つぐない

　イギリスの美しい自然を背景に、恋愛のせつなさと「罪」の怖さ、そして戦争の残酷さを描き出した名作である。


　　
　第二次世界大戦前夜の夏のイングランド。政府官僚の娘で大きなお屋敷に住んでいる13歳のブライオニー（シアーシャ・ローナン）は、将来作家になることを夢見ている多感な少女だった。大学を卒業したばかりの姉セシーリア（キーラ・ナイトレイ）と、使用人の息子のロビー（ジェームス・マカヴォイ）そしてブライオニーは、屋敷で一緒に育ったいわゆる幼馴染だった。ロビーは優秀な若者で、屋敷の主人の援助を受けてセシーリアと共にケンブリッジ大学を卒業したのだった。そして2人はいつしか愛し合うようになっていた。



　ブライオニーもロビーの事が好きだった。そして彼女は姉とロビーのただならぬ関係を察知し、ロビーへの警戒心を抱く。そして事件は起きる。屋敷に滞在していた従兄弟の女の子がレイプされ、ブライオニーは犯人がロビーであるのを見たと、嘘の証言をする。この証言によって、愛しあう恋人たちは無残にも引き裂かれ、犯した過ちの重さにブライオニーが気づいたときには、泥沼の戦争が始まっていた。

　　この作品でロビーを演じたジェームス・マカヴォイといえば、「ナルニア国物語」のタムナスさんが私の記憶には新しかった。しかしこの映画のＪ．マカヴォイは、人の良いタムナスさんとはまったく違う、愛を貫く純粋で素敵な男性として私の心をつかんだ。彼は色々な場面で表情がどんどん変わっていった。それが大変魅力的だった。

　セシーリアのキーラ・ナイトレイも美しかった。キーラは「プライドと偏見」でもプライドが高く気の強い女性を演じていて、すごく合っていると思ったが、今回も同じような役でなかなかよかった。ただ、Yahooムービー（だったか、はっきりしませんが……）でキーラのインタビューを動画で見たが、監督のジョー・ライトは最初キーラにブライオニーの成人した役をやらせるつもりだったのだそうだ。それをキーラが「私は絶対セシーリアの役をやりたい。」と監督を説得したそうだ。私は監督の考え方に賛成で、キーラはブライオニー役のほうがよかったような気がする。けれど、もしそうなったら、誰がセシーリアをやるのか見当もつかないが……。

　問題のブライオニーは少女時代をシアーシャ・ローナンが演じ、潔癖で多感な少女を好演していた。



　次の成長したブライオニーはロモーラ・ガライが演じていたが、この人はちょっと太めな感じで、ブライオニーの潔癖さや罪にさいなまれる様子があまり伝わってこなかった。老年のブライオニーは英国の大女優バネッサ・レッドグレーヴだった。さすがに素晴らしかったと思う。作家としての自負と複雑な心の中を、静かなセリフの語りで見事に表現していた。

　その他、やはりベテランのブレンダ・ブレッシンも少しだが顔をのぞかせていた。英国映画界（演劇界）の層の厚さを見せられた。

　ただストーリー的には、13歳の少女の証言を果たして警察が鵜呑みにするのかという疑問がちょっとあったが、やはり階級社会である英国では身分の高い者の言うことを信じるのかもしれないと納得した。



　この映画では、戦争の悲惨な場面もかなり描かれていて、心が痛んだ。人間にとって、もっとも美しい感情の一つである恋愛感情を、無残にひねりつぶす戦争という悪を描き、それによって恋愛の美しさがより強調されたのだ。見終わったあとに、セシーリアとロビーの愛し合う姿や、ロビーの笑顔や悲しげな表情、厳しい顔つきが心の中に焼きついて余韻となっていたのだった。

監督：ジョー・ライト　　　　　出演：キーラ・ナイトレイ、　ジェームス・マカヴォイ、　シアーシャ・ローナン
ロモーラ・ガライ、　ヴァネッサ・レッドグレーヴ、　ブレンダ・ブレッシン
2007年　イギリス　　　テアトル梅田

コメント 18

こんばんは。
本当に美しくて心に残る作品でした！
ジェームス・マカヴォイもキーラ・ナイトレイもいい演技でしたね。
私の友達は『ペネロピ』を観てジェームス・マカヴォイの大ファンになってしまいました(^^ゞ
（『ペネロピ』はとっても可愛いおとぎ話のような作品です(^^)）
今年は大活躍のようなのでちょっと注目しています☆
by non_0101 (2008-05-12 22:52) 

こんばんは。
nice&コメント＆TBありがとうございます♪
いい映画でした。やっぱり恋愛ものって好きです☆
ジェームス・マカヴォイ、成長株の男優さんみたいですね。
「ペネロピ」も見てみたいです～。
by coco030705 (2008-05-13 00:09) 

ヴァネッサ・レッドグレーヴ、まだ御健在なんですね。その上、達者な演技と
きくとうれしくなります。
の映画はキーラ・ナイトレイの美しさで評判ですが、キーラはこの役を切望したというCocoさんの裏話に、ほぉーと関心しています。出る場面はキーラとラモーラ・ガライのどちらが多いのですか？
昨年見たラモーラ・ガライ主演の「エンジェル」は、場面の展開が早く、退屈せず、おもしろかったです。
by TaekoLovesParis (2008-05-13 00:15) 

Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
この映画はキーラが主演？なので、もちろんキーラの出番が圧倒的に多いです。
ロモーラ・ガライの「エンジェル」もおもしろそうでしたね。見逃しましたが。
でもロモーラが、少女のブライオニー（シアーシャ・ローナン）の成長した姿とはとても思えなかったです。髪型は同じでしたが、シアーシャとは雰囲気が違いすぎました。ヴァネッサは存在だけで説得力がありました。
お時間がございましたら、お薦めです。
by coco030705 (2008-05-13 00:25) 

こんにちは。
ロビーはナルニアのタムナスさんだったんですね。
すっきりしました。＾・＾
これから注目の男優さんですよね。

小説家だけが出来るつぐないの物語。いい映画でした。

by キキ (2008-05-13 08:22) 

キキさんへ
nice&コメント＆ＴＢありがとうございます♪

＞小説家だけが出来るつぐないの物語。
そうですね。現実は悲しいですが、小説の中でブライオニーの
愛情が感じられましたね。
ジェームス・マカヴォイ、すごくハンサムというわけじゃないけど、
スクリーンの中で輝く俳優ですね。

by coco030705 (2008-05-13 10:08) 

sakikopさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-05-13 20:40) 

WIZARDさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-05-13 22:11) 

オレちゃん的アカデミー作品賞なんですよねえ、コレ（笑）。
ロモーラ・ガライが演じたパートは、僕もちょっと「？」だったんですけど
彼女の演技力がすべてカバーしていたように思います。
編集も出色でした。
by ken (2008-05-14 02:45) 

kenさんへ
nice&コメント＆TBありがとうございます♪
ほんとにいい作品でしたね。最後にそうなのかと驚かせる
ところもあって、それもおもしろかったです。
悲しい物語のなかにも、少し救いがあってよかったと思います。
こういう作品がアカデミー賞を取れないのは残念ですね。

by coco030705 (2008-05-14 18:51) 

私にはキーラのブライオニーは全然想像つかなかったんですよね。だから、パンフを読んで監督の最初の意向を知って驚きました。
22日にもう一度観にいきます。
by クリス (2008-05-17 22:20) 

クリスさんへ
nice&コメント＆TBありがとうございます♪
「つぐない」にはまってますね～。（＾＾）
私もぜひもう一度見たいと思っていますが、映画館へは
いけないかも。ＤＶＤになったらぜひ！
クリスさん、「つぐない」レビューNo.2を書いてください☆
by coco030705 (2008-05-18 02:13) 

当方ブログに来ていただいて、ｎｉｃｅとコメントありがとうございました。大阪の方のようですね。「つぐない」のような映画がもっと大阪に来て欲しいですよね。たいへん丁寧なあらすじと批評読ませていただきました。イギリス映画は、成熟したヒューマニズムに裏打ちされていて、見ていて安心感がありますね。文学的にもいい作品が数多くあるからでしょうか？戦争の描き方がちょっときれい過ぎるように思ったのですが、主題からいうとあんなものでしょうか？ジョーライト監督、ジェームズ・マカヴォイ、これから注目していきたいです。キーラ・ナイトレイはこれからも活躍しそうですね。
by whitered (2008-05-19 17:35) 

whiteredさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
私は大阪生まれの大阪育ちなんですよ。
天神さんと造幣局の通り抜けと大阪城が近いところで大きくなりました。

この映画ですが、やはり俳優陣が充実していましたね。
イギリスの俳優は舞台で鍛えているので、基礎がしっかりしていて
演技も安心して楽しめる感じです。
戦争の場面は、私は長すぎたような感じがしました。もっと恋愛のシーンを
たくさん描いてくれたらよかったのにと思いました。
これからもイギリス映画、楽しみですね。
by coco030705 (2008-05-19 19:23) 

Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2008-05-27 19:54) 

こんにちは～＾＾
映像がとても美しく、
残酷な出来事をなんとも物悲しく彩っていました。
私もお気に入りの作品です～。
ココさんの記事と写真を見て、
また思い出して余韻に浸ることが出来ました。
ジェームズ・マカヴォイ、いい俳優さんですね＾＾
by てくてく (2008-10-19 08:53) 

てくてくさんへ
こんにちは☆
nice&コメント＆ＴＢありがとうございます♪
ほんとにいい映画でしたね。ソネブロでも多くの方が
アカデミー賞をあげたかったっておっしゃってました。
もう一度見直したい作品です。
ジェームス・マカヴォイ、今後どんな風にかわっていくのか
楽しみですね。

by coco030705 (2008-10-19 19:51) 

パンダヘッドさんへ
nice&TB ありがとうございます♪
by coco030705 (2009-01-09 23:18)