坂東玉三郎特別舞踏公演感想文(2021.8.24) [演劇]

坂東玉三郎「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」の岩長姫(実はヤマタノオロチ)
先日、久しぶりに南座で玉三郎の舞踏公演を観ました。「鶴亀(つるかめ)」と「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」でした。

坂東玉三郎 女帝

女帝と鶴と亀
「鶴亀」は、能の「鶴亀」の詞章をそのまま長唄に移した舞踏です。歌舞伎の中では祝儀物の代表作です。私は長唄を習っておりますので、耳慣れた曲でしたが、舞台は初めて見ました。
女帝(玉三郎)にお目にかかれること喜び、万民が喜びの声をあげる中、金銀の砂が敷き詰められた宮中の庭に、鶴(中村歌之助)と亀(中村福之助)が現れる。そして女帝は、鶴と亀に吉例の舞を舞うように命ずる。
女帝も、唐の玄宗皇帝が夢にみた、月にある月宮殿で天人が舞うという舞を舞い始める。更に、国土安穏・五穀豊穣を願って、めでたく舞い納めた女帝は、廷臣や従者を伴って、長生殿へと戻るのであった。能楽も演奏され、格調高く典雅な舞踏です。
久しぶりに玉三郎丈の舞台を観ることができ、嬉しく思いました。相変わらずきれいです。ただ、この舞踏は女帝役の踊りはあまり動きがなく上品に、ゆっくりと動くだけだったので、玉三郎さんの踊りを観に来た者としては、ちょっと物足りなかったです。
次の「日本振袖始」は、近松門左衛門による神代物の作品。私は文楽で観ましたが、歌舞伎は初めてでした。
出雲の国では、簸(ひ)の川に住みついた八岐大蛇(ヤマタノオロチ)(玉三郎)に毎年人身御供をさしだしていた。今年は美しい稲田姫(河合雪之丞)が選ばれた。夜も更けたころ、姿を現したのは、大蛇の化身である岩長姫(玉三郎)。彼女は醜く生まれたが、綺麗な女性を人身御供にしていく。(舞台上の玉三郎は美しい。最初の公演チラシ写真参考)女が女の姫を食べるという実に退廃的な作風であるが、これはまあ、神話やおとぎ話のようなものである。

ヤマタノオロチに変身した岩長姫

ヤマタノオロチの八つの頭を表現するために、玉三郎さんと分身の役者がそろっているところだが、これは写真なので、交代の役者が入っているため9名になっている。
ヤマタノオロチの踊りは、オロチが8頭の身体を持っているので、それを表すために玉三郎さんと他の7人の役者が連なって踊るので、迫力があった。
岩長姫はお供えの好物の酒を飲んで酩酊し、ついに稲田姫をも飲み込む。実は、この酒は、素戔嗚尊(スサノオノミコト)(中村橋之助)が用意した毒酒だった。
スサノオノミコトは、大蛇に奪われた十握の宝剣と稲田姫を、取り戻すために策を練ったのだ。そしてスサノオと大蛇の一騎打ちが繰り広げられるのであった。
オロチは、文楽では大蛇の人形だったが、歌舞伎では玉三郎丈と、中村福之助、歌之助、その他の役者で大蛇の分身を演じていた。揃いの衣装、顔の隈取も同じだった。なかなか面白い演出だなと思いました。けれど、顔が隈取で怖いオロチになっているので、玉三郎丈の美しい顔が拝めず、これも残念だった。踊りは申し分なしだったが。幕が引けてから、カーテンコールが二度あった。
今、玉三郎さんは若手歌舞伎俳優に芸を伝えることに一生懸命取り組んでいる。今回も、芝翫の息子の橋之助、福之助、歌之助と共演した。これまでも、海老蔵、菊之助、壱太郎(かずたろう)などたくさんの若手を指導してきた。
「芸は自分の肉体が滅んだ時にきえてしまう」ということを自覚して、歌舞伎界のために、年齢と闘いながら、生きている役者なのである。これからも、玉三郎丈を応援していくつもりです。

坂東玉三郎丈

芝翫の三兄弟[(橋之助、福之助、歌之助)順不同]
キネマの神様 [日本&アジア映画]
この作品は、原田マハの同名小説を山田洋次監督が映画化。松竹映画の100周年を記念した作品です。私は原田マハさんのファンで、たくさん作品を読んでいます。原作も読みました。とにかく出演者が沢田研二をはじめ、すごく豪華なので役者さんそれぞれの演技も楽しめます。

「映画の神様」を信じ続ける男ゴウ(沢田研二/菅田将暉)の人生と、彼を取り巻く人々との愛や友情、家族の物語。
映画監督を目指し、助監督として撮影現場で働く若きゴウ(菅田将暉)は、仲間で同じ年ごろの映写技師テラシン(野田洋次郎)とともに夢を語らい、撮影所近くの食堂のかわいい淑子(永野芽都)と親しくなり、青春の日々を謳歌していた。

左端、菅田将暉、 リリー・フランキー

左端、野田洋次郎、 長野芽都、 北川景子、 菅田将暉
ゴウは今を時めく女優、桂園子(北川景子)に気に入られ、園子の高級車に乗り込み、仲間で楽しいドライブに出かけたりしていた。

菅田将暉、 野田洋次郎、 永野芽都、 北川景子

菅田将暉、 北川景子
しかしゴウは、初監督作「キネマの神様」の撮影初日に転落事故で大きなケガを負い、作品は幻となってしまう。大きな挫折を味わったゴウは夢を追うことを諦めてしまい、撮影所を辞めて田舎へと帰っていった。

沢田研二、 寺島しのぶ、 宮本のぶこ
それからゴウ(沢田研二)は淑子(宮本信子)と結婚するが、彼の人生は転落の一途をたどり、博打と酒浸りの日々が続く。一家は淑子の稼ぎだけで生活し、いつも娘の歩(寺島しのぶ)に文句を言われ、ケンカになるといった、典型的なダメ人間になり果てていたのだった。
そんな中でも、かつての同僚で今は町の小さな映画館を経営しているテラシン(小林稔侍)だけは、変わらずゴウの味方でいてくれるのだった。
ゴウが助監督を辞め、田舎に戻ってから約50年がたっていた。そんなある日、かつて自身が手がけた「キネマの神様」の脚本が出てきたことで、ゴウの中で止まっていた夢が再び動き始める。

宮本信子 沢田研二
ゴウは「キネマの神様」の脚本で、再び小規模なコンテストに応募する。そしてそれは最優秀賞を取り、100万円の賞金が手に入るが、ゴウは今まで本当にゴウのことを思ってくれたテラシンに、賞金を贈るのだった。
しかし、ゴウの愛するテラシンの映画館はまもなく閉館することとなった。その最後の日、ゴウは映画館に駆けつけるが……。
この作品全体を通して、暖かい雰囲気が漂っていた。それは、最初ゴウを演じるはずだった亡き志村けんさんへの、出演者全員の想いであり、山田監督の人柄なのかなと思った。
主演の沢田研二は、中年太りしていたが、それがスマートなジュリーよりもゴウというどうしようもない男のイメージに合っていたと思う。沢田研二は、中年になってからは非常に自然な生活をしてるのだと思う。無理をして体形を保つこともなく、知り合いが大阪梅田の小さい中華料理店で、ジュリーをみかけたが、普通の小太りの中年おじさんだったといっていたことがある。
けれども沢田研二の演技はとてもよかったと思う。奥さん役の宮本信子と娘役の寺島しのぶとのケンカのシーンは3人のうまさが上手にからみあっていた。
映画は、原田マハさんの原作とはかなり違っていて、ファンタスティックな終わり方になっている。
日本映画の小津安二郎へのオマージュ的なシーンもあった。山田洋次組の映画である。
もしよかったら、原田マハさんの原作も読んでいただきたい。こちらはかなり現代的な内容の作品で、原田さんの映画の趣味の良さもわかり、この作品とは違った面白さがあるので、お気に入りです。
題名:キネマの神様 原作:原田マハ「キネマの神様」 監督:山田洋次 出演:沢田研二、
菅田将暉、 永野芽都、 野田洋次郎、 北川景子、 寺島しのぶ、 宮本信子、
リリー・フランキー、 小林稔侍etc.
2021年 日本

「映画の神様」を信じ続ける男ゴウ(沢田研二/菅田将暉)の人生と、彼を取り巻く人々との愛や友情、家族の物語。
映画監督を目指し、助監督として撮影現場で働く若きゴウ(菅田将暉)は、仲間で同じ年ごろの映写技師テラシン(野田洋次郎)とともに夢を語らい、撮影所近くの食堂のかわいい淑子(永野芽都)と親しくなり、青春の日々を謳歌していた。

左端、菅田将暉、 リリー・フランキー

左端、野田洋次郎、 長野芽都、 北川景子、 菅田将暉
ゴウは今を時めく女優、桂園子(北川景子)に気に入られ、園子の高級車に乗り込み、仲間で楽しいドライブに出かけたりしていた。

菅田将暉、 野田洋次郎、 永野芽都、 北川景子

菅田将暉、 北川景子
しかしゴウは、初監督作「キネマの神様」の撮影初日に転落事故で大きなケガを負い、作品は幻となってしまう。大きな挫折を味わったゴウは夢を追うことを諦めてしまい、撮影所を辞めて田舎へと帰っていった。

沢田研二、 寺島しのぶ、 宮本のぶこ
それからゴウ(沢田研二)は淑子(宮本信子)と結婚するが、彼の人生は転落の一途をたどり、博打と酒浸りの日々が続く。一家は淑子の稼ぎだけで生活し、いつも娘の歩(寺島しのぶ)に文句を言われ、ケンカになるといった、典型的なダメ人間になり果てていたのだった。
そんな中でも、かつての同僚で今は町の小さな映画館を経営しているテラシン(小林稔侍)だけは、変わらずゴウの味方でいてくれるのだった。
ゴウが助監督を辞め、田舎に戻ってから約50年がたっていた。そんなある日、かつて自身が手がけた「キネマの神様」の脚本が出てきたことで、ゴウの中で止まっていた夢が再び動き始める。

宮本信子 沢田研二
ゴウは「キネマの神様」の脚本で、再び小規模なコンテストに応募する。そしてそれは最優秀賞を取り、100万円の賞金が手に入るが、ゴウは今まで本当にゴウのことを思ってくれたテラシンに、賞金を贈るのだった。
しかし、ゴウの愛するテラシンの映画館はまもなく閉館することとなった。その最後の日、ゴウは映画館に駆けつけるが……。
この作品全体を通して、暖かい雰囲気が漂っていた。それは、最初ゴウを演じるはずだった亡き志村けんさんへの、出演者全員の想いであり、山田監督の人柄なのかなと思った。
主演の沢田研二は、中年太りしていたが、それがスマートなジュリーよりもゴウというどうしようもない男のイメージに合っていたと思う。沢田研二は、中年になってからは非常に自然な生活をしてるのだと思う。無理をして体形を保つこともなく、知り合いが大阪梅田の小さい中華料理店で、ジュリーをみかけたが、普通の小太りの中年おじさんだったといっていたことがある。
けれども沢田研二の演技はとてもよかったと思う。奥さん役の宮本信子と娘役の寺島しのぶとのケンカのシーンは3人のうまさが上手にからみあっていた。
映画は、原田マハさんの原作とはかなり違っていて、ファンタスティックな終わり方になっている。
日本映画の小津安二郎へのオマージュ的なシーンもあった。山田洋次組の映画である。
もしよかったら、原田マハさんの原作も読んでいただきたい。こちらはかなり現代的な内容の作品で、原田さんの映画の趣味の良さもわかり、この作品とは違った面白さがあるので、お気に入りです。
題名:キネマの神様 原作:原田マハ「キネマの神様」 監督:山田洋次 出演:沢田研二、
菅田将暉、 永野芽都、 野田洋次郎、 北川景子、 寺島しのぶ、 宮本信子、
リリー・フランキー、 小林稔侍etc.
2021年 日本
ブータン 山の教室 [日本&アジア映画]
ブータンは、国王夫妻が来日されているご様子を、TVで観て知った国である。
王国の、ヒマラヤ山脈標高4800メートルにある実在の村ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画です。出演の村人と子どもたちは、ほとんどが地元の人たちです。こんなに爽やかな気持ちにさせてくれる映画があったでしょうか。ぜひ、多くの人に見ていただきたい作品です。

主演のかわいい女の子、ぺム・ザムちゃん(ルナナ村の住人でしろうと)とヒマラヤ山脈
ウゲン(シェラップ・ドルジ)は若い教師。彼はオーストラリアへ行くことが決まっていた。ミュージシャンになるのが夢だ。しかしある日、上司から呼び出され、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。ウゲンは全くやる気がなかったが、あと1年間は教職を続けなくてはいけないので、仕方なく村の青年のミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)に案内されて、登山のような険しい山道を登って、1週間以上かけて、ようやく村にたどり着いた。そこには勉強したいという子どもたちが、新しい先生の到着を心待ちにしていた。

最初ウゲンは、電気も紙もない土地での生活に戸惑い、現代的な暮らしから完全に切り離されたことを痛感する。持参したスマホも使えず、学校には黒板もなく、あるのは前任の教師がおいていったボロの教科書と、ちびた鉛筆だけだった。
やっと授業を始めることにしたウゲン。しかし子供たちはノートがないので、ウゲンは自分の小屋に寒さ除けとして貼ってあった紙をはずして、生徒たちにノートとして配る。子供たちは大喜びで、熱心に先生の言葉を、与えられた紙に書くのだった。

村長はそんなウゲンを歓迎し、先生として敬う。そしてお酒をすすめて、この村では最高の料理をふるまってくれる。ウゲンをこの村まで案内してくれた青年ミチュンは、村にあるものを駆使して黒板を手作りしてくれるのだった。

ミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)とウゲン(シェラップ・ドルジ)

最初はここでの生活は自分には無理だ、帰りたいと村長に訴えるようなウゲンだったが、明るく純粋な子供たちの笑顔にだんだんと彼も、子供たちに勉強を教えることの喜びを感じるようになる。

そしてこのルナナの人々になくてはならないのが、ヤクという動物だ。ヤクは長い体毛を持つウシ科の動物で、標高の高い寒冷地でしか生きられない。高地牧畜民(ハイランダー)にとって、ヤクはとても大切な動物で、家族であり財産でもある。人々は、ヤクの乳でチーズを作り、正月のようなハレの日には肉を食べ、その毛でテントを織り、その糞は乾燥させて、ストーブなどの着火剤として用いる。なにしろ、紙のない所なので。
そしてもう一人の重要な登場人物が、セデュ(ケルドン・ハモ・グルン)という女性。彼女が美しい声で歌う「ヤクにささげる歌」は、ルナナの谷と山々に、響き渡るのだった。

ウゲンもセデュのこの歌が気に入り、彼女と言葉を交わすようになる。セデュはウゲンに大事なヤクを1頭くれて、ウゲンはその面倒を見て、乾燥したヤクの糞で火をつけることができた。二人の心は次第に近づいていくが、くしくもウゲンの教師としての1年が終わろうとしていた。

ウゲンは、セデュに一緒にオーストラリアへ行かないかと誘うが、彼女は「私の生きていくところはここしかない」といって、ウゲンの申し出を断る。ウゲンは村長やミチュン、そして学校で教えた生徒たちに見送られ、村を去る。
数か月後、ウゲンはオーストラリアのパブで、ギター片手に騒がしい客たちの前で英語のポピュラーソングを歌っていた。各テーブルごとにお酒を飲みながら座って談笑している客たちは、まったくウゲンのほうを向いていなかった。がっかりして演奏の手を止めたその時、ウゲンの心に響いてきたのは、あの「ヤクにささげる歌」なのだった。


本当に物質的には何もない村。だがそこには、山の精霊を敬い、また子供たちに教育を授けてくれる教師を敬う村人たちがいた。そしてブータンの大自然と純粋な子供たちの笑顔があり、ヤクを慈しみその恩恵を理解し暮らす人々がいる。
今のコロナ禍で疲れ果てた私たちの心にしみいる映画だと思う。「ヤクにささげる歌」を歌うセデュを演じたケルドン・ハモ・グルンは、ブータンのカレッジの学生で音楽家。多くの歌をプロデュースしている人だそうだ。彼女の歌声を聴いたら、きっと心が澄み渡っていくような気持になるだろう。
今、私は色々なものに囲まれて暮らしていて、それなのにまだ新しいもの便利なものが欲しくなる。この映画のルナナ村には何もない。けれども人々は山の精霊を敬い、年上の人を尊敬する。そんな人間の、最も基本的な心の美しさと欲のなさに気持ちがホッとした。都会に暮らす人間にはないものを、ルナナ村の住民は持っていて、彼らの暮らしを豊かなものにしているのかもしれないと思った。
ブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ監督は、本作が初メガホンとなる。この作品は、世界中たくさんの映画祭で上映され、様々な賞を受賞している。
「ブータン山の教室」予告編
原題:Lunana: A Yak in the Classroom 監督:パオ・チョニン・ドルジ 出演:ぺム・ザムちゃん、 シェラップ・ドルジ、 ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、 ケルドン・ハモ・グルン、 ルナナ村の住人の方々
2019年製作 ブータン
王国の、ヒマラヤ山脈標高4800メートルにある実在の村ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画です。出演の村人と子どもたちは、ほとんどが地元の人たちです。こんなに爽やかな気持ちにさせてくれる映画があったでしょうか。ぜひ、多くの人に見ていただきたい作品です。

主演のかわいい女の子、ぺム・ザムちゃん(ルナナ村の住人でしろうと)とヒマラヤ山脈
ウゲン(シェラップ・ドルジ)は若い教師。彼はオーストラリアへ行くことが決まっていた。ミュージシャンになるのが夢だ。しかしある日、上司から呼び出され、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。ウゲンは全くやる気がなかったが、あと1年間は教職を続けなくてはいけないので、仕方なく村の青年のミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)に案内されて、登山のような険しい山道を登って、1週間以上かけて、ようやく村にたどり着いた。そこには勉強したいという子どもたちが、新しい先生の到着を心待ちにしていた。

最初ウゲンは、電気も紙もない土地での生活に戸惑い、現代的な暮らしから完全に切り離されたことを痛感する。持参したスマホも使えず、学校には黒板もなく、あるのは前任の教師がおいていったボロの教科書と、ちびた鉛筆だけだった。
やっと授業を始めることにしたウゲン。しかし子供たちはノートがないので、ウゲンは自分の小屋に寒さ除けとして貼ってあった紙をはずして、生徒たちにノートとして配る。子供たちは大喜びで、熱心に先生の言葉を、与えられた紙に書くのだった。

村長はそんなウゲンを歓迎し、先生として敬う。そしてお酒をすすめて、この村では最高の料理をふるまってくれる。ウゲンをこの村まで案内してくれた青年ミチュンは、村にあるものを駆使して黒板を手作りしてくれるのだった。

ミチュン(ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ)とウゲン(シェラップ・ドルジ)

最初はここでの生活は自分には無理だ、帰りたいと村長に訴えるようなウゲンだったが、明るく純粋な子供たちの笑顔にだんだんと彼も、子供たちに勉強を教えることの喜びを感じるようになる。

そしてこのルナナの人々になくてはならないのが、ヤクという動物だ。ヤクは長い体毛を持つウシ科の動物で、標高の高い寒冷地でしか生きられない。高地牧畜民(ハイランダー)にとって、ヤクはとても大切な動物で、家族であり財産でもある。人々は、ヤクの乳でチーズを作り、正月のようなハレの日には肉を食べ、その毛でテントを織り、その糞は乾燥させて、ストーブなどの着火剤として用いる。なにしろ、紙のない所なので。
そしてもう一人の重要な登場人物が、セデュ(ケルドン・ハモ・グルン)という女性。彼女が美しい声で歌う「ヤクにささげる歌」は、ルナナの谷と山々に、響き渡るのだった。

ウゲンもセデュのこの歌が気に入り、彼女と言葉を交わすようになる。セデュはウゲンに大事なヤクを1頭くれて、ウゲンはその面倒を見て、乾燥したヤクの糞で火をつけることができた。二人の心は次第に近づいていくが、くしくもウゲンの教師としての1年が終わろうとしていた。

ウゲンは、セデュに一緒にオーストラリアへ行かないかと誘うが、彼女は「私の生きていくところはここしかない」といって、ウゲンの申し出を断る。ウゲンは村長やミチュン、そして学校で教えた生徒たちに見送られ、村を去る。
数か月後、ウゲンはオーストラリアのパブで、ギター片手に騒がしい客たちの前で英語のポピュラーソングを歌っていた。各テーブルごとにお酒を飲みながら座って談笑している客たちは、まったくウゲンのほうを向いていなかった。がっかりして演奏の手を止めたその時、ウゲンの心に響いてきたのは、あの「ヤクにささげる歌」なのだった。


本当に物質的には何もない村。だがそこには、山の精霊を敬い、また子供たちに教育を授けてくれる教師を敬う村人たちがいた。そしてブータンの大自然と純粋な子供たちの笑顔があり、ヤクを慈しみその恩恵を理解し暮らす人々がいる。
今のコロナ禍で疲れ果てた私たちの心にしみいる映画だと思う。「ヤクにささげる歌」を歌うセデュを演じたケルドン・ハモ・グルンは、ブータンのカレッジの学生で音楽家。多くの歌をプロデュースしている人だそうだ。彼女の歌声を聴いたら、きっと心が澄み渡っていくような気持になるだろう。
今、私は色々なものに囲まれて暮らしていて、それなのにまだ新しいもの便利なものが欲しくなる。この映画のルナナ村には何もない。けれども人々は山の精霊を敬い、年上の人を尊敬する。そんな人間の、最も基本的な心の美しさと欲のなさに気持ちがホッとした。都会に暮らす人間にはないものを、ルナナ村の住民は持っていて、彼らの暮らしを豊かなものにしているのかもしれないと思った。
ブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ監督は、本作が初メガホンとなる。この作品は、世界中たくさんの映画祭で上映され、様々な賞を受賞している。
「ブータン山の教室」予告編
原題:Lunana: A Yak in the Classroom 監督:パオ・チョニン・ドルジ 出演:ぺム・ザムちゃん、 シェラップ・ドルジ、 ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、 ケルドン・ハモ・グルン、 ルナナ村の住人の方々
2019年製作 ブータン
るろうに剣心 2012年版(地上波) [日本&アジア映画]
佐藤建の「るろうに剣心 2012年版」を地上波でみました。原作は「少年ジャンプ」に掲載された漫画「るろうに剣心 明治健脚浪譚」で、それを実写映画化したものです。劇場版の1作目です。

緋村剣心(佐藤建)は、伝説の「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」と呼ばれていた男だが、明治維新以後「不殺(ころさず))の誓い」をたて、決して人を斬ることのできない「逆刃刀(さかばとう)」を携えて、町から町へ流浪の旅に出る。そして様々な出会いを重ねる中で陰謀に巻き込まれ、大切な人を守るために新たな戦いへと臨む姿を描くアクション・エンタメです。

左、ピンクの着物姿が薫(武井咲)、右が恵(蒼井優)(アニメの恵に似せたメイクです)。
明治になって10年、流浪の旅を続ける伝説の男、緋村剣心(佐藤建)は東京で、“人斬り抜刀斎”を名乗る浪人(吉川晃司)が現われ、無差別な人斬りを繰り返していることを知る。
亡き父の道場を引き継ぐ女剣士・神谷薫(武井咲)は、ある場所で抜刀斎を名乗る浪人の、人切りの現場に居合わせる。そして薫は市井の人を助けるために、1人でその浪人(吉川晃司)に立ち向かい、あわやというところを、通りかかった剣心に助けられる。

薫の道場に居候することになった剣心。そこに武田観柳(香川照之)の愛人、恵(蒼井優)が男の屋敷からのがれて、道場へ駆け込んでくる。武田は傲慢、狡猾な男で今は中国からアヘンを輸入しそれで莫大な財産を築いているのだった。恵は武田に耐えられなくなって、道場へと駆け込んできた。
剣心は道場主の薫と、恵を守る立場となった。しかし武田(香川照之)は、恵が逃げ出したことに腹を立て、つれもどそうと部下を薫の道場を荒らすため差し向けるのだった。
道場を荒らされた恵の無念を晴らすため、剣心は武田の屋敷に乗り込む。そこには凶暴な部下がせいぞろいし、しかも武田は鉄砲や、機関銃のようなものまで駆使して、剣心を殺そうとする。
剣心はひらりひらりと身をかわし、ついに武田をやっつけるのだが、初めに出会ったニセ抜刀斉の
鵜盗刃衛(吉川晃司)が出現する。彼は、武田の用心棒だったのだ。こうして、因縁の一騎打ちが幕をあけるのだが……。

剣心の佐藤健は、本当にカッコよく、身軽で強い。申し分ない主役だと思った。佐藤健は、監督の大友啓史に、大河ドラマの「龍馬伝」で岡田伊蔵役でキャスティングされて、すごく演技がよかったとのこと。私自身は大河ドラマをあまり観ないので、知りませんでした。大河で、佐藤健と大友監督は出会った。
「るろうに剣心」はベテランから若い世代まで、たくさんの俳優さんがでていて、いいキャスティングだなと思う。
とにかく、悪徳商人武田を演じた香川照之が最高におもしろかった。この人は芝居の虫であり、天才だと思う。そして特筆すべきは、ニセ抜刀斉の鵜盗刃衛を演じた吉川晃司である。非常に迫力があり、すごみがあり、上手い。剣心と鵜盗の一騎打ちのときも、どちらが勝つのかとハラハラさせられた。
吉川晃司は、ドラマなどにはよく出ているみたいだが、こんなに迫力がある人物を演じるのは観たことがなかった。佐藤健は柔らかさがあるのだが、吉川晃司はその反対で剛の印象。
ほかに、奥田英二、江口洋介、綾野剛などおなじみの芸達者がでているので面白い作品になっている。
佐藤健と大友啓史監督は、ジョニー・デップとティム・バートンのタッグのように、これからどんな面白い作品を創っていってくれるかと思うと心がおどります。
「るろう」の他の作品も観て、それから劇場版「るろうに剣心」を観たいのですが、また宣言が延長されてどうなることやら。
たくさんの名作がコロナのために埋もれてしまわないように、心から願っています。
原題:「るろうに剣心」 監督:大友啓史 出演:佐藤健、 武井咲、 吉川晃司、 蒼井優、
江口洋介、 綾野剛、 奥田英二etc.
2012年 日本

緋村剣心(佐藤建)は、伝説の「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」と呼ばれていた男だが、明治維新以後「不殺(ころさず))の誓い」をたて、決して人を斬ることのできない「逆刃刀(さかばとう)」を携えて、町から町へ流浪の旅に出る。そして様々な出会いを重ねる中で陰謀に巻き込まれ、大切な人を守るために新たな戦いへと臨む姿を描くアクション・エンタメです。

左、ピンクの着物姿が薫(武井咲)、右が恵(蒼井優)(アニメの恵に似せたメイクです)。
明治になって10年、流浪の旅を続ける伝説の男、緋村剣心(佐藤建)は東京で、“人斬り抜刀斎”を名乗る浪人(吉川晃司)が現われ、無差別な人斬りを繰り返していることを知る。
亡き父の道場を引き継ぐ女剣士・神谷薫(武井咲)は、ある場所で抜刀斎を名乗る浪人の、人切りの現場に居合わせる。そして薫は市井の人を助けるために、1人でその浪人(吉川晃司)に立ち向かい、あわやというところを、通りかかった剣心に助けられる。

薫の道場に居候することになった剣心。そこに武田観柳(香川照之)の愛人、恵(蒼井優)が男の屋敷からのがれて、道場へ駆け込んでくる。武田は傲慢、狡猾な男で今は中国からアヘンを輸入しそれで莫大な財産を築いているのだった。恵は武田に耐えられなくなって、道場へと駆け込んできた。
剣心は道場主の薫と、恵を守る立場となった。しかし武田(香川照之)は、恵が逃げ出したことに腹を立て、つれもどそうと部下を薫の道場を荒らすため差し向けるのだった。
道場を荒らされた恵の無念を晴らすため、剣心は武田の屋敷に乗り込む。そこには凶暴な部下がせいぞろいし、しかも武田は鉄砲や、機関銃のようなものまで駆使して、剣心を殺そうとする。
剣心はひらりひらりと身をかわし、ついに武田をやっつけるのだが、初めに出会ったニセ抜刀斉の
鵜盗刃衛(吉川晃司)が出現する。彼は、武田の用心棒だったのだ。こうして、因縁の一騎打ちが幕をあけるのだが……。

剣心の佐藤健は、本当にカッコよく、身軽で強い。申し分ない主役だと思った。佐藤健は、監督の大友啓史に、大河ドラマの「龍馬伝」で岡田伊蔵役でキャスティングされて、すごく演技がよかったとのこと。私自身は大河ドラマをあまり観ないので、知りませんでした。大河で、佐藤健と大友監督は出会った。
「るろうに剣心」はベテランから若い世代まで、たくさんの俳優さんがでていて、いいキャスティングだなと思う。
とにかく、悪徳商人武田を演じた香川照之が最高におもしろかった。この人は芝居の虫であり、天才だと思う。そして特筆すべきは、ニセ抜刀斉の鵜盗刃衛を演じた吉川晃司である。非常に迫力があり、すごみがあり、上手い。剣心と鵜盗の一騎打ちのときも、どちらが勝つのかとハラハラさせられた。
吉川晃司は、ドラマなどにはよく出ているみたいだが、こんなに迫力がある人物を演じるのは観たことがなかった。佐藤健は柔らかさがあるのだが、吉川晃司はその反対で剛の印象。
ほかに、奥田英二、江口洋介、綾野剛などおなじみの芸達者がでているので面白い作品になっている。
佐藤健と大友啓史監督は、ジョニー・デップとティム・バートンのタッグのように、これからどんな面白い作品を創っていってくれるかと思うと心がおどります。
「るろう」の他の作品も観て、それから劇場版「るろうに剣心」を観たいのですが、また宣言が延長されてどうなることやら。
たくさんの名作がコロナのために埋もれてしまわないように、心から願っています。
原題:「るろうに剣心」 監督:大友啓史 出演:佐藤健、 武井咲、 吉川晃司、 蒼井優、
江口洋介、 綾野剛、 奥田英二etc.
2012年 日本
追想(Anastasia) (クラシックムービー) [外国映画]
BSPで「追想」(アナスタシア)という映画を観ました。クラシック作品で、イングリッド・バーグマンとユル・ブリンナーの共演です。ロシア革命のとき、パリに亡命したといわれているロシア大皇女アナスタシアの話です。自分が本物のアナスタシアだと言い張る謎の女(イングリット・バーグマン)と、その女を利用しようとする男(ユル・ブリンナー)の物語です。
イングリット・バークマンの美しさもさることながら、ユル・ブリンナーもなかなかいい俳優だったのだなと思いました。
ストーリーも面白く、衣装、インテリア、ロケ地もすばらしかったです。たまにはクラシック作品をみるのもいいなと思いました。

イングリット・バークマンvsユル・ブリンナー
1928年、パリ在住のボーニン(ユル・ブリンナー)を首謀者とする4人の白系ロシア人は、ロシア革命のとき、独り亡命したという噂の大公女アナスタシアが生存していると宣伝、彼女を敵から救出する名目で旧貴族から資金を集め出した。

アンナとボーニン
そして彼らは、セーヌ河に身を投げようとしたアンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)をアナスタシアに仕立て、ロシア皇帝ニコラス2世が生前、大公女のために英国銀行に預金した3600万ドルの金を引き出そうと企む。
アンナは謎の女で、以前入院していたとき、自分はアナスタシアだと打ち明けたことがあった。しかし自分の過去を殆ど記憶していないのだった。ボーニンらの巧みな演出で、アンナはアナスタシアとして在パリの旧ロシア宮廷の要人たちに引き合わされるが、要人の1人は彼女を本物とは認めなかった。

ポール公とアンナ
ボーニンは、アンナをポール公(大皇妃の甥)と対面させようとする。が、これには失敗した。そこで、ボーニンは、大皇妃(ヘレン・ヘイズ)の侍女を買収し、劇場でポール公とアンナを会わせ、これは成功した。ポール公はアンナをアナスタシアかどうかは疑ったが、彼女の美しさに惹かれた。
次の晩もポール公に再び会ったアンナは、自分を(偽?の)アナスタシアでなく唯の女として扱って欲しいと打ち明けた。一方、ボーニンも、ポール公に自分の欲しいのはアナスタシアの金だけだと明けすけに話した。

劇場でのボーニンとアンナ
経済力がなく、大皇妃に頼って生活しているポール公は、この話に乗り、大皇妃とアンナの対面に手を貸す。

大皇妃(ヘレン・ヘイズ)と面会するアンナ(イングリット・バークマン)
大皇妃と会ったアンナは少女時代のことを聞かれ、ドギマギして帰ろうとするが……。

大皇妃とボーニン
さて、アンナは本当のアナスタシア大皇女だったのだろうか。そして彼女はポールと結婚するのか、それとも……。
現代の映画に比べ、のんびりしたところはあるが謎があり、アンナの運命がどうなるのか最後まで惹きつけられるストーリーだ。それに豪華な衣装やインテリアが目を引く。
こうしてクラシックムービーを観ると、昔から主役も脇役にもいい俳優が居たのだということがよくわかる。主役のイングリット・バークマンとユル・ブリンナーはスターだが、大皇妃を演じたヘレン・ヘイズもとてもよかった。大皇妃という人物の、凛とした姿と立ち居振る舞い、そして人間としての大きさを余すところなく演じていたと思う。
こういうすばらしい俳優たちに支えられて、映画界は今日まで脈々といい作品を創り続けてきたのですね。今は映画界も大変で、コロナのため休業せざるを得ないかもしれないけれど、これからもスクリーンで映画を公開し続けてほしいものです。また映画館に行けるようになったら、最新の映画を観に行こうと思います。
原題:ANASTASIA 監督:アナトール・リトバク 出演:イングリット・バークマン、
ユル・ブリンナー、 ヘレン・ヘイズetc.
1956年 アメリカ


イングリット・バークマン:左、14歳のとき、 右、29歳のとき
イングリット・バークマンの美しさもさることながら、ユル・ブリンナーもなかなかいい俳優だったのだなと思いました。
ストーリーも面白く、衣装、インテリア、ロケ地もすばらしかったです。たまにはクラシック作品をみるのもいいなと思いました。

イングリット・バークマンvsユル・ブリンナー
1928年、パリ在住のボーニン(ユル・ブリンナー)を首謀者とする4人の白系ロシア人は、ロシア革命のとき、独り亡命したという噂の大公女アナスタシアが生存していると宣伝、彼女を敵から救出する名目で旧貴族から資金を集め出した。

アンナとボーニン
そして彼らは、セーヌ河に身を投げようとしたアンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)をアナスタシアに仕立て、ロシア皇帝ニコラス2世が生前、大公女のために英国銀行に預金した3600万ドルの金を引き出そうと企む。
アンナは謎の女で、以前入院していたとき、自分はアナスタシアだと打ち明けたことがあった。しかし自分の過去を殆ど記憶していないのだった。ボーニンらの巧みな演出で、アンナはアナスタシアとして在パリの旧ロシア宮廷の要人たちに引き合わされるが、要人の1人は彼女を本物とは認めなかった。

ポール公とアンナ
ボーニンは、アンナをポール公(大皇妃の甥)と対面させようとする。が、これには失敗した。そこで、ボーニンは、大皇妃(ヘレン・ヘイズ)の侍女を買収し、劇場でポール公とアンナを会わせ、これは成功した。ポール公はアンナをアナスタシアかどうかは疑ったが、彼女の美しさに惹かれた。
次の晩もポール公に再び会ったアンナは、自分を(偽?の)アナスタシアでなく唯の女として扱って欲しいと打ち明けた。一方、ボーニンも、ポール公に自分の欲しいのはアナスタシアの金だけだと明けすけに話した。

劇場でのボーニンとアンナ
経済力がなく、大皇妃に頼って生活しているポール公は、この話に乗り、大皇妃とアンナの対面に手を貸す。

大皇妃(ヘレン・ヘイズ)と面会するアンナ(イングリット・バークマン)
大皇妃と会ったアンナは少女時代のことを聞かれ、ドギマギして帰ろうとするが……。

大皇妃とボーニン
さて、アンナは本当のアナスタシア大皇女だったのだろうか。そして彼女はポールと結婚するのか、それとも……。
現代の映画に比べ、のんびりしたところはあるが謎があり、アンナの運命がどうなるのか最後まで惹きつけられるストーリーだ。それに豪華な衣装やインテリアが目を引く。
こうしてクラシックムービーを観ると、昔から主役も脇役にもいい俳優が居たのだということがよくわかる。主役のイングリット・バークマンとユル・ブリンナーはスターだが、大皇妃を演じたヘレン・ヘイズもとてもよかった。大皇妃という人物の、凛とした姿と立ち居振る舞い、そして人間としての大きさを余すところなく演じていたと思う。
こういうすばらしい俳優たちに支えられて、映画界は今日まで脈々といい作品を創り続けてきたのですね。今は映画界も大変で、コロナのため休業せざるを得ないかもしれないけれど、これからもスクリーンで映画を公開し続けてほしいものです。また映画館に行けるようになったら、最新の映画を観に行こうと思います。
原題:ANASTASIA 監督:アナトール・リトバク 出演:イングリット・バークマン、
ユル・ブリンナー、 ヘレン・ヘイズetc.
1956年 アメリカ


イングリット・バークマン:左、14歳のとき、 右、29歳のとき
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 国立国際美術館(大阪中之島) [アート・カルチャー]
イギリス・ロンドンの中心部にあるロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する名品を集めた「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に、最終日の1日前、’21.1/30に行ってきました。どうしようかと迷いましたが、展示作品61点すべてが日本初公開なので、ぜひ観なくてはという思いで行きました。

イギリスロンドンのナショナルギャラリー
ナショナル・ギャラリーがこれまで世界のどの場所でも開催したことがない、大規模な所蔵作品展です。ルネサンスから19世紀ポスト印象派までの名品を一挙に公開です。画像はすべて、ロンドンナショナルギャラリー展画像サイトや、美術のサイトなどからお借りしました。また絵画の解説は、展覧会の説明板の解説、ロンドンナショナルギャラリー展のサイト、美術のサイトなどからお借りしたものです。何点かは自分の感想を書いているのもあります。
それでは作品をお楽しみくださいませ。
Ⅰ イタリア・ルネサンス絵画の収集

カルロ・クリヴェッリ 「聖エミディウスを伴う受胎告知」
このコーナーでもひときわ目を引く、精緻で美しい絵です。絵全体をくまなく観るのに、時間がかかりました。

ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴァルト 「マグダラのマリア」
マグダラのマリアとは、もと娼婦だったが、イエスと出会い改悛してその後イエスに従い、そののち聖女となった人物だそうです。
Ⅱ オランダ絵画の黄金時代

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「34歳の自画像」
若く自信にあふれたレンブラントのように感じます。
ヨハネス・フェルメール「ヴァ―ジナルの前に座る若い女性」
ヴァ―ジナルは楽器の名前でチェンバロと同じようなものです。女性の着ているドレスのブルーは、フェルメールブルーと呼ばれるもので、とても高価な岩石から作られていました。フェルメールは、裕福だったため、このブルーをよく使っていたのだそうです。私も大好きな色です。
Ⅲ ヴァン・ダイクとイギリス肖像画

アンソニー・ヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」
この作品でキューピッドがバラを渡している女性は、ヴィーナスに見立てられています。実在する登場人物が理想化された形で描かれているとのことです。ドレスが艶々して、絹の肌触りを思い起こさせますね。

トマス・ゲインズバラ「シドンズ夫人」
この女性は当時人気のシェイクスピア女優、サラ・シドンズ(1755-1831)で、流行のファッションを身に着けています。とても美しい人だと思います。

ジョシュア・レイノルズ 「レディ・コーバーンと3人に息子」
レノルズは18世紀イギリスを代表する肖像画家です。3人の幼子を持つ慈愛に満ちた母親が美しく、子供も天使のようですね。
Ⅳ グランド・ツアー

カナレット「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」
これは、大運河で行われるレガッタの一環として開催されたゴンドラの競漕が描かれています。こうした催し物はカーニヴァルの祭典の一部として行われていたのですが、時には町を訪れる高名な賓客の歓迎イヴェントとして開かれることもあったとのことです。

カナレット 「イートン・カレッジ」(1754年頃の作品)
イートン・カレッジはイギリスの有名な私立の学校で、多くの有名人を輩出しています。
V スペイン絵画の発見

フランシス・デ・ゴヤ「ウェリントン公爵」
スペインを救ったイギリス将校の英雄。ゴヤが描いた姿は、戦いが終わってやや疲れている自然な表情ですが、それをご本人は気に入らず、描き直しのあとがかなりあると展覧会の説明板に書かれていました。

エル・グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」
エル・グレコは、大好きな画家のひとりです。この絵は、イエス・キリストが祈る者のためにある神殿で、生贄用の動物の売買や両替をしていた商人たちを追い出している絵だそうです。イエスの厳しい表情が好きです。

ディエゴ・ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」
ベラスケスが19歳の時に描いた絵だそうです。「宗教的主題に描かれた、泥臭くリアルな庶民の生活」なのだそうです。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」と「窓際に身を乗り出した農民の少年」
ムリーリョも大好きな画家です。ムリーリョは聖人を描くとともに、庶民の子供の絵もたくさん残したとのことです。
Ⅵ 風景画とピクチャレスク

ジョン・コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」
コンスタブルは風景画家で、この記念碑は同郷の偉大なる先輩画家を弔うものだそう。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」
ギリシャ神話に基づいたエピソードが描かれているらしいです。太陽の光の描写がすばらしい。
Ⅶ イギリスにおけるフランス近代美術受容

ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「アンジェリカを救うルッジェーロ」
本作で描かれている場面は、16世紀の叙事詩「狂えるオルランド」内の物語が元となっていて、伝説上の生き物に乗っている騎士がルッジェーロです。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「西方より望むアヴィニヨン」
コローがフランス南部アヴィニョンを訪れた時、描いた風景画。コローの風景画を観ていると気持ちが落ち着きます。

カミーユ・ピサロ 「シデナムの並木道」
ピサロが、戦禍を逃れ訪れたロンドンで描いた、郊外の街並みだそうです。ピサロの風景画も本当にすばらしいです。

ピエール・オーギュスト・ルノワール「劇場にて(初めてのおでかけ」
若い女性が初めて劇場デビューですね。初々しさが絵の色彩からも感じられます。手に持ったスミレは、この女性を表しているような、世間ずれしていない美しさを感じました。大好きな画家です。

エドガー・ドガ「バレエの踊り子」
ドガのお気に入りの主題「オペラ座の踊り子」の肉体表現や構図に優れた作品とのこと。

クロード・モネ「睡蓮の池」
モネは日本への興味が深い画家でした。自邸の睡蓮の池に、太鼓橋がかかっているモネお気に入りの構図だそうです。

フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」
ゴッホの情熱がそそぎこまれた「ひまわり」。たくさん「ひまわり」の絵がありますが、このひまわりは、ゴーガンとの友情の証として描かれました。

ポール・ゴーガン「花瓶の花」
これはタヒチの花なのでしょうか。この絵にとても惹かれました。色は鮮やかですが、暗さがあります。タヒチでの生活の「哀愁」が感じられます。

ポール・セザンヌ「プロヴァンスの」丘
セザンヌが愛した南仏プロヴァンスの田園風景です。
「この展覧会の展示は61点と、少ないと思われるかもしれないが、すべてが主役級。見終わった後は満足感でいっぱいになるはず」と国立国際美術館の方がおっしゃっていたそうです。
見終わって、本当に満足しました。コロナが気になりましたが、やはり行ってよかったと思いました。
皆さんはどう感じられましたか。お好きな絵はありましたでしょうか。
私が特に好きな絵は、フェルメール「ヴァ―ジナルの前に座る若い女性」、ゴヤ「ウェリントン公爵」、ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」と「窓際に身を乗り出した農民の少年」、エル・グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」、ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」、
ルノワール「劇場にて(初めてのおでかけ」、モネ「睡蓮の池」、ゴッホ「ひまわり」、ゴーガン「花瓶の花」です。
美術の記事は、とても時間がかかります。自分に美術的な知識が乏しいので、色々調べたり、写真をアップしたりするからです。半年に1回ぐらい書けたらいいですね。
今はコロナ禍で、美術館に行くのも勇気がいるのですが、またいい展覧会があったら、足を運びたいと思っています。

イギリスロンドンのナショナルギャラリー
ナショナル・ギャラリーがこれまで世界のどの場所でも開催したことがない、大規模な所蔵作品展です。ルネサンスから19世紀ポスト印象派までの名品を一挙に公開です。画像はすべて、ロンドンナショナルギャラリー展画像サイトや、美術のサイトなどからお借りしました。また絵画の解説は、展覧会の説明板の解説、ロンドンナショナルギャラリー展のサイト、美術のサイトなどからお借りしたものです。何点かは自分の感想を書いているのもあります。
それでは作品をお楽しみくださいませ。
Ⅰ イタリア・ルネサンス絵画の収集

カルロ・クリヴェッリ 「聖エミディウスを伴う受胎告知」
このコーナーでもひときわ目を引く、精緻で美しい絵です。絵全体をくまなく観るのに、時間がかかりました。

ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴァルト 「マグダラのマリア」
マグダラのマリアとは、もと娼婦だったが、イエスと出会い改悛してその後イエスに従い、そののち聖女となった人物だそうです。
Ⅱ オランダ絵画の黄金時代

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「34歳の自画像」
若く自信にあふれたレンブラントのように感じます。

ヨハネス・フェルメール「ヴァ―ジナルの前に座る若い女性」
ヴァ―ジナルは楽器の名前でチェンバロと同じようなものです。女性の着ているドレスのブルーは、フェルメールブルーと呼ばれるもので、とても高価な岩石から作られていました。フェルメールは、裕福だったため、このブルーをよく使っていたのだそうです。私も大好きな色です。
Ⅲ ヴァン・ダイクとイギリス肖像画

アンソニー・ヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」
この作品でキューピッドがバラを渡している女性は、ヴィーナスに見立てられています。実在する登場人物が理想化された形で描かれているとのことです。ドレスが艶々して、絹の肌触りを思い起こさせますね。

トマス・ゲインズバラ「シドンズ夫人」
この女性は当時人気のシェイクスピア女優、サラ・シドンズ(1755-1831)で、流行のファッションを身に着けています。とても美しい人だと思います。

ジョシュア・レイノルズ 「レディ・コーバーンと3人に息子」
レノルズは18世紀イギリスを代表する肖像画家です。3人の幼子を持つ慈愛に満ちた母親が美しく、子供も天使のようですね。
Ⅳ グランド・ツアー

カナレット「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」
これは、大運河で行われるレガッタの一環として開催されたゴンドラの競漕が描かれています。こうした催し物はカーニヴァルの祭典の一部として行われていたのですが、時には町を訪れる高名な賓客の歓迎イヴェントとして開かれることもあったとのことです。

カナレット 「イートン・カレッジ」(1754年頃の作品)
イートン・カレッジはイギリスの有名な私立の学校で、多くの有名人を輩出しています。
V スペイン絵画の発見

フランシス・デ・ゴヤ「ウェリントン公爵」
スペインを救ったイギリス将校の英雄。ゴヤが描いた姿は、戦いが終わってやや疲れている自然な表情ですが、それをご本人は気に入らず、描き直しのあとがかなりあると展覧会の説明板に書かれていました。

エル・グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」
エル・グレコは、大好きな画家のひとりです。この絵は、イエス・キリストが祈る者のためにある神殿で、生贄用の動物の売買や両替をしていた商人たちを追い出している絵だそうです。イエスの厳しい表情が好きです。

ディエゴ・ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」
ベラスケスが19歳の時に描いた絵だそうです。「宗教的主題に描かれた、泥臭くリアルな庶民の生活」なのだそうです。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」と「窓際に身を乗り出した農民の少年」
ムリーリョも大好きな画家です。ムリーリョは聖人を描くとともに、庶民の子供の絵もたくさん残したとのことです。
Ⅵ 風景画とピクチャレスク

ジョン・コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」
コンスタブルは風景画家で、この記念碑は同郷の偉大なる先輩画家を弔うものだそう。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」
ギリシャ神話に基づいたエピソードが描かれているらしいです。太陽の光の描写がすばらしい。
Ⅶ イギリスにおけるフランス近代美術受容

ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「アンジェリカを救うルッジェーロ」
本作で描かれている場面は、16世紀の叙事詩「狂えるオルランド」内の物語が元となっていて、伝説上の生き物に乗っている騎士がルッジェーロです。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「西方より望むアヴィニヨン」
コローがフランス南部アヴィニョンを訪れた時、描いた風景画。コローの風景画を観ていると気持ちが落ち着きます。

カミーユ・ピサロ 「シデナムの並木道」
ピサロが、戦禍を逃れ訪れたロンドンで描いた、郊外の街並みだそうです。ピサロの風景画も本当にすばらしいです。

ピエール・オーギュスト・ルノワール「劇場にて(初めてのおでかけ」
若い女性が初めて劇場デビューですね。初々しさが絵の色彩からも感じられます。手に持ったスミレは、この女性を表しているような、世間ずれしていない美しさを感じました。大好きな画家です。

エドガー・ドガ「バレエの踊り子」
ドガのお気に入りの主題「オペラ座の踊り子」の肉体表現や構図に優れた作品とのこと。

クロード・モネ「睡蓮の池」
モネは日本への興味が深い画家でした。自邸の睡蓮の池に、太鼓橋がかかっているモネお気に入りの構図だそうです。

フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」
ゴッホの情熱がそそぎこまれた「ひまわり」。たくさん「ひまわり」の絵がありますが、このひまわりは、ゴーガンとの友情の証として描かれました。

ポール・ゴーガン「花瓶の花」
これはタヒチの花なのでしょうか。この絵にとても惹かれました。色は鮮やかですが、暗さがあります。タヒチでの生活の「哀愁」が感じられます。

ポール・セザンヌ「プロヴァンスの」丘
セザンヌが愛した南仏プロヴァンスの田園風景です。
「この展覧会の展示は61点と、少ないと思われるかもしれないが、すべてが主役級。見終わった後は満足感でいっぱいになるはず」と国立国際美術館の方がおっしゃっていたそうです。
見終わって、本当に満足しました。コロナが気になりましたが、やはり行ってよかったと思いました。
皆さんはどう感じられましたか。お好きな絵はありましたでしょうか。
私が特に好きな絵は、フェルメール「ヴァ―ジナルの前に座る若い女性」、ゴヤ「ウェリントン公爵」、ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネ」と「窓際に身を乗り出した農民の少年」、エル・グレコ「神殿から商人を追い払うキリスト」、ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」、
ルノワール「劇場にて(初めてのおでかけ」、モネ「睡蓮の池」、ゴッホ「ひまわり」、ゴーガン「花瓶の花」です。
美術の記事は、とても時間がかかります。自分に美術的な知識が乏しいので、色々調べたり、写真をアップしたりするからです。半年に1回ぐらい書けたらいいですね。
今はコロナ禍で、美術館に行くのも勇気がいるのですが、またいい展覧会があったら、足を運びたいと思っています。
あのこは貴族 (劇場版新作) [日本&アジア映画]
結婚というものに対する27歳の箱入り娘、華子(門脇麦)の焦りが、うまく描かれていました。どんなに家柄や職業がよくても、人間的にいい相手とは限らないのです。岨手由貴子(そでゆきこ)監督は、これまでにかなりの受賞歴がある実力派で、面白い作品を創ったと思います。

左: 美紀こと水原希子 & 右: 華子こと門脇麦
山内マリコの同名小説を原作に、同じ東京という都会に暮らしながら、全く異なる生き方をする2人の女性の物語。
華子は結婚こそ人生の目的であり、幸福をもたらすものだと信じて疑わない。だが、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。けれども、華子は周りの勧めにより、お見合いを繰り返すのだった。

(映画の中で華子がお見合いの時着ていた、古典柄の着物。私の好みです。)
華子には、自分というものがない。いつも親や兄弟がすすめる服を着て、真珠のネックレスも親からの贈り物だ。家族も、お見合い疲れしてきた華子の気持ちをかんがみ、家の整形外科を継ぐ医者ではなく、違う職業でもよいとのことで相手を探してくれる。そして次のお見合いで、華子が出会った人は、青木幸一郎(高良健吾)というハンサムで話も上手い弁護士だった。幸一郎の家は、松濤の広大な庭付のお屋敷で、代々政治家を輩出している家だった。華子は初めて気に入った人に出会い、二人はめでたくゴールイン。

華子(門脇麦) と 幸一郎(高良健吾)
ほんとは、ゴールインの前に、幸一郎にある女性の存在があるのがわかる。華子の友人のヴァイオリニスト逸子(石橋静河)が、彼女が演奏を披露したパーティのコンサートで知り合った時岡美紀(水原希子)だった。美紀は、幸一郎と慶應義塾大学の同期だったが、彼女は地方出身者でアルバイトを掛け持ちでしても学費が続かず、2年足らずで大学を中退していた。

時岡美紀こと水原希子
美紀はアルバイトでバーやラウンジで働いていた時、お客として訪れた幸一郎とつきあうようになった。しかし美紀は、25歳のとき水商売から足を洗うことにする。「この世界では容色の衰えとともに、失うものが大きすぎる」からだ。そこで、ラウンジの客として来ていたITベンチャーCEOに頼んでその会社の社員として採用され、昼間の世界に舞い戻ることができたのだ。

幸一郎と美紀
幸一郎と美紀は、恋愛関係だったがマンネリ化していた。幸一郎は美紀とは最初から結婚する気がなく、華子と婚約してもそれを美紀に知らせることもしなかった。そして美紀との関係を断ち切ろうともしないのだった。
しかし、華子の友人の逸子は、ヴァイオリン演奏をしたパーティーでの、幸一郎と美紀の親し気な様子から、ピンときた。そして逸子は美紀にLINE交換しようと持ちかけた。彼女は美紀と華子を結婚式の前に合わせる算段だった。

華子(門脇麦)とヴァイオリニストの逸子(石橋静河)
逸子がそういうセッティングをしたのは、美紀が華子と会っても、バトルにはならないと踏んだからだった。それから華子が到着して、美紀は華子と逸子に、幸一郎とは潔く縁を切ることを告げた。

時岡美紀(水原希子)& 平田理央(山下リオ)
美紀は地方の高校と慶應義塾大学の同級生、平田理央から起業するので一緒にやってくれないかと、相談をうける。そして快諾するのだった。
華子は結婚したものの、夫の幸一郎は仕事に専念し、大切な記念日も忘れている。華子が問いただしても、反応がうすい。帰宅後は疲れているのか、うたた寝ばかり。実家に帰って家族に相談するが、今は我慢のしどころといわれるだけ。ありあまる一人の時間を高層マンションの部屋で過ごすうち、華子は暗く憂鬱な気分になり、このままでは精神的にまいってしまうと思い、この結婚には向いていなかったのだと悟る。
半年後、華子は離婚届を幸一郎に突きつけ、離婚するのだった。ようやく華子は自我に目覚める。
華子は家を出て、ヴァイオリニストの逸子の家に居候し、逸子のマネージャー業を始めることにする。
家というものにしばられ、ひかれたレールの上を歩いていく運命の幸一郎。素敵な女性二人を逃してしまったことは、まことに残念で不幸なことだと思う。でも幸一郎はそのことを感じていないのかもしれないが。
反対に自分に正直に生きることを選んだ華子と、くされ縁を断ち切って、新しい道を友達と協力し合いながら進んでいく美紀は、二人とも爽やかだった。
グレイド(階級)は違うが女性二人は、自己肯定の道を選び、これからはいい人生が広がっていくという期待感を感じながら、晴れやかな気持ちで劇場を後にした。
原題:山内マリコ作「あのこは貴族」 監督:岨手由貴子(そでゆきこ) 出演:門脇麦、
水原希子、 高良健吾、 石橋静河、 山下リオ、 高橋ひとみetc.
2021年 日本

左: 美紀こと水原希子 & 右: 華子こと門脇麦
山内マリコの同名小説を原作に、同じ東京という都会に暮らしながら、全く異なる生き方をする2人の女性の物語。
華子は結婚こそ人生の目的であり、幸福をもたらすものだと信じて疑わない。だが、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。けれども、華子は周りの勧めにより、お見合いを繰り返すのだった。

(映画の中で華子がお見合いの時着ていた、古典柄の着物。私の好みです。)
華子には、自分というものがない。いつも親や兄弟がすすめる服を着て、真珠のネックレスも親からの贈り物だ。家族も、お見合い疲れしてきた華子の気持ちをかんがみ、家の整形外科を継ぐ医者ではなく、違う職業でもよいとのことで相手を探してくれる。そして次のお見合いで、華子が出会った人は、青木幸一郎(高良健吾)というハンサムで話も上手い弁護士だった。幸一郎の家は、松濤の広大な庭付のお屋敷で、代々政治家を輩出している家だった。華子は初めて気に入った人に出会い、二人はめでたくゴールイン。

華子(門脇麦) と 幸一郎(高良健吾)
ほんとは、ゴールインの前に、幸一郎にある女性の存在があるのがわかる。華子の友人のヴァイオリニスト逸子(石橋静河)が、彼女が演奏を披露したパーティのコンサートで知り合った時岡美紀(水原希子)だった。美紀は、幸一郎と慶應義塾大学の同期だったが、彼女は地方出身者でアルバイトを掛け持ちでしても学費が続かず、2年足らずで大学を中退していた。

時岡美紀こと水原希子
美紀はアルバイトでバーやラウンジで働いていた時、お客として訪れた幸一郎とつきあうようになった。しかし美紀は、25歳のとき水商売から足を洗うことにする。「この世界では容色の衰えとともに、失うものが大きすぎる」からだ。そこで、ラウンジの客として来ていたITベンチャーCEOに頼んでその会社の社員として採用され、昼間の世界に舞い戻ることができたのだ。

幸一郎と美紀
幸一郎と美紀は、恋愛関係だったがマンネリ化していた。幸一郎は美紀とは最初から結婚する気がなく、華子と婚約してもそれを美紀に知らせることもしなかった。そして美紀との関係を断ち切ろうともしないのだった。
しかし、華子の友人の逸子は、ヴァイオリン演奏をしたパーティーでの、幸一郎と美紀の親し気な様子から、ピンときた。そして逸子は美紀にLINE交換しようと持ちかけた。彼女は美紀と華子を結婚式の前に合わせる算段だった。

華子(門脇麦)とヴァイオリニストの逸子(石橋静河)
逸子がそういうセッティングをしたのは、美紀が華子と会っても、バトルにはならないと踏んだからだった。それから華子が到着して、美紀は華子と逸子に、幸一郎とは潔く縁を切ることを告げた。

時岡美紀(水原希子)& 平田理央(山下リオ)
美紀は地方の高校と慶應義塾大学の同級生、平田理央から起業するので一緒にやってくれないかと、相談をうける。そして快諾するのだった。
華子は結婚したものの、夫の幸一郎は仕事に専念し、大切な記念日も忘れている。華子が問いただしても、反応がうすい。帰宅後は疲れているのか、うたた寝ばかり。実家に帰って家族に相談するが、今は我慢のしどころといわれるだけ。ありあまる一人の時間を高層マンションの部屋で過ごすうち、華子は暗く憂鬱な気分になり、このままでは精神的にまいってしまうと思い、この結婚には向いていなかったのだと悟る。
半年後、華子は離婚届を幸一郎に突きつけ、離婚するのだった。ようやく華子は自我に目覚める。
華子は家を出て、ヴァイオリニストの逸子の家に居候し、逸子のマネージャー業を始めることにする。
家というものにしばられ、ひかれたレールの上を歩いていく運命の幸一郎。素敵な女性二人を逃してしまったことは、まことに残念で不幸なことだと思う。でも幸一郎はそのことを感じていないのかもしれないが。
反対に自分に正直に生きることを選んだ華子と、くされ縁を断ち切って、新しい道を友達と協力し合いながら進んでいく美紀は、二人とも爽やかだった。
グレイド(階級)は違うが女性二人は、自己肯定の道を選び、これからはいい人生が広がっていくという期待感を感じながら、晴れやかな気持ちで劇場を後にした。
原題:山内マリコ作「あのこは貴族」 監督:岨手由貴子(そでゆきこ) 出演:門脇麦、
水原希子、 高良健吾、 石橋静河、 山下リオ、 高橋ひとみetc.
2021年 日本
劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き(2021年) [日本&アジア映画]

動物写真家の岩合光昭さんが、まったくのネコの目線で、ミャンマーと北海道の2つの土地を舞台に、ネコたちの家族愛を描きます。ミャンマーのインレー湖では、湖上に建つ小さな高床式家屋で暮らすネコの家族とヒトの家族が、一緒に生きる様子を記録。北海道の牧場では、たくさんの母ネコ、オスネコ、子ネコたちがまっすぐに生きる姿を映しています。俳優の中村倫也さんがナレーション担当です。

牛舎の猫ダンゴ
私はかねてからの岩合光昭さんのファンで、NHKBSプレミアムの「世界のネコ歩き」はいつも観ている。劇場版は2017年にも創られたが、今回は2作目。岩合さんのすばらしさは、猫に自由に行動させて、それを愛情のこもった目線でフィルムにおさめるところだ。
まずは北海道の仔牛牛舎と親牛牛舎の、それぞれで暮らす猫たちの様子。これは二つのグループにわかれていて、その2グループは交わることがない。ボス猫同士はけんかをするぐらいなのだ。

仔牛牛舎の猫たち。
ここのゴッドマザーは、チャカスケ。上の写真の右2列目の右端に顔だけ白く見えている猫。左端の全身が写っている茶色と白は息子のフク。仔牛牛舎の雌猫たちは、仔猫を共同保育している。
猫の中には、仔牛と仲良くしている子もいる。牛にペロペロなめてもらっているのだ。

仔牛の横でお昼寝する牛柄の猫ってすごくかわいいですよね!

そして親牛牛舎では、ボス的存在のヒメとその息子で甘えん坊のカーショが中心のストーリーが展開する。次の写真は、カーショで息子のほう。顔はいかついのだが、甘えん坊。お母さん猫のヒメはもっとかわいい顔のトラ猫ですが、残念ながら画像がありません。


二匹はいつもいっしょで、カーショがヒメにまとわりついている。あるとき、ヒメが行方不明になって、カーショは牧場中を駆け回り、木に登ってみたりして一生懸命探すが、ヒメはどこにもいない。あきらめて牛舎にもどったカーショは、屋根裏から降りてくるヒメを発見。ヒメは前足を痛めていたので、じっと静かにして前足をなおしていたのだった。
カーショはオス猫なので、春になって一応独り立ちのため牛舎を出ていくのだが、また戻ってきてしまった。お母さんのヒメは仕方ない子だねという顔で、迎えていた。
この両牛舎の猫たちのごはんは、搾りたての牛乳と、固形のキャットフード。幸せですね。
さて、次はミャンマーのもうひとつの猫とヒトの家族の物語。人間の家族は3人、猫たちは4名です。
この湖は、ミャンマーのシャン高原にあるインレー湖。家は湖の上に建つ高床式家屋。この家族は3人でお父さんは大工兼漁師である。猫は4匹いて、何をするにもヒトの家族と一緒です。

この猫はエーワーという名前、お父さん猫。
猫たちは、ヒトのお父さんと一緒に漁にでかけます。

お魚がとれました。もらうのは家に帰ってからです。

船が家に近づくと、猫たちは自ら水の中に飛び込んで、岸まであるいは家まで泳ぎます。猫かきですが、すごくうまく泳いでいます。この地方の猫にとっては、泳げることは走ることと同じくらい大事なことだそうです。すごくたくましいですね!

2匹で泳いでいます。うまい泳ぎです。
少年と猫はとても仲良し。この子は仔猫のとき弱っていたところをこの少年に介抱してもらって、元気になりました。それ以来二人は親友になりました。

この家では猫とヒトは、寝るのも一緒、ご飯を食べるのも一緒、お昼寝するのも一緒です。一つの家族ですね。

今年最初の映画にこれを選んでよかったです。だいぶコロナ疲れがたまってきましたが、この映画を観て、猫たちの「あるがまま」に生きる姿にとても癒されました。けれども、ミャンマーの家族のことはちょっと心配しています。今、ミャンマーは非常事態ですものね。どうか皆が無事でありますように。
大阪ではなんばパークスシネマでまだ上映しています。猫好きの方、ぜひご覧くださいませ。
原題:劇場版 岩合光昭の世界のネコ歩きーあるがままに、水と大地のネコ家族
監督:岩合光昭 出演:岩合光昭、北海道とミャンマーの猫たちとヒト家族
2021年 日本
新年ご挨拶 [日記・雑感]
皆様へ

明けましておめでとうございます![[ぴかぴか(新しい)]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/150.gif)
佳い新年をお迎えのことと、お慶び申し上げます。
昨年は皆様の様々なブログを楽しませていただき、ありがとうございました。
2020年はコロナのせいで、大変な年でした。今年こそ、佳いお年となりますよう、お祈りいたします。
本年もよろしくお願いいたします。
私は去年11月にケガをし、12月初めにパソコンが修理不可能となり、それにマンションで緊急工事があったりと色々ありまして、すっかり疲れてブログに参加できませんでした。ご訪問もできなくて、大変失礼致しました。何とぞお許しくださいませ。
今はスマホからの投稿ですので、画像の添付ができなくて、地味なご挨拶となってしまいました。
今年こそ、皆様にとりまして、佳きお年となりますよう、祈りつつ。
ココより

明けましておめでとうございます
![[ぴかぴか(新しい)]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/150.gif)
佳い新年をお迎えのことと、お慶び申し上げます。
昨年は皆様の様々なブログを楽しませていただき、ありがとうございました。
2020年はコロナのせいで、大変な年でした。今年こそ、佳いお年となりますよう、お祈りいたします。
本年もよろしくお願いいたします。
私は去年11月にケガをし、12月初めにパソコンが修理不可能となり、それにマンションで緊急工事があったりと色々ありまして、すっかり疲れてブログに参加できませんでした。ご訪問もできなくて、大変失礼致しました。何とぞお許しくださいませ。
今はスマホからの投稿ですので、画像の添付ができなくて、地味なご挨拶となってしまいました。
今年こそ、皆様にとりまして、佳きお年となりますよう、祈りつつ。
ココより
スパイの妻 [日本&アジア映画]
ただいまパソコン修理中で、スマホからの投稿です。読みにくいかもしれませんが、お許しください。
「スパイの妻」は、2020年6月にNHK BS8Kで放送された黒沢清監督、蒼井優主演の同名ドラマを、スクリーンサイズや色調を新たにした劇場版として劇場公開したそうです。
蒼井優と高橋一生がよかったです。蒼井優は、夫、福原優作(高橋一生)を一途に愛し、共に行動しようとする妻、聡子を生き生きと演じ、高橋一生は、特にセリフが滑らかで、読点でセリフを区切らず一気にいえるので、大変自然な感じでした。
貿易商の福原優作は1940年の満州で、恐ろしい国家の秘密を偶然知ってしまう。
帰国後、優作は正義のためにその顛末を世に知らせようとするが、反逆者と疑われる。
妻の聡子は、たとえ優作がスバイといわれ自分がスバイの妻と陰口をたたかれようと、彼と離れずに生き抜こうと決心する。
戦争の悲惨で残酷なフィルム映像が流れる場面がある。これが、本物の映像なのか、
それとも加工映像なのか、調べていないのでよくわからないが、白黒の粗い画像でいっそう怖さが強調されたと思った。
また、彼らの友人津森泰治(東出昌大)が、入隊したあと、その優しい性格がだんだんと、嫌な人間になって行く様子なども、恐ろしいと思った。
時代は、太平洋戦争開戦間近の日本で神戸が舞台。聡子と優作の住まいは、洋館で調度品や家具が高級な輸入もので、二人の衣装もレトロで素敵だった。
彼らは、いかに難局を乗り越えていくのだろうか。最後までハラハラさせられ、ストーリー展開も楽しめた。
黒沢清監督は、TVのインタビューで「私の作品には、エンターテインメントか否かの垣根はない」と述べていた。
第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。
原題:スパイの妻 監督:黒沢清 出演:蒼井優、 高橋一生、 坂東龍太、 東出昌大、恒松祐里etc.
2020年 日本