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MINAMATA (ミナマタ) [外国映画]

 ジョニー・デップが製作・主演を務めた作品です。水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いています。

 私はずいぶん前にTVの水俣病のドキュメンタリー番組で、苦しむ人々や動物をの姿を延々と流しているのを観て、みるに忍びない気持ちになりました。

 この作品はジョニー・デップの主演なので、行かないといけない、行きたいという想いから、ある程度覚悟していったのですが、映像がとても美しく、水俣病の人々や動物のシーンはパッパッと瞬間的に映しているので、思っていたよりイヤな感じはしませんでした。


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 1970年代のニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたフォト・ジャーナリストのユージン・スミス(ジョニー・デップ)が「LIFE」の編集長ボブ(ビル・ナイ)に、自分の回顧展のオープニング・スピーチで、最高の写真家だとスピーチしてくれと頼んでいる。だが、ボブは断る。というのも、スミスの最盛期は終わり、今はお金もなく、酒に溺れる日々を送っていたからだった。

 そんなある日、日本のカメラマンと通訳のアイリーン[美波(みなみ)]がCM撮影のためユージンのスタジオにやってくる。

 ユージンはアイリーンから、日本の大企業チッソが、熊本県水俣市の海に流す工場排水が原因で、病に苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。


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         アイリーン(美波)とジョニー・デップ

 しかしユージンは第二次世界大戦のとき、沖縄戦の撮影のため来日し、大けがを負ったので、二度と日本には行かないと拒絶する。
 けれどもユージンは、アイリーンが置いていった水俣の写真を見て言葉も出ないくらい驚いた。そして翌日「LIFE」の編集長ボブに水俣の写真を見せ「特集記事」をと迫る。最初はユージンを拒んでいたボブも事の深刻さに気付き、ユージンの申し出を受けるのだった。


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       ビル・ナイとジョニー・デップ

 水俣市に到着したユージンとアイリーンを、松村夫妻(浅野忠信・岩瀬晶子)が自宅で温かく迎えた。


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       浅野忠信、 美波、 ジョニー・デップ

 松村夫妻の長女のアキコも、胎児性水俣病で、夫妻はチッソを訴え出ていたが、チッソ側は「脳性マヒだ」と主張して、何の保証もしていない。松村は胸の内を語ってくれた。でもユージンがアキコの写真を撮りたいと願いでたとき、松村は頭をさげるのみだった。


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    加瀬亮

 次の日、ユージンはチッソ闘争の中心メンバーの一人、キヨシ(加瀬亮)を紹介される。彼の息子シゲル(青木柚)も胎児性水俣病で、手足が不自由だった。しかし、シゲルはユージンのカメラに興味を示し、ユージンから貸してもらったカメラを手に、曲がった指先を駆使して、ユージンや海の風景を撮り始めるのだった。


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         ジョニー・デップ & 青木柚

 チッソ工場の前では、キヨシ(加瀬亮)と一緒に闘争の先頭に立つ山崎(真田広之)が演説していた。彼は同志たちに、「声をあげて世界に訴えよう」と呼びかけるのだった。


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      真田広之

 ユージンはアイリーンの協力で、海岸沿いに写真を現像するための小屋(暗室)を建てる。そして、二人はキヨシ(加瀬亮)とともに、チッソ水俣工場附属病院へ潜入し、水俣病ということで入院している、身体の変形やけいれんに苦しむ人々を撮影。さらに、ラボで動物実験レポートを発見し、チッソが15年前から廃水が水銀中毒を引き起こすと知っていたことを突き止める。


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 あるとき、チッソ工場の前で山崎(真田広之)の演説を取材していたユージンは、会社の職員に強引に社長(國村隼)の所へ連れていかれる。社長はユージンに5万ドルの札束と引き換えに、ネガを渡すように偉そうな態度で迫る。しかし彼は、その申し出を受けることは決してなかった。


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    ジョニー・デップ、 國村隼


 ユージンは買収されそうになったことに怒りが爆発し、自分の暗室小屋で、身を粉にして写真のネガを引き延ばして、水俣病の現実を写真に焼き付ける作業に没頭する。


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暗室での作業に没頭するユージン(ジョニー・デップ)とアイリーン(美波)

 ようやくネガも写真の現像も整い、作品の出来栄えにも確信を持ったユージン。しかしその夜、何者かが暗室小屋に火を放ち、全てのものが焼き尽くされてしまう。


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 ユージンの落胆は大きく、一度は帰国も考えるが、振り返ってみると今やユージンは、水俣の人々の苦しみを自分のこととして感じていたのだった。そのとき、何者かがユージンに封筒を渡しに来て、走り去っていった。封筒の中身は、焼けたはずのネガフィルムだった。

 ユージンは、最初に合った松村夫妻の長女のアキコを被写体とした写真を撮る決心をしていた。その写真は、後の世にも語り継がれる作品になった……。


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 本当にすばらしい映画だった。この映画については、水俣市は後援しないとか、熊本県は後援したとか色々な噂が流れていたので、水俣市で撮影できたのかなと疑問に思っていたところ、ロケ地は水俣ではなくセルビアとモンテネグロに70年代の水俣を再現したとのことだった。理由は、水俣の街そのものが、1970年代以降に大きく変化したためだった。

 このロケ地の映像がとても美しく、日本としか思えなかった。そして、水俣病の人々の映像を見せつけるようなことはせず、ほんの瞬間をつなぎ合わせたような映像を何度か見せただけだった。こういう見せ方は、さすが映画だなと思った。

 キャスティングが最高で、ジョニー・デップのうまさはもちろんのこと、ビル・ナイの編集長もよかったし(ジョニデとビル・ナイは「パイレーツ・オブ・カリビアン」で共演)、闘争のリーダーの真田広之の迫力ある演技、アイリーン役の美波も魅力的だった。その他の俳優たちも、誰もかれもが熱のこもったいい演技だった。

 この水俣病の事件を映画にすることで、皆がよりわかりやすく、そして見やすくこの戦いを理解できると感じました。

 そして人間の温かさや狡さ、親子の愛、男女の心が通じ合う瞬間などを映像は自然にみせてくれたと思います。

 エンドロールでは、MAN-MADE DISASTERS(人為的な事件)として、世界各地で起こった(起こっている)公害などが一覧表として流されます。今も様々な国で色々な人々が苦しみ闘っているのだということを知り、愕然としました。

 今作で、映画の力というものを、改めて感じました。本当にいい映画でした。音楽は坂本龍一さんで、彼は産業公害に強い関心を抱いている方なのだそうです。人の心を癒してくれるような美しい曲です。

(写真は「映画com.」からお借りしました)

原題:MINAMAYA  監督:アンドリュー・レヴィタス  出演:ジョニー・デップ、
真田広之、 美波、 加瀬亮、 浅野忠信、 岩瀬昌子、 青木柚、and ビル・ナイetc.
音楽:坂本龍一
2020年 アメリカ

 

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