SSブログ

舟を編む [日本&アジア映画]

 ある出版会社の辞書編集部で新しい辞書を編纂することになった。その主人公馬締(まじめ)光也(松田龍平)と周りの個性豊かな人々が織りなす人間模様を描いた作品である。人間真面目で真剣なことが、こんなに人を感動させるのかと思った映画である。


舟を編む.jpg
 

 1995年。玄武書房に勤める青年・馬締光也(松田龍平)は、真面目すぎる性格ゆえに営業部で浮いた存在。そんなある日、彼は言葉に対するセンスを買われて辞書編集部に異動となる。迎えたのは、定年間近のベテラン編集者・荒木(小林薫)やお調子者の西岡(オダギリジョー)ら個性あふれる面々。辞書編集部では現在、新しい辞書『大渡海』の編纂に取り組んでいた。馬締は彼らを通して辞書の世界の奥深さに触れ、辞書作りに没頭していく。そんな馬締がある夜、下宿先の大家と同居することになった板前修行中の孫娘・林香具矢(宮崎あおい)と出会い、一目惚れしてしまう。言葉を扱う仕事をしていながら、彼女にうまく自分の思いを伝えられず苦悶する馬締だったが…。(allcinema ONLINE)

 松田龍平は相変わらず飄々とした雰囲気で、真面目で人が良く仕事一筋の青年を非常に自然に演じていた。なんともいえずユーモラスだった。オダギリジョーは編集者仲間でお調子者の西岡という人物の役。とてもうまいのだが、彼にはこんな役もったいないなと思ってしまった。もっと主役級の役ができる役者なのに、なぜかそういう作品にめぐまれないのが残念だ。宮崎あおいは修行中の女板前の香具矢という女の子の役だが、板前としての修業の場面などはまったく描かれていなかったので、ちょっと現実味に欠ける感じがした。松田の恋人役だが、この二人の関係がもう少し突っ込んで描かれていたら、もっとよかったのにという感じだ。でも辞書づくりの大変さを描くだけで目いっぱいだったのかもしれない。
 脇役陣が豪華で、加藤剛、八千草薫、小林薫、渡辺美佐子、伊佐山ひろ子、池脇千鶴など、ベテランと芸達者勢が脇を固めた。この俳優さんたちは申し分なかった。さすがである。

 それにしても、辞書というのはやはり言葉に対するセンスがないとできないものなのだなと感心した。例えば、作品中に出てくる「右」という言葉の語釈だが、辞書によってちがうのだ。ひとつは馬締が考えた語釈で
(実は学研の現代新国語辞典のもの)「北を向いたとき東にあたる方角」。すごいと思いませんか。そして加藤剛扮する編集長の語釈は「数字の10のゼロにあたる方」。おもしろいですね。また私が個人的に調べた、新明解国語辞典によると「アナログ式時計の文字盤に向かった時に、一時から五時までの表示のある側」となっている。これを一から考えるのが、辞書をつくるということなのだ。なんと奥深く時間のかかる作業だろう。今後、辞書をもっと丁寧に読んだら、時間を忘れるくらい面白いかもしれない。

 馬締光也の真面目な人物像が、辞書編纂という地味で根気のいる作業とリンクして、なかなか面白い映画に仕上がっていると思ったのである。

監督:石井裕也  原作:三浦しをん「舟を編む」  出演:松田龍平、 宮崎あおい、 オダギリジョー、
渡辺美佐子、 池脇千鶴、 鶴見辰吾、 伊佐山ひろ子、 小林薫、 加藤剛
2013年 日本
nice!(24)  コメント(30)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

nice! 24

コメント 30

coco030705

makimakiさんへ
こんばんは。ようこそ。niceとご訪問ありがとうございます♪


世界のアイドルさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪


りんこうさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2013-05-08 17:33) 

TaekoLovesParis

これ、見たいと思ってるんです。タイトルもいいですよね。
脇役、私も知ってる名前の人ばかりで、うれしいです。
by TaekoLovesParis (2013-05-08 22:24) 

きさ

辞書作りの苦労が描かれていますが、その点が面白く原作を読んでみたくなりました。
女性の観客が多かったのはやはり松田龍平とオダギリジョーが出演しているからでしょうか。
八千草薫、小林薫、加藤剛といったベテラン俳優も素晴らしかったです。
伊佐山ひろ子が重要な役で出ているのが、古くからの映画ファンには嬉しいところです。
実は今年の初日本映画でした。日本映画はやはりいいですね。
by きさ (2013-05-09 05:26) 

coco030705

Taekoさんへ
こんにちは。nice&コメントありがとうございます♪

脇役のベテラン俳優さんたちがとてもすばらしかったですよ。
映画って、主役だけじゃ成り立たないということがよくわかります。
もちろん、松田龍平もよかったです。よくできた作品だと思います。
お時間があれば覗いてごらんになってくださいね。
by coco030705 (2013-05-09 09:21) 

coco030705

きささんへ
こんにちは。nice&コメントありがとうございます♪

いい映画でしたね。三浦しをんはいい題材を発見したという感じがします。やはりテーマがよくなければ面白い本はなかなか書けないかもしれませんものね。原作もぜひ読んでみようと思います。
ベテラン勢の演技はいうに及ばず、松田龍平もオダジョーもやっぱりカッコいいですわ。女性としては嬉しいです。
日本映画もますます期待大ですね!
by coco030705 (2013-05-09 09:29) 

coco030705

pistacciさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2013-05-10 00:38) 

coco030705

匁さんへ
こんばんは。ようこそ。niceとご訪問ありがとうございます♪
by coco030705 (2013-05-10 19:09) 

coco030705

sugoimonoさんへ
こんばんは。ようこそ。niceとご訪問ありがとうございます♪

by coco030705 (2013-05-10 21:35) 

coco030705

Newsをみるとさんへ
こんばんは。ようこそ。niceとご訪問ありがとうございます♪

by coco030705 (2013-05-10 21:36) 

coco030705

ryo1216さんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪


by coco030705 (2013-05-11 01:52) 

匁

この映画観ましたよ。
このモデルになっている辞書は 新明解国語辞典 ですか
見た後で、それが疑問になっています。


by (2013-05-11 09:34) 

coco030705

匁さんへ
こんにちは。コメントもありがとうございます♪

この映画では、「右」という言葉の語釈を、3人の役者が自分の考えた語釈として、セリフで話します。
松田龍平は「北を向いたとき東にあたる方」→広辞苑&学研の現代新国語辞典より
オダギリジョーは「アナログ式時計の文字盤に向かった時に、一時から五時までの表示のある側」(これは私がブログ記事を書いてから思い出しました。)→三省堂新明解国語辞典より
加藤剛は「数字の10のゼロにあたる方」→出典は不明

以上です。こういう語釈を考え付くということがすごいことですね。
それから辞書の装丁などはどうでしょうか。広辞苑に近いのかなと思いましたが、もっと現代的でお洒落な感じもしましたけれど。
by coco030705 (2013-05-11 10:58) 

coco030705

おぉ!次郎さんへ
こんにちは。niceとご訪問ありがとうございます♪


GONさんへ
こんにちは。お久しぶりです。niceとご訪問ありがとうございます♪

by coco030705 (2013-05-11 11:01) 

coco030705

alo-hadさんへ
こんばんは。niceとご訪問ありがとうございます♪

by coco030705 (2013-05-11 16:50) 

アルファルハ

こんにちは、ブログ紹介をありがとうございます。
〔舟を編む〕見る予定でいます。
by アルファルハ (2013-05-11 18:03) 

coco030705

アルファルハさんへ
こんばんは。niceとコメントありがとうございます♪
この映画、ご覧になると面白いと思いますよ。日本映画も
もっと観なくちゃという気になっています。
by coco030705 (2013-05-11 22:08) 

ERUN

ご無沙汰です~。
これ、私の周りでも評判良くて気になってます。
たまには映画館でじっくり観たいです。
by ERUN (2013-05-11 23:35) 

non_0101

こんばんは。
原作も映画もいい雰囲気の作品でした。
こういう日本ならではの職人技を主題にした映画を観ると、邦画の面白さを実感します。
最初、宮崎あおいさんが演じる役は原作のイメージと違うかもと
ちょっと思ったのですけど、あおいさんはさすがに上手かったです☆
by non_0101 (2013-05-11 23:48) 

coco030705

ERUNさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪

ご無沙汰です☆
これはなかなか面白い映画でしたよ。お時間があったらぜひご覧くださいね。
by coco030705 (2013-05-12 02:19) 

coco030705

nonさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪

nonさんのブログへTBするはずが、何度やっても付かないんですよ。
どうしてでしょうね。ごめんなさいね。
ところで、この作品はぜひ原作も読もうと思っています。俳優さんたちの
イメージが、原作に合っているのか気になるところです。
日本映画も、もっとみなくちゃ、ですね。
by coco030705 (2013-05-12 02:23) 

coco030705

SORIさんへ
こんばんは。ようこそ。niceとご訪問ありがとうございます♪


cafelamamaさんへ
niceとご訪問ありがとうございます♪

by coco030705 (2013-05-12 21:32) 

コザック

こんばんは
原作がよいからなのか、本当に地味だけど素敵な世界に引き込んでくれていましたね(^^)
龍平くんの世界観で自分の役になってました。
観終わってみれば豪華な出演陣にビックリでした。
by コザック (2013-05-15 00:54) 

coco030705

コザックさんへ
こんにちは。nice&コメント&TBありがとうございます♪

考えたら地味な筋書きですが、おもしろかったですね。
人間関係が温かみがあって、感動的でした。
松田龍平君、今後も注目の人ですね。ベテラン俳優さん達は、
今でも活躍している人というのは、それなりに様々な
苦労を積み重ね、今日ある人達ですからやはりすばらしいですね。
また日本映画を観てみたいです。
by coco030705 (2013-05-15 18:30) 

coco030705

さつきさんへ
こんにちは。こちらにも、niceとご訪問ありがとうございます♪

by coco030705 (2013-05-16 17:37) 

キキ

こんにちは。
観たいと思っているのですが観れないでいる1本です。
原作も面白いらしいですね。
読みたいと思っています。
主演の松田龍平さんって静かで飄々とした感じの役が似合っていそうです。
by キキ (2013-05-17 21:35) 

coco030705

キキさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪

松田龍平くんは「御法度」に出ていたときいいなと思いましたが、
そのあとはあまり注目もしてなかったんです。でもこの作品は
よかったですよ。彼のキャラクター、いいですね。
原作はそろそろ古本屋さんにでてないかしらって、三番街の
カッパ横丁の古本街を探しに行こうと思っています。
by coco030705 (2013-05-17 21:51) 

Naka

こんばんは。
辞書が完成するまでの過程を知ることができ、とても興味深かったです。
紙質にも細心の注意が払われていたのですね。
私はただ薄っぺらければ良いのかと思ってました(^^;
辞書作りを通して、人々の心が繋がっていく様が良かったですね。
by Naka (2013-05-21 23:26) 

coco030705

Nakaさんへ
こんばんは。nice&コメントありがとうございます♪

辞書作りの工程がよくわかって、しかもおもしろかったですね。
赤の他人が、ある場所で出会って、仕事という強制的なものを真面目に真剣に必死でこなしていくうちに、だんだん人と人との心が繋がっていく。
そういう様子がとても感動的でした。日本映画も、もっと観たいなと思います。

by coco030705 (2013-05-21 23:47) 

prin4795

原作即読みました
松田龍平なら映画もみてみたいです。
期待しすぎか、まんがチックでした(難すぎないようにか)
by prin4795 (2013-08-18 23:49) 

coco030705

prin4795さんへ
こちらにも、nice&コメントありがとうございます♪

松田龍平、よかったですよ。彼のキャラクターに合った役でした。
原作は買ったのですがまだ読んでいません。早く読まなくちゃ。
by coco030705 (2013-08-19 09:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。