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歌舞伎「團菊祭」(夜の部) 大阪松竹座 (2010.5月) [演劇]

團菊祭(夜の部) 大阪松竹座5月大歌舞伎

 大阪道頓堀松竹座
松竹座1.jpg


 今年は歌舞伎座建て替えのため、恒例の「團菊祭」は、5月に大阪松竹座で行われていました。先日歌舞伎仲間の友人から声がかかって、一等席が安く手に入ったので行かないかとのこと。もちろん、二つ返事でご一緒させていただきました。いつもは3階席などでみる事が多いのですが、やっぱり一等席はいいですね。最高です。

 最初の出し物は「十種香」です。「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」は全五段の義太夫狂言で、「十種香」はその中の四段目にあたります。
 武田信玄の嫡男・勝頼は、足利将軍暗殺の真犯人を探し出すことができず、許嫁である長尾謙信の息女・八重垣姫(時蔵)と一度も顔を合わせることのないまま切腹。八重垣姫が十種の香を焚いて勝頼の菩提を弔っていると、勝頼と瓜二つの花作りの簑作が現れます。驚いた八重垣姫は腰元の濡衣(菊之助)に恋の仲立ちを頼みますが、実はこの男こそ本物の勝頼(錦之助)で、切腹した勝頼は、身代わりとなった濡衣の夫だったのです。八重垣姫が勝頼への思いを滔々と語るところへ、館の主・長尾謙信(團蔵)が現れ、簑作へ出発を促します。すでに簑作の正体を覚っていた謙信は、勝頼を亡き者にしようと追手を差し向けるのでした。
 全五段の義太夫狂言『本朝廿四孝』の四段目に当たる「十種香」は、錦絵のような華麗な美が堪能できる名作。深窓の姫君である八重垣姫は歌舞伎の"三姫"の一つに数えられる華やかな大役です。

 八重垣姫は時蔵でしたが、やはりちょっと年をとったかなという感じでした。腰元濡衣の菊之助がとてもきれいでした。ストーリーの展開が遅く、セリフが長いので眠かったです。


 次は、「京人形(きょうにんぎょう)」という舞踊劇です。
 廓で見初めた美しい傾城に生き写しの京人形(菊之助)を彫り上げた名匠・左甚五郎(三津五郎)が、それを相手に酒宴の真似事を始めるところ、不思議なことに人形がひとりでに動き出します。女の魂と言われる鏡を人形の懐に入れると、しとやかな女らしい動きに、鏡が懐から落ちると、人形は元の荒々しい動きに戻ります。

 京人形の菊之助の美しさに見惚れました。今が旬の役者ですね。京人形は懐に鏡を入れているのですが、それがちょっとした拍子に滑り落ちてしまいます。そうすると女形の踊りから立役の踊りに変わります。その一瞬の変化がおもしろかったです。とにかく美しいの一言です。
 三津五郎扮する左甚五郎も素敵でした。菊之助との踊りもよかったし、最後に大工姿の捕手たちを相手に、三津五郎が大工道具を使って、立廻りを見せるのですが、それが楽しく、三津五郎の踊りの上手さを堪能できました。


 最後は河竹黙阿弥の代表作、「髪結新三(かみゆいしんざ)」です。
 材木屋白子屋では、一人娘お熊(梅枝)の縁談がまとまり、結納の品が取り交わされますが、お熊は手代の忠七(時蔵)と恋仲であるため、縁談を了承しません。それを聞いていた小悪党の髪結新三(菊五郎)は、忠七にお熊との駆け落ちをそそのかした上、途中で忠七を蹴倒してお熊を監禁し、身代金をせしめようと企みます。騙されたことに気づき面目なさに大川に身投げをしようとする忠七を、通りかかった侠客の弥太五郎源七(團十郎)が助けます。
源七は白子屋からの依頼で、新三(菊五郎)と下剃勝奴(菊之助)が住む長屋を訪れ、お熊を取り戻そうとしますが、逆に新三にやり込められてしまいます。次に家主の長兵衛(三津五郎)が乗り出し、老猾な掛け合いでお熊を救い出しますが...。
 
 菊五郎と菊之助親子の競演で、音羽屋の家の芸を楽しみました。二人とも立役です。菊之助は女形から一変して、ヤクザな若者を立役で演じます。それもまた男前でかっこよかったです。この親子は女形と立役の両方を演じることが出来る役者です。あまりたくさんはいませんが、貴重な存在だと思います。
 髪結新三はほんとうの悪党です。それを侠客の源七親分が説得にいきますが、喧嘩になって源七は腹を立てて帰ってしまいます。ここは團菊の二人芝居です。やはり二人とも貫禄がありますね。
 そのあとで現れるのが家主の長兵衛で、三津五郎が扮しています。新三と長兵衛の掛け合いがとてもおもしろく、長丁場をまったく飽きさせることなく演じきります。すばらしい芝居でした。
 小道具に初鰹の刺身が出てきたり、ほととぎすの鳴き声がしたり、季節感あふれる舞台でした。江戸の庶民の生活を垣間見ることができ、セリフも威勢がよく、江戸歌舞伎の粋を存分に味わうことが出来ました。

 團菊祭を関西で見るのは初めてでしたが、江戸歌舞伎と上方歌舞伎の違いを感じました。菊五郎、團十郎の大御所の芝居はもちろんのこと、時蔵、三津五郎というベテランの上手さ、そしてなによりも菊之助の美しさを堪能でき、楽しい一夜でした。

 次回の松竹座は7月大歌舞伎です。↓は、7月大歌舞伎恒例の「船乗り込み」です。大阪の淀屋橋から道頓堀まで、出演者が船に乗り込んで、水路を行きます。橋の上から見ていたら、役者さんたちが手を振ってくれます。今年も楽しみです。

 大阪2.jpg

  
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coco030705

xml_xslさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪



by coco030705 (2010-05-31 10:07) 

coco030705

えーちゃんaaaさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-05-31 10:10) 

てくてく

こんばんは^^
道頓堀松竹座、素敵な建物ですね。
なかなか歌舞伎に触れる機会がないのですが、
とてもよさそうです^^
いつか行ってみたいものです~。
(ちゃんと解るかしら・・・^^;)
by てくてく (2010-06-01 00:59) 

Sora

歌舞伎は見たことがないのですが、先月初めて落語を観に行ってきました。
噺の中で、記事にも出てきた左甚五郎が登場し、泊めてもらった宿のために、ねずみを彫るとそれが動き出し、そのねずみを見にお客が宿に来るという部分がありました。
他にも歌舞伎好きの若旦那が出てくる噺もありました(^^)
舞台は、生がいいですね。
歌舞伎もいつか観に行ってみたいです。
by Sora (2010-06-01 06:54) 

gillman

この間初めて前進座の歌舞伎公演を見たんですが、あれもまた好いもんですね
by gillman (2010-06-01 09:40) 

coco030705

てくてくさんへ
こんにちは。nice!&コメントありがとうございます♪

松竹座はかなり古い建物なんですが(以前は映画館だったんですよ。)建物の玄関部分だけ残して、建て替えたんで、内部は新しくて使いやすくなっています。

てくてくさんは、関東の方でいらっしゃるんですか?でしたら、東京はたくさん劇場があるので、毎月歌舞伎が見れますね。うらやましいです。
この「髪結新三」のような劇は、現代の言葉で演じられるので、まったく違和感がないんですよ。よかったら一度いらしてくださいませ。

by coco030705 (2010-06-01 16:40) 

coco030705

Soraさんへ
こんにちは。nice!&コメントありがとうございます♪

私も落語もよく行きます。落語は時々TVでもやっていますが、話芸なのでTVでもおもしろいんですけど、生で見ると演者の様子がつぶさにわかるし、同じ空気を吸っている空間と時間を共有する楽しさがありますよね。

歌舞伎も一度ぜひご覧になってくださいませ~。Soraさんの感性に訴えるものがあるはずですよ。(^^)
by coco030705 (2010-06-01 16:45) 

coco030705

Taekoさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2010-06-01 16:48) 

coco030705

gillmanさんへ
こんにちは。nice!&コメントありがとうございます♪

私も一度京都で前進座公演を見たことがあります。すっきりしていてよかったです。中村梅雀が代表ですね。最近よくTVで活躍していますね。彼のお父さんの梅之助も、時代劇で活躍されていましたね。
by coco030705 (2010-06-01 17:00) 

coco030705

マンチ軍団様
ようこそ。nice! ありがとうございます♪


dorobouhigさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-06-02 11:43) 

coco030705

nonさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2010-06-02 16:37) 

coco030705

c_yuhkiさんへ
ようこそ。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-06-02 20:46) 

coco030705

shinさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-06-04 18:52) 

coco030705

ほりけんさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-06-04 20:58) 

丹下段平

以前はずいぶん歌舞伎を観たんですけど、最近はさっぱりで。
団菊祭は江戸っ子っぽい芝居が多かったなぁ、って記憶があります。結構好きでしたね。
by 丹下段平 (2010-06-06 01:47) 

coco030705

丹下段平さんへ
こちらにも、nice!&コメントありがとうございます♪

そうですよね。確か丹下段平さんのブログで、歌舞伎のレビューを拝見した記憶があります。
今回の團菊祭もよかったですよ。特に「髪結新三」がおもしろかったです。
粋でいなせな感じがよく伝わってきました。上方歌舞伎だと、お坊ちゃんで
なよなよしていて女性っぽい立役が、遊女と恋愛するという話が多いんです。
やはり江戸歌舞伎のほうがスカッとして、男好みかなと思いますね。
私は両方好きです。
by coco030705 (2010-06-06 18:21) 

coco030705

DSilberlingさんへ
こんばんは。nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-06-08 00:57) 

coco030705

hashさんへ
こちらにも、nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2010-06-10 20:04) 

coco030705

漢様
ようこそ。nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2010-06-27 18:07) 

coco030705

COCOさんへ
こちらにも、nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2010-07-04 19:49) 

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