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坂東玉三郎特別舞踏公演感想文(2021.8.24) [演劇]

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 坂東玉三郎「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」の岩長姫(実はヤマタノオロチ)

 先日、久しぶりに南座で玉三郎の舞踏公演を観ました。「鶴亀(つるかめ)」と「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」でした。

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     坂東玉三郎 女帝

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     女帝と鶴と亀

 「鶴亀」は、能の「鶴亀」の詞章をそのまま長唄に移した舞踏です。歌舞伎の中では祝儀物の代表作です。私は長唄を習っておりますので、耳慣れた曲でしたが、舞台は初めて見ました。

 女帝(玉三郎)にお目にかかれること喜び、万民が喜びの声をあげる中、金銀の砂が敷き詰められた宮中の庭に、鶴(中村歌之助)と亀(中村福之助)が現れる。そして女帝は、鶴と亀に吉例の舞を舞うように命ずる。
 女帝も、唐の玄宗皇帝が夢にみた、月にある月宮殿で天人が舞うという舞を舞い始める。更に、国土安穏・五穀豊穣を願って、めでたく舞い納めた女帝は、廷臣や従者を伴って、長生殿へと戻るのであった。能楽も演奏され、格調高く典雅な舞踏です。

 久しぶりに玉三郎丈の舞台を観ることができ、嬉しく思いました。相変わらずきれいです。ただ、この舞踏は女帝役の踊りはあまり動きがなく上品に、ゆっくりと動くだけだったので、玉三郎さんの踊りを観に来た者としては、ちょっと物足りなかったです。

 次の「日本振袖始」は、近松門左衛門による神代物の作品。私は文楽で観ましたが、歌舞伎は初めてでした。

 出雲の国では、簸(ひ)の川に住みついた八岐大蛇(ヤマタノオロチ)(玉三郎)に毎年人身御供をさしだしていた。今年は美しい稲田姫(河合雪之丞)が選ばれた。夜も更けたころ、姿を現したのは、大蛇の化身である岩長姫(玉三郎)。彼女は醜く生まれたが、綺麗な女性を人身御供にしていく。(舞台上の玉三郎は美しい。最初の公演チラシ写真参考)女が女の姫を食べるという実に退廃的な作風であるが、これはまあ、神話やおとぎ話のようなものである。

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ヤマタノオロチに変身した岩長姫

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ヤマタノオロチの八つの頭を表現するために、玉三郎さんと分身の役者がそろっているところだが、これは写真なので、交代の役者が入っているため9名になっている。

 ヤマタノオロチの踊りは、オロチが8頭の身体を持っているので、それを表すために玉三郎さんと他の7人の役者が連なって踊るので、迫力があった。

 岩長姫はお供えの好物の酒を飲んで酩酊し、ついに稲田姫をも飲み込む。実は、この酒は、素戔嗚尊(スサノオノミコト)(中村橋之助)が用意した毒酒だった。
 スサノオノミコトは、大蛇に奪われた十握の宝剣と稲田姫を、取り戻すために策を練ったのだ。そしてスサノオと大蛇の一騎打ちが繰り広げられるのであった。

 オロチは、文楽では大蛇の人形だったが、歌舞伎では玉三郎丈と、中村福之助、歌之助、その他の役者で大蛇の分身を演じていた。揃いの衣装、顔の隈取も同じだった。なかなか面白い演出だなと思いました。けれど、顔が隈取で怖いオロチになっているので、玉三郎丈の美しい顔が拝めず、これも残念だった。踊りは申し分なしだったが。幕が引けてから、カーテンコールが二度あった。

 今、玉三郎さんは若手歌舞伎俳優に芸を伝えることに一生懸命取り組んでいる。今回も、芝翫の息子の橋之助、福之助、歌之助と共演した。これまでも、海老蔵、菊之助、壱太郎(かずたろう)などたくさんの若手を指導してきた。
 「芸は自分の肉体が滅んだ時にきえてしまう」ということを自覚して、歌舞伎界のために、年齢と闘いながら、生きている役者なのである。これからも、玉三郎丈を応援していくつもりです。

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        坂東玉三郎丈


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芝翫の三兄弟[(橋之助、福之助、歌之助)順不同]

 
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