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舞踏会の手帳(クラシック・ムービー) [外国映画]

 友人が大好きな映画ということなので借りてみた。「舞踏会の手帳」はオムニバス(元の意味は乗合馬車)の傑作といわれている。やはりクラシック作品は時間の流れがゆったりしてるし、品があると思う。

 舞踏会の手帳.jpg

 夫を亡くした美しい未亡人クリスティーヌ(マリー・ベル)が、昔の手帳を手に社交界デビューの夜にワルツのお相手をしてくれた男たちの今の姿を訪ね歩く物語。7つの物語が描かれる。俳優はこの当時の名優ぞろいだそうだが、監督のジュリアン・デュヴィヴィエ以外は名前も知らなかった。順にストーリーをご紹介しよう。

 ジョルジュの家では、母親が迎えた。クリスティーヌに恋していた彼は、彼女の結婚を知って自殺し、母親はいまだに息子が生きているものと思い込んで生活をしていた。

 文学少年だったピエールはキャバレーのあるじ兼泥棒になっていた。クリスティーヌがむかし通りに唱える詩にロマンティックな雰囲気を味わっていたが、警察が踏み込み逮捕されるのだった。。

 作曲家志望だったアランは神父になっていた。クリスティーヌに捧げる曲をピアノで弾いたが、彼女は耳もかさず、ほかの男と笑い興じていたと、クリスティーヌに三人称で語る。

 詩人気取りだったエリックはアルプスのガイドである。久し振りのクリスティーヌと意気投合して、無人の山小屋に同宿しようと決めた時、遭難事件発生をふれる鐘が響き、クリスティーヌの止めるのも聞かず、山男は直ちに雪の斜面を滑りくだって行った。

 政治家を目指したフランソワは、田舎町のワンマン町長となっていた。その再婚の挙式にちょうど居合わせたクリスティーヌに式に出てくれと頼む。司会者をまったく無視し、自作自演のワンマン挙式を陽気に進めるが、その裏で彼はならず者の息子に手を焼いていた。

 ティエリーは医者にはなっていた。しかし、堕胎で稼ぐ陰の医者で、精神障害の発作に悩んでもいる。クリスティーヌと貧しい食卓を囲むうちに病気の発作が出て、彼女は彼の妻に、二度とくるなと追い出される。

 生まれ故郷の町では、ファビヤンが美容師を愛想よくやっている。むかしの会場で舞踏会があるからと誘う。クリスティーヌが16歳のときは豪華に映った会場も、今の目には安手で、彼女は20年前の、夢のような思い出との落差にがっかりするのであった。

 旅から帰ると、むかし恋したジェラールの住所が知れた、すぐ近くだという。行ってみる。彼は直前に世を去っていた。遺した豪邸が今日人手に渡ると、残された子供が言う。クリスティーヌはジェラールの息子を引き取り、母親の愛を注ぐ気になった。初めての舞踏会に送り出す時にいう。「少し緊張するでしょう。初めての煙草の時くらいに。」

 過去の男たちの現在の姿がとてもおもしろかった。男の多くは昔舞踏会でクリスティーヌが会ったときよりも不幸な人生を送っていた。ストーリーも現実味があり、男優もほとんどが容貌ではなく演技派でそろえたところが、より一層現実味を増して作品を面白くしていたと思う。年月は人をいやおうなく変えてしまうが、クリスティーヌのことを皆が思い出して、昔の思い出に浸る。しかし、そこには現実の生活があり昔には戻れないことをお互い思い知るのだった。
まさに人生の皮肉である。いかにもフランス映画らしい感じがした。

 劇中、昔のパーマのすごい器械とかがでてきて、ああいうのを見るのも面白かった。衣装も夢があってきれいで、ロケーションもすばらしかった。ヨーロッパは絵になる場所だ。多くの芸術が生まれるのもわかる気がする。

 クラシック・ムービー好きの方にはおすすめの作品である。

原題: UN CARNET DE BAL       監督: ジュリアン・デェヴィヴィエ
出演: マリー・ベル、 フランソワーズ・ロゼー、  ルイ・ジューヴェ、  アリ・ボールetc.
1937年   フランス    DVD


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coco030705

xml_xslさんへ
こんばんは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-12 01:09) 

TaekoLovesParis

「舞踏会の手帳」という映画があって、昔会った人たちをたづね歩くという大あらすじは、知っていたけれど、cocoさんのご紹介で具体的に読んでおもしろかったです。フランス映画らしいですねー。
男の人たちが、その後、あまりいい人生を送ってない、ということは、若い彼女が男の人を見る目がなかったのか、彼女と結ばれなかったから、男の人たちの人生がその後、悪くなったのか、どっちなんでしょう。
70年も前の映画のストーリーが、今見てもさほど陳腐でないって、いうことは、
人間って、本質が変わらないんですね。
by TaekoLovesParis (2010-09-14 21:46) 

coco030705

Taekoさんへ
こんばんは。nice!&コメントありがとうございます♪

Taekoさんのおっしゃるとおりです。人間の本質は年月が経っても変わらないんですね。源氏物語が今も読み継がれているのも、恋愛の本質が変わらないがごとく。
監督のジュリアン・デュヴィヴィエの好みが悲劇的なシチュエーションなのだそうです。この作品は人間は年月とともに変わっていくものなのだということを、皮肉っぽく描いていると思います。若さが老いに変わっていき、昔の想いも色あせるということですね。それこそが人間の本質だと思いました。
デュヴィヴィエの作品もちょっと調べてみようかなと思っています。

by coco030705 (2010-09-15 00:24) 

coco030705

Soraさんへ
こんばんは。nice! ありがとうございます♪
大阪はようやく涼しくなってきました。
by coco030705 (2010-09-15 19:52) 

coco030705

gillmanさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-20 10:21) 

non_0101

こんばんは。
タイトルしか知らなかった作品です。
クラシックのフランス映画も見応えありそうですね~
いつかのんびり出来た時にチャレンジしてみたいです☆
by non_0101 (2010-09-20 21:24) 

coco030705

nonさんへ
こんにちは☆nice&コメントありがとうございます♪

私も出ている俳優さんは誰も知らないのですが、映画は
いつまでも残るものなのだなあと改めて思いました。
人間というものは、変わっていくのが真理なのだということを
表現していると思います。だからこそ、長い年月、人々に
みられる作品になっているのでしょうね。
by coco030705 (2010-09-21 13:33) 

hash

70年以上も前の作品ですか。
そんな古い映画を観ることができるというだけでも喜ばしいことですね。
by hash (2010-09-23 22:25) 

coco030705

hashさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪

DVDやブルーレイがあるお蔭で、古い作品をいつまでも楽しむことが
できるのは、映画ファンにとっておおきな喜びですね。
by coco030705 (2010-09-24 19:30) 

coco030705

dorobouhingさんへ
こんばんは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-24 19:41) 

coco030705

ごんちゃんさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-25 10:53) 

coco030705

丹下段平さんへ
こんにちは!こちらにもnice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-26 13:53) 

coco030705

佐々木さんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-26 13:57) 

coco030705

PENGUINGさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-27 16:00) 

coco030705

翠川与志来さんへ
ようこそ。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-09-27 16:04) 

kaika-t

こんにちは。^^
>劇中、昔のパーマのすごい器械とかがでてきて、ああいうのを見るのも面白かった。衣装も夢があってきれいで、ロケーションもすばらしかった。
こういうのも観る時の大きな楽しみの一つですよね。^^
>ヨーロッパは絵になる場所だ。多くの芸術が生まれるのもわかる気がする。
そうですね。^^ 自然も古い街並みも惹かれますよね。
by kaika-t (2010-10-01 15:03) 

coco030705

galapagosさんへ
ようこそ。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-10-01 15:42) 

coco030705

kaika-tさんへ
こんにちは。nice! &コメントありがとうございます♪

クラシック・ムービーは色々な発見があっておもしろいですね。

by coco030705 (2010-10-01 15:46) 

coco030705

Nさんへ
こんばんは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-10-02 22:41) 

キキ

こんにちは。
この作品は観た事ないです。
クラシック・ムービーは大好きなのでチャレンジしたいと思います。
長い時か経っても残っている作品は本物の香りがしますよね。
by キキ (2010-10-07 07:42) 

coco030705

キキさんへ
こんばんは。nice! &コメントありがとうございます♪
古い映画ですが、昔のパーマのものすごい器械なんかがでてきたりしたのが、おもしろかったです。(^^)
by coco030705 (2010-10-09 22:57) 

ken

昔、脚本の勉強をしていたときに、観る機会があったら観なさいと言われた作品です。
僕が脚本の勉強をしていた時代は、まだレンタルビデオ屋がなかったんですよねw
だからそのまんまになっていました。近いうちにぜひ観たいと思います。
by ken (2010-11-01 02:45) 

coco030705

kenさんへ
こんにちは、お久しぶりです。お元気ですか。nice&コメントありがとうございます♪

kenさんは脚本を勉強なさってたんですよね。前にお聞きしたことがありました。
だから文章が一般的なものとは全然違うんですね。kenさんの文章は読んだ人にその作品をみたいと思わせるようなうまさがありますものね。

この映画は、男優陣の演技がすばらしいですよ。昔から名優というのは居たんだなって感心しました。女優さんは添え物という感じです。
by coco030705 (2010-11-01 17:14) 

Sho

はじめまして。Shoといいます。
この映画はずいぶん昔に知って、でもまだ観ていません。
今の年齢でみると、身に迫りそうです(苦笑)
記事を拝読しながら、男の人は繊細なんだなあ・・と思いました。
古い映画はよいですね。
衣装も俳優さんも、とても魅力的だと思います。
by Sho (2010-11-03 07:01) 

coco030705

Shoさんへ
こんにちは。ようこそ。nice&コメントありがとうございます♪

クラシックムービーはほんとにいいですね。見ていると時間の流れが違うので、
ホッとします。現代は忙しすぎますものね。
よかったらいつかこの作品をご覧になってくださいませ。
by coco030705 (2010-11-03 08:48) 

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