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吉例顔見世興行 2008.12  [演劇]

 今年も、恒例の京都南座での顔見世興行に行ってきた。今年は、玉三郎、仁左衛門、吉右衛門、海老蔵という最高の役者が揃って、すばらしい舞台だった。

第一 正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)

出演:片岡愛之助、 片岡孝太郎

 父の敵を討とうと血気にはやる曽我五郎時致が、鎧をひっさげ駆け出すところ、女ながらも力自慢の舞鶴が鎧の草摺を掴み引き止めます。勇ましい両者の“引き事”が見ものの舞踊劇です。曽我五郎に愛之助、舞鶴に孝太郎という花形の二人で華やかに幕を開けます。

 片岡家の義理の兄弟の競演である。愛之助は、片岡秀太郎の養子、孝太郎は仁左衛門の長男である。愛之助は見た目が仁左衛門の若かりしころを髣髴とさせる。セリフも、仁左衛門から手ほどきを受けているので、よく似ている。孝太郎は踊りがしっかりしているので、見ていて安心感がある。衣裳や舞台装置が豪華で、顔見世にふさわしい幕開けである。


第二 八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)

出演:片岡我当、 片岡愛之助、 片岡進之介、 片岡秀太郎

 主君小田春永の嫡孫・春若の代理として上使と会うため、佐藤正清は北畠春雄の館を訪れました。その帰り、嫁の雛衣を伴う船上で、正清は寛いだ様子を見せますが、実は北畠の館で跡目争いの計略により、毒酒を飲んでいたのでした。平然を保つ正清の元に、北畠の使者が迫ります--。十三世仁左衛門ゆかりの名舞台を、我當の佐藤正清、秀太郎の雛衣という配役。

 これは、舞台に大きな船がすえつけられ、その船上での芝居である。それだけでおもしろく、後半に回り舞台で船が回転するので、違った角度からも楽しめて、飽きない芝居だった。


第三 藤娘(ふじむすめ)

出演: 坂田藤十郎

 松の古木に絡みついた藤の花の間から、藤の枝を手にした美しい藤の精が現れます。近江八景に事を寄せ、恋する娘の気持ちを踊りに託します。女方舞踊の代表作の一つで、藤十郎の藤の精は、襲名後初めての上演となります。

 この踊りは、色々な役者で見ているが、それぞれに個性がちがって楽しめる。最初は真っ暗で何も見えないところから幕が開き、きの音(ね)とともに舞台がパッと明るくなる。そこは藤の花が舞台一面に天井からさがっていて、すばらしく美しい。その中央に太い松の古木がある。そこから藤十郎扮する藤の精が藤の一枝を肩にかついで出てくる。そして踊りが始まるのだが、途中3度くらい、ぶっかえり(衣裳が瞬時に変わる早替り)があって楽しめる。藤十郎はもう70歳を越えているはずだが、娘のかわいらしさを表現するのが天才的にうまいと思う。美しくて楽しい舞踊である。

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 お祝いの立て札。ロビーに置かれている。お祝いを贈った人の名前が書かれている。だいたいが、祇園のきれいどころの名前である。

第四 梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)

出演:中村吉衛門、 歌六、 芝雀、 亀鶴、 歌昇、 我当

 鶴ヶ岡八幡宮に参詣に訪れた大庭三郎と弟の俣野五郎のもとに、六郎太夫と娘の梢が重宝の刀を売りにやってきます。刀の目利きを頼まれた梶原平三景時(吉右衛門)は“名刀”と鑑定したのですが…。
 梶原の「目利き」、名刀の試し斬りをする「二つ胴」、そして石の手水鉢を真っ二つに斬る「石切り」と見所の多い作品です。
 吉右衛門が当たり役の梶原平三を演じ、大庭三郎に我當、六郎太夫に歌六、娘梢に芝雀、俣野五郎に歌昇、飛脚谷山宗助に錦之助が揃う華やかな舞台。
 
 やはり吉右衛門はかっこいいしうまい役者である。この話も面白い見せ場が色々あって、気楽に楽しめる。名刀の試し切りをするのに、二人の人間を重ね合わせて、胴を切るシーンがあるのだが、上の人は罪人という設定で舞台では人形を使う。そして、下は六郎太夫という罪もない人間なので、梶原は下の人を切らないように、上の人間だけを切るということになっている。人形が真っ二つになるが、血も出ないしまったく残酷性はない。悪人達はその名刀を「なまくらだ。」とあざ笑いながら去っていく。残された六郎太夫が「この刀は名刀なのに」とくやしがる。それを見た梶原が、大きな石でできた手水鉢をその刀でエイヤッとばかり切ると、石の手水鉢は真っ二つに切れるのだった。こういう小道具が大活躍するおもしろい芝居である。

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 これも玉三郎のお祝いの立て札。

第五 ぢいさんばあさん

出演:片岡仁左衛門、 坂東玉三郎、 市川海老蔵、 翫雀、 愛之助、 孝太郎

 おしどり夫婦と評判の美濃部伊織と妻・るんは、伊織が上京の役目を仰せつかり1年間離ればなれになります。その京でふとしたはずみから人を斬った伊織はお預けの身となってします。それから37年の歳月が流れ、ついに再会の日を迎えます--。
 美濃部伊織に仁左衛門、るんに玉三郎という息のあった二人に、宮重久右衛門を翫雀、久弥妻きくに孝太郎、下嶋甚右衛門に海老蔵、宮重久弥に愛之助と清新な顔ぶれが揃い、夫婦の愛を情感豊かに描きます。

 待ってました!仁左衛門と玉三郎の登場である。この二人がすわっているだけで、匂うような色気が漂ってくる。そこだけが舞台上でもパッと明るいのだ。しかもこの二人にからむ悪人が、今をときめく市川海老蔵である。なんと豪華な配役だろう。海老蔵も悪役に徹していて、かっこよかった。
 これは夫婦の情愛を描いたお芝居なので、37年の月日が流れて伊織(仁左衛門)とるん(玉三郎)が再会して、しみじみ語り合うところで胸がジーンとなった。客席からもすすり泣く声があちこちから聞こえていた。二人の芝居の確かさ、うまさを堪能できる、感動作である。

 今年も顔見世を見ることができてよかった。歌舞伎ってどうしてこんなにおもしろいのだろう。もっと若い人が歌舞伎に足を運んでくれたらといつも思う。海老蔵に続く、若手スターの登場が待たれるところである。来年も年明けから松竹座で歌舞伎を楽しもうと思っている。

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coco030705

xml_xslさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-12-22 17:28) 

coco030705

takemoviesさんへ
nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2008-12-22 23:55) 

coco030705

Taekoさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-12-23 22:57) 

coco030705

くらいふさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-12-23 22:58) 

ジジョ

こんにちは☆

いいですね〜。京都で歌舞伎♪なんだか素敵☆
ちょうど、東京の歌舞伎座が立て替えしてしまうので、
今の建物のうちに観に行こうとおもっています♪

by ジジョ (2009-01-13 02:11) 

coco030705

ジジョさんへ
nice&コメントありがとうございます♪

東京の歌舞伎座、建て替えなんですね。好きな劇場だったので
残念です。もし切符が取れたら、行きたいですが無理でしょうね。
東京在住の方は、取りやすいでしょうね。
楽しんできてくださいね。またお話聞かせてください。
by coco030705 (2009-01-13 20:46) 

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