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カフェ・ソサエティ [ウディ・アレン]

 映画の始まりは、おなじみのジャズ!これでいっきにウディ・アレンの世界へと引き込まれます、ちょっとした期待とワクワクする気持ちを感じながら……。今回はジェシー・アイゼンバーグ演じる田舎者の朴訥な青年が、叔父さんの力でハリウッドで職を得、きれいな女性と知り合って恋を知り、それから仕事でも自分の居場所を獲得していくというロマンチックコメディ。


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 1930年代のアメリカ。この時代のハリウッドは、永遠に語り継がれる映画史上の名作がいくつも生み出された。ニューヨーク郊外に住む平凡な青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、もっと刺激的で、胸のときめく人生を送りたいとおじを頼ってハリウッドを訪れる。活気のあるハリウッドでボビーは、業界の敏腕エージェントであるおじフィル(スティーヴ・カレル)のもとで働き始めた。そしてフィルの命令で、彼の秘書ヴェロニカ“愛称ヴォニー”(クリステン・スチュワート)が街を案内してくれ、ボビーは心を奪われる。秘書のヴェロニカ(ヴォニー)にはワケありの恋人がいた。さて、その恋人とは?


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 ストーリーはここからかなりハチャメチャな展開になり、ウディ・アレンらしい、え、そんなことがあっていいの!みたいな、常識はずれな面白いものになっていく。


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 ブレイク・ライヴリー&ジェシー・アイゼンバーグ

 その後恋に破れて、ニューヨークへと戻ったボビーは、あのいかにも田舎者というイメージから抜け出し、ギャングの兄が経営するナイトクラブの支配人となり頭角を現わしていく。
 そんなある日、奇しくもあこがれのヴォニー(クリスティン・ステュワート)と同じヴェロニカという名の美女(ブレイク・ライヴリー)と出会い、たちまち恋に落ち結婚する。


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 クリステン・スチュワート   

 それなりに幸せな生活を送っていたボビーだったが、ある日そのナイト・クラブに憧れのヴォニーが夫婦連れでやってくる。しかしボビーにはどうしようもなかった。彼女が去った後、その面影を思い浮かべるボビーなのだった。ジェシー・アイゼンバーグが演じると、男の純情さがひときわ強調されると感じた。


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 ジェシー・アイゼンバーグ

 ジェシー・アイゼンバーグが好演していた。彼は色々な役ができるの役者なのだが、こういう朴訥なとっつきやすい男性の役がとても上手いと思った。クリスティン・ステュワートも、フランスでセザール賞の助演女優賞をもらうほどの実力がある女優さんで、今回の役は彼女の美しさが強調されていて、セクシーな魅力にあふれていた。ボビーの奥さんになるヴェロニカ役のブレイク・ライヴリーもとても素敵な女優さんだ。その他ボビーのおじさんフィル役のスティーヴ・カレルは、恰幅がよく、いかにも業界の実力者という雰囲気のあるカッコいい男優さんだった。


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 いつもながらに、ウディ・アレンのキャスティングの上手さがいい作品を創りあげていた。こういう息抜き的な洒落た映画って、なかなかできないと思う。映画のセットもすばらしく、衣装はシャネルが全面的に協力したとのこと。ジャズのメロディーに乗って、大人の喜劇を楽しんだ。


原題:CAFE SOCIETY 出演:ジェシー・アイゼンバーグ、クリスティン・ステュワート、
ブレイク・ライヴリー、 スティーヴ・カレル
2016年 アメリカ




 

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マジック・イン・ムーンライト [ウディ・アレン]

 ウディ・アレンが、どんなに理論的な考え方を持っていても、恋の魔法には太刀打ちできないという、全くのひねりなしのラブストーリーを、美しい南仏の風景と共に観客にみせてくれた。


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 ステージで華麗なイリュージョンを披露して喝采を浴びる中国人天才マジシャン。その正体は、筋金入りの合理主義者で毒舌家のイギリス人スタンリー(コリン・ファース)。そんな彼のもとに友人のハワード(サイモン・マクバーニー)からある依頼が舞い込む。それは、大富豪カトリッジ家の人々を虜にしている評判の美人霊能者がおり、その真贋を見極めてほしいというものだった。超能力や心霊現象の一切を否定するスタンリーは、その女のトリックを見破ってやろうと、一家の滞在する南仏コート・ダジュールの豪邸へ乗り込んでいく。ところがいざ霊媒師のソフィ(エマ・ストーン)と対面してみると、彼女の尻尾を掴むどころか、次々と説明のつかない現象に直面してしまい、自らの信念がすっかり揺らいでしまうスタンリーだったが…。(allcinema ONLINE)


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 最初のコリン・ファースの中国人マジシャンの扮装とメイクに驚いたが、この後一変して南仏コート・ダ・ジュールのクラシカルなお屋敷で繰り広げられる若い美人霊媒師ソフィ(エマ・ストーン)の霊能力の披露の場面も面白かった。ソフィはスタンリー(コリン・ファース)に出会うと、彼に「東洋のイメージが浮かぶ」と告げる。スタンリーは彼女の透視能力にびっくりする。また暗い部屋でテーブルを囲んで富豪一家と共に輪になって手をつないでいると、突然テーブルのローソクが、種も仕掛けもなしに浮き上がる。この世に魔法や超能力なんか実在しないという人生観を根底からひっくり返されたスタンリーは、チャーミングなソフィに魅了されてしまう。しかし互いに素直に想いを打ち明けられない2人の行く手には、波乱の展開が待っていた。


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 スタンリーとソフィは喧嘩して、ソフィはその屋敷の息子ブライス(ハミッシュ・リンクレーター)に求婚され婚約する。そしてスタンリーは、自分と身分も教養も釣り合う女性と結婚しようかと、ヴァネッサおばさん(アイリーン・アトキンス)に相談する。しかしおばさんに話している途中で、スタンリーは自分がソフィを本当は愛していることに気付くのだ。どんなに常識的に理論的に考えても、本当の気持ちは否定できなかったのである。そして、二人は互いの気持ちを認め合い・・・・・・。(この先は映画を観てのお楽しみ)

 コリン・ファースは毒舌家という設定だが、その毒舌が彼にぴったりだった。それにユーモラスなところのある役者だと思う。もちろんウディ・アレンの脚本の妙もあるけれども、彼本来の持ち味もあると思う。エマ・ストーンはとてもきれいでうまくて最高だった。コリンと丁々発止とやりあうところがとってもおもしろかった。センスのいい衣装をうまく着こなしてよく似合っていた。

 他の共演者たちも、自分の持ち場でその持ち味を十分に発揮していたと思う。やはりウディの脚本がいいし、役者たちも上手い人ばかりを選んでいるからだろう。


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 ウディ・アレンらしく、セリフのやりとりがとてもおもしろく相変わらず俳優たちは長いセリフを話しているのだが、それがすごく自然なのがやっぱりすごい。そして、南仏の素敵なお屋敷やお庭の美しさ、お洒落な衣装の数々、クラシックカーなど、いつもどおりウディ・アレン監督のセンスがそこここにちりばめられている娯楽作。安心して楽しんでください。


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 齢80歳(今年12月で)になるウディ・アレン監督。若いですね。

原題:MAGIC IN THE MOONLIGHT  監督:ウディ・アレン  出演:コリン・ファース、
エマ・ストーン、 サイモン・マクバーニー、 アイリーン・アトキンス、 ハミッシュ・リンクレーターetc.
2014年 アメリカ・イギリス

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ブルージャスミン [ウディ・アレン]

 ウディ・アレン監督が、初顔合わせとなるケイト・ブランシェットを主演に迎えてのシニカル・ドラマ。これは皮肉屋のウディ監督にして最も辛口の作品かもしれない。


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 富豪との結婚生活が破綻し、妹(サリー・ホーキンス)のアパートに身を寄せてどん底からの再出発を図る中年女性ジャスミン(ケイト・ブランシェット)が、セレブ生活が忘れられず惨めな悪あがきを重ねては身も心もすり減らせていくさまを辛辣に描き出す。(allcinema ONLINE)

 サンフランシスコの安普請のアパートに妹を訪ねて、エレガントな女性がやってくる。彼女は、かつてニューヨーク・セレブリティ界でその名を知られたジャスミン(ケイト・ブランシェット)。しかし、裕福でハンサムな実業家のハル(アレック・ボールドウィン)が詐欺で捕まってしかも牢獄で自殺し、結婚生活も資産も失って無一文だった。
 妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)はごく普通の庶民的な女性で、二人の男の子を育てているシングルマザーである。そこに居候したジャスミンは、妹のボーイフレンドが紹介してくれた歯科医院の受付の仕事に就くが、不慣れな仕事にあたふたとし、おまけに歯科医の先生に言い寄られて嫌気がさしやめてしまう。それにセレブに返り咲きたいという気持ちが抑えられず、パソコンでインテリアデザインの勉強をするが、なかなか思うようにはいかない。そんなとき、パソコン教室の女性教師がパーティーに招待してくれて、ジャスミンは妹と一緒に出掛ける。そこでジャスミンと妹はそれぞれいい男性と出会う。ジャスミンのお相手は、エリート外交官の独身男性ドワイト(ピーター・サースガード)。ジャスミンは彼こそが救世主だと思い、自分はインテリアデザイナーで、亡くなった夫は外科医だったと嘘をつく。だが嘘はバレて再びジャスミンは何もかも失くしてしまう。そして、持病の精神不安定が悪化し・・・。

 ケイト・ブランシェットの演技が際立っていて、ジャスミンがだんだん変容していく様を表情やメイクを工夫しながら演じきって見せた。アカデミー賞主演女優賞にふさわしい演技だった。ほんとうにうまい女優さんだと感心した。そして夫ハル役のアレック・ボールドウィンもとても素敵だった。


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 アレック・ボールドウィン 

 ウディ・アレン映画らしく、それぞれの場面で様々な俳優さんがいい演技をしていた。妹ジンジャー役のサリー・ホーキンスもよかったし、ジャスミンがパーティーで心惹かれるエリート外交官の独身男性ドワイト役のピーター・サースガードも「17歳の肖像」の時とはまるで違ったハンサムぶり。最初はわからなかった。ウディの配役の妙だと思った。


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 ケイト・ブランシェット&ピーター・サースガード

 ところで映画のほうに話を戻して、ジャスミンという人物だが、彼女は生き方が下手な人だと思う。妹のジンジャーはボーイフレンドもいて、しかもパーティーで知り合った男性と浮気もするのだが、また元の鞘(さや)に納まる。高望みせずうまく人生を渡っていくタイプだ。一方ジャスミンはセレブ生活のとき、夫の数々の浮気が発覚し、それを我慢できずに夫が裏取引で不正をやっていることをFBIに訴えたので、夫は獄中につながれ、自殺してしまう。何もかもが消えて行ってしまうのだ。しかもいい男性に巡り合えても、嘘がバレてこちらも失敗に終わる。自分の虚栄心が招いたことである。彼女は現実を受け入れることが下手なのだ。かわいそうな人だと思う。でも人間は、なかなか現実の自分を等身大でとらえることが難しいのかもしれないなとも思った。

 とまれ、ケイトが身にまとう衣装はどれも素敵で、ルイ・ヴィトンのスーツケースやエルメスのバーキン、シャネルのジャケットなどの小物や豪華な住まい、インテリアなどは、やはり女性(私)にとってはあこがれである。ウディ・アレンのセンスが光る。

 名曲「ブルームーン」のメロディをはじめ、懐かしいジャスに乗せて展開されるアレンワールドを、やはり好きだと私は思った。


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アカデミー賞授賞式でのケイト・ブランシェット

原題:BLUE JASMINE 監督:ウディ・アレン  出演:ケイト・ブランシェット、 アレック・ボールドウィン、
サリー・ホーキンス、 ピーター・サースガードetc.
2013年 アメリカ
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ローマでアモーレ [ウディ・アレン]

 ウディ・アレンが久々に出演したローマが舞台のコメディである。ウディは昔のようなマシンガントークはないものの、やっぱりなんとなくおかしみを感じさせてくれた。よぼよぼになっているわけでもなく、ファンとしては元気な姿が観れて嬉しく思った。


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 古都ローマで老若男女が繰り広げる悲喜こもごもの4つの物語が、互いに並行しながらシニカルかつユーモラスな筆致で語られていく。ローマでイケメンと婚約した娘に会うため、アメリカから飛んできた元オペラ演出家のジェリー(ウディ・アレン)。フィアンセの父親が驚くべき美声の持ち主と知り、彼を担ぎ出してオペラ界への復帰を目論むが…。著名なアメリカ人建築家ジョンは、建築家の卵ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)と知り合い、小悪魔的な恋人の親友によろめく彼に必死に警告を続けるが…。田舎から上京したばかりの新婚カップル、アントニオとミリー。妻が外出し、ひとりホテルの部屋に残るアントニオの前に、突然グラマラスなコールガール、アンナ(ペネロペ・クルス)が現われ…。ごく平凡な中年男レオポルド(ロベルト・ベニーニ)。ある朝突然、大勢のパパラッチに取り囲まれ、あれよあれよと大スターとなってしまい…。(allcinema ONLINE)

 いつもながらの超豪華キャストにわくわくした。イタリア映画界の重鎮(ロベルト・ベニーニetc.)から若手までが総動員され、それに加えてペネロペ・クルズやアレック・ボールドウィン、ジュディ・デイヴィスなどの世界に知られたベテラン勢、そしてジェシー・アイゼンバーグやエレン・ペイジなど売出し中の若手まで、ウディ・アレンに声をかけられたら、みんな断らないのですね。すごい!ほんとうにウディ・アレンはすごい人だ。


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 ロベルト・ベニーニ

 今回はこれまでのウディ・アレン色であるブラックな皮肉っぽさが薄まって、すごくおかしく楽しいドタバタ劇なのである。ロベルト・ベニーニ演ずる平凡な中年男が、なんの前触れもなく朝起きたら有名人になっていて、望みのものをどんどん手に入れる一方で、生活に疲れてく姿がユーモラスに描かれていた。R.ベニーニは監督としても一流だが、コメディアンとしてもそうなのだということがよくわかった。


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 上:アリソン・ピル&フラヴィオ・パレンティ  中:ジュディ・デイヴィス&ウディ・アレン  
 下:ファビオ・アルミリアート


 次によかったのは、葬儀屋さんのご主人がウディ演ずるリタイアしたオペラ演出家に見出される話。彼らは子供同士がローマで恋愛して結婚することになったので、出会ったという設定である。
 この葬儀屋さんのご主人役は本物のテノール歌手で、現在の音楽界でもっとも有名な人、ファビオ・アルミリアートである。なぜこの人がウディに起用されたのか。それがまたすごくおもしろいことになっていて、ある日、ジェリー(ウディ・アレン)が娘のフィアンセの家を訪ねると、葬儀屋の父親ジャンカルロ(ファビオ・アルミリアート)がシャワーを浴びながらオペラを歌っているのを聞いて、その美声にほれ込みスカウトしようと決心するのである。
 そして、ジェリーがオーディションにジャンカルロを連れて行って、審査員の前で「トゥーランドット」の『誰も寝てはならぬ』を歌わせるのだが失敗に終わる。なぜか。それはジャンカルロがシャワーの中でしか美声を発揮できないからだ。それに気付いたジェリーは、オペラの舞台でシャワーセットを登場させ、その中でシャワーを浴びながら歌わせるという演出をすると、最高の美声が発揮され、観客はやんやの大喝采となる。
 このオペラの舞台は、本物の装置とオペラ歌手陣を使い、非常に凝っていた。その中にシャワーセットが登場する場面がものすごくおかしかった。ウディらしい奇抜な発想だ。誰にもまねできない。
 ファビオ・アルミリアートが本当に歌っているのであるが、シャワーの水が口に入らなかったかしらと心配した。(笑)彼が実際にこの作品中で歌ったのは、「トスカ」の『星は光りぬ』、「トゥーランドット」の『誰も寝てはならぬ』、「道化師」の『衣装をつけろ』である。すばらしい歌声だった。私はもちろんオペラを観たことはあるのだが、数えるほどなので、これを機会にオペラにも足を運ぼうかとも思っている。


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 ジェシー・アイゼンバーグ&エレン・ペイジ

 そして、アメリカ人建築士ジョン(アレック・ボールドウィン)が昔ローマで住んでいたところを訪ねて、建築家志望のジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)と出会う話。ジャックは素敵な恋人サリー(グレタ・ガーウィグ)と一緒に暮らしているが、そこにサリーの親友で売れない女優のモニカ(エレン・ペイジ)が転がり込んでくる。
 モニカは小悪魔的な魅力のある女性だった。ジャックはサリーを愛しているので大丈夫と思っていたが、サリーとは違って奔放な子で、ジャックはだんだんと彼女に惹かれていく。それを見ていたジョンは、自分の若いころの苦い恋の記憶とそっくりなジャックの状況に「やめておけ」と忠告するのだった。
 このシーンのジェシー・アイゼンバーグとエレン・ペイジはとても光っていた。私は残念ながら、ジェシー・アイゼンバーグのフェイスブックの作品を観ていないのだが、なかなかいい役者だと思う。そして、エレン・ペイジが活き活きと等身大にも思えるような女性を演じて、とても魅力的だった。彼女は「インセプション」に出ていたが、あの時はそんなにいいと思わなかったのだが。やはりウディの、俳優の持ち味を発掘する才能はすばらしいと改めて感心していたのだ。アレック・ボールドウィンもすごくかっこよかった。


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 ペネロペ・クルズ

 最後にペネロペ・クルズが超セクシーなコールガール、アンナを演じるお話。これはアントニオ(アレッサンドロ・ティペリ)とミリー(アレッサンドラ・マストロナルディ)という田舎者の新婚カップルが、ローマに住むことになり、そこでとんだ行き違いが起こるお話。アンナはアントニオの妻として親戚に紹介され、ミリーは美容院へ出かけた先で憧れの男優サルタ(アントニオ・アルバネーゼ)と出会い、ランチに誘われだんだん危険なことに、というドタバタである。ペネロペが最高にきれいで、服装からして品の悪いコールガールを納得の演技で表現してみせた。私の好きな女優さんの一人。イタリア人カップルを演じた俳優さんたちもよかった。ストーリーがけっさくだ。

 とにかくどれをとってもおもしろくて、四つのストーリーをそれぞれ一本の作品にできるくらいだと思った。最後のシーンは黄昏時のスペイン階段とその下にある「舟の噴水」だったので、感激した。私はずいぶん前にローマに行ったのだが、この「舟の噴水」がすごく気に入ったので、ぜひもう一度見たいと思っていたのだ。

 ウディ・アレンはローマの魅力を余すところなく伝え、イタリア人俳優を存分に活躍させた。これはやはりウディのイタリア賛歌にほかならない。しかも彼流のセンスのあるストーリー展開で観客を楽しませてくれた。まだまだ彼の作品を観たいものだ。次回作の公開はいつになるのだろう。それを楽しみに生きて行こう!

原題:TO ROME WITH LOVE   監督:ウディ・アレン  出演:ウディ・アレン、 ペネロペ・クルズ、
アレック・ボールドウィン、 ロベルト・ベニーニ、 ファビオ・アルミリアート、 ジュディ・デイヴィス、 
ジェシー・アイゼンバーグ、 グレタ・ガーウィグ、 エレン・ペイジ 他、イタリア人のイケメン俳優多数
2012年 アメリカ・イタリア・スペイン  

 
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恋のロンドン狂騒曲 [ウディ・アレン]

 ウディ・アレンはやっぱり皮肉屋ですね。この作品の前に公開された「ミッド・ナイト・イン・パリ」は彼の皮肉屋ぶりが薄まっていたので、大ヒットしたんですが。この映画では最後にチクチクっとやられました。


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 「ミッドナイト・イン・パリ」で大ヒットを飛ばしたウディ・アレン監督がその前年にロンドンで撮り上げたオールスター・キャストの群像コメディ。40年間連れ添った老夫婦とその娘夫婦という2組の男女が、それぞれに結婚生活の破綻を迎えた中で光を求めてすがった新しい恋に振り回される姿を、シニカルな眼差しでコミカルに描く。
 ある日突然アンチエイジングに目覚めたアルフィ(アンソニー・ホプキンス)は、40年連れ添った妻ヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)を捨てて金髪のコールガール、シャーメイン(ルーシー・パンチ)に入れ上げる。ショックのヘレナは自殺未遂騒ぎを起こした末、怪しげな占い師にハマってしまう。一方、彼らの一人娘サリー(ナオミ・ワッツ)は、処女小説を当てて以降万年スランプの夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)に愛想を尽かしていた。そんな中、ギャラリーで働き始めた彼女は、セクシーでモテモテなオーナー、グレッグ(アントニオ・バンデラス)の虜になってしまう。そして一人自宅で過ごすロイもまた、向かいのアパートに越してきたエキゾチックな美女ディア(フリーダ・ピント)に夢中になっていくのだが…。(allcinema ONLINE)

 
 なんだかありそうでなさそうなお話。アルフィは結局浪費家の若いシャーメインに浮気されて現実にひきもどされてしまう。ロイは自分の才能のなさを認めず、窓越しに仲良くなった若い女の子を口説いて、事故で植物状態になった作家仲間の友人の小説を盗んでその女の子とうまくやろうと思ったが、植物状態の友人が目覚めそうになる。ロイに愛想をつかしているサリーは、ギャラリーのオーナーグレッグにだんだん惹かれていくものの、彼の態度を深読みしすぎて勘違いし、うまくいかなくなる。結局、一番幸せになったのはサリーの母親のヘレナで、アルフィに捨てられてから占い師の助言通りに生活していると、オカルトショップを経営している老人と仲良くなってゴールインする。

 恋愛においては、がんばったり、美人だったり、ハンサムだったりする人が必ずしも幸せにはならない。占い師の助言というのは、すごく一般論で客観的に正しいことを言っているので、それに素直に従ったヘレナが幸せになるというのも道理に合っている感じだ。とどのつまりは、人を傷つけたり、自信過剰だったり、悪いことをする奴は問題が起こるよっていうのがウディ・アレンの考えであって、彼一流の皮肉なんでしょう。

 いつものように、衣装のセンスが抜群。アンソニー・ホプキンスがラルフ・ローレンの白のセーターが似合うなんて初めて知りました。ナオミ・ワッツは美人だから、ちっとも派手じゃない色とかデザインの洋服なんだけど、それがかえって彼女の美しさを際立たせていた。アントニオ・バンデラスは金持ちのオーナーらしくすごく仕立ての良いスーツをすっきり着こなしてたし。フリーダ・ピントは全て赤の衣装で彼女の若さとかわいらしさがよく表現されていた。

 インテリアもよかったし、音楽もオープニングとエンディングに「星に願いを(When You Wish Upon a Star)」を流していてそれがとっても効いていた。それに劇中でフリーダ・ピントが弾くクラシックギターの音楽が、ボッケリーニの曲で素敵だった。なんてセンスがいいんだろう。

 大げさな感動も悲哀もないけれど、ウディらしい人生観を表現したストーリーだと思う。ウディ・アレン好きの人にはおすすめの作品である。


原題:YOU WILL MEET A TALL DARK STRENGER  監督&脚本:ウディ・アレン  
出演:アンソニー・ホプキンス、 ナオミ・ワッツ、 ジョシュ・ブローリン、 ジェマ・ジョーンズ、
アントニオ・バンデラス、 フリーダ・ピントetc.
2010年 アメリカ・スペイン
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ミッドナイト・イン・パリ [ウディ・アレン]

 御年77歳のウディ・アレンが、2012年度アカデミー賞&ゴールデン・グローブ賞の最優秀脚本賞を受賞した作品である。


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 映画の冒頭はパリの風景である。それは、とても現実味がある風景だ。画面の色もセピアっぽい色で、生活感があって観客もまるでその中を歩いているかのようだ。パリの名所が短いショットで次々に映し出されていく。ルーブル美術館、ノートルダム寺院、セーヌ河岸、エッフェル塔、凱旋門、そしてまだ閉まっている時間の、ひっそりとしたムーランルージュなど、ウディ・アレンのパリへの愛情が感じられるような素敵な出だしである。

 パリにやってきたアメリカ人ギル(オーウェン・ウィルソン)は、ハリウッドの売れっ子脚本家である。しかし私生活では華やかな現代のアメリカよりも、古き良き1920年代のパリをひそかに愛している。そしてある日真夜中にパリの街を歩いていたとき、一台の車がギルの横に停車し、それに乗り込むと着いたところは、憧れの1920年代のパリの酒場であった。つまりギルはタイムスリップしたのだ。そしてそこにはF・フィッツジェラルド夫妻(トム・ヒドルストン&アリソン・ビル)をはじめ、コール・ポーターなどがいてギルと親しく話してくれるのだった。
 ギルはフィアンセのイネズ(レイチェル・マクアダムス)と彼女の両親と一緒にパリに来ていたのだが、真夜中のタイムスリップに夢中になる。そして、彼はヘミングウェイ、ガートルード・スタイン、ジョセンフィン・ベーカー、ピカソ、ダリ、マン・レイ、T.S.エリオット、マティス、ロートレック、ゴーギャン、ドガなど超一流の芸術家たちと会い話をかわすのだった。

 この中で、最も似ていたのがサルバドール・ダリを演じたエイドリアン・ブロディである。そしてガートルード・スタイン役のキャシィ・ベイツのうまさったらない。また、ロダン美術館のツアーガイドを演じているのが、カーラ・ブルーニ、サルコジ元フランス大統領の夫人である。彼女はカメオ出演だが、ウディ・アレンがサルコジさんに朝食に招待されたときに出演を依頼し、快諾されたそうだ。大変魅力的で美しい人である。ウディ・アレン映画ならではの豪華キャストに大満足。

 さて、ジルは小説家になりたい夢をもっていて、その原稿をヘミングウェイとガートルード・スタインに批評してくれるように頼んだ。そして二人からよく書けているから少し手直しすればいいとのお墨付きをもらい、いよいよ小説家として生きて行こうと決心する。そして、ヘミングウェイからある指摘を受けるが、そのことによって婚約者のイネズと別れることになる。そして愛するパリでの作家生活がスタートするのである。

 モディリアーニの元恋人でピカソの愛人のデザイナー役にマリオン・コティアールがキャスティングされている。彼女がすごく美しくて、着ているドレスはヴィンテージものだそうだ。すばらしいドレスとバッグである。
 またジルが真夜中のパリで乗り込む車は、黄色のプジョー・ヴィンテージカー(Peugeot Type184 Landaulet)であり、フィッツジェラルド夫妻をのせたオープンカーはPeugeot 177 Torpedoなのだそうだ。

 音楽はジョセフィン・ベーカーのLa Conga Bliconti やウディ映画おなじみのジャズの数々。フレンチカンカンも少し使われる。申し分ない。

 言うまでもなく、俳優一人一人が大事にされ、印象に残る。皆がこぞってウディ作品に出たがるゆえんだろう。また軽妙洒脱なセリフの数々。会話が生き生きとしている。

 いつものウディの皮肉っぽさはそれほど強くなく、軽妙でロマンティックなハピーエンディングストーリーだ。一瞬たりとも観客を飽きさせない、会心の一作である。

原題:Midnight in Paris  監督&脚本:ウディ・アレン  出演:オーウェン・ウィルソン、 
レイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール、 キャシー・ベイツ、 マイケル・シーン、 
カーラ・ブルーニ、 アリソン・ビル、 レア・セドゥーetc.
2011年 スペイン・アメリカ 
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ウディ・アレンの「人生万歳」 [ウディ・アレン]

 ウディ・アレンの映画には、ジャズとニューヨークがよく似合う。やっぱりなくてはならないものだ。ヨーロッパで撮影した作品もおもしろかったが、今作は古巣のニューヨーク、マンハッタンが舞台である。


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    ラリー・デヴィッドとエヴァン・レイチェル・ウッド

 この映画の主人公ボリス(ラリー・デヴィッド)は、天才物理学者で皮肉屋で悲観主義的な老人である。ウディ作品特有のあのマシンガントークで、すごい皮肉を次々と話す。彼は、頭が良すぎて人生の無意味さを悟り、ある日自殺をはかる。命は助かったものの、それまでのグレードの高い暮らしと美人な妻を失ってしまう。
 ここからの展開が、ウディ映画らしい。ある夜ボリスは、メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)という南部の田舎町から家出してきた若い女性と偶然出会う。そして二人は年の差を乗り越えて結婚するが、そこにメロディの母親マリエッタ(パトリシア・クラークソン)が二人の住居を探し当ててやってくる。
 この母親がすごくおもしろく、最初は普通の主婦だったのが、ボリスの友人レオに、スナップ写真を見せたところ、写真の才能を見出され、フォトアーティストとして開花していくのである。そしてレオと恋仲になり、そこにギャラリー・オーナーのアルも加わり……。
 一方、メロディも自分の年齢にふさわしい若い男性ランディ(ヘンリー・カヴィル)に出会い、そちらのほうに心が動いていく。そこに、メロディの父親ジョン(エド・ベグリーJr)がやってくる。母親とは自分の浮気が原因で喧嘩別れしていたのだ。そして、また話はあらぬ方向に展開していく……。


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     エヴァン・レイチェル・ウッド

 新春から笑わせてもらった。これは、ウディ・アレンの信条である、「人生で起こることの90パーセントは運に左右される」という人生観に基づいた作品である。「偶然」の出会いが人の生活や生き方を変えていくのである。それをウディはおもしろおかしくコメディで示してくれる。セリフの面白さ、小道具、大道具のセンスのよさが彼の映画の特徴だ。

 ウディ・アレンはインタビューで、「コンスタントに作品を発表するあなたを支えてきたものはなんでしょう。」と聞かれ、「人数は少ないかもしれないが、世界中で確実に私の作品をみてくれる観客がいる。それは大きな助けになったね。」と答えている。

 早くも次回作「Midnight in Paris(原題)」(全米2011年公開予定)が楽しみである。

原題:Whatever Works    監督:ウディ・アレン
出演:ラリー・デヴィッド、  エヴァン・レイチェル・ウッド、  パトリシア・クラークソン、
エド・ベグリーJr、   ヘンリー・カヴィル  
2009年 アメリカ    梅田ガーデンシネマ

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それでも恋するバルセロナ [ウディ・アレン]

 当然のことだが、ハビエル・バルデムとペネロペ・クルスにはスペイン(バルセロナ)がよく似合う。溶け込んでいるといったほうがいいのか、2人とも水を得た魚のようだった。

 フアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)はプレイボーイの画家である。彼は街のバル(パブ)で、休暇をスペインで楽しみ開放的な気分になっているアメリカ人の女性連れ、クリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)とヴィッキー(レベッカ・ホール)を、小旅行に誘う。既に婚約中のヴィッキーは嫌がるが、奔放な考え方のクリスティーナに引きずられて、3人で出かけることになる。
 しかし、そこに現れたのが、フアン・アントニオの元妻で、情熱的な芸術家マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)だった。この四角関係はいったいどうなるのか!


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  ハビエル・バルデム/ペネロペ・クルス/スカーレット・ヨハンソン

 ウディ・アレン監督がヨーロッパに居を移して撮影した作品の第4弾である。ウディらしいコメディタッチと、思いがけない展開の恋愛模様に、飽きることなく楽しめる。
 ペネロペ・クルスがとても魅力的だった。情熱のかたまりのような女性アーティストの役で、激しく奔放な彼女の性格を、ペネロペ自身であるかのように演じて、第81回アカデミー賞助演女優賞を受賞した。
 スカーレット・ヨハンソンは、アメリカ人の奔放な若い女性の役だが、ペネロペと比べると、背伸びしている女子高生であるかのようだった。でも、彼女のかわいさがなかったら、あまりにも濃くなりすぎて、ウディ映画にはなりえなかったと思う。
 ハビエル・バルデムはここではプレイボーイの画家の役である。のっけから、クリスティーナ(スカーレット)とヴィッキー(レベッカ)を口説きにかかるのである。周知のように、彼は色々な役を演じ分けることができる実力派なのだが、この役では色男のオーラを発散していた。ハビエルは、スペインにいるときはいつもこんな風なんだろうかと、つい想像してしまうくらいだった。

 ウディ・アレンの人物像を描き分けるうまさは、際立っていた。奔放で自由な女性クリスティーナ(スカーレット)、堅実で常識人のヴィッキー(レベッカ)、色男のフアン・アントニオ(ハビエル)、情熱的でどこか常軌を逸しているマリア・エレーナ(ペネロペ)、この4人に加えてヴィッキーのおば夫妻や婚約者など、様々な登場人物がそれぞれの個性を発揮して、セリフ劇のおもしろさを生み出していた。


バルセロナ2.jpg


 それに加えて、バルセロナという街の魅力もたっぷり堪能できる。ガウディのサグラダ・ファミリアは映像の中でもやはり美しく、心を惹きつけられた。またスペインのパブ、「バル」のいい雰囲気や、ギターのソロ演奏も楽しめる。このギターの音色が落ち着いていてしかもスペイン情緒にあふれていて、素敵だった。ギタリストもハンサムだ。

 ウディ・アレンがインタビューで言っていたのだが、なぜヨーロッパに移ったかというと、別にニューヨークが嫌いになったわけではないのだそうだ。アメリカでは、映画にお金を出す人が色々口出してきて、好きなように作品が撮れなかったので、ヨーロッパに行ったとのこと。ヨーロッパはお金をポンと出して好きなようにやってくれといわれるだけで、一切口出しがないらしい。すばらしいことですね。

 この作品は、第66回ゴールデン・グローブ賞作品賞(ミュージカル・コメディ部門)も受賞している。アレン監督面目躍如といったところである。

 喜劇でも悲劇でも、早く次回作が見たいものだ。

原題:Vicky Christina Barcelona  監督:ウディ・アレン
出演:ハビエル・バルデム、 ペネロペ・クルス、 スカーレット・ヨハンソン、 レベッカ・ホール、 
パトリシア・クラークソン、 ケビン・ダン
2008年  スペイン/アメリカ  DVD

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ウディ・アレンの夢と犯罪 [ウディ・アレン]

 この映画のチラシで、白いクルーザーに乗っているユアン・マクレガーとコリン・ファレルを見て、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」に似ていると思った。確かに野望から犯罪へ発展しそして破滅へと、作品のテーマは同じだが、内容的にはまったく違う映画だった。

 きらびやかなビジネスの世界での成功を夢見るイアン(ユアン・マクレガー)と、酒とギャンブルと恋人と過ごす日々にそれなりの充足感を得ているテリー(コリン・ファレル)。そんな兄弟が「カサンドラズ・ドリーム号」と名付けた小型クルーザーを購入したことから、彼らの人生は思わぬ方向へと動き出す……。

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 コリン・ファレルとユアン・マクレガー

 いつもは最初からジャズのスタンダードが流れるのが、ウディ・アレン映画の決まりだが、今回は重々しい感じのクラシックのような曲が流れた。この曲は現代音楽の巨人フィリップ・グラスに依頼したオリジナル・スコアだそうだ。この曲によって、作品が悲劇なのだと想像がつく。

 ユアン・マクレガーとコリン・ファレルは、顔が違いすぎるので、兄弟らしくないという批判があったのだそうだ。けれども、作品中ではいい兄弟のように思えた。二人は「役者」なんだなと思った。
 ユアンの整った顔が素敵だった。それにかっこいい役者が、野望を抱いている男を演じるのが魅力的だった。けれども、コリン・ファレルも小心者の弟を表現するのがとてもうまかったと思う。コリン・ファレルに関して、今までの役と違う一面を見た思いがした。また、ウディの作品はセリフ劇なのだが、この2人のセリフのやりとりはかなり自然で、役者としての力量を感じた。

ウディ・アレンの夢と犯罪2.jpg

 アレン監督作品では、小道具類が非常にお洒落であるのが特徴的で、これが映画を観る楽しみの一つである。例えば、兄弟が乗るクルーザーは、クラシカルな木製のニコルソンボートという美しいヨットである。またイアン(ユアン)が恋人にいいカッコするために、弟である自動車整備工のテリー(コリン)から、客の自動車を借りるのだが、それはジャガーのXK120というモデルで、国際的な名声を得ている車だそうだ。往年のハリウッドスターも愛用した名車なのである。それに、ユアンとコリンのファッション、彼らの恋人のファッションもよかった。

 ストーリーのほうは、兄弟が野望のために殺人を犯すという話で、弟テリーは小心者なので、「一線を越えてしまったら、もう引き返せない。」といって殺人をためらうのだが、兄のイアンが強気でとうとう押し切られてしまう。しかし一線を越えたことから、弟は精神に異常をきたし、2人はどんどん破滅に向かっていく。

 ウディ・アレンは「人を破滅に導くのは野望だ。」といっている。貧乏だが平凡で人の良い両親の元で育った兄弟。兄は、より上のクラスの生活を夢み、美しい恋人を手に入れたいと望み、無理をしていく。弟はギャンブルで多額の借金を背負い、それをいっきに帳消しにしようと考えた。そこに人生の落とし穴があった。

 洒落た世界の中に、アレン流の皮肉が利いている。教訓的でなく、さらりと悲劇を描いているところが、ウディならではのうまさだと思った。


監督&脚本:ウディ・アレン   出演:ユアン・マクレガー、 コリン・ファレル、 トム・ウィルキンソン、 
サリー・ホーキンズ
2007年  イギリス

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タロットカード殺人事件(Scoop) [ウディ・アレン]

監督・脚本:ウディ・アレン   出演:スカーレット・ヨハンソン、 ヒュー・ジャックマン、 ウディ・アレン、 
イアン・マクシェーンetc.
2006年 イギリス/アメリカ    シネ・リーブル梅田

 ウディ・アレンの映画は、なんというか偏屈な親父がやっているバーに似ているかもしれない。そこはウディおじさんが好きな者は居心地がいいのだが、彼と肌が合わない人はやって来ないというような、そんなところ。私はもちろん、このバーの常連である。

 さて今回はウディがイギリスに渡ってから2作目の作品で、彼自身が出演している。彼はアメリカ人の三流マジシャン、スプレンディーニという役柄である。主演は前作に引き続き、スカーレット・ヨハンソン。ところが、今回はスカーレットは真面目なジャーナリスト志望の女子大生という役だからかどうか、眼鏡をかけている。それが、私には「松たか子」に見えてしかたがなかった。↓

皆さん、そう思いませんか。(笑)
 
 夏休みにアメリカからやってきた、ジャーナリスト志望の女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、ロンドン市街のマジックショーで、マジシャンスプレンディーニ(ウディ・アレン)に観客の中から選ばれ舞台に上げられる。それはボックスを使ったマジックで、中に入った人間の身体が消えては現れるというもの。その中で彼女は著名なジャーナリストの亡霊ジョー(イアン・マクシェーン)と遭遇。急死したばかりの彼から、とっておきのスクープを耳打ちされる。

 ここでウディ・アレンがマジックを2,3見せてくれる。↓の写真は水玉模様のスカーフを使ったもの。このスカーフを振ると、一瞬にして水玉がボタンに変わってバラバラと床に落ち、あとには黒一色のスカーフだけが残るという、なかなかのマジックである。ウディもさすがにお年のせいか、そんなにササッとした動作ではないが、それがまたおもしろい。彼は少年時代に趣味としてマジックの練習を重ねていたそうだ。

 亡霊ジョーが明かしたスクープとは、巷を震撼させる連続殺人事件の犯人が青年貴族ピーター・ライモン(ヒュー・ジャックマン)だというものだった。サンドラはスクープをものにしようと、スプレンディーニことシドと組んで、親子という触れ込みで上流階級のピーターに近づく。果たしてこの紳士は本当に殺人犯なのか……?

 前回の「マッチ・ポイント」に引き続き、イギリスの素敵なカントリーサイドのお屋敷と、イングリッシュガーデンが出てくる。またロンドン市街も見ることができる。音楽は前回同様、クラシックが使われている。チャイコフスキーの「白鳥の湖」「くるみわり」人形など。それと、ラテン音楽も使っている。これらが映像によく溶け込み、まったく違和感がなかった。

 今回のスカーレット・ヨハンソンは前回とは違って、それほどセクシーさを全面には押し出していない。むしろ等身大の役かなと思うくらい自然に、明るいアメリカ人の女子大生を演じている。それに相手役のヒュー・ジャックマンが、すごくかっこいい。こんなに魅力的な人だったかしらと思うくらい。彼のクイーンズ・イングリッシュが最高である。

 ウディは女優だけでなく、男優の魅力を引き出すのもうまいと思う。「おいしい生活」のヒュー・グラント、「ブロードウェイと銃弾」のジョン・キューザックもよかったし、「セレブリティ」のレオナルド・ディカプリオもとってもきれいで素敵だった。

 ウディ・アレン自身はさすがに年をとったなあと感じたが、あの饒舌にまくしたてるセリフは健在だ。今回は特にウディのユーモラスさがよくでていて、楽しかった。

 それからいつも思うことだが、人々がレストランなどで数人で話している場面というのがウディ・アレン映画にはつきものなのだが、この場面の自然さはすごいと思う。たぶん、台本なしで設定だけ決めて、役者に勝手にしゃべらせているのだろう。こういうところがうまいと思うゆえんだ。

 今回はウディ自身が出演していたのでコメディ色が強く、少しつくりは甘いかもしれないが気軽に楽しめた。次回もまた楽しい映画を期待したいものだ。


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