ブーリン家の姉妹

　ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンという今をときめく美人女優の競演である。この2人は美しいだけでなく、演技力もあるので本当におもしろい作品となった。



　舞台は16世紀のイングランド。時の国王はあの悪名高きヘンリー8世（エリック・バナ）である。ヘンリー8世の王妃キャサリンは幾度目かの出産でもお世継ぎの男の子を生むことができなかった。王の焦りを察した新興貴族のトーマス・ブーリンは、ヘンリー8世がブーリン家に狩猟に立ち寄るのを絶好の機会と捉え、長女のアン（ナタリー・ポートマン）が王に気に入られ、宮廷へ召されるようにと画策する。もしアンが王の寵愛を受け、お世継ぎを生むことにでもなれば、ブーリン家の繁栄が約束されるからだ。しかしある出来事により、ヘンリー8世は、既婚者である妹のメアリー（スカーレット・ヨハンソン）を気に入る。そして、メアリーを愛人として宮中に住まわせることとし、ブーリン一家もそれに伴って、宮廷住まいとなる。仲の良い姉妹であったアンとメアリーは、嫉妬と憎しみの渦の中に投げ込まれるのである……。



　おとなしいメアリー（スカーレット・ヨハンソン）と頭が良く気性の激しいアン（ナタリー・ポートマン）。この2人は、結局男たちの権力争いの道具にされ翻弄される。ヘンリー8世は男子を出産しなかったというだけで、次々と女達を見捨てていくのである。女性にとって暗い時代である。



　しかし、この映画では、女優陣が本当に輝いていた。スカーレットはおとなしく従順に運命に従いつつも、最後まで姉を愛するかわいい女性メアリーを、自然な感じでうまく表現していた。
　ナタリーは、頭が切れすぎて王妃を蹴落とし自分が王妃の座にすわるものの、結局は男子を生めず、ヘンリー8世に見捨てられる悲劇の女性アンを好演していた。



　そして、アンに陥れられる王妃キャサリンはアナ・トレント。どんなに追い詰められても、毅然とした態度を崩さず、王妃の気品と威厳を見事に演じていた。
　それから、思慮深く愛情溢れるミセス・ブーリンにクリスティン・スコット・トーマス。彼女は子供たちの心情をよく理解し、ヘンリー8世の非情さを見抜き、権力を持つことにやっきになっている夫に助言する。しかし、バカな夫のために、次々に子供を失う事態になり、夫を平手打ちする。ここが大変かっこよかった。
　女たちはどうして、こんな運命を背負わされたのだろうか。歴史はあまりにも残酷である。しかし、映画としては興味深く、おもしろい筋書きになっている。

　この作品の男優陣は、ヘンリー8世役のエリック・バナがいかにも王らしい雰囲気でよかったと思う。ほかの男の人達は、キャラクターがあまり魅力的でないため、陰が薄かった。

　アン・ブーリンが出産した女子の名前はエリザベス。のちにイギリスに黄金時代をもたらしたエリザベス1世その人である。なんと皮肉なことか。そして人間の愛憎のドラマを飲み込んでいく歴史とは、なんと興味深いものなのだろうか。「ブーリン家の姉妹」のストーリーの続きとして、ケイト・ブランシェットの「エリザベス」を再見して見たいと思った。なおこれの原作本は、フィリッパ・グレゴリーの同名小説なので、こちらも読んでみたいものである。

監督：ジャスティン・チャドウッド　　　　　　　　　　　　出演：ナタリー・ポートマン、　スカーレット・ヨハンソン、　
エリック・バナ、　クリスティン・スコット・トーマス、　アナ・トレント
2008　イギリス／アメリカ　　　TOHOシネマズ梅田

コメント 14

こんにちは☆
登場人物の女性が、すべてキリリ！としていたのが印象的でした。
私も「エリザベス」が観たくなって、すぐに観ましたよ〜♪
意味の分からなかった部分が、解明されて楽しめました☆
原作も気になりますね〜。


by ジジョ (2008-12-06 09:06) 

ジジョさんへ
こんにちは！お久しぶり。お元気ですか？
nice&コメント＆ＴＢありがとうございます♪
人物のキャラクターがうまく演じ分けられていて、
よかったですよね。これは脚本がよかったってことなんでしょうね。
ジジョさんも「エリザベス」をご覧になったんですね☆
私も見てみますネ。
それから、原作本、昨日買ったんですがおもしろいですよぉ～。(＾＾)/

by coco030705 (2008-12-06 14:52) 

こんばんは。
そうなんですよね、みんなこの映画の後に「エリザベス」が観たくなるんです。
・・・・といいつつ私はまだ観てないんですけど・・・・。（＾・＾；）
美女二人の共演、素晴らしかったですね。
漠然と知っていた歴史がこれでつながったって感じで勉強にもなりました。
衣装も華麗で素敵でした。

by キキ (2008-12-06 21:40) 

どうも～。こんばんは☆
nice&コメントありがとうございます♪
面白い作品でしたね。映画の醍醐味を味わったって感じです。
英国の歴史は興味深いですね。
私は昨日、「ブーリン家の姉妹」の原作本を買いました。
とってもおもしろいですよ。
by coco030705 (2008-12-06 22:05) 

見た人たちが皆「よかった」と言っているので、ぜひ、見たい映画です。
高校のとき、今パリ在の友達に「おもしろいから」とすすめられて、ツヴァイクの「メアリ・スチュワート」を読み、ヘンリー8世が小さいとき読んだこわい本「青ひげ」であることを知りました。アン・ブーリンの名前はそのときからのお馴染み。
でも、結婚に至るには、こういう話があったとは知りませんでした。貴族とすれば、娘が王妃になればお家安泰ですものね。
エリザベス1世に敵視されるメアリ・スチュアートだけど、エリザベス1世亡きあとは、メアリの息子のジェームズ6世が王位を継いで、スコットランドとイングランドが合体するんですよ。このへんの歴史はドラマよりおもしろいです。
by TaekoLovesParis (2008-12-07 01:05) 

Taekoさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
イギリスの歴史はほんとうにおもしろいですね。色々勉強したいものです。
原作本も買いました。なかなかおもしろいので、一気に読めそうです。
Taekoさんもお時間がございましたら、ぜひ映画をご覧くださいませ。
by coco030705 (2008-12-07 20:43) 

ｘｍｌ_ｘｓｌさんへ
nice！ありがとうございます♪
by coco030705 (2008-12-07 20:45) 

ココさん、こんばんゎ。(^o^)
読み応え抜群のココさんのレヴューを
いつも楽しく拝読させて頂いていますが
コメント欄への書き込みは、久し振りです。
例によって、ウチのサイトはブログ形式ではなく
トラックバック機能もないので
またコメント欄での報告で恐縮です。（＾＾；）
この作品、私も以前から興味津々だったのですが
先達て、やっと観に行くことができました。
この類の歴史絵巻的な側面を持つ作品は、滅法好きなので
視覚的にも興味深く鑑賞することができました。♪
by 薄野の舞姫 (2008-12-08 00:22) 

薄野の舞姫さんへ
こんばんは。お久しぶりです。お元気ですか？北海道はもう雪景色なのでしょうね。大阪はようやく冬らしくなってきました。

ところで、いつもご訪問いただいて、ありがとうございます！
この映画は、ほんとにおもしろかったですね。脚本がとてもよかったんだとおもいます。この間原作を買って今読んでいますが、やはりおもしろいですよ。
by coco030705 (2008-12-08 01:31) 

こんばんは。
女性は強く、男性は弱くと対照的な描写が面白かったです。
ラストシーンが「エりザベス」へと続く感じでいいですね。
原作には映画になかったエピソードなどが含まれているのでしょうか。
by hash (2008-12-08 21:35) 

hashさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
本当ですね。色々な点で興味深い映画でした。
原作はまだ少ししか読んでいませんが、筋書きも
少し違うようです。でも文章がとても読みやすいです。
全部読んだら、記事をアップしようと思います。
by coco030705 (2008-12-08 22:00) 

こんばんは。
運命的にはかなり怖かったですけど面白かったです！
二人の演技に引き込まれました～
今、原作を読まれているのですね！
私はいつも本屋さんであの表紙を眺めながら、
長いなあと手に取るのを躊躇していました(^^ゞ
でも、面白そうですね。記事のアップ楽しみにしています☆
by non_0101 (2008-12-09 00:32) 

nonさんへ
nice&コメントありがとうございます♪
歴史は残酷ですよね。でもこの映画は、極力残酷な場面は
カットしていて見やすかったと思います。
なんといってもナタリーとスカーレットの魅力に惹きこまれました。
これからも二人がどんな女優に成長していくのか、（あるいは、
変わってしまうのか）それを見ていくのもとても楽しみです。
本のほう、時間がかかりそうですが、記事はかならずアップしますネ☆

by coco030705 (2008-12-09 18:25) 

sakikopさんへ
nice! ありがとうございます♪
by coco030705 (2009-01-05 00:48)