母の身終い(ははのみじまい) [外国映画]
余命いくばくもないことを知り、苦しんで死ぬのは嫌だと思ったとき、母はある決意をする。それを息子はどう受け止めるのか。大変重い課題である。主演のエレーヌ・ヴァンサンの毅然とした母の姿に気品と美しさは感じたものの、観終わって複雑な気持ちになった作品である。
エレーヌ・ヴァンサン
48歳のトラック運転手アラン(ヴァンサン・ランドン)は、麻薬の密売に手を出し前科者となった不肖の息子。出所後、年老いた母イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)の家に転がり込み、人生の再出発を図る。しかし几帳面なイヴェットとずぼらなアランは何かと対立し、衝突を繰り返す。そんなある日、アランはイヴェットがスイスの施設で尊厳死をする旨の契約書にサインしていることを知る。彼女は脳腫瘍に冒され、余命宣告を受けていたのだ。イヴェットの選択に激しく動揺しながらも、初めて母の人生と向き合おうとするアランだったが…。(allcinema ONLINE)
アランは本当にダメな息子である。しかし母はそんな息子でもやはり心配して同居を許し何くれと面倒を観るが、どうにも立ち直ることのできない息子に手を焼くのだ。この辺りの親子の葛藤というものがとてもうまく表現されていて、こういう親子は居そうだと感じるほどだった。
だが、母イヴェットは重篤な病気でとうとう医者から余命宣言がくだされる。イヴェットは友達が同じ病にかかり、最後苦しんで死んだのを見たことから、自分は苦しむ前に死にたいと思い、ある決断をする。息子は母の決心に苦しむが最後は母の意思に従うのだった。
とても重いテーマを淡々と描いた作品だった。母の心理描写が大変うまく、彼女の視点で色々なものが見えていたのだなと思う。一切のセンチメンタルなセリフや場面を排して、イヴェットのこれまで通りの平凡な日常生活の家事の様子などを描くことによって、観客も大げさな感情の起伏に悩まされることなく最後の場面へと導かれる。途中、アランがクレメンス(エマニュエル・セニエ)と恋愛関係になるのだが、やはり自分のせいで彼女を失ってしまう。どこまでも駄目な人間であることが印象付けられる。
スイスの施設で最後の時を迎える母とそれを見守る息子が、終焉の瞬間に本音を言い合う。「おまえを愛してるわ」「俺も愛してる」と。そこで観客は少し救われるが、この後アランが立ち直ってくれるという保証もなく、最後まで淡々と物語は終わるのである。
日本人ならここに至るまでにものすごい葛藤があって、センチメンタリズムに支配されると思うが、やはり欧米の人は個人主義が発達しているので、個の意思というものを尊重するのだろうか。いずれにしろ、様々な問題を含んだ映画である。観客1人1人が自分に照らし合わせて自分の終焉の時をどうするのか少し考えてみるのもいいかもしれない。
原題:QUEL QUES HEURES DE PRINTEMPS/ A FEW HOURS OF SPRING 監督:ステファヌ・ブリゼ 出演:エレーヌ・ヴァンサン、 ヴァンサン・ランドン、 エマニュエル・セニエetc.
2013年 フランス
エレーヌ・ヴァンサン
48歳のトラック運転手アラン(ヴァンサン・ランドン)は、麻薬の密売に手を出し前科者となった不肖の息子。出所後、年老いた母イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)の家に転がり込み、人生の再出発を図る。しかし几帳面なイヴェットとずぼらなアランは何かと対立し、衝突を繰り返す。そんなある日、アランはイヴェットがスイスの施設で尊厳死をする旨の契約書にサインしていることを知る。彼女は脳腫瘍に冒され、余命宣告を受けていたのだ。イヴェットの選択に激しく動揺しながらも、初めて母の人生と向き合おうとするアランだったが…。(allcinema ONLINE)
アランは本当にダメな息子である。しかし母はそんな息子でもやはり心配して同居を許し何くれと面倒を観るが、どうにも立ち直ることのできない息子に手を焼くのだ。この辺りの親子の葛藤というものがとてもうまく表現されていて、こういう親子は居そうだと感じるほどだった。
だが、母イヴェットは重篤な病気でとうとう医者から余命宣言がくだされる。イヴェットは友達が同じ病にかかり、最後苦しんで死んだのを見たことから、自分は苦しむ前に死にたいと思い、ある決断をする。息子は母の決心に苦しむが最後は母の意思に従うのだった。
とても重いテーマを淡々と描いた作品だった。母の心理描写が大変うまく、彼女の視点で色々なものが見えていたのだなと思う。一切のセンチメンタルなセリフや場面を排して、イヴェットのこれまで通りの平凡な日常生活の家事の様子などを描くことによって、観客も大げさな感情の起伏に悩まされることなく最後の場面へと導かれる。途中、アランがクレメンス(エマニュエル・セニエ)と恋愛関係になるのだが、やはり自分のせいで彼女を失ってしまう。どこまでも駄目な人間であることが印象付けられる。
スイスの施設で最後の時を迎える母とそれを見守る息子が、終焉の瞬間に本音を言い合う。「おまえを愛してるわ」「俺も愛してる」と。そこで観客は少し救われるが、この後アランが立ち直ってくれるという保証もなく、最後まで淡々と物語は終わるのである。
日本人ならここに至るまでにものすごい葛藤があって、センチメンタリズムに支配されると思うが、やはり欧米の人は個人主義が発達しているので、個の意思というものを尊重するのだろうか。いずれにしろ、様々な問題を含んだ映画である。観客1人1人が自分に照らし合わせて自分の終焉の時をどうするのか少し考えてみるのもいいかもしれない。
原題:QUEL QUES HEURES DE PRINTEMPS/ A FEW HOURS OF SPRING 監督:ステファヌ・ブリゼ 出演:エレーヌ・ヴァンサン、 ヴァンサン・ランドン、 エマニュエル・セニエetc.
2013年 フランス
はじめまして !!
ミッドナイトインパリから辿り着きました~
「母の身終い」、重いテーマを淡々と描く・・フランス映画ならではですねー。
最近、リタイアした人たちの楽しい老後・・的な映画が花盛りですが、解説を読んで観たくなりました。
ねこちゃんも可愛いですね♪♪
by 白いねこ (2014-01-30 21:52)
げいなうさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-01-30 22:01)
白いねこさんへ
こんばんは、初めまして。ようこそ。コメントありがとうございます♪
ミッドナイトインパリ、すごくおもしろかったですね!私はウディ・アレンのファンなんです。白いねこさんもそうなんでしょうか。
おっしゃるように今の老人を扱う映画は、明るく楽しくというのが主流ですが、この作品のようなものもあってもよいと思います。なかなか日本人には受け入れられないのかもしれませんが。ヨーロッパの映画祭で賞をとっています。お時間がおありでしたら、ご覧になってみてくださいませ。
、
by coco030705 (2014-01-30 22:10)
アルファルハさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
makimakiさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-01-30 22:37)
世界のアイドルさんへ
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪
りんこうさんへ
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪
GONさんへ
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪
ryo1216
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪
匁さんへ
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-01-31 10:48)
sugoimonoさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
irukaさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-01-31 21:10)
フランス映画はやっぱりハリウッドにはできない味を持っていますね。
by gillman (2014-02-01 11:14)
gillmanさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪
おっしゃる通りですね。こういう映画も重要な課題を観客に投げかけてくれていると思います。
by coco030705 (2014-02-01 21:25)
pistacciさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-02-02 20:11)
こんばんは。
本当に重い作品でしたが、観て良かったと思える作品でした。
途中まで、息子の言動にイライラしてしまいました^_^;
でも、ラストに近付くにつれてほっとしました。
この女性の潔さはきっと真似はできませんけど、
こういう最後もあるのだなと改めて感じさせてくれる作品でした☆
by non_0101 (2014-02-02 22:31)
nonさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪
私は内容を全く知らずに観に行ったので、よけいショックでしたが、
こういう風にきっぱりと人生に別れを告げることはなかなか難しいでしょうね。でも尊厳死というのはこれからもっと増えていくのかしらと思います。
ハビエル・バルデムの「空を飛ぶ夢」?でしたか、あの映画を思い出しました。
by coco030705 (2014-02-02 23:02)
つむじかぜさんへ
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-02-03 08:36)
minsukeさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-02-03 19:56)
Taekoさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-02-04 00:22)
実家の隣の87歳の人は、ずっと独身、洋裁で身を立ててたんだけど、
目が悪くなったから、養老院にはいることにした、というので、先週、
お訪ねしたの。そしたら、この映画のことを話してくれて、「銀座でやってるから見に行きたいけど、こんなじゃ電車乗るのも大変だし、映画見えないかもしれない」って、言うから、もうお気の毒で。。映画の好きな人で、
小さい頃、映画に連れて行ってもらったり、ゲーリー・クーパーがかっこいい、ジョン・ウェインは田舎っぽいなんて聞いてたの。映画が好きな人は、いくつになっても好きなのね、って思いました。 cocoさんも私も、ずっと
映画好きでいられるかしら?
by TaekoLovesParis (2014-02-04 01:04)
Taekoさんへ
こんばんは。コメントもありがとうございます♪
そうですか、お隣の方、少し気の毒ですね。一生懸命真面目に生きてこられたのに…。でもまだ少しでも見えるようなら、付添ボランティアというのがありますよ。養老院で頼めるし、もしヘルパーさんがいらしているようなら、その方に頼めるのでは。
画面が見えないのなら、映画音楽を楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。
長唄のお仲間で今年100歳のおばあ様(かよさん)がいらっしゃいます。この間も、かよさんのお声掛けで、老人ホームでボランティアで長唄と三味線の演奏をしてきました。かよさんは去年から目が全く見えなくなりました。師匠は以前から、出稽古に定期的にかよさんの老人ホームへかよっていらっしゃいます。今もとてもお元気で、先日も私たちと一緒に三味線を演奏されました。大変お上手です。お着物も師匠と看護師さんの資格を持っている仲間が手伝って着せました。見ただけでは目が御不自由というのもわかりません。これからも命ある限り、趣味の三味線に勤しまれることと思います。障害があっても前向きに明るく生きて行くのがいいのかもしれません。
by coco030705 (2014-02-04 19:03)
ネオ・アッキーさんへ
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2014-02-06 12:37)