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愛の神、エロス [外国映画]

 この映画は、三つの短編映画を、ウォン・カー・ウァイ、スティーブン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニの3人の監督がそれぞれの個性を生かして創りあげた作品集である。

1作目「若き仕立屋の恋」
監督:ウォン・カー・ウァイ、出演:コン・リー、チャン・チェンetc.

 ウォン・カー・ウァイの独特の美しい世界である。1963年の香港が舞台で、レトロな雰囲気が建物や仕立て屋の店の内部の様子から漂ってくる。
 若くハンサムな仕立屋見習いのチャン(チャン・チェン)は、高級娼婦ホア(コン・リー)の豪華なマンションへ仮縫いに訪れる。ホアは客をとっている最中だった。その様子がチャンが待たされている隣室にまで、響いてくるのだった。チャンはホアに惚れていた。やっと客が帰り、部屋に通されたチャンはホアに誘惑される。しかしそれは一線を越えるものではなかった。ホアに触れられ、その手の感触を覚えこむようにいわれるのだった。女の事をよく知らないと、いいドレスは縫えないと教えられた。チャンはホアへの想いを胸に抱きながら、ホアのドレスをひと針ひと針縫い続ける・・・。

 この仕立屋見習い役のチャン・チェンがすごくよかった。寡黙で、片思いの相手を想い続けるおとなしい純情な男。こんな素敵な男性は現実にはいないかもしれない。
 コン・リーもとても美しかった。彼女の着るチャイナドレスがどれもこれも素晴らしかった。オーガンジーを使ったドレス、ビーズをいっぱいちりばめたドレス、そのどれもが派手な色でなく、おさえた色調でまわりのレトロな雰囲気に溶け込んでいた。こんなドレスを一度は着てみたいものだ。
 また、チャン・チェンの店の親父(主人)役の俳優がすばらしかった。商売人が裏と表を使い分けるところを、非常に自然に演じていたので、ひょっとしてこの人は本当に仕立て屋の主人じゃないか、と思わせるほどだった。

 短い作品だったが、ウォン・カー・ウァイの要素がいっぱい詰まった素晴らしい出来の映画だったと思う。

2作目「ペンローズの悩み」
監督:スティーブン・ソダーバーグ  出演:ロバート・ダウニー・Jr etc.

 ソダーバーグといえば、「セックスと嘘とビデオテープ」が有名な人だが、この作品はあまりわけがわからなかったような記憶がある。それと、「オーシャンズ11&12」。この二本は見た。これは単純におもしろい映画だった。色々な種類の映画を創る監督のようだ。

 この「ペンローズの悩み」も変わった映画だった。主人公は広告クリエーターのペンローズという男である。舞台は1955年のニューヨーク。ペンローズは毎夜夢に出てくるブルーのドレスを着た美女に悩まされていた。それで精神科医のパールに夢の解析を依頼する。ここから急に画面がモノクロに変わる。
 このパールが変わったお医者さんで、ペンローズの話を聞きながら、窓の外を望遠鏡で見たり、新聞紙の切れはしで紙飛行機をつくって、窓から飛ばしたりするのだ。
 診察が終わった後、眠り込んでしまったペンローズは、目覚まし時計で目をさます。この目覚まし時計の古いデザインがおもしろかった。そして、そこでペンローズがみたものとは・・・。
 最後に紙飛行機がビルからひらひらと落ちるシーンが何度も繰り返されるが、それが何を意味するのかさっぱりわからなかった。できたらオチをつけてほしかった。そうすれば、納得がいってすっきりしただろうに。

3作目「危険な道筋」
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ  出演:エル・キーツetc.

 最後はイタリアの巨匠、ミケランジェロ・アントニオーニ監督のトスカーナを舞台にした短編。ちょっと調べてみたのだが、名前はよく知っているのに、この人の作品は一本も見たことがなかった。アカデミー賞受賞作に「欲望」という映画がある。これは、40年も前の作品だ。あとは1982年にカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞したのが「ある女の存在証明」だ。この2本は見てみたい気がする。

 舞台は真夏のトスカーナ。結婚生活に行き詰ったクリストファーとクロエは、口論が絶えない。そこに1人の若い女が現れる。彼女はリンダといって、浜辺の塔にひとりで住んでいた。リンダに興味を持ったクリストファーは、彼女を尋ね関係を持つが、それは一夜だけの関係だった・・・。

 これは女性の肉体の美しさを全面に押し出した作品だった。クロエという中年の女性と、リンダという若い女性が多くの場面にヌードで登場する。ふたりともそれぞれの美しさのあるスタイルだった。ストーリー的にはたいした話ではないし、最後が何を暗示しているのかわからない。最後に二人の女優が別々に、海岸でヌードで踊るのである。結局、男の人は、女性達のあいだをうろうろとさまよっているだけで、女性のほうが自分たちの生き方を、何のしがらみもなく謳歌しているということを言いたかったのかも知れない。

 この三つのエピソードの間には、ロレンツォ・マットッティの絵画とカエターノ・ヴェローソの音楽が入る。この絵画と音楽も素敵だった。


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コメント 8

こんばんは!
この映画は何度も手にとってまた棚にもどして・・・を毎回ツタヤに行くたびに繰り返してます。
記事を拝見して、今度こそ借りよう!って決めました。^^
時にはきっかけがいるようで・・・。笑
by (2006-07-31 01:04) 

coco030705

kurumiさんへ
毎日暑いですね。お元気ですか。
nice!&コメント有難うございます♪
ウォン・カー・ウァイのはお薦めです。3人のそれぞれの個性が
現れた作品をお楽しみくださいね。
by coco030705 (2006-07-31 08:56) 

ken

何たる偶然。
こんな古い映画を同時期に観るなんて(笑)。
ウォン・カーウァイの「THE HAND」は傑作ですよね!同感です。
TBさせて頂きました。
by ken (2006-07-31 14:37) 

coco030705

kenさんへ
nice&コメント&TB ありがとうございます♪
ほんとにほんとに、偶然ですね~。
ウォン・カーウァイの「THE HAND」は突出していい出来でしたね。
ますます彼のファンになっちゃいました!
by coco030705 (2006-07-31 16:10) 

coco030705

Soraさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2006-08-01 09:04) 

coco030705

lionさんへ
nice!ありがとうございます♪
by coco030705 (2006-08-05 00:24) 

Naka

こんばんは。
このカーウァイの作品は、素晴らしかったですね。
切なく美しい官能の世界に陶酔しました。
チャイナドレス姿のコン・リー、綺麗でしたね。
劇場に彼女が着用していたドレスが展示してあったのですが、凄く細くてびっくり!でした。
by Naka (2006-08-05 01:37) 

coco030705

Nakaさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
コン・リー、本当に妖艶で美しかったですね。
チャイナドレスって、ボディラインが出てしまうので、
女優さんはすごいダイエットするそうですね。
花様年華のマギー・チャンも細身を維持するのが大変
だったとか。ダイエットのためにはチャイナドレスを着ると
いいかも。(^^)
by coco030705 (2006-08-05 08:22) 

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