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藤田嗣治展(Leonard Foujita) [アート・カルチャー]

 京都国立近代美術館の藤田嗣治(レオナール・フジタ)展に行ってきた。
 今年は藤田の生誕120年にあたるそうだ。少し藤田の略歴をパンフレットから抜書きしてみよう。

 藤田嗣治(ふじたつぐはる、1886-1968)は、東京美術学校を卒業後フランスに渡り、モディリアニらエコールド・パリの画家達と交流、とりわけ”乳白色の肌”をもつ裸婦像で一躍パリの寵児となりました。その後、中南米を回って日本に帰国しますが、一転して濃密な色調と写実的な作風へと移行、二科会で活躍するとともに、第二次大戦中は戦争画も描きます。そして戦後フランスに戻り、やがて帰化してふたたび日本の土を踏むことなく、晩年はこどもたちや宗教画を主題に、美しい線描と色彩で華麗な作品を残しています。(以上パンフレットより抜粋)

 この展覧会の絵で魅力的なのは、やはり「”乳白色の肌”をもつ裸婦像」である。まるで陶器のように滑らかで美しい肌だ。そのそばには、藤田の愛猫がほんどといっていいくらい一緒に描かれていた。美しい女性と猫はとてもよくマッチしていた。それに背景の壁紙などが、大変センスのいいデザインだった。普通の女性の肖像画もあったが、彼女達のドレスもステキなものばかりだった。今ちょうど流行しているような、フリルのたくさんついたオーガンジーのボディコンシャスなドレスや、グリーンのノースリーブのブラウスに、たっぷりしたすそ広がりの白のスカート(グリーンのラインがひだにはいっている)。また、チラシの表紙になっている、カフェで物思いにふける女性の黒のドレスもいい。こういうのは、きっとデザイナーたちが参考にして、デザインを考えるのだろうなと思った。

 宗教画も美しかった。晩年にフランスに帰化したときに洗礼を受けて、レオナール・フジタ(Leonard Foujita)と名乗ったのだ。彼の宗教画は独特の雰囲気がある。教会の壁画が特に見事だった。

 日本にいっとき帰国したときに描いた、銀座コロンバンの壁画も珍しかった。「女性と天使」という題で、宗教画に近いイメージだ。今は迎賓館に保存されているようだ。

 おもしろかったのは、自画像。数点あったが、藤田は絵に墨を用いていたので、すずりと筆が描かれていた。それに、必ず猫が顔を覗かせていた。猫の表情もよく猫がこういう表情をするというものを、的確にとらえて描いてあった。

 それから、中南米で描いた絵は、色彩がまったく違った。濃くて明るい色でまったく藤田のイメージとは違う絵だった。

 また、戦時中は戦争画も描いている。これは、画面が非常に暗く重苦しい感じで、戦争の悲惨さがよく伝わってきた。藤田はこんな絵は描きたくなかっただろうなと思う。そういう藤田の心情もこの絵の中に加わっているのだろうと想像した。

 子供の絵もかなりあったが、これは現実の子供ではなく、藤田の想像上の子供たちなのだそうだ。まるで人形のような子供の絵だった。ぜんぜん子供らしさがなく、活き活きした様子もなかった。藤田は子供がなかったので子供を描くときに、感情移入ができなかったのだろうか。私は藤田の絵では唯一、子供の絵はいいと思えなかった。

 それに引き換え、猫たちの絵の活き活きしていたこと。猫だけの絵もかなりあった。藤田がどんなに猫を愛した画家だったかが、よくわかった。それでつい、この「猫の本」を買ってしまったのだった。

 3000円もしたので、買おうかどうしようか迷ったのだが、思い切って買っておいて良かったと思う。あとから買おうと思ってもなかなか見つけられないだろうし・・・。毎日ながめている。

 この美術館は、カフェが併設されている。館内から入れるようになっていて、川のすぐ横なのだ。
テラスで川と緑を眺めながらお茶することもできる。とってもきもちがいい。ただし、ケーキはあまりおいしくなかったかな・・・。

 帰りにすぐ近所にある「平安神宮」へ行って、花菖蒲を見てきた。6月4日(日)にいったのだが、まだ3部咲きくらいだった。美しい花をお楽しみください。

 それから一軒、京都でおいしい和食のお店を紹介します。四条河原町にあります。
 「彩席 ちもと」というお店で、玉子宝楽(たまごほうらく)というお料理が売り物です。これは、茶碗蒸しをスフレにしたような形で、ふわふわしていてとってもおいしいです。
 お昼はいつも点心というのをたのむのですが、お弁当に玉子宝楽とご飯、お味噌汁がついています。これで2500円+消費税です。量的には女性のランチにちょうどいいくらいの量です。ほかに、コース料理もあります。(4000円~)
 住所:京都市西石垣四条南入る    電話:075-351-1846
 詳しく場所をご説明しますと、四条河原町阪急から、四条通を東山に向かって歩いてください。四条大橋を渡る手前の橋詰に、中華料理店(古い建物)があります。そこの手前を右に折れるとすぐ、「彩席ちもと」の看板が目に付きます。あまり大きなお店ではありません。よかったら一度行ってみてください。
 いい美術展とおいしい食事がセットになってると、一日の充実感が一層高まるというものです。 
 


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KANAchanMaMa

藤田嗣治展…ブログ記事で見るの これで 何篇目でしょうか !?
行きたかったな~!東京展。。。
「猫」を 身近で 愛でていらっしゃる方の方が、その 生き生きとした描写に
感じるところが 多いでしょうね♪(…私は、今のところ、犬・猫 関連に
縁が なく 来たもので…(^^ゞ )
ご本人の没後に 評価の高まった方…だ そうですね。
展示展を 見逃しても、知ることが できた ご縁に感謝して、今後 彼の
作品に 興味を持っていきたいと思っています。(^^♪
by KANAchanMaMa (2006-06-10 05:14) 

coco030705

KANAchanMaMaさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
プロフのお写真、変わりましたね。水芭蕉でしょうか?きれいですね。
この藤田嗣治展は、こんなに大規模なのは内外でも初めてなのだそうです。私は特に猫が好きなので、より身近に感じました。
もっと小規模なのはこれからもあると思いますので、次のときの楽しみにとっておかれては・・・。
by coco030705 (2006-06-10 08:17) 

TaekoLovesParis

フジタ展、私も行ったので、こうやって、Cocoさんの感想を読みながら、
絵をゆっくり思い出すのは、とても楽しい時間です。
祖母は広島で暮らしていたので、小説にでてくる「銀座コロンバン」に行くことを楽しみにしていたと聞いたことがあります。でも銀座の喫茶室はなくなっていました。戦前にこんな壁画があるお店だったら、すごくおしゃれだから、憧れる気持ちもよくわかりました。
解説を読みながら絵を見ていくと、フジタの人柄が伝わってきますね。
私も中南米の絵のコーナーでは、色合いの強烈さに、場所が変わると
こんなに絵が変わる、と驚きました。
奥さん、3回くらい変わりますよね、もてる人だったんですね。
京都の「彩席ちもと」、書きとめました。橋の角の古い中華は行った
ことあるので、場所の見当はつきます。
花ショウブの季節ですね。平安神宮のってきくと高貴なかんじします。
by TaekoLovesParis (2006-06-10 22:25) 

Naka

美しいもの、美味しいものたちに囲まれた、とても素敵な一日ですね。

私も、藤田嗣治の東京展に行けば良かったなぁ、、、。
うちにも猫がいるので、猫の絵にとても興味を持ちました。(^^
by Naka (2006-06-11 00:44) 

鯉三

京都国立近代美術館、学生時代によく行きました。
琵琶湖からの疎水がここまで流れてきているんですよね。
藤田嗣治は眼鏡と髪型がおしゃれでかっこいいです!
この猫の本、前から気になっていたのですが、3000円ですか...
うーん、高いですね。
by 鯉三 (2006-06-11 00:55) 

jazzy

こんにちは。
奇遇ですね。
実は昨日行ってきました。

絵の変遷がわかりやすい展覧会でしたね。

自画像よかったっすね。
初期の風景画がなんか印象に残ってます。
by jazzy (2006-06-11 15:16) 

coco030705

Nakaさんへ
nice&コメントありがとうございます。
Nakaさんも猫を飼ってらっしゃるんですか!どんな猫ちゃんかみたいな~。
この画集は、ちょっと高かったんですが、買ってよかったです。猫好きにはたまらない、いい絵が満載なんですよ。(^^)


鯉三さんへ
京都は新緑の美しい季節が一番好きです。
藤田の髪型は独特ですね。おっしゃるとおりお洒落な感じがします。
猫の本は、一度手にとってご覧になると、絶対手放せなくなりますよ。
一度見てみてください。


jazzyさんへ
コメントありがとうございます。
藤田の絵はどちらかというと、女性好みのような気がします。
jazzyさんのご趣味には合わなかったんじゃないですか?
でも、展覧会で一枚でもいいと思える絵があったら、収穫なのでは
と思いました。
by coco030705 (2006-06-11 19:07) 

coco030705

Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございます。
そうですか、おばあさまが銀座コロンバンのファンでいらしたのですね。
藤田の絵をみながら、お茶するなんて、素敵ですよね~。
彼の女性像を見て、藤田は女の人の魅力をよくつかんでいると
思いました。だからこそ、モテたんでしょうね。
by coco030705 (2006-06-11 19:10) 

coco030705

Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2006-06-11 21:04) 

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