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アンリ・カルティエ・ブレッソン 瞬間の記憶 [外国映画]

監督・脚本:ハインツ・バトラー   出演:アンリ・カルティエ・ブレッソン、 アーサー・ミラー、
エリオット・アーウィット、 イザベル・ユベール、 フェルディナンド・シアナ
2003年 スイス・フランス       スクリーン

 アンリ・カルティエ・ブレッソン(1908~2004)は、フランスの偉大な写真家である。このフィルムは、人前に顔をさらすのが嫌いだったブレッソンの貴重なドキュメンタリーである。

 彼はロバート・キャパらとともに写真家集団「マグナム」を設立し、ライカを片手にスペイン内戦、ガンジーの死などの歴史的瞬間を撮った報道写真家の先駆者である。

 フィルムは93才のブレッソンの自宅でのインタビューや、親交のあった写真家エリオット・アーウィットやアーサー・ミラーたちのインタビューで構成されていた。

 ブレッソンはどこかかわいげのあるおじいさんで、自分の写真集「決定的瞬間」の元の写真を一枚ずつ写真の山から抜き出して、レンズのほうに向けて見せるのだった。この「決定的瞬間」は世界中の写真家に大きな影響を与えた作品である。私も大好きな写真集だ。歴史的瞬間をとらえた写真ばかりでなく、一般の人たちのある瞬間をとらえている。たとえば、恋人同士がキスをする瞬間、もやの中に浮かび上がったシテ島のある瞬間などがとらえられていて、それがとても美しいのだ。写真集で見るのではなく、画面に映し出された写真をみるのも素晴らしかった。

 ブレッソンは色々な人を撮ったときのことを語っているのだが、インドでマハトマ・ガンジーが暗殺されたときにもちょうど居合わせたのだそうだ。ほかの有名な写真家がそのガンジーの事件を撮ろうととしたところ、何かの理由で警察に排除された。しかし、ブレッソンは幸運にもその時を記録することができたのだ。

 この写真集の「決定的瞬間」というのは英語訳で、原題はフランス語で「逃げ去るイメージ」という意味である。ブレッソンは最後に「写真とは瞬間だよ。それをとらえることだ。それ以外何もない。」といっていた。
 
 私たち素人もシャッターを切るとき、瞬間をとらえているはずなのだが、それはただのスナップ写真に終わる。どんなにいいカメラを持ち、機材をそろえ、ここぞという瞬間をとらえたとしても、ブレッソンのような芸術にはならない。なぜなのかその理由はわからないが、それこそ天才の目線と凡人の目線との違いなのであろう。しばらく見ていない「決定的瞬間」の写真集を図書館に見に行こうかと思っている。


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コメント 10

gillman

画面の中でもいいですが
ブレッソンやアーサー・ミラーに会って見たいです
by gillman (2006-07-17 17:55) 

coco030705

gillmanさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
ブレッソンもアーサー・ミラーもこんな人だったのねと、
実際の姿を見ることができて嬉しかったです。
この映画は大阪はもう終わったのですが、東京はまだ
どこかで上映されていると思います。
by coco030705 (2006-07-17 18:11) 

TaekoLovesParis

アンリ・カルティエ・ブレッソンのドキュメンタリーなんですね。
恵比寿ガーデンプレイスにある「東京都写真美術館」で時々
、「世界の報道写真展」をやっていて、いつも招待券をもらうので
行っています。だから、カルティエ・ブレッソンの決定的瞬間の写真
もいくつか見ています。写真って絵と違って焼き増しできるから、
いろんな所で「あ、あの写真」ていうのを見かけたりしますよね。
Cocoさんのおっしゃるように、決定的瞬間に居合わせるのも才能
なんでしょうね。
この映画、ぜひ、ぜひ、見たいです。イザベル・ユペールは「ピアニスト」
の人ですよね。ブノワ・マジメルが美しいと評判だったけど。
by TaekoLovesParis (2006-07-18 23:45) 

coco030705

Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございます。
ドキュメンタリーなので、おもしろい作品ではないかもしれませんが、
ブレッソン本人やアーサー・ミラー、イザベル・ユペールなどの生の声が
聞けるところがいいですね。
by coco030705 (2006-07-20 00:42) 

jazzy

こんにちは。
この映画、京都でもやってましたが見逃しました・涙。
以前NHKで似たようなドキュメンタリーやっていたので見た気分になってますけど・笑。

ブレッソンは報道写真家というよりは芸術写真ですね。ユージン・スミスのような社会性は彼にはあまりない。キャパのようなセンセーショナリズムもない。いわゆる日常のスナップをアートに高めた人だと思います。とりあえず完璧な構図になるまで何時間でも待てる人だったようで。

>どんなにいいカメラを持ち、機材をそろえ、ここぞという瞬間をとらえたとしても、ブレッソンのような芸術にはならない。

これはもうね、アートはすべてそうですよね。谷崎潤一郎と同じ萬年筆で書いても駄文は駄文だし。ゴッホと同じ絵の具使ってもゴッホみたいには描けないのと同じで。

「決定的瞬間」というのはひじょうにおもしろい言葉です。特に「決定的」というのがおもしろい。決定的というときに決定されているものは何か、などと考えてみるといろいろと楽しいです。
ブレッソンがお好きなココさんにはぜひ、ウイリアム・エグルストンの写真もご覧いただきたいです。
by jazzy (2006-07-20 10:27) 

coco030705

jazzyさんへ
コメントありがとうございます♪
>日常のスナップをアートに高めた人だと思います。
まったくその通りですね。ほんとうにすばらしい写真集です。
「ウイリアム・エグルストン」の写真もみてみたいですね。
by coco030705 (2006-07-20 12:57) 

鯉三

日本にいた時は、アンリ・カルティエ・ブレッソンの写真展に何回か行ったことがありますが、ドキュメンタリー映画とあればやっぱり見てみたいです。亡くなる1年前に作られた映画ですか。jazzyさんがおっしゃるように、キャパの作品なんかと並んでいると明らかに違っていますね。芸術的な美しい作品が多いと思います。
by 鯉三 (2006-07-21 09:02) 

coco030705

鯉三さんへ
nice&コメントありがとうございます♪
ブレッソンは、なんとなくかわいげのあるおじいさんなのです。
台湾でも上映されるといいですね。
by coco030705 (2006-07-21 16:33) 

TaekoLovesParis

★Cocoさん、私のブログで「瞬間の記憶」をリンクさせていただきました。
短い時間にうまくまとめてあって、いい映画でした。
映画監督ルノアールに自分の作品を見せて応募し、撮影助監督にしてもらう
ところからプロ写真家の人生がスタートするんですね。そして第二次大戦では
ドイツ軍につかまり脱走。波乱万丈の人生だったのですね。20世紀の歴史
を垣間見るような映画という気がしました。
by TaekoLovesParis (2006-08-26 16:59) 

coco030705

Taekoさんへ
ご覧になりましたか。こういうドキュメントもたまにはいいものですね。
リンクはっていただき、ありがとうございます。
またお部屋にお邪魔します。
by coco030705 (2006-08-26 22:26) 

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