瀬晶子)が自宅で温かく迎えた。

浅野忠信、 美波、 ジョニー・デップ
松村夫妻の長女のアキコも、胎児性水俣病で、夫妻はチッソを訴え出ていたが、チッソ側は「脳性マヒだ」と主張して、何の保証もしていない。松村は胸の内を語ってくれた。でもユージンがアキコの写真を撮りたいと願いでたとき、松村は頭をさげるのみだった。

加瀬亮
次の日、ユージンはチッソ闘争の中心メンバーの一人、キヨシ(加瀬亮)を紹介される。彼の息子シゲル(青木柚)も胎児性水俣病で、手足が不自由だった。しかし、シゲルはユージンのカメラに興味を示し、ユージンから貸してもらったカメラを手に、曲がった指先を駆使して、ユージンや海の風景を撮り始めるのだった。

ジョニー・デップ & 青木柚
チッソ工場の前では、キヨシ(加瀬亮)と一緒に闘争の先頭に立つ山崎(真田広之)が演説していた。彼は同志たちに、「声をあげて世界に訴えよう」と呼びかけるのだった。

真田広之
ユージンはアイリーンの協力で、海岸沿いに写真を現像するための小屋(暗室)を建てる。そして、二人はキヨシ(加瀬亮)とともに、チッソ水俣工場附属病院へ潜入し、水俣病ということで入院している、身体の変形やけいれんに苦しむ人々を撮影。さらに、ラボで動物実験レポートを発見し、チッソが15年前から廃水が水銀中毒を引き起こすと知っていたことを突き止める。

あるとき、チッソ工場の前で山崎(真田広之)の演説を取材していたユージンは、会社の職員に強引に社長(國村隼)の所へ連れていかれる。社長はユージンに5万ドルの札束と引き換えに、ネガを渡すように偉そうな態度で迫る。しかし彼は、その申し出を受けることは決してなかった。

ジョニー・デップ、 國村隼
ユージンは買収されそうになったことに怒りが爆発し、自分の暗室小屋で、身を粉にして写真のネガを引き延ばして、水俣病の現実を写真に焼き付ける作業に没頭する。

暗室での作業に没頭するユージン(ジョニー・デップ)とアイリーン(美波)
ようやくネガも写真の現像も整い、作品の出来栄えにも確信を持ったユージン。しかしその夜、何者かが暗室小屋に火を放ち、全てのものが焼き尽くされてしまう。

ユージンの落胆は大きく、一度は帰国も考えるが、振り返ってみると今やユージンは、水俣の人々の苦しみを自分のこととして感じていたのだった。そのとき、何者かがユージンに封筒を渡しに来て、走り去っていった。封筒の中身は、焼けたはずのネガフィルムだった。
ユージンは、最初に合った松村夫妻の長女のアキコを被写体とした写真を撮る決心をしていた。その写真は、後の世にも語り継がれる作品になった……。

本当にすばらしい映画だった。この映画については、水俣市は後援しないとか、熊本県は後援したとか色々な噂が流れていたので、水俣市で撮影できたのかなと疑問に思っていたところ、ロケ地は水俣ではなくセルビアとモンテネグロに70年代の水俣を再現したとのことだった。理由は、水俣の街そのものが、1970年代以降に大きく変化したためだった。
このロケ地の映像がとても美しく、日本としか思えなかった。そして、水俣病の人々の映像を見せつけるようなことはせず、ほんの瞬間をつなぎ合わせたような映像を何度か見せただけだった。こういう見せ方は、さすが映画だなと思った。
キャスティングが最高で、ジョニー・デップのうまさはもちろんのこと、ビル・ナイの編集長もよかったし(ジョニデとビル・ナイは「パイレーツ・オブ・カリビアン」で共演)、闘争のリーダーの真田広之の迫力ある演技、アイリーン役の美波も魅力的だった。その他の俳優たちも、誰もかれもが熱のこもったいい演技だった。
この水俣病の事件を映画にすることで、皆がよりわかりやすく、そして見やすくこの戦いを理解できると感じました。
そして人間の温かさや狡さ、親子の愛、男女の心が通じ合う瞬間などを映像は自然にみせてくれたと思います。
エンドロールでは、MAN-MADE DISASTERS(人為的な事件)として、世界各地で起こった(起こっている)公害などが一覧表として流されます。今も様々な国で色々な人々が苦しみ闘っているのだということを知り、愕然としました。
今作で、映画の力というものを、改めて感じました。本当にいい映画でした。音楽は坂本龍一さんで、彼は産業公害に強い関心を抱いている方なのだそうです。人の心を癒してくれるような美しい曲です。
(写真は「映画com.」からお借りしました)
原題:MINAMAYA 監督:アンドリュー・レヴィタス 出演:ジョニー・デップ、
真田広之、 美波、 加瀬亮、 浅野忠信、 岩瀬昌子、 青木柚、and ビル・ナイetc.
音楽:坂本龍一
2020年 アメリカ
追想(Anastasia) (クラシックムービー) [外国映画]
BSPで「追想」(アナスタシア)という映画を観ました。クラシック作品で、イングリッド・バーグマンとユル・ブリンナーの共演です。ロシア革命のとき、パリに亡命したといわれているロシア大皇女アナスタシアの話です。自分が本物のアナスタシアだと言い張る謎の女(イングリット・バーグマン)と、その女を利用しようとする男(ユル・ブリンナー)の物語です。
イングリット・バークマンの美しさもさることながら、ユル・ブリンナーもなかなかいい俳優だったのだなと思いました。
ストーリーも面白く、衣装、インテリア、ロケ地もすばらしかったです。たまにはクラシック作品をみるのもいいなと思いました。

イングリット・バークマンvsユル・ブリンナー
1928年、パリ在住のボーニン(ユル・ブリンナー)を首謀者とする4人の白系ロシア人は、ロシア革命のとき、独り亡命したという噂の大公女アナスタシアが生存していると宣伝、彼女を敵から救出する名目で旧貴族から資金を集め出した。

アンナとボーニン
そして彼らは、セーヌ河に身を投げようとしたアンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)をアナスタシアに仕立て、ロシア皇帝ニコラス2世が生前、大公女のために英国銀行に預金した3600万ドルの金を引き出そうと企む。
アンナは謎の女で、以前入院していたとき、自分はアナスタシアだと打ち明けたことがあった。しかし自分の過去を殆ど記憶していないのだった。ボーニンらの巧みな演出で、アンナはアナスタシアとして在パリの旧ロシア宮廷の要人たちに引き合わされるが、要人の1人は彼女を本物とは認めなかった。

ポール公とアンナ
ボーニンは、アンナをポール公(大皇妃の甥)と対面させようとする。が、これには失敗した。そこで、ボーニンは、大皇妃(ヘレン・ヘイズ)の侍女を買収し、劇場でポール公とアンナを会わせ、これは成功した。ポール公はアンナをアナスタシアかどうかは疑ったが、彼女の美しさに惹かれた。
次の晩もポール公に再び会ったアンナは、自分を(偽?の)アナスタシアでなく唯の女として扱って欲しいと打ち明けた。一方、ボーニンも、ポール公に自分の欲しいのはアナスタシアの金だけだと明けすけに話した。

劇場でのボーニンとアンナ
経済力がなく、大皇妃に頼って生活しているポール公は、この話に乗り、大皇妃とアンナの対面に手を貸す。

大皇妃(ヘレン・ヘイズ)と面会するアンナ(イングリット・バークマン)
大皇妃と会ったアンナは少女時代のことを聞かれ、ドギマギして帰ろうとするが……。

大皇妃とボーニン
さて、アンナは本当のアナスタシア大皇女だったのだろうか。そして彼女はポールと結婚するのか、それとも……。
現代の映画に比べ、のんびりしたところはあるが謎があり、アンナの運命がどうなるのか最後まで惹きつけられるストーリーだ。それに豪華な衣装やインテリアが目を引く。
こうしてクラシックムービーを観ると、昔から主役も脇役にもいい俳優が居たのだということがよくわかる。主役のイングリット・バークマンとユル・ブリンナーはスターだが、大皇妃を演じたヘレン・ヘイズもとてもよかった。大皇妃という人物の、凛とした姿と立ち居振る舞い、そして人間としての大きさを余すところなく演じていたと思う。
こういうすばらしい俳優たちに支えられて、映画界は今日まで脈々といい作品を創り続けてきたのですね。今は映画界も大変で、コロナのため休業せざるを得ないかもしれないけれど、これからもスクリーンで映画を公開し続けてほしいものです。また映画館に行けるようになったら、最新の映画を観に行こうと思います。
原題:ANASTASIA 監督:アナトール・リトバク 出演:イングリット・バークマン、
ユル・ブリンナー、 ヘレン・ヘイズetc.
1956年 アメリカ


イングリット・バークマン:左、14歳のとき、 右、29歳のとき
イングリット・バークマンの美しさもさることながら、ユル・ブリンナーもなかなかいい俳優だったのだなと思いました。
ストーリーも面白く、衣装、インテリア、ロケ地もすばらしかったです。たまにはクラシック作品をみるのもいいなと思いました。

イングリット・バークマンvsユル・ブリンナー
1928年、パリ在住のボーニン(ユル・ブリンナー)を首謀者とする4人の白系ロシア人は、ロシア革命のとき、独り亡命したという噂の大公女アナスタシアが生存していると宣伝、彼女を敵から救出する名目で旧貴族から資金を集め出した。

アンナとボーニン
そして彼らは、セーヌ河に身を投げようとしたアンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)をアナスタシアに仕立て、ロシア皇帝ニコラス2世が生前、大公女のために英国銀行に預金した3600万ドルの金を引き出そうと企む。
アンナは謎の女で、以前入院していたとき、自分はアナスタシアだと打ち明けたことがあった。しかし自分の過去を殆ど記憶していないのだった。ボーニンらの巧みな演出で、アンナはアナスタシアとして在パリの旧ロシア宮廷の要人たちに引き合わされるが、要人の1人は彼女を本物とは認めなかった。

ポール公とアンナ
ボーニンは、アンナをポール公(大皇妃の甥)と対面させようとする。が、これには失敗した。そこで、ボーニンは、大皇妃(ヘレン・ヘイズ)の侍女を買収し、劇場でポール公とアンナを会わせ、これは成功した。ポール公はアンナをアナスタシアかどうかは疑ったが、彼女の美しさに惹かれた。
次の晩もポール公に再び会ったアンナは、自分を(偽?の)アナスタシアでなく唯の女として扱って欲しいと打ち明けた。一方、ボーニンも、ポール公に自分の欲しいのはアナスタシアの金だけだと明けすけに話した。

劇場でのボーニンとアンナ
経済力がなく、大皇妃に頼って生活しているポール公は、この話に乗り、大皇妃とアンナの対面に手を貸す。

大皇妃(ヘレン・ヘイズ)と面会するアンナ(イングリット・バークマン)
大皇妃と会ったアンナは少女時代のことを聞かれ、ドギマギして帰ろうとするが……。

大皇妃とボーニン
さて、アンナは本当のアナスタシア大皇女だったのだろうか。そして彼女はポールと結婚するのか、それとも……。
現代の映画に比べ、のんびりしたところはあるが謎があり、アンナの運命がどうなるのか最後まで惹きつけられるストーリーだ。それに豪華な衣装やインテリアが目を引く。
こうしてクラシックムービーを観ると、昔から主役も脇役にもいい俳優が居たのだということがよくわかる。主役のイングリット・バークマンとユル・ブリンナーはスターだが、大皇妃を演じたヘレン・ヘイズもとてもよかった。大皇妃という人物の、凛とした姿と立ち居振る舞い、そして人間としての大きさを余すところなく演じていたと思う。
こういうすばらしい俳優たちに支えられて、映画界は今日まで脈々といい作品を創り続けてきたのですね。今は映画界も大変で、コロナのため休業せざるを得ないかもしれないけれど、これからもスクリーンで映画を公開し続けてほしいものです。また映画館に行けるようになったら、最新の映画を観に行こうと思います。
原題:ANASTASIA 監督:アナトール・リトバク 出演:イングリット・バークマン、
ユル・ブリンナー、 ヘレン・ヘイズetc.
1956年 アメリカ


イングリット・バークマン:左、14歳のとき、 右、29歳のとき