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クリスマス・ストーリー [外国映画]

 カトリーヌ・ドヌーヴは美しい。貫禄があって気品がある。彼女がスクリーンの中にいるだけで、映画全体にバラ色の霧がかかっているような感じがする。これはカトリーヌ演じるジュノンが白血病を宣告され、それを機にバラバラだった家族が、クリスマスを前に再会する物語である。

 フランス北部の街ルーべにアベル(ジャン=ポール・ルシヨシ)&ジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)のヴュイヤール夫妻が住んでいた。二人は年を重ねてもお互いを愛するいい夫婦だった。彼らの長男ジョセフは白血病で骨髄移植ができなかったために、7歳でこの世を去った。そして残された3人の子供はそれぞれに独立している。長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)は劇作家。次男アンリ(マチュー・アマルリック)は多額の借金を親に肩代わりさせた問題児。末っ子のイヴァン(メルヴィル・プポー)はハンサムで優しい一家のピースメーカーだった。
 6年前、生真面目なエリザベートはアンリが許せなくて、とうとう彼を家族から追放し絶縁状態になっていた。そんなとき、母ジュノンは亡くなった長男ジョゼフと同じ白血病を宣告されてしまう。そこで、ジュノンを助けるため、すっかりバラバラだった家族は、クリスマスを前に久々の再会を果たすのだが…。


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 アンヌ・コンシニ/イポリット・ジラルド/カトリーヌ・ドヌーヴ


 家族とは色々な問題を抱えているものだと思う。そんなヴュイヤール夫妻の子供たちとその家族、総勢14名が一つの家に集合する。その人間関係がとてもおもしろかった。
 一人ひとりにストーリーが用意されていて、くっきりとキャラクターが描かれていた。特にエリザベートと犬猿の仲のアンリの関係が、せっかくの再会にヒビを入れるのだが、それでも他の家族がそれを補おうとする。そして、みんなが愛する母ジュノンの白血病を治すため、骨髄の適合者を探す。そしてそれは、問題児のアンリの骨髄だった。


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 マチュー・アマルリック


 アンリを演じたマチュー・アマルリックは、コメディアンのような雰囲気を持っていて、しかも演技がとても自然だった。この人をみて、役者には自然に見えるように演技している人と、自然に演技している人がいるのだと思った。マチューはもちろん後者のほうだ。根はいい奴なのだが、自分はダメな人間とわかっていて、それをどうしようもない男をみごとに演じていたと思う。
 アンリは最後に骨髄液を抜く手術を受け、それが母に輸血されるのだが、その手術の様子もかなり丁寧に現実的に描写されていた。だからアンリの受けた手術がすごく大変なもので、勇気のいることだったと理解できた。


クリスマス・ストーリー3.jpg
ジャン=ポール・ルシヨシ/キアラ・マストロヤンニ/その他子役たち


 子供たちもとてもかわいかった。ジュノンの末っ子イヴァンとその妻シルヴィア(キアラ・マストロヤンニ)の小さな息子達が劇中劇を演じるところはとても楽しかった。それにエリザベートの繊細な息子ポールがなかなか魅力的な男の子だった。まだ子供だが将来が楽しみな感じがした。
 
 イヴァンの妻シルヴィアと母ジュノンの兄の息子シモン(ローラン・カペリュート)の関係も愛の国、フランスならではの関係だと思う。でも(嫌いでない)男性に「長いあいだずっと君の事だけをみつめていた。今でも君を見ると身体が震えるよ。」なんていわれて、心が動かない女性が果たしているかしら。

 14名の家族の各々の様子を描くのに2時間半かかったが、それは、決して長いと感じない素敵な愛の物語であった。

原題:UN CONTE DE NOEL     監督:アルノー・デプレシャン
出演: カトリーヌ・ドヌーヴ、 ジャン=ポール・ルシヨシ、 アンヌ・コンシニ、
マチュー・アマルリック、 メルヴィル・プポー、 イポリット・ジラルド、 
エマニュエル・ドヴォス、 キアラ・マストロヤンニ(ドヌーヴとマストロヤンニの娘)
ローラン・カペリュート 
2008年 フランス   梅田ガーデンシネマ

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TaekoLovesParis

これ、東京では、恵比寿の「ガーデンシネマ」で、やっていて、見たいと
時間も調べたんだけど、都合がつかずにまだ見てないんです。
2時半が長いと思えなかったというcocoさんの感想で、やっぱりいい映画
なんだわ、と確信。キアラ・マストロヤンニは、ドヌーヴの娘、若い頃は、両親に負けてたけど、素敵になってきましたか?
by TaekoLovesParis (2010-12-22 01:22) 

coco030705

Taekoさんへ
こんにちは。nice&コメントありがとうございます♪

いい映画でしたよ。終わり方もみんながみんな問題が解決すると
いう風でもなし、そこが納得できてよかったです。現実はそんなところが
ありますもの。
キアラ・マストロヤンニは、顔はお父さん似ですね。でもとってもきれいで
魅力的な人ですよ。いい役でした。
ぜひ今の時期にお楽しみくださいませ~。
by coco030705 (2010-12-22 12:46) 

coco030705

xml_xslさんへ
こんにちは。nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2010-12-22 12:47) 

non_0101

こんにちは。
とても不思議な家族でした~
私だったらこんな家族は嫌だと思うのですけど、
それでも家族として集まっている姿に、家族というものの奥深さを感じました。
カトリーヌ・ドヌーヴは素敵でしたね!
彼女が母として中心にいるからこそ、この家族が出来たのかなと
ちょっと納得してしまいました☆
by non_0101 (2010-12-23 11:58) 

coco030705

nonさんへ
こんばんは☆nice&コメント&TBありがとうございます♪

かなりたくさんの俳優が出演していて、しかもそれぞれにストーリーが
あったので多少ゴチャゴチャしていたのは否めませんね。
でもドヌーヴのような素敵な母親がいたら、結構まとまるのかも。それに、
中の悪い兄弟がいても、非常時には助け合うのが家族というものですよね。
現実ではないけれど、現実に近い家族関係という気がしました。まあ、シモンとシルヴィアの関係は、日本ではなかなかありえないでしょうね。フランスだとこういうのもあるかもって思えるのが、フランスに対するイメージです。
by coco030705 (2010-12-23 18:06) 

coco030705

マンチ軍団さんへ
こんばんは。nice! ありがとうございます♪

by coco030705 (2010-12-23 23:14) 

トミュウ

こんばんは!
ドヌーヴを始め俳優さん皆良かったですよね!
ちびっ子2人も、ポール役の子も可愛かったです〜〜。
いろいろあっても、家族の繋がりって強いんだなと思える映画でした。
TBさせて頂きますね☆
by トミュウ (2010-12-25 19:44) 

coco030705

トミュウさんへ
こんばんは☆nice&コメント&TBありがとうございます♪

とてもいい映画でした。俳優さんたちが全員が見せ場があって、よく印象に残るように創られていましたよね。しかもストーリーに現実感があって、単にハピーエンド終わったらいいってもんじゃないよっていう、フランス映画のうまさが光っていました。
子役達かわいかった~~。(^^)特にポール役の子に注目してます。

by coco030705 (2010-12-25 21:48) 

丹下段平

この作品、札幌ではこれからだった気が…
完全に季節外れになりますけど、観てみたいと思います。
by 丹下段平 (2010-12-31 13:53) 

coco030705

Soraさんへ
こんばんは。nice!ありがとうございます♪

by coco030705 (2011-02-20 20:57) 

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