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旅情(SUMMERTIME) [外国映画]

 BSの深夜放送で見た。今まで何度となく見ている映画だが、やはりすばらしい作品だった。

 アメリカの地方都市で秘書をしていた38歳のジェイン・ハドスン(キャサリン・ヘップバーン)は、欧洲見物の夢を実現し、ヴェニスまでやって来た。フィオリナ夫人(イザ・ミランダ)の経営するホテルに落着いた彼女は、相手もなくたった一人で見物に出かけ、サン・マルコ広場に来て、喫茶店のテーブルに腰を下した。しかし、背後からじっと彼女をみつめる中年の男(ロッサノ・ブラッツィ)に気づくと、あたふたとそこを去るのであった。翌日、通りすがりの骨董店に入ると、そこの主人は昨日サン・マルコ広場で会った男だった・・・・・・。

 これは1955年の作品である。私はそんなに古い映画とも思わずに見ていて、いつもラストシーンに感動していた。
 キャサリン・ヘップバーン演じるジェインの年令の設定が38才ということも気付かなかった。それほど、ジェイン=キャサリンは魅力的で明るい。たぶんこのころは、海外旅行するというのが大変なことだったのだろう。ジェインは結婚もせず一生懸命お金を貯めて、憧れのヨーロッパへやってきた。しかし、知り合いもなくたった一人でヴェニスをうろうろする。ホテルで知り合った人達もそれぞれの仲間とでていき、ジェインは手持ち無沙汰にサン・マルコ広場へと出かけていく。その孤独感がキャサリン・ヘップバーンのしゃんとした美しさによって、よけいに際立つ。
 
 ジェインは骨董店へ入って、美しい赤のヴェネチアングラスのゴブレットに魅せられる。そこの店主は昨日、サン・マルコ広場でジェインをじっと見つめていた中年の男性だった。彼はレナートという名前で、ジェインが言い値でゴブレットを買おうとすると、「イタリアでは言い値で物を買ってはいけない」とアドバイスする。そんなところが親切で女心をぐっとひきつける。
 翌日もジェインは骨董店へ行くが、店番の青年から主人は留守だといわれ、せめてその店を16ミリカメラにおさめようとして、運河にドブン!とばかり落ち、ぬれねずみになって惨めな思いでホテルに帰る。ここは、スタントなしで、キャサリンがほんとに運河に落ちる。素敵なドレスがめちゃくちゃになって、彼女の失望感やみじめな感情がよく表現されていた。

 その後、ホテルにレナートが訪ねてきて、夜広場で会おうと約束する。その夜はジェインにとって、すばらしい夜となった。別れ際、レナートはジェインにキスをして、明日の夜も広場で会おうと約束する。次の日、とびきり素敵なドレスに身をつつみ、ヴェニスで買った赤いおしゃれなハイヒールをはいたジェインは広場へでかけて彼を待つが、来たのは店番の青年でレナートが遅れることを告げに来たのだった。しかも驚いたことに彼はレナートの息子だった。レナートは結婚していたのだった。
 ショックのあまり急いでホテルへ戻ったジェイン。いいことと悪いことがシーソーのように観客の気持も左右する。ここでは私は完全にジェインの気持になっていた。
 レナートはジェインを追いかけてホテルへやってきて、妻とは別居していることを告げる。ここからの男のくどきがすばらしかった。レナートの言葉に、かたくなになっていたジェインの気持もやわらいで行く。そして、男女が愛し合うのに理屈はいらないというレナートの言葉に、とうとうジェインは彼を受け入れる。そののち、数日間の彼らのデートの様子が、風光明媚なヴェニスやムラノ島の景色とともに、映し出されるのである。
 しかし、ジェインはこのまま離れられなくなる自分の気持がこわくなり、急遽旅立つのだった。それから、あの有名なラストシーンへとつながっていく。

 夢のような恋愛の感情に浸りながら、最後にはハッと目覚めて帰国するしっかり者の若くない女性。キャサリン・ヘップバーンの知的な雰囲気が、このラストに説得力を与えていた。

 この間観たところなのに、また繰り返して観たくなる。女心を知り尽くした男性というのは本当に魅力的だ。この映画を観ると、恋愛っていいなあと思って、少し心がほんわかとあたたかくなるのである。

監督:デヴィッド・リーン   出演:キャサリン・ヘップバーン、 ロッサノ・ブラッツィ、
1955年 イギリス   NHK BS映画劇場


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コメント 10

てくてく

いわゆる名作と呼ばれるような古きよき映画、
あんまり観ていないのです。
私もゆっくり、こういう作品を観て行きたいなと
ココさんの記事を読んでいて思いました^^
by てくてく (2008-11-22 10:30) 

coco030705

てくてくさんへ
nice&コメントありがとうございます♪

古い映画でも、現在も残っている作品はそれなりの
魅力があるものです。ヒッチコックの作品なども
好きです。こういうクラシックもののレビューも書いて
いきたいですね。
てくてくさんもクラシック作品をご覧になったら、
ぜひレビューをお書きになってくださいね。(^^)
by coco030705 (2008-11-22 15:00) 

coco030705

Taekoさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-11-22 23:35) 

TaekoLovesParis

Cocoさん、さっき、コメントを書こうしていたら、電話がはいって、それから、いろいろ、、で、遅くなりました。
ずいぶん前にビデオで見た映画なので、Cocoさんが書いてくださったあらすじを読みながら、あ~そうだった、と思い出していました。
テーマ曲がSummerTime、いい曲でしたね。愛を高らかに盛り上げ、ときに切なく。ヴェニスの観光シーン、今、見ると、変わっているのかな、、って
思いながら、、もう一度見てみたいです。
ラストシーンは覚えています。時々、「終着駅」のラストとごっちゃになるんだけど。モノクロ時代の女優さんは、色が白くてきれいですね。

by TaekoLovesParis (2008-11-23 01:47) 

coco030705

Taekoさんへ
コメントもありがとうございます♪♪
すみません、お忙しいのに……。
古い映画なのに、キャサリン・ヘップバーンのドレスなんかは、
ぜんぜん古さを感じさせないんですよ。素敵です。やっぱり本物は
いつまでも色あせないのですね。そういえば、パリコレ・オートクチュールの
ドレスの美術展などがたまにありますが、クラシックではあっても古臭さとは無縁の作品ですものね。
なんでも本物は時代を超越して残っていくんでしょうね。
by coco030705 (2008-11-23 21:25) 

coco030705

sakikopさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-11-23 23:13) 

coco030705

WIZARDさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-11-27 20:36) 

aranjues

デヴィッド・リーン監督  主演 キャサリン・ヘップバーンと聞くだけで、
外れはないと確信できますが、ストーリーは、、見たはずですが、
音楽以外はほとんど思い出しません(-_-;)。
映画全盛時代の作品の名作は何時になっても新鮮に見られますね。
by aranjues (2008-11-28 22:39) 

coco030705

aranjuesさんへ
nice&コメントありがとうございます♪

この映画は繰り返しBSなどで上映されていますが、
私はどちらかというと、女性好みの映画だと思います。
女性は言い寄って来てくれる男性を常に待っていると思いますし、
男性は言い寄るべき女性をいつも捜していると思うからです。
この映画は完全に女性の視点で描かれていますので、女性が見て
心地よい作品になっています。

by coco030705 (2008-11-29 21:57) 

coco030705

Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-12-05 02:39) 

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