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あるいは裏切りという名の犬 [外国映画]

監督:オリヴィエ・マルシャル  出演:ダニエル・オートゥイユ、 ジェラール・ドパルデュー、
ヴァレリア・ゴリノ、 ダニエル・デュヴァル、 ミレーヌ・ドモンジョ

 映画というのは、終わり方が大事だなと、この映画を見て思った。それほどこの映画の終わり方がすっきりして、納得がいったということなのだ。

 パリ警視庁の二人の警視、レオ・ヴリンクス(ダニエル・オートゥイユ)とドニ・クラン(ジェラール・
ドパルデュー)はかつては親友同士だった。しかし、カミーユ(ヴァレリア・ゴリノ)という女性を2人が愛して、彼女がレオと結婚したときから、男達の友情は崩れた。今はお互いが率いる部署も、対立しているような関係だ。しかも、彼らは警察庁次期長官の座をも、競い合っていた。
 2人は、現金輸送車強奪事件の犯人逮捕を巡り、またしても対立していた。しかし、上からの命令で、レオが陣頭指揮を執ることになる。だが功をあせったドニは、信じられないような行動に出、それが元で、レオの相棒のエディ(ダニエル・デュヴァル)が犯人に射殺されてしまう。悲しみをこらえ、犯人逮捕に全力をあげるレオ。そしてついに、レオは犯人を逮捕し、次期長官の座に王手をかける。
 だが、レオはこの事件の捜査中に、情報屋の男に情報をもらう代わりに、はめられて殺人事件に関与していた。それをひょんなことから知ったドニは、このことを上司に密告する。その裏切りによって、レオは容疑者として逮捕され、7年間服役することになる。さらに、獄中のレオを待っていたのは、カミーユの死という最大の悲劇だった。
 7年後、全てを失い出所したレオは、妻の死の真実を探り始めるが……。

 最初から、息をもつかせぬ展開で、CGをまったく使わない生のアクションのおもしろさを堪能できた。しかもストーリーがおもしろく、ミステリアスな要素もあり、あっと驚くところもあった。

 久しぶりに、男同士の戦いをたっぷり楽しむことができた。ダニエル・オートゥイユは正義漢の役で、ジェラール・ドパルデューは徹底した悪者役だった。
 この2人の名優のお蔭で、映画が単なるアクションものではなく、「情」を色濃く感じさせる作品になったことが、最大の魅力なのではないだろうか。私の言う「情」とは、人間のなかにある様々な感情という意味である。嫉妬、憎しみ、愛、哀れさ、やさしさ、せつなさ……。そういうものを、この2人は巧みに表現していたと思う。自然に、というべきか。これがベテランの演技というものなのだろうか。

 この作品の主役の2人もすばらしかったが、レオの相棒エディを演じたダニエル・デュヴァルに心惹かれてしまった。この人は映画監督などもこなす、多才なひとのようだ。フランソワ・オゾン、
ミヒャエル・ハネケの映画にも出演しているので、ぜひ見てみようと思った。

 加えて、女優陣が魅力的な人ばかりだった。レオの妻カミーユを演じたヴァレリア・ゴリノは、かわいい感じが残る美人。ドニの妻役のアンヌ・コンシニは、雰囲気のある美しい人。そして、ドニの部下のエヴを演じたカトリーヌ・マルシャルは、スタイル抜群でアクションもこなすかっこいい女性だった。また、元娼婦で、レオに助けられ、最後はレオを助けるマヌーに、ミレーヌ・ドモンジョ、この人が存在感があってよかった。かなりのお年だと思うのだが、とっても素敵な人だった。
 マヌーの主人の役が、監督のオリヴィエ・マルシャルというのも楽しい。監督自らが参加して、映画創りを楽しんでいるのだろうと想像できた。

 「子供はおことわり」の、フィルム・ノワールの世界を思う存分楽しめる、大人のための傑作である。


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コメント 17

TaekoLovesParis

<映画というのは、終わり方が大事だなと、この映画を見て思った。>
→Cocoさんの今回の文章も、最後の一節がよかったです。
< 「子供はおことわり」の、、、>ってびしっと決めていますね。

2人の名優あればこそ、の映画ですね。特に私はダニエル・オートウィユ
の憎めない、人の良さがにじむような表情が好きです。ミレーヌ・ドモンジョ
、今でも映画に出ているんですね。カトリーヌ・ドヌーヴより前の世代の女優
。昔は金髪でチャーミングだったけど、、、Cocoさんんがほめてらっしゃる
から、見てみたいです。
by TaekoLovesParis (2007-02-01 23:40) 

coco030705

Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
この映画はパリが舞台だし、Taekoさんにぴったりじゃないでしょうか。
ぜひお薦めです。ダニエル・オートウィユはなんともいえず、魅力的な人ですよね。フランスでは本当に人気のある俳優さんですね。
ひょっとして、本物とお会いになったことがあるのかしら?
by coco030705 (2007-02-02 00:24) 

non_0101

こんばんは。おじゃまします。
ストーリーも演技も重厚で
さすがはフランス映画だなあと思う作品でした。
確か、ハリウッドでリメイクの話があるのですよね。
このダークな雰囲気がハリウッドへ行くと
どんな風になるのか楽しみです(^^)
by non_0101 (2007-02-02 00:29) 

Naka

こんばんは♪
捻りの効いたストーリーで、
最初から最後まで息もつかせぬ緊張感でしたね。
何度か鳥肌が立ちました(^^。
オートゥイユの実娘が出演していましたが、
この父娘のシーンも印象的でした。

主演の二人はもちろん、
脇の役者たちも皆存在感があって素晴らしかったです。
芳醇なワインのような、まさに大人の映画ですね♪
by Naka (2007-02-02 00:33) 

coco030705

nonさんへ
nice&TB&コメントありがとうございます♪
そうそうリメイクの話ありますね。
アイデアだけ活かして、まったく違う作品になるような
気がします。ちょっと期待しちゃいますね。
by coco030705 (2007-02-02 00:37) 

coco030705

Nakaさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
Nakaさんがおっしゃるように、「芳醇なワインのような、
まさに大人の映画」でした。見てよかったと感激しました。
あのお嬢さんは本物のお嬢さんだったんですね。
どうりで顔が似てるなあって思いました。よくあんなに似た人を
捜してきたものだと思ってたんですよ。(笑)
DNAは争えませんね。
by coco030705 (2007-02-02 00:42) 

TaekoLovesParis

Cocoさんへ
<ひょっとして、本物とお会いになったことがあるのかしら?>
→そんなことがあったら、もう、天にも昇るような気持ち。黙っていられないから、ぜったいCocoさんに自慢してる(笑)
神戸在の通訳している友達が、「あんたの好きな俳優、ほら、あの人に
おうたんや。パリの日本料理屋で。写真いっしょに撮らせてもらったから」
と、得意げに出した写真に写っていたのは、ジェラール・ド・パルデュー。
「違いすぎ!」と私はあきれたのですが、知らない人には、区別が難しい
のでしょう。ったく、この映画では善玉と悪玉だっていうのに(笑)
by TaekoLovesParis (2007-02-03 00:15) 

coco030705

Taekoさんへ
そうなんですか!神戸のお友達はとっても愉快な方のようですね。
でも、Taekoさんだったら、だれかフランスのスターとお知り合いで
いらっしゃるようなイメージがありますよ!☆♪
by coco030705 (2007-02-03 02:01) 

私はこの映画を観てて、ふと『インファナル・アフェア1&2』を思い出しました。
こうゆうフィルムノワールの魅力は、完全なる悪玉や完璧なる善玉は存在せず、
黒に近いグレーな人物と白に近いグレー人物とが、互いのプライドや情のために
激しくぶつかり合うから、どちらの立場にも共感できて面白い!とゆうワケで。
長官のロベールや殉職するエディ、クビになるティティ、情報屋のシリアンも、
それぞれが自分の正義感と罪悪感の中で揺れ動いていて、存在がリアルですもん。
ハリウッドはどちらかとゆうと、善悪ハッキリ付けすぎる傾向があるから、
なかなか期待できないでいます。。。
by (2007-02-04 01:06) 

coco030705

おりょんさん、こんばんは。
nice&コメントありがとうございました♪
なるほど、フィルムノワールのつくりかたって、そういうものなんですね。
だからこそ、人間くさくておもしろいのかもしれません。
ハリウッドは確かに、なんでもはっきりしすぎですね。
今度のリメイクも、アイデアだけがいっしょで、まったく別物の映画に
なりそう。
「インファナル・アフェア」はおもしろいですね。好きです☆
by coco030705 (2007-02-04 01:25) 

coco030705

カシムさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2007-02-06 00:12) 

クリス

ほんとうに、これ程終わりが良かった映画って久し振りかもしれませんね。だから余計に、もう一度観たいなって思うのかもしれません。
それにしても、こんな重厚な見応えのある映画を観てしまうと、次はなにを観に映画館へ行こうかなと悩んじゃいますねぇ。オートゥイユの作品も、日本未公開のものが多くて悲しいです。
by クリス (2007-02-13 16:33) 

coco030705

蟻銀さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
そうですね、わたしも久々にもう一度見たい映画に出会えました。
オートゥイユの作品、色々イギリスでご覧になったんでしょうか。
いい俳優さんですよね。日本にこんな渋い人がいないのはなぜなのか。
やっぱりフランスの水が創りだした映画スターなんでしょうね。
フランスからまた、アラン・ドロンのような超美男子俳優が生まれることも
願っておりますが・・・☆
by coco030705 (2007-02-13 16:58) 

TaekoLovesParis

今頃、ようやく、見てきました。
実際に見てから、こうやって皆さんのコメントを拝見すると、感心することが多くおもしろいですね。
ローラが実際のオートウィユの娘とは、気づきませんでした。
もちろん、子供時代の、でしょ?

組織の力を見せつけられました。自分の野望や思惑で動いても、あくまでも組織の中での範囲。対する強盗も組織。銃撃戦には一匹狼で向かえないですよね。
殉職したエディの葬儀のようす、葬送行進曲が聞こえる中、ドパルデューが
弔いをした途端に、部下たちが一斉に背を向けて抵抗する。フランスっぽいなぁと
思いました。
警察の内部調査委員会(判事がいる)、こういう組織は日本にありませんよね。
犯人の経歴で、シリア戦線にいたとあったけれど、フランス軍は強いんだそうです。軍隊にいた人たちは体がたくましくてかっこいいです。ヨーロッパでは戦争が絶えず、すぐそこにあるんですよね。コソボの紛争もあったし。

緊迫感が続いて飽きない。余分なことがなく冗漫にならず、いい映画でした。
教えてくださってありがとう。
by TaekoLovesParis (2007-05-14 00:55) 

coco030705

Taekoさんへ
コメントありがとうございます♪
今年最初に見た映画なんですが、やっぱりよかったですね。今でも
印象が薄れません。
ヨーロッパは地続きなので戦争はいつも人々の意識の中にあるのでしょうね。
日本はその点、かなり意識が薄いような気がします。それがいいことなのかどうなのか、難しい問題です。

オートウィユのお嬢さんは、最後のほうに出てきた成長した女の子のほうです。
顔がとっても似ていると思いました。
by coco030705 (2007-05-14 08:39) 

ken

どうやって「落とし前」をつけるのか?
途中からそればかり気になってました。
で、僕が想像したオチの付け方じゃなかったので(まるでブーメランフックのようだった)
個人的にはちょっと驚きました。

そうですか。実の娘でしたか。いい話ですねえw
by ken (2007-09-19 22:19) 

coco030705

kenさんへ
nice&TB&コメントありがとうございます♪
そうですね。オチの付け方が、ちょっとはぐらかされた感じがしましたね。
でもkenさんが書いていらっしゃったように、今年最高の映画といってもいいくらい
おもしろい映画でした。
オートウィユのお嬢さん、顔がとっても似てると思いました。(^^)
by coco030705 (2007-09-20 00:56) 

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