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ふたりのベロニカ [外国映画]

監督:クシシュトフ・キエシロフスキ    出演:イレーネ・ジャコブ、 フィリップ・ヴォルテール、 
サンドリーヌ・デュマ 
1991年     スクリーン

 友達が「ふたりのベロニカ」は版権の関係でビデオやDVDでは見れないというので、レイトショーに足を運んだ。映画館はテアトル梅田。時刻は、21:15スタートだった。思ったよりも人が多くてびっくりした。

 監督のキエシロフスキは、「トリコロール三部作」で有名なポーランドの監督である。主演のイレーネ・ジャコブは、監督のミューズで、彼女の存在なくしてはこの映画は撮れなかったといわしめるほど、監督お気に入りの女優である。彼女は、「トリコロール赤の愛」で名を知られていて、その風貌はイングリット・バークマンを彷彿とさせるようだった。しかし、あまり洗練されていなくて、ちょっと田舎っぽい感じがした。

 全体的にオレンジ系の、レトロな感じのする色調だったが、これはフィルターを使用して、あえてこの色をだしたのだそうだ。

 この作品は、同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれた「ベロニカ」という2人の女性の話である。一方はポーランドの小さな田舎町で、もう一方はパリ郊外で生活している。2人は、双子のような瓜二つの容貌と同じ癖を持ち、ともに音楽の才能に恵まれていた。そして先天的に心臓を患っていることも共通していた。2人はお互いを知らずに暮らしているが、どこかに自分とそっくりなもう一人の存在を感じていた。
 
 ある日、ポ-ランドのベロニカが、心臓病で死んでしまったとき、パリのベロニカは胸に激しい痛みを覚えるのだった。こうして、一方のベロニカが死ぬことによって、2人は完全に重なり、パリのベロニカは、自分では自覚のないまま2人分の人生をいきるがごとく、本当の恋人を見つけていく。

 ベロニカは、巡回人形師の男に恋をする。この人は、町から町へ車で移動しながら、子供達相手に、人形劇を見せて、生活している。この人形と人形劇が、一風変わったものだった。バレリーナの人形がいて、それがある日死んでしまい、そのあとに、背中に羽をつけた天使として蘇るという劇なのだ。人形も子供向けのかわいらしいものではなく、アーティスティックな感じで、「死と再生」の物語にふさわしい感じだったと思う。
 ここに使われていた音楽も、物悲しいような静かな曲で、この人形劇のテーマにマッチしていて、大人が見ても心惹かれるようなものだった。

 そして、この男と一夜を明かしたとき、ベロニカはある写真を見せられる。そこには、服装こそ、心当たりのないものを身につけているが、自分とそっくりな女性が写っていた。ベロニカは分身の存在を確信し、本当の恋を見つけたことを再確認するのだった。

 不思議なストーリーの映画だった。現実的でないと思うかもしれないが、実際にも、ほんとうの自分の分身というわけでなくても、すごく親しい友達とか、兄弟などが亡くなったら、大変な心の痛みを感じるだろうし、その人の分まで幸せになろうとするだろう。それはまさに、その人にとっては分身のような存在といえるのではないだろうか。そして、ある人が死んでしまっても、その人のことを生きている人たちが思い出す限り、その人物は生き続けると思うのだ。「ベロニカ」は、まさに1人が死ぬことによって、2人が完全に重なり同化したといえると思う。映画の中の人形劇にあったように、死んだことによって、もう1人のベロニカとして、再生したのだ。

 この映画は、ストーリーそのものがおもしろいというよりも、主演のイレーネ・ジャコブのみずみずしさ、柔らか味のある美貌、そしてラブシーンでみせるエロティックさが作品の魅力そのものといえるかもしれない。


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preterite

こんにちは。以前「コーヒー&シガレッツ」の記事にコメントさせていただいた者です。

キェシロフスキを映画館で見られるなんてうらやましいですね!「二人のベロニカ」はビデオが出てないというのは知らなくてちょっとショックです。いつか見られるだろうと思っていたのですが・・・。coco030705さんの感想を読んで、ますます見たくなりました・・・。
by preterite (2006-05-21 10:52) 

coco030705

preteriteさんへ
コメントありがとうございます♪
私も友達がさそってくれなかったら、見ていなかったと思います。
でも、たぶん何かの催しで再上映するのではないでしょうか。
いつかご覧になれるといいですね☆
by coco030705 (2006-05-21 11:18) 

鯉三

ずいぶん昔に劇場で見ました。やはりイレーネ・ジャコブがきれいで、まさに彼女のために作られた映画のようでした。「ベロニカ」という女性の名前も素敵ですね。トリコロールも見ましたが、こちらはあまり印象に残りませんでした。

キェシロフスキ作品では初期の『アマチュア』や遺作となった『デカローグ』の最終話が好きです。特に『アマチュア』は、映画好きあるいは映画を撮ってみたいと思ったことがある人は感情移入してしまう映画です。
by 鯉三 (2006-05-21 13:45) 

coco030705

鯉三さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
キエシロフスキの映画をよくごらんになっているのですね。
私は友達がこの監督のファンなので、ついて行ったようなものです。
独特の雰囲気を持った映画でした。イレーネ・ジャコブは本当に美しかったですね。
by coco030705 (2006-05-21 19:02) 

Naka

ココさん、こんばんは。
劇場だと、映像も音楽も一段と趣き深かったでしょうね。
私は確かテレビで観ましたが、
イレーヌ・ジャコブの透き通るような美しさが印象的でした。
そして、人との出逢いとか、運命の不思議について感慨が深まりますね。

キエシロフスキの映画はあまり観ていませんが、
「トリコロール/赤の愛」は好きな作品です。
やはり映像と音楽がとても心地良かったのを覚えています。
by Naka (2006-05-21 19:49) 

coco030705

Nakaさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
そうですね、やはり映画館は、現実世界とは遮断された空間なので、
映画の世界に浸ることができます。そして、観客同士が感動を共有
できるところが、いいところだと思います。
「トリコロール/赤の愛」もいつか見てみたいと思います。
by coco030705 (2006-05-21 20:52) 

KANAchanMaMa

またまた 渋い作品の紹介ですね。これも、題名を知るだけで いましたが、
なんとか 観たいです~!この記事を 読んだら、とても触発されましたから。
双子の方々って、実際に、一方に 危機的なことが あったりしたら、通じる
ところが ある…そうですね。「金さん銀さん」の銀さんも、金さんが 亡くなった
時刻に、異変を感じて 訴えていられた そうですし…。
by KANAchanMaMa (2006-05-22 01:34) 

coco030705

KANAchanMaMaさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
世の中には色々不思議なことがあるので、こういうこともあるかもですね。
いつかこの映画をご覧になれるといいですね☆
by coco030705 (2006-05-22 15:48) 

TaekoLovesParis

Cocoさんが、「ダビンチ・コード」もうごらんになったかな?と思ってきてみたら、意外にも「2人のベロニカ」でした(あ、ごめん)。上映映画館が少なかったから、ビデオで見ようと思っていたのに、ダメなんですね。。。(涙)
10年くらい前、トリコロールが3本ともすごく気に入ったので、次作は、と思っていたら、亡くなって。。
イレーネ・ジャコブ、たしかに、イングリッド・バーグマンに似てる!
私も2年前に仲のいい友達が亡くなったんだけど、今でもしょっちゅう、
優秀だった彼女に「ちゃんとやんなきゃだめよ」って言われてる気が
します。亡くなってからの方がいつもそばにいる感じなんですよ。
というわけで、名画座での上映をチェックですね。
by TaekoLovesParis (2006-05-23 19:44) 

coco030705

Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございました♪
Taekoさんは、「ダビンチ・コード」をもうご覧になったんでしょうか。
おもしろそうですね。ひさびさの大作って感じ。早く見たい!
仲のいいお友達のように、精神的なつながりというものは、
不思議ですよね。やっぱり精神は滅びないのかなぁ・・・。
自分が見えているものだけが真実じゃないということかも
しれません。
この映画は、だれも興味がないかもしれないと思っていたのに、
皆さんよくご存知で、さすがと驚いています。
by coco030705 (2006-05-23 21:20) 

うーんやっぱり解説が面白い♪
残念のは私が余り知らない映画だと言うこと・・・。昔は良く見に行っていたんだけど、最近はTV、DVD、映画も最近見に行ってないけど、coco030705さんの感想聞いていると映画が見たくなります(^-^*)
by (2006-05-26 14:11) 

coco030705

Soraさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
いつも、優しいお言葉感謝、感謝で~す。
このごろは、ミニシアター系の映画の解説が多いのですが、
またメジャーな映画の解説にも取り組んでいきたいと思っています。
これからも、よろしくお願いします。(^^)
by coco030705 (2006-05-26 17:38) 

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