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スルース [外国映画]

 ジュード・ロウとマイケル・ケインの演技対決ともいえる、面白い映画だった。オリジナルは、「フレンジー」「ナイル殺人事件」などの脚本でも知られるアンソニー・シェーファーの戯曲で、72年にジョゼフ・L・マンキウィッツ監督により映画化されているのだそうだ。このときは、サー・ローレンス・オリビエとマイケル・ケインが演じたとのこと。

 ロンドン郊外にあるベストセラー推理小説作家ワイク(マイケル・ケイン)の邸宅に、ティンドル(ジュード・ロウ)と名乗る若い男がやって来る。彼はワイクの妻と不倫関係にあり、離婚を承諾しないワイクを説得にやってきた。ティンドルの要求にワイクはある提案をする。それはティンドルに、ワイクの高価な宝石を盗み出させる事だった。ワイクには保険金が入り、ティンドルも別れた妻と暮らせるお金が手に入る。承諾したティンドルはワイクの言うままに泥棒を演じるが…。

 最初は上からのカメラで、ワイクの邸宅にやって来たディンドルの車が玄関前に駐車されるところがとらえられる。普通の位置からではないので、おもしろいなと思って見ていた。そして一歩ワイク邸に足を踏み入れると、そこは超モダンなインテリアの豪邸だった。
 このインテリアは「ワイクがテート・モダン美術館のリトル・バージョンのような家に住んでいる。」というイメージでつくられたのだそうだ。この家のインテリアには、イギリスのコンテンポラリー・アーティスト、アントニー・ゴームリーとゲイリー・ヒュームの作品が配置されている。そして家具の一部は家具デザイナー、ロン・アラッドのものが貸し出されたとのことだ。インテリアに興味のある方は、一見の価値ありである。
 そして家の装置は何もかもが、ワイクの持っている小さいリモコンで操作できるのだ。そこで、2人の男の対決が始まる。

スルース2.jpg

 ジュード・ロウは美しく野卑な男を好演している。彼は単なるハンサムな俳優ではなく、演技派である。ワイクの妻を盗み、ワイクに別れを持ちかけるヤクザっぽい男、そして第2ラウンドではあっと驚く人物を演じ(隠しだまとも言うべきおもしろさ)、最後にはワイクににじり寄る妖しい魅力も少しのぞかせる。

スルース1.jpg

 対するマイケル・ケインは、いわゆる古だぬきのような老年の男を飄々と演じていた。ティンドルのどんなおどしにも動じず、それどころか、このヤクザっぽい若者を手玉に取るのだ。こちらの演技もすばらしかった。

 この映画は、最初から緊迫感があって、次はどうなるのかとはらはらしながら興味深く見させてくれる。そして、思いもかけない展開になっていくところが面白かった。

 元は戯曲なので、2人しかでてこないし、家の中だけの設定であるから、映画的変化に乏しいかもしれないが、この2人の演技はやっぱりすごいと思った。ストーリーとしては、どちらかというと怖い映画であるが、退屈する暇もなく、ぐいぐいと最後まで引張って行かれる。ジュード・ロウとマイケル・ケインの互角の勝負はどちらに軍配があがるだろうか。それは見てのお楽しみである。

スルース3.jpg

 監督がケネス・ブラナーである。最近では「魔笛」が上映されたが、昔は色々面白い映画を撮っていて、好きな監督の一人だ。例えばハムレットなどは好きな作品である。今回は今までの作品とは違った設定で、おもしろい映画を創ったものだなと思った。これからもぜひ、観客を楽しませる作品を創ってくれることを期待したい。

監督:ケネス・ブラナー         出演:ジュード・ロウ、 マイケル・ケイン
2007年 アメリカ            難波敷島シネポップ

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non_0101

こんばんは。
見応えのある演技でしたね~!二人とも良かったですけど、
特にジュード・ロウの様々な表情を観て、
ここまで上手かったのかと改めて思いました。
次回作ではどんな顔を見せてくれるのか楽しみです(^^)
by non_0101 (2008-05-16 00:53) 

coco030705

nonさんへ
nice&コメント&TBありがとうございます♪
ほんとに見ごたえがありました。
ジュード・ロウはこの映画のプロデューサーも
兼ねているそうです。映画を創るほうも好きで、
「スカイキャプテン・ワールド・オブ・トゥモロー」に続いて、
2作目のプロデュースだそうですよ。色々な才能がある人
なんですね。

by coco030705 (2008-05-16 17:15) 

coco030705

Taekoさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-05-16 17:16) 

TaekoLovesParis

Cocoさん、コメントが遅くなりましたが。。。
前に、Cocoさんが、これを見た帰りに寄った「重亭」の記事で書いたと思うけど、ローレンス・オリビエ&マイケル・ケイン版を見たので、ジュード・ロウのがとっても楽しみ。
Cocoさんのていねいな説明でますます見たくてうずうず。。
インテリアがモダンなんですね。昔のは、お城のような館で、庭園が秘密の花園。長方形に刈り込まれた木々に囲まれた迷路、その迷路を二人が追いかけっこ。すばらしかったです。
今回もやはり上手な2人、緊迫感があるんですね。
マイケル・ケインはジュード・ロウの演技を見ながら、「俺の昔の方がうまかった」って思ったかしら?ここの一番下の写真で自信たっぷり、生意気そうな表情のジュード・ロウが昔のマイケル・ケインを思い出させるので、ふと、そう思ってしまいました。

by TaekoLovesParis (2008-05-17 15:27) 

coco030705

Taekoさんへ
コメントもありがとうございます♪♪
ローレンス・オリビエとマイケル・ケインの映画もぜひ見たいです!
BSででもやらないかなって思います。貸しCD屋さんにはなさそうです。
「秘密の花園」が舞台なら、今作とはぜんぜん違う雰囲気でしょうね。
古い作品も芸達者な2人の演技が楽しめそうですね。
ジュード・ロウとマイケル・ケインも緊張感が最後まで途切れず、
すばらしいですよ。どこかで上映していて、ご覧になれたらよろしいですね。
by coco030705 (2008-05-17 20:54) 

coco030705

WIZARDさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-05-18 21:50) 

とくさん

美しいブログです、
いつ見ても、
いつ読んでも、
by とくさん (2008-05-19 23:26) 

とくさん

美しいブログです、
いつ見ても、
いつ読んでも、
by とくさん (2008-05-19 23:27) 

coco030705

とくさん様
コメントありがとうございます♪
お褒めいただいて、恐縮しております。
またお立ち寄りください。
by coco030705 (2008-05-20 18:51) 

coco030705

Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2008-05-27 19:53) 

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