サイコ (DVD) [ヒッチコック]

アンソニー・パーキンスとジャネット・リー
アリゾナ州の小さな町ファーベル。そこの不動産会社に勤めているマリオン・クレーン(ジャネット・リー)は隣町で雑貨屋をひらいているサム・ルーミス(ジョン・ギャビン)と婚約していたが、サムが別れた妻に多額の慰謝料を支払っているために結婚できないでいた。土曜の午後、銀行に会社の金4万ドルを収めに行ったマリオンは、この金があればサムと結婚できるという考えに負けて隣町へ車で逃げた。夜になって雨が降って来たので郊外の旧街道にあるモーテルに宿を求めたマリオンは、モーテルを経営するノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)に食事を誘われた。ノーマンは母親と2人でモーテルに接続している古めかしい邸宅に住んでいて、頭が良く神経質で母親の影響を強くうけていた。ノーマンが1号室にマリオンを訪れた時、彼女は浴槽の中で血まみれになって死んでいた……。(goo映画)
今は「スリラー」という言葉は死語になってしまったのだろうか。ヒッチコックの映画こそスリラーと呼ぶにふさわしい作品だと思う。DVDのいいところは、メイキングを収録していることだ。「サイコ」の撮影について、ジャネット・リーや撮影にかかわった色々な人達、それにヒッチコックとアルマのお嬢さん(もうおばあさんになっている)が、色々と興味深い話をしてくれるので、撮影の様子がよくわかっておもしろかった。
特にマリオンが殺されるシャワーシーンは、カット撮影の妙でナイフが体に刺さったように見せているが、本当は刺されたシーンは映像化されていなかったのだ。それに初めて気が付いた。すごいと思う。
ヒッチコックは人柄がとても暖かい人で、シャワーは水ではなくお湯を使って、ジャネット・リーをとても気遣ってくれたそうだ。それに大変ユーモラスな人だったので、撮影現場は笑いが絶えなかったとのことである。
この映画の予告編は、ヒッチコック本人が撮影のセットを説明して回るのである。そして「実はここはこういうことが行われて、おっと続きは映画をご覧ください。」とユーモアたっぷりに説明するという異色のものであった。できれば本物の「サイコ」の予告編を通しで観たいものだ。

この作品は、最後がわかってしまうとおもしろくないので、初めて観客が途中から入れないようにしたのである。そのおかげで観客が映画館に詰めかけて長蛇の列をなしたのだそうだ。今では常識となっている途中入場禁止もヒッチコックが初めて実行したのだ。おもしろいでしょう!色々な場面の説明が事細かに関係者によって語られるので、本編を観た後メイキングを観て楽しめる。まさに「一度で二度おいしい」(これも古いでしょうか?)。1960年製だが、レトロ感はあるもののまったく古さを感じさせないヒッチコックの演出のすばらしさ、才能に脱帽である。アンソニー・パーキンスの演技もうまく、最後はアッといわせる展開になる。想像を超えた結末を楽しんでほしいものです。
原題:PSYCHO 監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:アンソニー・パーキンス、
ジャネット・リー、 ジョン・キャヴィン、 ヴァラ・マイルズetc.
1960年 アメリカ
ロープ [ヒッチコック]
舞台はマンハッタンにある、とあるアパートの一室。完全犯罪を完結させることにより、自分たちの優位を示すために殺人を犯したフィリップとブランドン。彼らは、殺人を犯した部屋に人を呼んで、死体の入った衣装箱にきれいな布をかけ、料理を並べ、パーティを開く、というスリルを楽しみさえする。客は被害者の家族や大学教授(ジェームス・スチュワート)。
冷静沈着で、自分の力を誇示するが如く大胆な振舞いをするブランドンと、罪の恐怖から落ち着きのないフィリップ。そして、被害者の友達の大学教授が完全に思えた現場で、事件のほころびを見つけていく……。
怖い話だが、ヒッチコックの恐怖の盛上げのうまさに引き込まれてしまった。63年も前の作品で、さすがにDVDの映像も荒いのだが、殺人を犯した薄暗い部屋のカーテンをあけると、すばらしいマンハッタンの摩天楼が出現する。色々な小道具によって、事件がだんだん確信に迫っていく様子や、二人の犯人の危うい行動が事件をともすれば露にさせかけドキドキする。巧みなセリフ劇である。しかも撮影はTMTシステム(10分間の長回し)で全編ワンカットである。当時はキャメラには10分間しかネガフィルムがはいらなかったので、10分ずつ撮って間をうまく同じショットでつないだのだそうだ。いわゆる長回しの原点の作品である。
ヒッチコックのセンスのある恐怖映画をこれからも楽しみたいと思っている。
原題:ROPE 監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ジェームス・スチュワート、
ファーリー・グレンジャー、 ジョン・ドール、 セドリック・ハードウィック、
コンスタンス・コリアー
1948年 アメリカ
ヒッチコックの「断崖」 [ヒッチコック]
これはヒッチコックがアメリカに渡って初めて創った作品で、1941年の映画である。非常に古い映画だが、ヒッチコックのミステリーの手腕は見事だった。
裕福な家庭に育った令嬢リナ(ジョーン・フォンテイン)は、社交界のモテ男ジョン(ケイリー・グラント)に一目惚れして結婚する。しかしジョンは無一文でしかも仕事もろくにせず、財産の管理もずさんな男だった。リナは次第にジョンに疑惑の念を抱くようになる。しかもジョンは、毒薬の研究に余念がなかったりするので、リナはますます被害妄想に陥り、このままでは夫に殺されるかもしれないと思うようになる。ついに彼女は、実家に帰る決心をする。夫は彼女を車で送るという。いやいやながら夫の車に乗り込んだリナだったが、車は断崖絶壁近くのハイウェイを猛スピードで突き進んでいくのだった……。
これはリナ(ジョーン・フォンテイン)の視点で描かれているので、観客はリナとまったく同じ不安感を、最後まで抱き続けることとなる。このなんともいえない不安感が、ずっと途切れることなくストーリーの終わりまで観客を引っ張っていく。
あいまいな夫の態度にリナは神経をやられ、寝込んでしまうが、夫が親切にもミルクを持ってきてくれる。だが、数日前夫のデスクの上にあった毒薬研究の本が思い出され、リナはミルクも飲むことができない。そのミルクはいかにも何かが混ざっているかのように、光っていた。これは、ヒッチコックが工夫をして、ほんとうにミルクが光るようにしたそうだ。細かい演出である。
ケイリー・グラントもすごく若くてかっこよかった。渋いおじさまのイメージしかなかったが、若いときはまた別の魅力があった。
ジョーン・フォンテインはこの作品で1942年度のアカデミー賞主演女優賞を獲得している。とても美しく知的な人だ。ドレスも豪華で素敵だった。彼女はオリビア・デ・ハビランドと姉妹なのだそうだ。そして、日本びいきで、聖心女子大学に留学もしていたとのことである。いい女優である。
「断崖」を観て、ヒッチコックのうまさに再び感心した。今後も彼の作品を観てみたいと思っている。
原題:Suspicion 監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジョーン・フォンテイン、 ケイリー・グラント、 ナイジェル・ブルースetc.
1941年 アメリカ 神戸居留地シネマ
見知らぬ乗客 [ヒッチコック]
原作:パトリシア・ハイスミス 監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:レイモンド・チャンドラー
出演:ファーリー・クレンジャー、ルース・ローマン、ロバート・ウォーカー
1951年 アメリカ ビデオ
皆様ご無沙汰しております。お元気でしょうか。今日からまたボツボツ書いていこうと思いますので、よろしくお願い致します。
この作品は、「太陽がいっぱい」のパトリシア・ハイスミスが書いた完全犯罪小説を、ハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーらが脚本化し、ヒッチコック監督で映画化されたサスペンス映画である。
以前からヒッチコックが好きで、たまたまこの未見のビデオが安く売り出されていたので、買ってみた。すごく古い映画なのだが古さがむしろいい道具だてをつくりだし、ヒッチコックならではの緊迫感が最後まで保たれた秀作だった。
有名なテニス・プレイヤーのガイ・へインズ(ファーリー・クレンジャー)は、列車の中で紳士然とした見知らぬ乗客に声をかけられる。その男はブルーノ(ルース・ローマン)と名乗り、ガイの私生活のことをよく知っていた。ガイが夫婦関係がうまくいっていず、上院議員の娘アンと結婚したがっていることまで調べあげていたのだ。
ブルーノは自分も父親とうまくいっていないことを告げ、挙句の果てに彼がガイの妻を殺す代わりに、自分の父親を殺してくれというのだった。ふたりはまったく赤の他人だから、疑われる心配はないというのが彼の言い分だった。ガイは取り合わず列車を降りるが、ブルーノは殺人を実行。アリバイが成立せず当局にマークされるガイに、ブルーノは執拗に付きまとう。ガイのパーティーに現れたり、テニスの試合場に出現したり、その異常さがだんだんと明らかになってくる。そして、ブルーノはガイに銃を送りつけ、交換殺人を迫るのだった・・・。
最初の場面は人々が駅を行き交い、列車に乗り込むところなのだが、人の下半身や背中しか映らず音楽もスリリングな感じの曲で、一体どういう映画なのかと、観客の興味を引く。
ブルーノは有名人好きの気さくで話好きの紳士として登場する。だからしばらくの間、彼はいい人に思える。しかし、だんだんと彼の異常さがあらわれてくる。このあたりの、観客を少しずつ心理的な怖さに引き込んでいく手法はさすがだ。
ガイはブルーノが殺人を犯した夜は、列車の中で大学教授に話しかけられていた。それで当局に呼び出されたときガイは、自分はアリバイがあると主張する。しかし当の教授は酒に酔っていたため、ガイのことを一切覚えていなかった。このことでガイのアリバイは成立しなくなる。一筋縄ではいかない展開なのである。
ブルーノはガイが列車に置き忘れたライターを持っていた。それでガイをゆすろうとするのだ。しかし、ブルーノはそれを下水道に落としてしまう。それを柵の間から手を入れて拾おうとするのだが、なかなか拾えない。この場面のやきもき感も、ヒッチコックならではのものだ。
最後にガイは、ライターを取り戻すために、ガイの妻が殺された遊園地でブルーノと会う約束をするのだが、果たしてそのライターはガイの手にもどるのだろうか、それとも妻の殺人現場に落とされて、ガイは陥れられるのだろうか・・・。最後の最後まで、観客はヒッチコックの手玉にとられるのである。
やはりヒッチコックの初期の作品はおもしろい。これからもヒッチコックの映画を楽しみたいものだ。
![見知らぬ乗客 スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD] 見知らぬ乗客 スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51B28FM671L._SL160_.jpg)
見知らぬ乗客 スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- メディア: DVD