ドライブ・マイ・カー [日本&アジア映画]
先日の米国第94回アカデミー賞で「ドライブ・マイ・カー」が、本映画史上初となる作品賞にノミネートされ、ほかに監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネート。結果的には「国際長編映画賞」を獲得しました。すばらしいことですね。作品賞をとれなかったのは残念でしたが。

前から観に行こうと思っていて、ようやく観ることができました。私は大阪の郊外に住んでいます。京都方面の映画館に観に行ったのですが、普段人の少ない映画館が、かなりの観客でうまっていたのには、驚きました。アカデミー賞の宣伝効果ってすごいですね。

作品は、村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、濱口竜介監督・脚本により映画化したものです。
小説はさほど面白いとは思わなかったのですが、映画はかなり物語を膨らませていました。主人公・家福(かふく)を西島秀俊、寡黙なドライバーみさきは三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音(おと)を霧島れいかがそれぞれ演じています。ほかに、劇中劇の場面で活躍する海外キャスト(中国、韓国、ヨーロッパ)もかなりたくさん出演していました。

家福(西島秀俊)と みさき(三浦透子)
舞台俳優で演出家の、家福有介は、脚本家の妻・音(おと)と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま、くも膜下出血で他界してしまう。家福が帰宅したときには、妻は息をしていなかった。家福は朝、家を出るとき妻に「話したいことがある」といわれたのに、遅く帰宅したことを悔やんでいた。


家福(西島秀俊)と 妻・音(霧島れいか)
2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで家福は、劇団のコーディネイターから寡黙な女性、みさきを紹介される。家福の住まいから、稽古をする舞台までの毎日の送り迎えをしてくれるプロのドライバーだった。

高槻(岡田将生)
ある日、俳優の高槻(岡田将生)が家福の舞台のオーディションを受けに来る。彼は妻・音(おと)が付き合っていた男性だった。家福はそのことを知りながら、高槻をキャストに選んだ。

家福は、高槻(岡田将生)から一度はなしがしたいといわれ、バーで高槻に会う。

高槻(岡田将生)と家福(西島秀俊)
しかし、家福は妻の音が高槻と付き合っていたのを知りながら、高槻に何も言わず、そのことを追求しようとはしなかった。高槻も何も言わず、ただ演劇のことをお互いに話すだけだった。

劇の台本を読む、本読みの場面
家福の演出する舞台は、色々な国の俳優をオーディションで選び、多言語劇であり、中には聾啞者の女優(手話で会話する人)もいた。そして稽古は順調に進んで、初日を迎える日が迫ったある日、大事な役の高槻が、飲んだ後暴力沙汰を起こし、相手が亡くなってしまうという事件を起こす。

ロケ地の呉市大崎下島の御手洗地区
高槻は警察に連行されるとき、家福に向かって「音さんは本当に素敵な人でした。あんな素敵な人と長く一緒に暮らせたことは幸福だと思わなくてはいけない」という言葉を家福に残していく。
初舞台の日が迫っていたので、悩んだのち家福が高槻の代役で舞台に立ち、成功裡をおさめる。それから、家福は、寡黙なドライバーのみさきの不幸な過去を知り、北海道のみさきの実家があったところ(いまはなにもないところ)に一緒に行く。

二人はお互いの過去から、自分自身が目を背けてきたことに気付く。

みさき(三浦透子)
ようやく家福は自分の過去を振り返り、妻の音が高槻と浮気をしていたとき、自分がそれを本気でうけとめなかったことを悔いる。そしてみさきは、昔自分をひどい目にあわせた亡き母を許す気持ちになる。二人はそれぞれに、新しい一歩を踏み出すのだった。
前評判はよかったのだが、トレイラーを見たらかなり暗い映画だろうかという印象があった。けれども、作品は淡々と描かれるが暗くはなく、西島秀俊の感情を表に出さない演技がよかったし、三浦透子は寡黙なドライバーを上手く演じていたと思う。そして高槻を演じた岡田将生が魅力的だった。かなり複雑は役だと思う。
映画の中で劇中劇が少し出てくるのだが、色々な国の俳優が多言語でまた、手話で演じるという変わった趣向だった。日本語以外と手話の部分は字幕スーパーがでるので、違和感なく観ることができた。
人間は正すべきことをただし、許すべき人を許すことで、過去を乗り越えて一歩ふみだせるというのが、この映画のメッセージなのだと思う。
約3時間の作品だが、途中、中だるみすることもなく、かなり面白く観ることができた。
主演の西島秀俊は「1冊の台本を読んだ時の密度が、他の本とは全く違いました。気持ちの流れ、言葉の量――当然、演じる側は大変なことになる。でも、挑戦したくなるような本でした」と振りかえっている。
原題:ドライブ・マイ・カー 監督・脚本:濱口竜介 出演:西島秀俊、 三浦透子、
岡田将生、 霧島れいか、 パク・ユリム、 ジン・デヨン、 ソニア・ユアン、 ベリー・ディゾン、
アン・フィテ、 阿部聡子
2021年製作/179分/PG12/日本
この映画は、2022年のアカデミー賞国際長編映画賞以外にも、2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、日本映画では初となる脚本賞を受賞。その他、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞。また、2022年第79回ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞受賞や、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞受賞など全米の各映画賞でも大きく注目を集めた。日本アカデミー賞でも最優秀作品賞はじめ、計8冠に輝いた。

前から観に行こうと思っていて、ようやく観ることができました。私は大阪の郊外に住んでいます。京都方面の映画館に観に行ったのですが、普段人の少ない映画館が、かなりの観客でうまっていたのには、驚きました。アカデミー賞の宣伝効果ってすごいですね。

作品は、村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、濱口竜介監督・脚本により映画化したものです。
小説はさほど面白いとは思わなかったのですが、映画はかなり物語を膨らませていました。主人公・家福(かふく)を西島秀俊、寡黙なドライバーみさきは三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音(おと)を霧島れいかがそれぞれ演じています。ほかに、劇中劇の場面で活躍する海外キャスト(中国、韓国、ヨーロッパ)もかなりたくさん出演していました。

家福(西島秀俊)と みさき(三浦透子)
舞台俳優で演出家の、家福有介は、脚本家の妻・音(おと)と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま、くも膜下出血で他界してしまう。家福が帰宅したときには、妻は息をしていなかった。家福は朝、家を出るとき妻に「話したいことがある」といわれたのに、遅く帰宅したことを悔やんでいた。


家福(西島秀俊)と 妻・音(霧島れいか)
2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで家福は、劇団のコーディネイターから寡黙な女性、みさきを紹介される。家福の住まいから、稽古をする舞台までの毎日の送り迎えをしてくれるプロのドライバーだった。

高槻(岡田将生)
ある日、俳優の高槻(岡田将生)が家福の舞台のオーディションを受けに来る。彼は妻・音(おと)が付き合っていた男性だった。家福はそのことを知りながら、高槻をキャストに選んだ。

家福は、高槻(岡田将生)から一度はなしがしたいといわれ、バーで高槻に会う。

高槻(岡田将生)と家福(西島秀俊)
しかし、家福は妻の音が高槻と付き合っていたのを知りながら、高槻に何も言わず、そのことを追求しようとはしなかった。高槻も何も言わず、ただ演劇のことをお互いに話すだけだった。

劇の台本を読む、本読みの場面
家福の演出する舞台は、色々な国の俳優をオーディションで選び、多言語劇であり、中には聾啞者の女優(手話で会話する人)もいた。そして稽古は順調に進んで、初日を迎える日が迫ったある日、大事な役の高槻が、飲んだ後暴力沙汰を起こし、相手が亡くなってしまうという事件を起こす。

ロケ地の呉市大崎下島の御手洗地区
高槻は警察に連行されるとき、家福に向かって「音さんは本当に素敵な人でした。あんな素敵な人と長く一緒に暮らせたことは幸福だと思わなくてはいけない」という言葉を家福に残していく。
初舞台の日が迫っていたので、悩んだのち家福が高槻の代役で舞台に立ち、成功裡をおさめる。それから、家福は、寡黙なドライバーのみさきの不幸な過去を知り、北海道のみさきの実家があったところ(いまはなにもないところ)に一緒に行く。

二人はお互いの過去から、自分自身が目を背けてきたことに気付く。

みさき(三浦透子)
ようやく家福は自分の過去を振り返り、妻の音が高槻と浮気をしていたとき、自分がそれを本気でうけとめなかったことを悔いる。そしてみさきは、昔自分をひどい目にあわせた亡き母を許す気持ちになる。二人はそれぞれに、新しい一歩を踏み出すのだった。
前評判はよかったのだが、トレイラーを見たらかなり暗い映画だろうかという印象があった。けれども、作品は淡々と描かれるが暗くはなく、西島秀俊の感情を表に出さない演技がよかったし、三浦透子は寡黙なドライバーを上手く演じていたと思う。そして高槻を演じた岡田将生が魅力的だった。かなり複雑は役だと思う。
映画の中で劇中劇が少し出てくるのだが、色々な国の俳優が多言語でまた、手話で演じるという変わった趣向だった。日本語以外と手話の部分は字幕スーパーがでるので、違和感なく観ることができた。
人間は正すべきことをただし、許すべき人を許すことで、過去を乗り越えて一歩ふみだせるというのが、この映画のメッセージなのだと思う。
約3時間の作品だが、途中、中だるみすることもなく、かなり面白く観ることができた。
主演の西島秀俊は「1冊の台本を読んだ時の密度が、他の本とは全く違いました。気持ちの流れ、言葉の量――当然、演じる側は大変なことになる。でも、挑戦したくなるような本でした」と振りかえっている。
原題:ドライブ・マイ・カー 監督・脚本:濱口竜介 出演:西島秀俊、 三浦透子、
岡田将生、 霧島れいか、 パク・ユリム、 ジン・デヨン、 ソニア・ユアン、 ベリー・ディゾン、
アン・フィテ、 阿部聡子
2021年製作/179分/PG12/日本
この映画は、2022年のアカデミー賞国際長編映画賞以外にも、2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、日本映画では初となる脚本賞を受賞。その他、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞。また、2022年第79回ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞受賞や、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞受賞など全米の各映画賞でも大きく注目を集めた。日本アカデミー賞でも最優秀作品賞はじめ、計8冠に輝いた。
キネマの神様 [日本&アジア映画]
この作品は、原田マハの同名小説を山田洋次監督が映画化。松竹映画の100周年を記念した作品です。私は原田マハさんのファンで、たくさん作品を読んでいます。原作も読みました。とにかく出演者が沢田研二をはじめ、すごく豪華なので役者さんそれぞれの演技も楽しめます。

「映画の神様」を信じ続ける男ゴウ(沢田研二/菅田将暉)の人生と、彼を取り巻く人々との愛や友情、家族の物語。
映画監督を目指し、助監督として撮影現場で働く若きゴウ(菅田将暉)は、仲間で同じ年ごろの映写技師テラシン(野田洋次郎)とともに夢を語らい、撮影所近くの食堂のかわいい淑子(永野芽都)と親しくなり、青春の日々を謳歌していた。

左端、菅田将暉、 リリー・フランキー

左端、野田洋次郎、 長野芽都、 北川景子、 菅田将暉
ゴウは今を時めく女優、桂園子(北川景子)に気に入られ、園子の高級車に乗り込み、仲間で楽しいドライブに出かけたりしていた。

菅田将暉、 野田洋次郎、 永野芽都、 北川景子

菅田将暉、 北川景子
しかしゴウは、初監督作「キネマの神様」の撮影初日に転落事故で大きなケガを負い、作品は幻となってしまう。大きな挫折を味わったゴウは夢を追うことを諦めてしまい、撮影所を辞めて田舎へと帰っていった。

沢田研二、 寺島しのぶ、 宮本のぶこ
それからゴウ(沢田研二)は淑子(宮本信子)と結婚するが、彼の人生は転落の一途をたどり、博打と酒浸りの日々が続く。一家は淑子の稼ぎだけで生活し、いつも娘の歩(寺島しのぶ)に文句を言われ、ケンカになるといった、典型的なダメ人間になり果てていたのだった。
そんな中でも、かつての同僚で今は町の小さな映画館を経営しているテラシン(小林稔侍)だけは、変わらずゴウの味方でいてくれるのだった。
ゴウが助監督を辞め、田舎に戻ってから約50年がたっていた。そんなある日、かつて自身が手がけた「キネマの神様」の脚本が出てきたことで、ゴウの中で止まっていた夢が再び動き始める。

宮本信子 沢田研二
ゴウは「キネマの神様」の脚本で、再び小規模なコンテストに応募する。そしてそれは最優秀賞を取り、100万円の賞金が手に入るが、ゴウは今まで本当にゴウのことを思ってくれたテラシンに、賞金を贈るのだった。
しかし、ゴウの愛するテラシンの映画館はまもなく閉館することとなった。その最後の日、ゴウは映画館に駆けつけるが……。
この作品全体を通して、暖かい雰囲気が漂っていた。それは、最初ゴウを演じるはずだった亡き志村けんさんへの、出演者全員の想いであり、山田監督の人柄なのかなと思った。
主演の沢田研二は、中年太りしていたが、それがスマートなジュリーよりもゴウというどうしようもない男のイメージに合っていたと思う。沢田研二は、中年になってからは非常に自然な生活をしてるのだと思う。無理をして体形を保つこともなく、知り合いが大阪梅田の小さい中華料理店で、ジュリーをみかけたが、普通の小太りの中年おじさんだったといっていたことがある。
けれども沢田研二の演技はとてもよかったと思う。奥さん役の宮本信子と娘役の寺島しのぶとのケンカのシーンは3人のうまさが上手にからみあっていた。
映画は、原田マハさんの原作とはかなり違っていて、ファンタスティックな終わり方になっている。
日本映画の小津安二郎へのオマージュ的なシーンもあった。山田洋次組の映画である。
もしよかったら、原田マハさんの原作も読んでいただきたい。こちらはかなり現代的な内容の作品で、原田さんの映画の趣味の良さもわかり、この作品とは違った面白さがあるので、お気に入りです。
題名:キネマの神様 原作:原田マハ「キネマの神様」 監督:山田洋次 出演:沢田研二、
菅田将暉、 永野芽都、 野田洋次郎、 北川景子、 寺島しのぶ、 宮本信子、
リリー・フランキー、 小林稔侍etc.
2021年 日本

「映画の神様」を信じ続ける男ゴウ(沢田研二/菅田将暉)の人生と、彼を取り巻く人々との愛や友情、家族の物語。
映画監督を目指し、助監督として撮影現場で働く若きゴウ(菅田将暉)は、仲間で同じ年ごろの映写技師テラシン(野田洋次郎)とともに夢を語らい、撮影所近くの食堂のかわいい淑子(永野芽都)と親しくなり、青春の日々を謳歌していた。

左端、菅田将暉、 リリー・フランキー

左端、野田洋次郎、 長野芽都、 北川景子、 菅田将暉
ゴウは今を時めく女優、桂園子(北川景子)に気に入られ、園子の高級車に乗り込み、仲間で楽しいドライブに出かけたりしていた。

菅田将暉、 野田洋次郎、 永野芽都、 北川景子

菅田将暉、 北川景子
しかしゴウは、初監督作「キネマの神様」の撮影初日に転落事故で大きなケガを負い、作品は幻となってしまう。大きな挫折を味わったゴウは夢を追うことを諦めてしまい、撮影所を辞めて田舎へと帰っていった。

沢田研二、 寺島しのぶ、 宮本のぶこ
それからゴウ(沢田研二)は淑子(宮本信子)と結婚するが、彼の人生は転落の一途をたどり、博打と酒浸りの日々が続く。一家は淑子の稼ぎだけで生活し、いつも娘の歩(寺島しのぶ)に文句を言われ、ケンカになるといった、典型的なダメ人間になり果てていたのだった。
そんな中でも、かつての同僚で今は町の小さな映画館を経営しているテラシン(小林稔侍)だけは、変わらずゴウの味方でいてくれるのだった。
ゴウが助監督を辞め、田舎に戻ってから約50年がたっていた。そんなある日、かつて自身が手がけた「キネマの神様」の脚本が出てきたことで、ゴウの中で止まっていた夢が再び動き始める。

宮本信子 沢田研二
ゴウは「キネマの神様」の脚本で、再び小規模なコンテストに応募する。そしてそれは最優秀賞を取り、100万円の賞金が手に入るが、ゴウは今まで本当にゴウのことを思ってくれたテラシンに、賞金を贈るのだった。
しかし、ゴウの愛するテラシンの映画館はまもなく閉館することとなった。その最後の日、ゴウは映画館に駆けつけるが……。
この作品全体を通して、暖かい雰囲気が漂っていた。それは、最初ゴウを演じるはずだった亡き志村けんさんへの、出演者全員の想いであり、山田監督の人柄なのかなと思った。
主演の沢田研二は、中年太りしていたが、それがスマートなジュリーよりもゴウというどうしようもない男のイメージに合っていたと思う。沢田研二は、中年になってからは非常に自然な生活をしてるのだと思う。無理をして体形を保つこともなく、知り合いが大阪梅田の小さい中華料理店で、ジュリーをみかけたが、普通の小太りの中年おじさんだったといっていたことがある。
けれども沢田研二の演技はとてもよかったと思う。奥さん役の宮本信子と娘役の寺島しのぶとのケンカのシーンは3人のうまさが上手にからみあっていた。
映画は、原田マハさんの原作とはかなり違っていて、ファンタスティックな終わり方になっている。
日本映画の小津安二郎へのオマージュ的なシーンもあった。山田洋次組の映画である。
もしよかったら、原田マハさんの原作も読んでいただきたい。こちらはかなり現代的な内容の作品で、原田さんの映画の趣味の良さもわかり、この作品とは違った面白さがあるので、お気に入りです。
題名:キネマの神様 原作:原田マハ「キネマの神様」 監督:山田洋次 出演:沢田研二、
菅田将暉、 永野芽都、 野田洋次郎、 北川景子、 寺島しのぶ、 宮本信子、
リリー・フランキー、 小林稔侍etc.
2021年 日本
ブータン 山の教室 [日本&アジア映画]
ブータンは、国王夫妻が来日されているご様子を、TVで観て知った国である。
王国の、ヒマラヤ山脈標高4800メートルにある実在の村ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画です。出演の村人と子どもたちは、ほとんどが地元の人たちです。こんなに爽やかな気持ちにさせてくれる映画があったでしょうか。ぜひ、多くの人に見ていただきたい作品です。

主演のかわいい女の子、ぺム・ザムちゃん(ルナナ村の住人でしろうと)とヒマラヤ山脈
ウゲン(シェラップ・ドルジ)は若い教師。彼はオーストラリアへ行くことが決まっていた。ミュージシャンになるのが夢だ。しかしある日、上司から呼び出され、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。ウゲンは全くやる気がなかったが、あと1年間は教職を続けなくてはいけないので、仕方なく村の青年のミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)に案内されて、登山のような険しい山道を登って、1週間以上かけて、ようやく村にたどり着いた。そこには勉強したいという子どもたちが、新しい先生の到着を心待ちにしていた。

最初ウゲンは、電気も紙もない土地での生活に戸惑い、現代的な暮らしから完全に切り離されたことを痛感する。持参したスマホも使えず、学校には黒板もなく、あるのは前任の教師がおいていったボロの教科書と、ちびた鉛筆だけだった。
やっと授業を始めることにしたウゲン。しかし子供たちはノートがないので、ウゲンは自分の小屋に寒さ除けとして貼ってあった紙をはずして、生徒たちにノートとして配る。子供たちは大喜びで、熱心に先生の言葉を、与えられた紙に書くのだった。

村長はそんなウゲンを歓迎し、先生として敬う。そしてお酒をすすめて、この村では最高の料理をふるまってくれる。ウゲンをこの村まで案内してくれた青年ミチュンは、村にあるものを駆使して黒板を手作りしてくれるのだった。

ミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)とウゲン(シェラップ・ドルジ)

最初はここでの生活は自分には無理だ、帰りたいと村長に訴えるようなウゲンだったが、明るく純粋な子供たちの笑顔にだんだんと彼も、子供たちに勉強を教えることの喜びを感じるようになる。

そしてこのルナナの人々になくてはならないのが、ヤクという動物だ。ヤクは長い体毛を持つウシ科の動物で、標高の高い寒冷地でしか生きられない。高地牧畜民(ハイランダー)にとって、ヤクはとても大切な動物で、家族であり財産でもある。人々は、ヤクの乳でチーズを作り、正月のようなハレの日には肉を食べ、その毛でテントを織り、その糞は乾燥させて、ストーブなどの着火剤として用いる。なにしろ、紙のない所なので。
そしてもう一人の重要な登場人物が、セデュ(ケルドン・ハモ・グルン)という女性。彼女が美しい声で歌う「ヤクにささげる歌」は、ルナナの谷と山々に、響き渡るのだった。

ウゲンもセデュのこの歌が気に入り、彼女と言葉を交わすようになる。セデュはウゲンに大事なヤクを1頭くれて、ウゲンはその面倒を見て、乾燥したヤクの糞で火をつけることができた。二人の心は次第に近づいていくが、くしくもウゲンの教師としての1年が終わろうとしていた。

ウゲンは、セデュに一緒にオーストラリアへ行かないかと誘うが、彼女は「私の生きていくところはここしかない」といって、ウゲンの申し出を断る。ウゲンは村長やミチュン、そして学校で教えた生徒たちに見送られ、村を去る。
数か月後、ウゲンはオーストラリアのパブで、ギター片手に騒がしい客たちの前で英語のポピュラーソングを歌っていた。各テーブルごとにお酒を飲みながら座って談笑している客たちは、まったくウゲンのほうを向いていなかった。がっかりして演奏の手を止めたその時、ウゲンの心に響いてきたのは、あの「ヤクにささげる歌」なのだった。


本当に物質的には何もない村。だがそこには、山の精霊を敬い、また子供たちに教育を授けてくれる教師を敬う村人たちがいた。そしてブータンの大自然と純粋な子供たちの笑顔があり、ヤクを慈しみその恩恵を理解し暮らす人々がいる。
今のコロナ禍で疲れ果てた私たちの心にしみいる映画だと思う。「ヤクにささげる歌」を歌うセデュを演じたケルドン・ハモ・グルンは、ブータンのカレッジの学生で音楽家。多くの歌をプロデュースしている人だそうだ。彼女の歌声を聴いたら、きっと心が澄み渡っていくような気持になるだろう。
今、私は色々なものに囲まれて暮らしていて、それなのにまだ新しいもの便利なものが欲しくなる。この映画のルナナ村には何もない。けれども人々は山の精霊を敬い、年上の人を尊敬する。そんな人間の、最も基本的な心の美しさと欲のなさに気持ちがホッとした。都会に暮らす人間にはないものを、ルナナ村の住民は持っていて、彼らの暮らしを豊かなものにしているのかもしれないと思った。
ブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ監督は、本作が初メガホンとなる。この作品は、世界中たくさんの映画祭で上映され、様々な賞を受賞している。
「ブータン山の教室」予告編
原題:Lunana: A Yak in the Classroom 監督:パオ・チョニン・ドルジ 出演:ぺム・ザムちゃん、 シェラップ・ドルジ、 ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、 ケルドン・ハモ・グルン、 ルナナ村の住人の方々
2019年製作 ブータン
王国の、ヒマラヤ山脈標高4800メートルにある実在の村ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画です。出演の村人と子どもたちは、ほとんどが地元の人たちです。こんなに爽やかな気持ちにさせてくれる映画があったでしょうか。ぜひ、多くの人に見ていただきたい作品です。

主演のかわいい女の子、ぺム・ザムちゃん(ルナナ村の住人でしろうと)とヒマラヤ山脈
ウゲン(シェラップ・ドルジ)は若い教師。彼はオーストラリアへ行くことが決まっていた。ミュージシャンになるのが夢だ。しかしある日、上司から呼び出され、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。ウゲンは全くやる気がなかったが、あと1年間は教職を続けなくてはいけないので、仕方なく村の青年のミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)に案内されて、登山のような険しい山道を登って、1週間以上かけて、ようやく村にたどり着いた。そこには勉強したいという子どもたちが、新しい先生の到着を心待ちにしていた。

最初ウゲンは、電気も紙もない土地での生活に戸惑い、現代的な暮らしから完全に切り離されたことを痛感する。持参したスマホも使えず、学校には黒板もなく、あるのは前任の教師がおいていったボロの教科書と、ちびた鉛筆だけだった。
やっと授業を始めることにしたウゲン。しかし子供たちはノートがないので、ウゲンは自分の小屋に寒さ除けとして貼ってあった紙をはずして、生徒たちにノートとして配る。子供たちは大喜びで、熱心に先生の言葉を、与えられた紙に書くのだった。

村長はそんなウゲンを歓迎し、先生として敬う。そしてお酒をすすめて、この村では最高の料理をふるまってくれる。ウゲンをこの村まで案内してくれた青年ミチュンは、村にあるものを駆使して黒板を手作りしてくれるのだった。

ミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)とウゲン(シェラップ・ドルジ)

最初はここでの生活は自分には無理だ、帰りたいと村長に訴えるようなウゲンだったが、明るく純粋な子供たちの笑顔にだんだんと彼も、子供たちに勉強を教えることの喜びを感じるようになる。

そしてこのルナナの人々になくてはならないのが、ヤクという動物だ。ヤクは長い体毛を持つウシ科の動物で、標高の高い寒冷地でしか生きられない。高地牧畜民(ハイランダー)にとって、ヤクはとても大切な動物で、家族であり財産でもある。人々は、ヤクの乳でチーズを作り、正月のようなハレの日には肉を食べ、その毛でテントを織り、その糞は乾燥させて、ストーブなどの着火剤として用いる。なにしろ、紙のない所なので。
そしてもう一人の重要な登場人物が、セデュ(ケルドン・ハモ・グルン)という女性。彼女が美しい声で歌う「ヤクにささげる歌」は、ルナナの谷と山々に、響き渡るのだった。

ウゲンもセデュのこの歌が気に入り、彼女と言葉を交わすようになる。セデュはウゲンに大事なヤクを1頭くれて、ウゲンはその面倒を見て、乾燥したヤクの糞で火をつけることができた。二人の心は次第に近づいていくが、くしくもウゲンの教師としての1年が終わろうとしていた。

ウゲンは、セデュに一緒にオーストラリアへ行かないかと誘うが、彼女は「私の生きていくところはここしかない」といって、ウゲンの申し出を断る。ウゲンは村長やミチュン、そして学校で教えた生徒たちに見送られ、村を去る。
数か月後、ウゲンはオーストラリアのパブで、ギター片手に騒がしい客たちの前で英語のポピュラーソングを歌っていた。各テーブルごとにお酒を飲みながら座って談笑している客たちは、まったくウゲンのほうを向いていなかった。がっかりして演奏の手を止めたその時、ウゲンの心に響いてきたのは、あの「ヤクにささげる歌」なのだった。


本当に物質的には何もない村。だがそこには、山の精霊を敬い、また子供たちに教育を授けてくれる教師を敬う村人たちがいた。そしてブータンの大自然と純粋な子供たちの笑顔があり、ヤクを慈しみその恩恵を理解し暮らす人々がいる。
今のコロナ禍で疲れ果てた私たちの心にしみいる映画だと思う。「ヤクにささげる歌」を歌うセデュを演じたケルドン・ハモ・グルンは、ブータンのカレッジの学生で音楽家。多くの歌をプロデュースしている人だそうだ。彼女の歌声を聴いたら、きっと心が澄み渡っていくような気持になるだろう。
今、私は色々なものに囲まれて暮らしていて、それなのにまだ新しいもの便利なものが欲しくなる。この映画のルナナ村には何もない。けれども人々は山の精霊を敬い、年上の人を尊敬する。そんな人間の、最も基本的な心の美しさと欲のなさに気持ちがホッとした。都会に暮らす人間にはないものを、ルナナ村の住民は持っていて、彼らの暮らしを豊かなものにしているのかもしれないと思った。
ブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ監督は、本作が初メガホンとなる。この作品は、世界中たくさんの映画祭で上映され、様々な賞を受賞している。
「ブータン山の教室」予告編
原題:Lunana: A Yak in the Classroom 監督:パオ・チョニン・ドルジ 出演:ぺム・ザムちゃん、 シェラップ・ドルジ、 ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、 ケルドン・ハモ・グルン、 ルナナ村の住人の方々
2019年製作 ブータン
るろうに剣心 2012年版(地上波) [日本&アジア映画]
佐藤建の「るろうに剣心 2012年版」を地上波でみました。原作は「少年ジャンプ」に掲載された漫画「るろうに剣心 明治健脚浪譚」で、それを実写映画化したものです。劇場版の1作目です。

緋村剣心(佐藤建)は、伝説の「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」と呼ばれていた男だが、明治維新以後「不殺(ころさず))の誓い」をたて、決して人を斬ることのできない「逆刃刀(さかばとう)」を携えて、町から町へ流浪の旅に出る。そして様々な出会いを重ねる中で陰謀に巻き込まれ、大切な人を守るために新たな戦いへと臨む姿を描くアクション・エンタメです。

左、ピンクの着物姿が薫(武井咲)、右が恵(蒼井優)(アニメの恵に似せたメイクです)。
明治になって10年、流浪の旅を続ける伝説の男、緋村剣心(佐藤建)は東京で、“人斬り抜刀斎”を名乗る浪人(吉川晃司)が現われ、無差別な人斬りを繰り返していることを知る。
亡き父の道場を引き継ぐ女剣士・神谷薫(武井咲)は、ある場所で抜刀斎を名乗る浪人の、人切りの現場に居合わせる。そして薫は市井の人を助けるために、1人でその浪人(吉川晃司)に立ち向かい、あわやというところを、通りかかった剣心に助けられる。

薫の道場に居候することになった剣心。そこに武田観柳(香川照之)の愛人、恵(蒼井優)が男の屋敷からのがれて、道場へ駆け込んでくる。武田は傲慢、狡猾な男で今は中国からアヘンを輸入しそれで莫大な財産を築いているのだった。恵は武田に耐えられなくなって、道場へと駆け込んできた。
剣心は道場主の薫と、恵を守る立場となった。しかし武田(香川照之)は、恵が逃げ出したことに腹を立て、つれもどそうと部下を薫の道場を荒らすため差し向けるのだった。
道場を荒らされた恵の無念を晴らすため、剣心は武田の屋敷に乗り込む。そこには凶暴な部下がせいぞろいし、しかも武田は鉄砲や、機関銃のようなものまで駆使して、剣心を殺そうとする。
剣心はひらりひらりと身をかわし、ついに武田をやっつけるのだが、初めに出会ったニセ抜刀斉の
鵜盗刃衛(吉川晃司)が出現する。彼は、武田の用心棒だったのだ。こうして、因縁の一騎打ちが幕をあけるのだが……。

剣心の佐藤健は、本当にカッコよく、身軽で強い。申し分ない主役だと思った。佐藤健は、監督の大友啓史に、大河ドラマの「龍馬伝」で岡田伊蔵役でキャスティングされて、すごく演技がよかったとのこと。私自身は大河ドラマをあまり観ないので、知りませんでした。大河で、佐藤健と大友監督は出会った。
「るろうに剣心」はベテランから若い世代まで、たくさんの俳優さんがでていて、いいキャスティングだなと思う。
とにかく、悪徳商人武田を演じた香川照之が最高におもしろかった。この人は芝居の虫であり、天才だと思う。そして特筆すべきは、ニセ抜刀斉の鵜盗刃衛を演じた吉川晃司である。非常に迫力があり、すごみがあり、上手い。剣心と鵜盗の一騎打ちのときも、どちらが勝つのかとハラハラさせられた。
吉川晃司は、ドラマなどにはよく出ているみたいだが、こんなに迫力がある人物を演じるのは観たことがなかった。佐藤健は柔らかさがあるのだが、吉川晃司はその反対で剛の印象。
ほかに、奥田英二、江口洋介、綾野剛などおなじみの芸達者がでているので面白い作品になっている。
佐藤健と大友啓史監督は、ジョニー・デップとティム・バートンのタッグのように、これからどんな面白い作品を創っていってくれるかと思うと心がおどります。
「るろう」の他の作品も観て、それから劇場版「るろうに剣心」を観たいのですが、また宣言が延長されてどうなることやら。
たくさんの名作がコロナのために埋もれてしまわないように、心から願っています。
原題:「るろうに剣心」 監督:大友啓史 出演:佐藤健、 武井咲、 吉川晃司、 蒼井優、
江口洋介、 綾野剛、 奥田英二etc.
2012年 日本

緋村剣心(佐藤建)は、伝説の「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」と呼ばれていた男だが、明治維新以後「不殺(ころさず))の誓い」をたて、決して人を斬ることのできない「逆刃刀(さかばとう)」を携えて、町から町へ流浪の旅に出る。そして様々な出会いを重ねる中で陰謀に巻き込まれ、大切な人を守るために新たな戦いへと臨む姿を描くアクション・エンタメです。

左、ピンクの着物姿が薫(武井咲)、右が恵(蒼井優)(アニメの恵に似せたメイクです)。
明治になって10年、流浪の旅を続ける伝説の男、緋村剣心(佐藤建)は東京で、“人斬り抜刀斎”を名乗る浪人(吉川晃司)が現われ、無差別な人斬りを繰り返していることを知る。
亡き父の道場を引き継ぐ女剣士・神谷薫(武井咲)は、ある場所で抜刀斎を名乗る浪人の、人切りの現場に居合わせる。そして薫は市井の人を助けるために、1人でその浪人(吉川晃司)に立ち向かい、あわやというところを、通りかかった剣心に助けられる。

薫の道場に居候することになった剣心。そこに武田観柳(香川照之)の愛人、恵(蒼井優)が男の屋敷からのがれて、道場へ駆け込んでくる。武田は傲慢、狡猾な男で今は中国からアヘンを輸入しそれで莫大な財産を築いているのだった。恵は武田に耐えられなくなって、道場へと駆け込んできた。
剣心は道場主の薫と、恵を守る立場となった。しかし武田(香川照之)は、恵が逃げ出したことに腹を立て、つれもどそうと部下を薫の道場を荒らすため差し向けるのだった。
道場を荒らされた恵の無念を晴らすため、剣心は武田の屋敷に乗り込む。そこには凶暴な部下がせいぞろいし、しかも武田は鉄砲や、機関銃のようなものまで駆使して、剣心を殺そうとする。
剣心はひらりひらりと身をかわし、ついに武田をやっつけるのだが、初めに出会ったニセ抜刀斉の
鵜盗刃衛(吉川晃司)が出現する。彼は、武田の用心棒だったのだ。こうして、因縁の一騎打ちが幕をあけるのだが……。

剣心の佐藤健は、本当にカッコよく、身軽で強い。申し分ない主役だと思った。佐藤健は、監督の大友啓史に、大河ドラマの「龍馬伝」で岡田伊蔵役でキャスティングされて、すごく演技がよかったとのこと。私自身は大河ドラマをあまり観ないので、知りませんでした。大河で、佐藤健と大友監督は出会った。
「るろうに剣心」はベテランから若い世代まで、たくさんの俳優さんがでていて、いいキャスティングだなと思う。
とにかく、悪徳商人武田を演じた香川照之が最高におもしろかった。この人は芝居の虫であり、天才だと思う。そして特筆すべきは、ニセ抜刀斉の鵜盗刃衛を演じた吉川晃司である。非常に迫力があり、すごみがあり、上手い。剣心と鵜盗の一騎打ちのときも、どちらが勝つのかとハラハラさせられた。
吉川晃司は、ドラマなどにはよく出ているみたいだが、こんなに迫力がある人物を演じるのは観たことがなかった。佐藤健は柔らかさがあるのだが、吉川晃司はその反対で剛の印象。
ほかに、奥田英二、江口洋介、綾野剛などおなじみの芸達者がでているので面白い作品になっている。
佐藤健と大友啓史監督は、ジョニー・デップとティム・バートンのタッグのように、これからどんな面白い作品を創っていってくれるかと思うと心がおどります。
「るろう」の他の作品も観て、それから劇場版「るろうに剣心」を観たいのですが、また宣言が延長されてどうなることやら。
たくさんの名作がコロナのために埋もれてしまわないように、心から願っています。
原題:「るろうに剣心」 監督:大友啓史 出演:佐藤健、 武井咲、 吉川晃司、 蒼井優、
江口洋介、 綾野剛、 奥田英二etc.
2012年 日本
あのこは貴族 (劇場版新作) [日本&アジア映画]
結婚というものに対する27歳の箱入り娘、華子(門脇麦)の焦りが、うまく描かれていました。どんなに家柄や職業がよくても、人間的にいい相手とは限らないのです。岨手由貴子(そでゆきこ)監督は、これまでにかなりの受賞歴がある実力派で、面白い作品を創ったと思います。

左: 美紀こと水原希子 & 右: 華子こと門脇麦
山内マリコの同名小説を原作に、同じ東京という都会に暮らしながら、全く異なる生き方をする2人の女性の物語。
華子は結婚こそ人生の目的であり、幸福をもたらすものだと信じて疑わない。だが、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。けれども、華子は周りの勧めにより、お見合いを繰り返すのだった。

(映画の中で華子がお見合いの時着ていた、古典柄の着物。私の好みです。)
華子には、自分というものがない。いつも親や兄弟がすすめる服を着て、真珠のネックレスも親からの贈り物だ。家族も、お見合い疲れしてきた華子の気持ちをかんがみ、家の整形外科を継ぐ医者ではなく、違う職業でもよいとのことで相手を探してくれる。そして次のお見合いで、華子が出会った人は、青木幸一郎(高良健吾)というハンサムで話も上手い弁護士だった。幸一郎の家は、松濤の広大な庭付のお屋敷で、代々政治家を輩出している家だった。華子は初めて気に入った人に出会い、二人はめでたくゴールイン。

華子(門脇麦) と 幸一郎(高良健吾)
ほんとは、ゴールインの前に、幸一郎にある女性の存在があるのがわかる。華子の友人のヴァイオリニスト逸子(石橋静河)が、彼女が演奏を披露したパーティのコンサートで知り合った時岡美紀(水原希子)だった。美紀は、幸一郎と慶應義塾大学の同期だったが、彼女は地方出身者でアルバイトを掛け持ちでしても学費が続かず、2年足らずで大学を中退していた。

時岡美紀こと水原希子
美紀はアルバイトでバーやラウンジで働いていた時、お客として訪れた幸一郎とつきあうようになった。しかし美紀は、25歳のとき水商売から足を洗うことにする。「この世界では容色の衰えとともに、失うものが大きすぎる」からだ。そこで、ラウンジの客として来ていたITベンチャーCEOに頼んでその会社の社員として採用され、昼間の世界に舞い戻ることができたのだ。

幸一郎と美紀
幸一郎と美紀は、恋愛関係だったがマンネリ化していた。幸一郎は美紀とは最初から結婚する気がなく、華子と婚約してもそれを美紀に知らせることもしなかった。そして美紀との関係を断ち切ろうともしないのだった。
しかし、華子の友人の逸子は、ヴァイオリン演奏をしたパーティーでの、幸一郎と美紀の親し気な様子から、ピンときた。そして逸子は美紀にLINE交換しようと持ちかけた。彼女は美紀と華子を結婚式の前に合わせる算段だった。

華子(門脇麦)とヴァイオリニストの逸子(石橋静河)
逸子がそういうセッティングをしたのは、美紀が華子と会っても、バトルにはならないと踏んだからだった。それから華子が到着して、美紀は華子と逸子に、幸一郎とは潔く縁を切ることを告げた。

時岡美紀(水原希子)& 平田理央(山下リオ)
美紀は地方の高校と慶應義塾大学の同級生、平田理央から起業するので一緒にやってくれないかと、相談をうける。そして快諾するのだった。
華子は結婚したものの、夫の幸一郎は仕事に専念し、大切な記念日も忘れている。華子が問いただしても、反応がうすい。帰宅後は疲れているのか、うたた寝ばかり。実家に帰って家族に相談するが、今は我慢のしどころといわれるだけ。ありあまる一人の時間を高層マンションの部屋で過ごすうち、華子は暗く憂鬱な気分になり、このままでは精神的にまいってしまうと思い、この結婚には向いていなかったのだと悟る。
半年後、華子は離婚届を幸一郎に突きつけ、離婚するのだった。ようやく華子は自我に目覚める。
華子は家を出て、ヴァイオリニストの逸子の家に居候し、逸子のマネージャー業を始めることにする。
家というものにしばられ、ひかれたレールの上を歩いていく運命の幸一郎。素敵な女性二人を逃してしまったことは、まことに残念で不幸なことだと思う。でも幸一郎はそのことを感じていないのかもしれないが。
反対に自分に正直に生きることを選んだ華子と、くされ縁を断ち切って、新しい道を友達と協力し合いながら進んでいく美紀は、二人とも爽やかだった。
グレイド(階級)は違うが女性二人は、自己肯定の道を選び、これからはいい人生が広がっていくという期待感を感じながら、晴れやかな気持ちで劇場を後にした。
原題:山内マリコ作「あのこは貴族」 監督:岨手由貴子(そでゆきこ) 出演:門脇麦、
水原希子、 高良健吾、 石橋静河、 山下リオ、 高橋ひとみetc.
2021年 日本

左: 美紀こと水原希子 & 右: 華子こと門脇麦
山内マリコの同名小説を原作に、同じ東京という都会に暮らしながら、全く異なる生き方をする2人の女性の物語。
華子は結婚こそ人生の目的であり、幸福をもたらすものだと信じて疑わない。だが、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。けれども、華子は周りの勧めにより、お見合いを繰り返すのだった。

(映画の中で華子がお見合いの時着ていた、古典柄の着物。私の好みです。)
華子には、自分というものがない。いつも親や兄弟がすすめる服を着て、真珠のネックレスも親からの贈り物だ。家族も、お見合い疲れしてきた華子の気持ちをかんがみ、家の整形外科を継ぐ医者ではなく、違う職業でもよいとのことで相手を探してくれる。そして次のお見合いで、華子が出会った人は、青木幸一郎(高良健吾)というハンサムで話も上手い弁護士だった。幸一郎の家は、松濤の広大な庭付のお屋敷で、代々政治家を輩出している家だった。華子は初めて気に入った人に出会い、二人はめでたくゴールイン。

華子(門脇麦) と 幸一郎(高良健吾)
ほんとは、ゴールインの前に、幸一郎にある女性の存在があるのがわかる。華子の友人のヴァイオリニスト逸子(石橋静河)が、彼女が演奏を披露したパーティのコンサートで知り合った時岡美紀(水原希子)だった。美紀は、幸一郎と慶應義塾大学の同期だったが、彼女は地方出身者でアルバイトを掛け持ちでしても学費が続かず、2年足らずで大学を中退していた。

時岡美紀こと水原希子
美紀はアルバイトでバーやラウンジで働いていた時、お客として訪れた幸一郎とつきあうようになった。しかし美紀は、25歳のとき水商売から足を洗うことにする。「この世界では容色の衰えとともに、失うものが大きすぎる」からだ。そこで、ラウンジの客として来ていたITベンチャーCEOに頼んでその会社の社員として採用され、昼間の世界に舞い戻ることができたのだ。

幸一郎と美紀
幸一郎と美紀は、恋愛関係だったがマンネリ化していた。幸一郎は美紀とは最初から結婚する気がなく、華子と婚約してもそれを美紀に知らせることもしなかった。そして美紀との関係を断ち切ろうともしないのだった。
しかし、華子の友人の逸子は、ヴァイオリン演奏をしたパーティーでの、幸一郎と美紀の親し気な様子から、ピンときた。そして逸子は美紀にLINE交換しようと持ちかけた。彼女は美紀と華子を結婚式の前に合わせる算段だった。

華子(門脇麦)とヴァイオリニストの逸子(石橋静河)
逸子がそういうセッティングをしたのは、美紀が華子と会っても、バトルにはならないと踏んだからだった。それから華子が到着して、美紀は華子と逸子に、幸一郎とは潔く縁を切ることを告げた。

時岡美紀(水原希子)& 平田理央(山下リオ)
美紀は地方の高校と慶應義塾大学の同級生、平田理央から起業するので一緒にやってくれないかと、相談をうける。そして快諾するのだった。
華子は結婚したものの、夫の幸一郎は仕事に専念し、大切な記念日も忘れている。華子が問いただしても、反応がうすい。帰宅後は疲れているのか、うたた寝ばかり。実家に帰って家族に相談するが、今は我慢のしどころといわれるだけ。ありあまる一人の時間を高層マンションの部屋で過ごすうち、華子は暗く憂鬱な気分になり、このままでは精神的にまいってしまうと思い、この結婚には向いていなかったのだと悟る。
半年後、華子は離婚届を幸一郎に突きつけ、離婚するのだった。ようやく華子は自我に目覚める。
華子は家を出て、ヴァイオリニストの逸子の家に居候し、逸子のマネージャー業を始めることにする。
家というものにしばられ、ひかれたレールの上を歩いていく運命の幸一郎。素敵な女性二人を逃してしまったことは、まことに残念で不幸なことだと思う。でも幸一郎はそのことを感じていないのかもしれないが。
反対に自分に正直に生きることを選んだ華子と、くされ縁を断ち切って、新しい道を友達と協力し合いながら進んでいく美紀は、二人とも爽やかだった。
グレイド(階級)は違うが女性二人は、自己肯定の道を選び、これからはいい人生が広がっていくという期待感を感じながら、晴れやかな気持ちで劇場を後にした。
原題:山内マリコ作「あのこは貴族」 監督:岨手由貴子(そでゆきこ) 出演:門脇麦、
水原希子、 高良健吾、 石橋静河、 山下リオ、 高橋ひとみetc.
2021年 日本
劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き(2021年) [日本&アジア映画]

動物写真家の岩合光昭さんが、まったくのネコの目線で、ミャンマーと北海道の2つの土地を舞台に、ネコたちの家族愛を描きます。ミャンマーのインレー湖では、湖上に建つ小さな高床式家屋で暮らすネコの家族とヒトの家族が、一緒に生きる様子を記録。北海道の牧場では、たくさんの母ネコ、オスネコ、子ネコたちがまっすぐに生きる姿を映しています。俳優の中村倫也さんがナレーション担当です。

牛舎の猫ダンゴ
私はかねてからの岩合光昭さんのファンで、NHKBSプレミアムの「世界のネコ歩き」はいつも観ている。劇場版は2017年にも創られたが、今回は2作目。岩合さんのすばらしさは、猫に自由に行動させて、それを愛情のこもった目線でフィルムにおさめるところだ。
まずは北海道の仔牛牛舎と親牛牛舎の、それぞれで暮らす猫たちの様子。これは二つのグループにわかれていて、その2グループは交わることがない。ボス猫同士はけんかをするぐらいなのだ。

仔牛牛舎の猫たち。
ここのゴッドマザーは、チャカスケ。上の写真の右2列目の右端に顔だけ白く見えている猫。左端の全身が写っている茶色と白は息子のフク。仔牛牛舎の雌猫たちは、仔猫を共同保育している。
猫の中には、仔牛と仲良くしている子もいる。牛にペロペロなめてもらっているのだ。

仔牛の横でお昼寝する牛柄の猫ってすごくかわいいですよね!

そして親牛牛舎では、ボス的存在のヒメとその息子で甘えん坊のカーショが中心のストーリーが展開する。次の写真は、カーショで息子のほう。顔はいかついのだが、甘えん坊。お母さん猫のヒメはもっとかわいい顔のトラ猫ですが、残念ながら画像がありません。


二匹はいつもいっしょで、カーショがヒメにまとわりついている。あるとき、ヒメが行方不明になって、カーショは牧場中を駆け回り、木に登ってみたりして一生懸命探すが、ヒメはどこにもいない。あきらめて牛舎にもどったカーショは、屋根裏から降りてくるヒメを発見。ヒメは前足を痛めていたので、じっと静かにして前足をなおしていたのだった。
カーショはオス猫なので、春になって一応独り立ちのため牛舎を出ていくのだが、また戻ってきてしまった。お母さんのヒメは仕方ない子だねという顔で、迎えていた。
この両牛舎の猫たちのごはんは、搾りたての牛乳と、固形のキャットフード。幸せですね。
さて、次はミャンマーのもうひとつの猫とヒトの家族の物語。人間の家族は3人、猫たちは4名です。
この湖は、ミャンマーのシャン高原にあるインレー湖。家は湖の上に建つ高床式家屋。この家族は3人でお父さんは大工兼漁師である。猫は4匹いて、何をするにもヒトの家族と一緒です。

この猫はエーワーという名前、お父さん猫。
猫たちは、ヒトのお父さんと一緒に漁にでかけます。

お魚がとれました。もらうのは家に帰ってからです。

船が家に近づくと、猫たちは自ら水の中に飛び込んで、岸まであるいは家まで泳ぎます。猫かきですが、すごくうまく泳いでいます。この地方の猫にとっては、泳げることは走ることと同じくらい大事なことだそうです。すごくたくましいですね!

2匹で泳いでいます。うまい泳ぎです。
少年と猫はとても仲良し。この子は仔猫のとき弱っていたところをこの少年に介抱してもらって、元気になりました。それ以来二人は親友になりました。

この家では猫とヒトは、寝るのも一緒、ご飯を食べるのも一緒、お昼寝するのも一緒です。一つの家族ですね。

今年最初の映画にこれを選んでよかったです。だいぶコロナ疲れがたまってきましたが、この映画を観て、猫たちの「あるがまま」に生きる姿にとても癒されました。けれども、ミャンマーの家族のことはちょっと心配しています。今、ミャンマーは非常事態ですものね。どうか皆が無事でありますように。
大阪ではなんばパークスシネマでまだ上映しています。猫好きの方、ぜひご覧くださいませ。
原題:劇場版 岩合光昭の世界のネコ歩きーあるがままに、水と大地のネコ家族
監督:岩合光昭 出演:岩合光昭、北海道とミャンマーの猫たちとヒト家族
2021年 日本
スパイの妻 [日本&アジア映画]
ただいまパソコン修理中で、スマホからの投稿です。読みにくいかもしれませんが、お許しください。
「スパイの妻」は、2020年6月にNHK BS8Kで放送された黒沢清監督、蒼井優主演の同名ドラマを、スクリーンサイズや色調を新たにした劇場版として劇場公開したそうです。
蒼井優と高橋一生がよかったです。蒼井優は、夫、福原優作(高橋一生)を一途に愛し、共に行動しようとする妻、聡子を生き生きと演じ、高橋一生は、特にセリフが滑らかで、読点でセリフを区切らず一気にいえるので、大変自然な感じでした。
貿易商の福原優作は1940年の満州で、恐ろしい国家の秘密を偶然知ってしまう。
帰国後、優作は正義のためにその顛末を世に知らせようとするが、反逆者と疑われる。
妻の聡子は、たとえ優作がスバイといわれ自分がスバイの妻と陰口をたたかれようと、彼と離れずに生き抜こうと決心する。
戦争の悲惨で残酷なフィルム映像が流れる場面がある。これが、本物の映像なのか、
それとも加工映像なのか、調べていないのでよくわからないが、白黒の粗い画像でいっそう怖さが強調されたと思った。
また、彼らの友人津森泰治(東出昌大)が、入隊したあと、その優しい性格がだんだんと、嫌な人間になって行く様子なども、恐ろしいと思った。
時代は、太平洋戦争開戦間近の日本で神戸が舞台。聡子と優作の住まいは、洋館で調度品や家具が高級な輸入もので、二人の衣装もレトロで素敵だった。
彼らは、いかに難局を乗り越えていくのだろうか。最後までハラハラさせられ、ストーリー展開も楽しめた。
黒沢清監督は、TVのインタビューで「私の作品には、エンターテインメントか否かの垣根はない」と述べていた。
第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。
原題:スパイの妻 監督:黒沢清 出演:蒼井優、 高橋一生、 坂東龍太、 東出昌大、恒松祐里etc.
2020年 日本
コンフィデンスマンJPプリンセス編 (新作) [日本&アジア映画]
先日「コンフィデンスマンロマンス編」の放映をたまたま地上波で観て、すごく面白かったので、新作の映画にも行って来ました。これはもともとテレビドラマだったんですね。知らなかったです。

テレビドラマ「コンフィデンスマンJP」のほうも、この間偶然にも1度だけ観ました。長澤まさみが主演で、東出昌大、小日向文世が仲間です。1人ゲスト俳優が加わり、この3人がゲスト俳優の色々なことを暴いたり、様々なことをしかけて、詐欺で悪い奴を懲らしめるというような筋書き。

世界有数の大富豪フウ家の当主レイモンド(北大路欣也)が他界した。10兆円とも言われる遺産をめぐりブリジット(ビビアン・スー)、クリストファー(古川雄大)、アンドリュー(白濱亜嵐)の3姉弟が火花を散らすが、執事トニー(柴田恭平)が相続人として発表したのは、誰もその存在を知らない隠し子ミシェルという名前だった。

ダー子(長澤まさみ)、リチャード(小日向文也)、ボクちゃん(東出昌大)
世界中からミシェルを名乗る詐欺師たちが“伝説の島”ランカウイ島に集結する中、ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文也)の3人もフウ家に入り込み、華麗かつ大胆にコンゲームを仕かける。

ダー子(長澤まさみ)と、こっくり/ミシェルこと せきみず なぎさ
ダー子たちは、こっくりというみなしごの女の子を、ミシェルに仕立てることにした。こっくりは、継母にいじめられているところを、ダー子たちに救われる。そして彼らと一緒にランカウイ島へ渡り、磨きをかけられて、だんだんとみすぼらしい少女から、輝くような美少女に変身していくのだった。
しかし、そこには忠実かつ頭脳明晰は執事のトニー(柴田恭兵)がダー子たちのたくらみを、それが真実かどうか見抜こうと立ちはだかり、しかも3人の子供たちも相続を主張していた。

トニーこと柴田恭兵
そして彼らの仲間、スタア(竹内結子)、キザな結婚詐欺師ジェシー(三浦春馬)、ラーメン屋の波子(広末涼子)、元某国大統領夫人(デビ・スカルノ)、そして、ダー子たちの天敵、赤星(江口洋介)らが絡んで、思いもかけない展開になっていく……。

ダー子にアゴで使われるキザな結婚詐欺師ジェシー(三浦春馬)とダー子(長澤まさみ)
とにかく衣装が豪華だった。長澤まさみが色々な洋服やドレスをとっかえひっかえ着こなして素敵。しかも、男たちをアゴで使うようなボス的存在としての迫力もあり、彼女の女優としての存在感が目立った。竹内結子も前回に引き続き出演していたが、やっぱり上手い。
一番カッコよかったのはやはり柴田恭兵である。顔もシワがより、頭髪も白いものが混じっているが、年よりくささはまったくない。歩く姿が颯爽としていて、年齢を感じさせなかった。セリフもキレがいい。さすがです。細身にスーツがよく似合っていた。
また、シンガポールとマレーシアの都市の美しい映像が魅力的だった。もちろん、ランカウイ島の風景もだが。カメラワークがいいと思った。
筋書きはお決まりな感じだが、ベテランから新人まで、いい俳優を選び抜いているので、途中でダレることもなく、あっという間に時間が経ってしまった。ある意味ドタバタ劇だが、嫌味なところがなくコミカルにしあげているので、楽しめると思う。

長澤まさみ
最後に、キザな詐欺師役で出演された三浦春馬さん、とても明るくて生き生きとした笑顔が忘れられない。どうして、と皆が思ったはずだ。
私の勝手な憶測だが、三浦さんは子役からずっと芸能界で生きてきたので、どこか疲れが溜まっていたのでは。例えば、外国の俳優さんなどは、子役で人気が出ても、いったん芸能界から離れて、大学に行ったりする。そうして、普通の生活をした後、また復帰するという人がたくさんいる。例えばナタリー・ポートマンなど。
三浦さんは農業をやりたいということを、友達に言っていたようだ。たとえ俳優業が滞っても、自分のやりたいことを一時期やれたら、また違った人生が歩めたかもしれない。今は静かに、三浦春馬さんのご冥福をお祈りいたします。
監督:田中亮 出演:長澤まさみ、 東出昌大、 小日向伸也、 小手伸也、 柴田恭兵、
竹内結子、 三浦春馬、 広末涼子、 江口洋介、 せきみず なぎさetc.
2020年 日本

テレビドラマ「コンフィデンスマンJP」のほうも、この間偶然にも1度だけ観ました。長澤まさみが主演で、東出昌大、小日向文世が仲間です。1人ゲスト俳優が加わり、この3人がゲスト俳優の色々なことを暴いたり、様々なことをしかけて、詐欺で悪い奴を懲らしめるというような筋書き。

世界有数の大富豪フウ家の当主レイモンド(北大路欣也)が他界した。10兆円とも言われる遺産をめぐりブリジット(ビビアン・スー)、クリストファー(古川雄大)、アンドリュー(白濱亜嵐)の3姉弟が火花を散らすが、執事トニー(柴田恭平)が相続人として発表したのは、誰もその存在を知らない隠し子ミシェルという名前だった。

ダー子(長澤まさみ)、リチャード(小日向文也)、ボクちゃん(東出昌大)
世界中からミシェルを名乗る詐欺師たちが“伝説の島”ランカウイ島に集結する中、ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文也)の3人もフウ家に入り込み、華麗かつ大胆にコンゲームを仕かける。

ダー子(長澤まさみ)と、こっくり/ミシェルこと せきみず なぎさ
ダー子たちは、こっくりというみなしごの女の子を、ミシェルに仕立てることにした。こっくりは、継母にいじめられているところを、ダー子たちに救われる。そして彼らと一緒にランカウイ島へ渡り、磨きをかけられて、だんだんとみすぼらしい少女から、輝くような美少女に変身していくのだった。
しかし、そこには忠実かつ頭脳明晰は執事のトニー(柴田恭兵)がダー子たちのたくらみを、それが真実かどうか見抜こうと立ちはだかり、しかも3人の子供たちも相続を主張していた。

トニーこと柴田恭兵
そして彼らの仲間、スタア(竹内結子)、キザな結婚詐欺師ジェシー(三浦春馬)、ラーメン屋の波子(広末涼子)、元某国大統領夫人(デビ・スカルノ)、そして、ダー子たちの天敵、赤星(江口洋介)らが絡んで、思いもかけない展開になっていく……。

ダー子にアゴで使われるキザな結婚詐欺師ジェシー(三浦春馬)とダー子(長澤まさみ)
とにかく衣装が豪華だった。長澤まさみが色々な洋服やドレスをとっかえひっかえ着こなして素敵。しかも、男たちをアゴで使うようなボス的存在としての迫力もあり、彼女の女優としての存在感が目立った。竹内結子も前回に引き続き出演していたが、やっぱり上手い。
一番カッコよかったのはやはり柴田恭兵である。顔もシワがより、頭髪も白いものが混じっているが、年よりくささはまったくない。歩く姿が颯爽としていて、年齢を感じさせなかった。セリフもキレがいい。さすがです。細身にスーツがよく似合っていた。
また、シンガポールとマレーシアの都市の美しい映像が魅力的だった。もちろん、ランカウイ島の風景もだが。カメラワークがいいと思った。
筋書きはお決まりな感じだが、ベテランから新人まで、いい俳優を選び抜いているので、途中でダレることもなく、あっという間に時間が経ってしまった。ある意味ドタバタ劇だが、嫌味なところがなくコミカルにしあげているので、楽しめると思う。

長澤まさみ
最後に、キザな詐欺師役で出演された三浦春馬さん、とても明るくて生き生きとした笑顔が忘れられない。どうして、と皆が思ったはずだ。
私の勝手な憶測だが、三浦さんは子役からずっと芸能界で生きてきたので、どこか疲れが溜まっていたのでは。例えば、外国の俳優さんなどは、子役で人気が出ても、いったん芸能界から離れて、大学に行ったりする。そうして、普通の生活をした後、また復帰するという人がたくさんいる。例えばナタリー・ポートマンなど。
三浦さんは農業をやりたいということを、友達に言っていたようだ。たとえ俳優業が滞っても、自分のやりたいことを一時期やれたら、また違った人生が歩めたかもしれない。今は静かに、三浦春馬さんのご冥福をお祈りいたします。
監督:田中亮 出演:長澤まさみ、 東出昌大、 小日向伸也、 小手伸也、 柴田恭兵、
竹内結子、 三浦春馬、 広末涼子、 江口洋介、 せきみず なぎさetc.
2020年 日本
万引き家族(加筆しました8/18) [日本&アジア映画]
是枝裕和監督、今年のカンヌで「パルムドール賞」受賞。快挙!ですね。再上映があったので、観てきました。なかなか興味深い作品でした。(最後の方、加筆しました。)

東京の下町、高層マンションの谷間に、取り残されたように建つ古い平屋。家主である初枝(樹木希林)の年金を目当てに、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏・じょうかいり)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を、臨時の仕事で稼いでいるが、それでも十分ではなく、時々万引きで足りないものを補充するという家族で、社会の底辺にいるような一家だった。

だが、この家族には暗さがなく、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子(ゆり)を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることになる。

休日は家族全員で楽し気に海に行ったりもする、仲の良さ。
だがある日、初枝おばあさんが突然亡くなり、お葬式も出せない彼らは、狭い庭におばあちゃんを埋めた。この事件をきっかけに、家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密が明らかになっていく。
こんな境遇だったら、すごく暗いストーリーになりそうだが、そこが是枝監督のうまさなのだろうか、それとも樹木希林、リリー・フランキー、安藤サクラの演技力なのだろうか。少しも暗くなかった。特にこの3人のやり取りは、ユーモアがあり思わず吹き出してしまうほどだった。是枝組の俳優とはいえ、樹木さんも、リリー・フランキーさんも、安藤さんも、その演技や掛け合いは、すばらしく自然で絶妙の間だった。祥太を演じた城桧吏(じょうかいり)くんも、少年の純真さがよく出ていたと思う。
温かい家族だが、それぞれにいいかげんで、社会人としては失格ではある。しかし、このようにしか生きられない人々なのだと、最後はあきらめというか、妙に納得させられた不思議な作品だった。
底辺の生活をしているという設定なので、家の中の様子などは、ビジュアル的にはちょっと見づらいところはあるかもしれないが、それがリアルさを産んでいるのだろう。
情のあるいい家族だが、生きていくためにはお金がいります。夫婦とも臨時の仕事で稼いではいるのですが、けがをしたり、人員整理でやめさせられたり、思うようにいかないんですね。だから、万引きをしなきゃいけなくなる。それを悪いとは思ってないところがありますが、生きていくためには仕方がないというかんじでしょうね。
一体これは、誰が悪いのか。男の子を捨てた親、女の子に虐待する、普通の暮らしをしている母親、そんな人たちより、リリー・フランキーと安藤サクラが演ずる夫婦のほうが、よほど温かいでしょう。(責任感があるかどうかは別として)
是枝さんは、そんな社会の矛盾をこの映画で表現して、問題提起したのだと思います。まことに面白い作品でした。
上手い役者ぞろいで、映画としてもよくできています。機会があったらご覧になってください。

原題:万引き家族 監督:是枝裕和 出演:リリー・フランキー、 安藤サクラ、 樹木希林、
松岡茉優、 城桧吏(じょうかいり)、 佐々木みゆ、 緒方直人、 江本明、 池脇千鶴etc.
2018年 日本

東京の下町、高層マンションの谷間に、取り残されたように建つ古い平屋。家主である初枝(樹木希林)の年金を目当てに、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏・じょうかいり)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を、臨時の仕事で稼いでいるが、それでも十分ではなく、時々万引きで足りないものを補充するという家族で、社会の底辺にいるような一家だった。

だが、この家族には暗さがなく、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子(ゆり)を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることになる。

休日は家族全員で楽し気に海に行ったりもする、仲の良さ。

だがある日、初枝おばあさんが突然亡くなり、お葬式も出せない彼らは、狭い庭におばあちゃんを埋めた。この事件をきっかけに、家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密が明らかになっていく。
こんな境遇だったら、すごく暗いストーリーになりそうだが、そこが是枝監督のうまさなのだろうか、それとも樹木希林、リリー・フランキー、安藤サクラの演技力なのだろうか。少しも暗くなかった。特にこの3人のやり取りは、ユーモアがあり思わず吹き出してしまうほどだった。是枝組の俳優とはいえ、樹木さんも、リリー・フランキーさんも、安藤さんも、その演技や掛け合いは、すばらしく自然で絶妙の間だった。祥太を演じた城桧吏(じょうかいり)くんも、少年の純真さがよく出ていたと思う。
温かい家族だが、それぞれにいいかげんで、社会人としては失格ではある。しかし、このようにしか生きられない人々なのだと、最後はあきらめというか、妙に納得させられた不思議な作品だった。
底辺の生活をしているという設定なので、家の中の様子などは、ビジュアル的にはちょっと見づらいところはあるかもしれないが、それがリアルさを産んでいるのだろう。
情のあるいい家族だが、生きていくためにはお金がいります。夫婦とも臨時の仕事で稼いではいるのですが、けがをしたり、人員整理でやめさせられたり、思うようにいかないんですね。だから、万引きをしなきゃいけなくなる。それを悪いとは思ってないところがありますが、生きていくためには仕方がないというかんじでしょうね。
一体これは、誰が悪いのか。男の子を捨てた親、女の子に虐待する、普通の暮らしをしている母親、そんな人たちより、リリー・フランキーと安藤サクラが演ずる夫婦のほうが、よほど温かいでしょう。(責任感があるかどうかは別として)
是枝さんは、そんな社会の矛盾をこの映画で表現して、問題提起したのだと思います。まことに面白い作品でした。
上手い役者ぞろいで、映画としてもよくできています。機会があったらご覧になってください。

原題:万引き家族 監督:是枝裕和 出演:リリー・フランキー、 安藤サクラ、 樹木希林、
松岡茉優、 城桧吏(じょうかいり)、 佐々木みゆ、 緒方直人、 江本明、 池脇千鶴etc.
2018年 日本
ターシャ・テューダー 静かな水の物語 [日本&アジア映画]
ずいぶん前になりますが、友達がターシャ・テューダーのクリスマスカードをくれたので、彼女がコーギー犬が大好きな絵本作家で、アメリカのバーモント州でスローライフを実践している人だということを知りました。その後、NHKのドキュメンタリー番組でターシャ・テューダーの生活を取りあげたものが何度か放映され、とても興味深いと思いました。私はボランティアで子供図書室活動をしていて、ターシャの絵本を子供たちに読んだりすることもあります。
今回の映画はそのNHKのドキュメンタリーシリーズを手がけた松谷満江監督が、新たにターシャの生活に密着して追加撮影した映像を、元のものに加えて完成した映画です。

ターシャ・テューダーは1915年ボストンの名家に生まれた。父は飛行機、ヨット、帆船などの設計技師、母は肖像画家だった。9歳の時両親が離婚し、コネチカット州の両親の親友の家に預けられその家の型破りな気風に影響を受けた。

19世紀の農村の暮らしにあこがれていたターシャを、母は名家の娘として社交界にデビューさせようとしていた。けれども娘は母親の想いを振り切って、22歳の時、農業をすることに同じ思いを持っていたトマス・L・マクリーディと結婚。数年後二人はニューハンプシャー州に広大な農場を購入した。そして農業を中心として、花壇を作ったり、年中行事を大事にすることなどを通して4人の子供を育てあげた。

結婚した後、夫の姪を主人公にした手作り絵本が出版社に受け入れられ、絵本作家としてデビューする。子供や身の回りの動物たちを題材にした、リアルで優しい筆致の絵が一般に好まれ、ターシャの絵本はアメリカの絵本界の最高の賞(コールデコット賞)を受けるまでになる。
けれども、夫は次第に農業に興味を失い二人は離婚。ターシャは絵本、挿絵、グリーティングカードなどの作成により、収入を得子供たち4人を育てたのだった。


ターシャが仕事(絵を描く作業)をしているところ/ターシャと最後に飼ったコーギー犬メギー
56歳のとき、バーモント州の山の中に森に囲まれた荒れ地を購入し、長男で家具職人のセスに家を建ててもらう。それを「コーギーコテージ」と名付け、荒れ地を何年もかけて自らの手で花でいっぱいの美しいガーデンに創りあげる。そしてスローライフを実践していくのだった。


ターシャとその家族
いくら家族がよく訪問し、コーギー犬のメギーや他の動物がいて、没頭できる仕事があるとはいえ、山の中の一軒家で暮らすというのは、本当に精神的に強くなければできないことだろう。
ターシャは色々な言葉を残している。
「一生は短いんですもの、やりたくないことに時間を費やすなんてもったいないわ」
「人生はたくさんの小さい選択の積み重ね。誰に会って誰に合わないか、それは大事なこと」
「心は1人ひとり違います。その意味では、人はいつも”ひとり”なのよ」
「近道を探そうとしないこと。価値ある良いことはみんな、時間も手間もかかるものです」
などなど。
農業で鍛えた丈夫な体と精神をもって、ひたすら自分の人生を創りあげてきた偉大な人だと思います。2008年に天国に召されましたが、思い残すことのない人生だったことでしょう。少しでも近づくことができたらと思いました。では最後に「ターシャの庭」をお楽しみくださいませ。






監督:松谷光絵 出演:ターシャ・テューダー、 その家族と友人たちと動物たち
今回の映画はそのNHKのドキュメンタリーシリーズを手がけた松谷満江監督が、新たにターシャの生活に密着して追加撮影した映像を、元のものに加えて完成した映画です。

ターシャ・テューダーは1915年ボストンの名家に生まれた。父は飛行機、ヨット、帆船などの設計技師、母は肖像画家だった。9歳の時両親が離婚し、コネチカット州の両親の親友の家に預けられその家の型破りな気風に影響を受けた。

19世紀の農村の暮らしにあこがれていたターシャを、母は名家の娘として社交界にデビューさせようとしていた。けれども娘は母親の想いを振り切って、22歳の時、農業をすることに同じ思いを持っていたトマス・L・マクリーディと結婚。数年後二人はニューハンプシャー州に広大な農場を購入した。そして農業を中心として、花壇を作ったり、年中行事を大事にすることなどを通して4人の子供を育てあげた。

結婚した後、夫の姪を主人公にした手作り絵本が出版社に受け入れられ、絵本作家としてデビューする。子供や身の回りの動物たちを題材にした、リアルで優しい筆致の絵が一般に好まれ、ターシャの絵本はアメリカの絵本界の最高の賞(コールデコット賞)を受けるまでになる。
けれども、夫は次第に農業に興味を失い二人は離婚。ターシャは絵本、挿絵、グリーティングカードなどの作成により、収入を得子供たち4人を育てたのだった。


ターシャが仕事(絵を描く作業)をしているところ/ターシャと最後に飼ったコーギー犬メギー
56歳のとき、バーモント州の山の中に森に囲まれた荒れ地を購入し、長男で家具職人のセスに家を建ててもらう。それを「コーギーコテージ」と名付け、荒れ地を何年もかけて自らの手で花でいっぱいの美しいガーデンに創りあげる。そしてスローライフを実践していくのだった。


ターシャとその家族
いくら家族がよく訪問し、コーギー犬のメギーや他の動物がいて、没頭できる仕事があるとはいえ、山の中の一軒家で暮らすというのは、本当に精神的に強くなければできないことだろう。
ターシャは色々な言葉を残している。
「一生は短いんですもの、やりたくないことに時間を費やすなんてもったいないわ」
「人生はたくさんの小さい選択の積み重ね。誰に会って誰に合わないか、それは大事なこと」
「心は1人ひとり違います。その意味では、人はいつも”ひとり”なのよ」
「近道を探そうとしないこと。価値ある良いことはみんな、時間も手間もかかるものです」
などなど。
農業で鍛えた丈夫な体と精神をもって、ひたすら自分の人生を創りあげてきた偉大な人だと思います。2008年に天国に召されましたが、思い残すことのない人生だったことでしょう。少しでも近づくことができたらと思いました。では最後に「ターシャの庭」をお楽しみくださいませ。






監督:松谷光絵 出演:ターシャ・テューダー、 その家族と友人たちと動物たち