アイム・ノット・ゼア [外国映画]
ボブ・ディランは、今年の5月24日で67歳になる。今まで売り上げたアルバムは一億枚を越えるのだそうだ。1988年には、ロックンロール・ホール・オブ・フェイム(ロックの殿堂)入りも果たした。
彼は60年代初期、ニューヨークのグリニッチヴィレッジで、プロテスト・フォーク・シーンの旗手として脚光を浴びた。しかし66年代後半には、フォークからロックンロールへの転身をはかり、物議をかもした。このあたりのボブ・ディランの考えを、映画の中ではケイト・ブランシェット演ずるボブ・ディラン(劇中ではジュードという役名)が述べるシーンがある。
この映画は、変化し続けるディランをまるで多重人格者を描くかのように、6人の俳優によって演じさせている。とは言っても映画の中では誰もボブ・ディランだとは名乗らないし、話は事実とも時代の流れとも無関係に進む。わかりやすい映画ではない。
監督は、アメリカのインディペンデント映画界を代表するトッド・へインズ(「ベルベット・ゴールドマイン」)である。ボブ・ディランの映画は、これまで何度も企画されたが本人が納得しないので、どれも実現にいたらなかった。本作は本人が初めて公認した真のディラン映画である。
先程も書いたように、60年代中期のディラン(両性具有者的といわれていたそうだ)をケイト・ブランシェットが演じているが、素晴らしい演技だった。
ボブ・ディランのドキュメンタリーフィルムを見たことがあるのだが、本人に本当によく似ていた。ディランよりちょっと背が高いが、独特のしゃべり方や動作は本人そのものだ。秀逸だった。さすがケイトだと思った。
その他、ディランに似ていたのは、トリックスターとしてのディランを演じたベン・ウィショー(「パフューム」)だった。ベンは、反骨的で投げやりな、しゃべっていてもなにを考えているのかよくわからないディランをうまく演じていたと思う。(ちょっと織田裕二にも似ていたが……(笑)
そして家庭の中で、妻との関係に苦悩するディラン(役名はロビー)を今はなきヒース・レジャーが演じていた。外側はまったくディランとは似ても似つかないが、家庭人としてのディランの一面を描いたのだろう。
それにしても、ヒース・レジャーはやはりいい役者である。本当に惜しい人を亡くしたものだ。くやしいと思った。
クリスチャン・ベイルは、70年代後半に再生派キリスト教に傾倒していたディラン(役名はジョン牧師)を演じている。彼の歌うのはプロテスト・フォークなので、この時期ディランは、一時ロックからフォークに逆戻りしていたようだ。クリスチャン・ベイルかどうか、最初はわからなかったが、奥目でわかった。
また、リチャード・ギアは古き良きアメリカを象徴する無法者(役名はビリー・ザ・キッド)のディランを演じる。ディランにはアウトローという言葉がよく似合うと思う。
そしてディランの少年時代を、黒人少年のマーカス・カール・フランクリンが演じている。彼は自らの音楽のルーツを探る放浪者としてのディランを演じていた。マーカスが劇中でギターを弾きながら1曲歌うシーンがあるのだが、びっくりするくらいうまかった。
さてこの作品は映画としてどうだろうか。私は時間が長すぎると思った。途中でちょっと退屈した。アイデアとしてはおもしろいのだが、ディランと似ても似つかない俳優に、彼を演じさせるのは無理があるのではないだろうか。
だがボブ・ディランという人は、こんな風に色々な面を持つアーティストであり、人間なのだということは充分伝わった。だから、この映画はそれぞれの俳優の演技を楽しめばいいのかもしれない。
この作品には、ボブ・ディランの楽曲が36曲流れるが、そのどれもがすばらしい音楽である。今までボブ・ディランという人についてまったく無知だったし、音楽も数曲しか知らなかったが、今回ぜひサウンド・トラック版を買おうと思っている。ミュージック作品の好きな人は必見の映画である。
監督:トッド・へインズ 出演:ケイト・ブランシェット 、ヒース・レジャー、 クリスチャン・ベイル、 リチャード・ギア、
ベン・ウィショー、 マーカス・カール・フランクリン
2007年 アメリカ 136分 梅田ガーデンシネマ
彼は60年代初期、ニューヨークのグリニッチヴィレッジで、プロテスト・フォーク・シーンの旗手として脚光を浴びた。しかし66年代後半には、フォークからロックンロールへの転身をはかり、物議をかもした。このあたりのボブ・ディランの考えを、映画の中ではケイト・ブランシェット演ずるボブ・ディラン(劇中ではジュードという役名)が述べるシーンがある。
この映画は、変化し続けるディランをまるで多重人格者を描くかのように、6人の俳優によって演じさせている。とは言っても映画の中では誰もボブ・ディランだとは名乗らないし、話は事実とも時代の流れとも無関係に進む。わかりやすい映画ではない。
監督は、アメリカのインディペンデント映画界を代表するトッド・へインズ(「ベルベット・ゴールドマイン」)である。ボブ・ディランの映画は、これまで何度も企画されたが本人が納得しないので、どれも実現にいたらなかった。本作は本人が初めて公認した真のディラン映画である。
先程も書いたように、60年代中期のディラン(両性具有者的といわれていたそうだ)をケイト・ブランシェットが演じているが、素晴らしい演技だった。
ボブ・ディランのドキュメンタリーフィルムを見たことがあるのだが、本人に本当によく似ていた。ディランよりちょっと背が高いが、独特のしゃべり方や動作は本人そのものだ。秀逸だった。さすがケイトだと思った。
その他、ディランに似ていたのは、トリックスターとしてのディランを演じたベン・ウィショー(「パフューム」)だった。ベンは、反骨的で投げやりな、しゃべっていてもなにを考えているのかよくわからないディランをうまく演じていたと思う。(ちょっと織田裕二にも似ていたが……(笑)
そして家庭の中で、妻との関係に苦悩するディラン(役名はロビー)を今はなきヒース・レジャーが演じていた。外側はまったくディランとは似ても似つかないが、家庭人としてのディランの一面を描いたのだろう。
それにしても、ヒース・レジャーはやはりいい役者である。本当に惜しい人を亡くしたものだ。くやしいと思った。
クリスチャン・ベイルは、70年代後半に再生派キリスト教に傾倒していたディラン(役名はジョン牧師)を演じている。彼の歌うのはプロテスト・フォークなので、この時期ディランは、一時ロックからフォークに逆戻りしていたようだ。クリスチャン・ベイルかどうか、最初はわからなかったが、奥目でわかった。
また、リチャード・ギアは古き良きアメリカを象徴する無法者(役名はビリー・ザ・キッド)のディランを演じる。ディランにはアウトローという言葉がよく似合うと思う。
そしてディランの少年時代を、黒人少年のマーカス・カール・フランクリンが演じている。彼は自らの音楽のルーツを探る放浪者としてのディランを演じていた。マーカスが劇中でギターを弾きながら1曲歌うシーンがあるのだが、びっくりするくらいうまかった。
さてこの作品は映画としてどうだろうか。私は時間が長すぎると思った。途中でちょっと退屈した。アイデアとしてはおもしろいのだが、ディランと似ても似つかない俳優に、彼を演じさせるのは無理があるのではないだろうか。
だがボブ・ディランという人は、こんな風に色々な面を持つアーティストであり、人間なのだということは充分伝わった。だから、この映画はそれぞれの俳優の演技を楽しめばいいのかもしれない。
この作品には、ボブ・ディランの楽曲が36曲流れるが、そのどれもがすばらしい音楽である。今までボブ・ディランという人についてまったく無知だったし、音楽も数曲しか知らなかったが、今回ぜひサウンド・トラック版を買おうと思っている。ミュージック作品の好きな人は必見の映画である。
監督:トッド・へインズ 出演:ケイト・ブランシェット 、ヒース・レジャー、 クリスチャン・ベイル、 リチャード・ギア、
ベン・ウィショー、 マーカス・カール・フランクリン
2007年 アメリカ 136分 梅田ガーデンシネマ
Cocoさん、おはようございます。
この映画、私もGWに見ようかなと思っていたので、6つの短編映画という捉えかたで見ますね。Cocoさんが前に記事でご紹介の、ブルーベリー、ラストコーション、もうどこでもやってないので、じゃ、ボブディランって思っていたんです。
ボブ・ディランは映像でなく、CDで聞いていた人。ライブのCDで特におもしろかったのは、アコースティックからエレキにギターをもちかえると、ファンからブーイングがでて、彼が弁明するっていう場面でした。一時代を築いた人だから、たくさん、エピソードがあるんでしょうね。Cocoさんのようにそれぞれの俳優に注目してみるのもよさそうですね。
では、また、見てきてから。See you again!
by TaekoLovesParis (2008-05-02 08:53)
Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
この映画は、6人の俳優がかわるがわる出てきて、エピソードを綴っていくので、ちょっとわかりにくくなっちゃってます。
でも、ケイト・ブランシェットの演技がすばらしいし、ハンサムなヒース・レジャーを見れる最後のチャンスでもあります。Taekoさんのようにボブ・ディランの音楽に
お詳しい方なら、きっと楽しめるのではないかと思います。
by coco030705 (2008-05-02 16:10)
aranjuesさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-05-03 19:28)
同感です。
アイデアはとてつもなく面白かったけれど、ながすぎますよね~。
というのも、私がボブ・ディランについてさほど知らないまま観てしまったということもあるかもしれませんが。ヒース、クリスチャン、ケイトが良かったです。
うごくヒースを観ているうちに、無念さが沸々と湧き上がってきました。
by クリス (2008-05-03 23:25)
クリスさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
クリスさんも長いと思われましたか。私は時計を何度か見てしまいました。(^^)
ヒースは次はバットマンの新作でお目見えですね。でも、あのメイクでは、ヒースのハンサムな顔が拝めないですね。あのメイクをする前のヒースが少しでも画面に出てくればなあ。(つまり、ジョーカーになる前の部分が描かれていたらね、と思います。)
by coco030705 (2008-05-03 23:52)
こんにちは。
すごい役者さんが集まった映画ですよね。
でもやっぱりヒースに注目してしまいます。
夏に公開予定の「バットマン」シリーズ最新作「ダークナイト」、
映画館の予告でやってました。
バットマンは観に行った事がないんですが今回はちょっと観たいです。
by キキ (2008-05-04 19:10)
キキさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
ヒースはディランには似てなかったんですが、
よかったですよ。もったいないことです。
バットマンシリーズはお気に入りの映画なので、
楽しみです。でも、ヒースはジョーカーという悪者役で、
メイクがすごいんですよ。そのメイクをする前の、
ジョーカー誕生の部分も描いてくれていたら、ヒースの
ハンサムな顔が見れるんですけど……。
by coco030705 (2008-05-04 20:44)
Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-05-06 01:45)
おもしろそうな映画ですね。ボブ・ディランというアーティストには昔から興味をもっているのですが、音楽が、特に音が自分の感性に合わなかったこともあって、これまであまりちゃんと聴いてきませんでした。しかしここ数年、ディランという人物にも彼の音楽にも興味を持ち始めています。この映画はきっとわたしのようなディラン初心者にも訴えかけてくるものが多いのかもしれません。ぜひ観てみたいです。
by 鯉三 (2008-05-09 00:47)
鯉三さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
ボブ・ディランの音楽は私もあまり興味がなかったのですが、
この映画の中ではとてもいいと思いました。
映画自体はアイデアが成功したとはいいがたいですが、
色々な役者の演技を比較してみるのも一興かもしれません。
by coco030705 (2008-05-09 02:28)