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マイ・ブックショップ [外国映画]

 イギリスの文学賞ブッカー賞を受賞したペネロピ・フィッツジェラルドの小説をイザベル・コイシェ監督が映画化。ぜひ訪れてみたいような本屋が出てきます。もちろん架空の本屋なのですが、これはセットとして現地に建てて、内側の細かい所まで原作に忠実に創ったそうです。


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 1959年イギリスのある海岸地方の町。フローレンス(エミリー・モーティマー)は、戦争で夫をなくしたのち、二人の夢だった書店を開こうとしていた。この町には、1軒も本屋がなかったからだ。 彼女は放置されているオンボロの「オールドハウス」を買い取ったが、住民からは冷たくされる。


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 フローレンスは、ブックショップを開業する人ということで、地元の有力者夫妻のパーティーに招かれる。ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)は、最初は本屋ができると嬉しいといっておきながら、そのオールドハウスを「芸術センターとして使いたい」と申し出る。しかし、彼女は本屋を開くゆるぎない意志を、夫人に伝えるのだった。


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 ついに、フローレンスは「オールドハウス書店」をオープンする。そこへブランディッシュ氏という老紳士から、彼女が推薦する本を送ってほしいと注文がくるのだった。ブランディッシュ氏は、古い邸宅に40年以上引きこもって本をひたすら読んでいる人だった。彼女は彼にレイ・ブラッドベリの「華氏451度」を送る。


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 ブランディッシュ氏こと、ビル・ナイ/写真の本は、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」


 本を通じてフローレンスと老紳士ブランディッシュ氏との交流がはじまる。本屋は意外と繁昌するのである。


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 そして本屋を手伝ってくれるクリスティーンという少女が現れる。フローレンスは賢い彼女を気に入って、雇うことにした。


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 そんな中、彼女をよく思わないガマート夫人(パトリシア・クラークソン)が、書店の建物と土地を、そのわがままな性格から、自らのものにしようとしていた。そして、フローレンスを窮地に追いやっていくのだった。


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 それを見ていたブランディッシュ氏は、フローレンスに、ガマート夫人に掛け会いに行くと夫人の屋敷へ向かうのである。彼は過去にガマート夫人に傷つけられたことがあり、彼女を毛嫌いしていた。老紳士は「もし映画なら、最後の場面で、ガンで(ガマート夫人を)撃ち殺したいくらいだ」などというのだった。フローレンスは、ブランディッシュ氏に心を寄せるのだが、運命は皮肉な結果をもたらした……。


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 少女クリスティーンは、とても重要な役である。最後にそれがわかって、アッと思うと同時に、納得もする。そして、クリスティーンは素敵な女性になって、「オールドハウス書店」のようなブックショップを開業するのである。


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フローレンス(エミリー・モーティマー)がオールドハウス書店で開店準備をしているところ。


 何枚かのアップした写真のように、「オールドハウス書店」はとても魅力的なブックショップです。ズラリと並んだ本の装丁の見事さに驚きました。(これは書店の内部の映像で、写真にはなかったので、表示できないのが残念!)これは、映画のためにつくったのか、それともいい本を借りてきたのか?こんな素敵な本が揃っていたら、毎日でもこの本屋に通いますね。
 
 フローレンスがブランディッシュ氏にお勧めする本が、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」。私の大好きな作家レイ・ブラッドベリの本に映画の中で出合うとは!嬉しくなりました。私が最初に読んだブラッドベリの小説は「たんぽぽのお酒」です。これは彼の半自伝的小説です。他にもファンタジーやSFなど、一時期よく読みました。
 そのほか「ロリータ」byウラジミール・ナバコフも好きです。これも映画の中では、フローレンスが大量注文する本です。この作品は、中年男が少女へ傾倒した恋をする話で、ちょっと異色の小説です。今でも「ロリータ」は魅惑的な響きを持っていて、ロリータファッションとか、ロリータコンプレックスなど、多くの派生語を産んでいます。

 フローレンスを演じたエミリー・モーティマーは、人間味のある、本への情熱を持ち続ける女性をとてもよく表現していたと思います。いい女優さんだなと思いました。

 ビル・ナイは、脇役でたくさんの作品に出ていて、色々な助演男優賞を獲得している名優だそうですが、私は今まであまり注目したことがありませんでした。でもこの作品のブランディッシュ氏ことビル・ナイは、背広をスラっと着こなしている姿も魅力的です。無骨な老紳士ながら、フローレンスへの愛情をほんの一言、二言の言葉で表現し、彼女を守ろうとする男性を演じきっていて、とてもカッコよく見えました。彼の他の作品も観てみようと思っています。


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 パトリシア・クラークソン

 有力者の嫌味な女性を演じたパトリシア・クラークソンは、とてもきれいな女優さんで、ちょっと冷たい感じが、ガマート夫人役にぴったりでした。このキャラクターがいなければ、フローレンスもブランディッシュ氏も、いい人になりえなかったでしょう。大事な役柄だと思います。

 風景の映像も美しく、またそこにはさみ込まれるアーティスティックな映像が魅力的でした。
 
 大作でもないし、手放しのハピーエンドでもないのですが、衣装も、風景も、そしてキャストや出て来る本まで私の趣味にぴったりの映画でした。大好きな料理を食べお酒を味わった後の満足感に近いように思います。皆さんもぜひ、この「オールドハウス書店」を訪ねてみられてはいかがでしょうか。

原題:THE BOOK SHOP  原作:ブックショップ by ペネロピ・フィッツジェラルド 
監督:イザベル・コイシェ  出演:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、 
パトリシア・クラークソンetc.
2018年 スペイン/イギリス/ドイツ



ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

  • 作者: ペネロピ フィッツジェラルド
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2019/03/01
  • メディア: 単行本



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サクラ、桜 [日記・雑感]

大阪府北摂地方の桜です。最近、スマホに変えたので、わりあいきれいに写っていると思いました。



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新年号「令和」が万葉集からとられたので、「はじめて楽しむ万葉集」上野誠著(角川文庫)を買ってみました。この本の中から、気に入った和歌を2,3紹介しながら、桜の写真もアップいたします。


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  石走る(いわばしる)
  垂水の上の(たるみのうえの)
  さわらびの
  萌え出ずる春に(もえいずる はるに)
  なりにけるかも
   (志貴の皇子 巻8の1418)
    岩の上を、ほとばしり流れ出る 滝のほとりのわらびが
    萌えだすように天に向かって伸びていく………。
    春になった!
   
  この和歌は、「万葉集」の中でも一番人気のある歌だそうです。春が来た喜びをこれだけ
  率直に、上品に、生き生きと描いた歌は他にないからなのだそうです。これはなんとなく
  知っていました。



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  冬過ぎて
  春し来たれば(はるしきたれば)
  年月は(としつきは)
  新たなれども(あらたなれども)
  人は古り行く(ひとはふりゆく)
    (作者未詳 巻10の1994)
     冬が過ぎて
     春がやってくると、
     年月は
     新しくなるけれども……。
     人は古くなっていく……。

  一定の年齢を越えると、人は「お誕生日が嬉しくない」と思う。人は、時に年をとることを
  喜び、時にそれを嘆くという気持ちが込められている和歌です。言い得て妙だと思います。



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     忘るやと
     物語して(ものがたりして)
     心遣り(こころやり)
     過ぐせど過ぎず(すぐせどすぎず)
     なほ恋にけり
       (作者未詳 巻12の2845)
        忘れることもあろうかと
        人と世間話などをして、
        気を紛らわせて
        物思いを消し去ってしまおうとしたが……
        一層恋心は募るばかりだった……。

  恋の歌も多い万葉集。恋は一過性のもの、個人的なもの、一人一人のものである。
  しかし同時に恋の気持ちというものは、多くの人が共感する気持ちでもあることが、
  この歌からわかるとのこと。



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     我が背子を(わがせこを)
     今か今かと
     出で見れば(いでみれば)
     沫雪降れり(あわゆきふれり)
     庭もほどろに
       (作者未詳 巻10の2323)
        わたしのいい人を
        今か今かと待って、
        出てみると……。
        沫雪が降っていた。
        庭にもうっすらと。

  恋人がやってくるのではないかと思って、戸口まで駆け出してみて、見た物は雪だった。
  人を待っている女というものは、自分の神経を「待つ」ということに集中させる。それで、
  待つ女の自然を見る目が、細やかになるのだそうだ。



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 万葉集と意識して本を読んだのは初めてでしたが、この本はわかりやすく解説されています。それに、選ばれた和歌もいいものばかりでした。入門書としては最適な本だと思います。もう少し、万葉集の世界を楽しんでみたいと思いました。



はじめて楽しむ万葉集 (角川ソフィア文庫)

はじめて楽しむ万葉集 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 上野 誠
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 文庫



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Queen「Under Pressure」フレディ&ボウイ版と、他アーティストのカヴァー曲の聴きくらべ、など。 [音楽]

大好きな曲、Queenの「Under Pressure」(フレディ&ボウイ版)を、何人かのアーティストのカヴァーバージョンで聴いてみました。なかなか面白かったので、独断と偏見で、こんな記事にしました。よかったら、ご一緒にどうぞ。


まずは、フー・ファイターズ+ ロジャー・テイラー(Super Saturday Night 2019)
彼らは、Queenの大ファンで、追っかけをしたいくらいだったんですって!男たちのロジャーに対するリスペクトが、いい感じです!
「Under Pressure」
https://youtu.be/ZG-P-iIrL0Y
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次は、デヴィッド・ボウイバンドのパフォーマンス。ゲイル・アン・ドロシィが上手!彼女は、ボウイのバンドのセッション・ミュージシャンで、ベーシスト兼バック・ボーカリストだそうです。
「Under Pressure」
Bowie & Gail Ann Dorsey
https://youtu.be/DWtSyorjXv4

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かなりいかついボディですが、アダム・ランバートも、わるくないですね。歌が上手いと思います。2018年のQueenとのベルリンでのコンサートの様子です。
「Under Pressure」
Queen+アダム・ランバート in Berlin 2018/6/19
https://youtu.be/R-pTBzAiqdQ

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こんなのも見つけました。
Breaking Benjamin& Disturbed's David Draiman
Draimanが相当うまいです。音程が正確。
「Under Pressure」
https://youtu.be/FKUrPO2Cihg



そして、本家本元のQueen、フレディ&ボウイ版です。やはりフレディのファルセットがすばらしい。2人の魅力も相まって。
「Under Pressure」
https://youtu.be/YoDh_gHDvkk


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皆さんは、どのアーティストのパフォーマンスがお好きですか?



ところでご存知のように、フレディは4オクターブのオペラヴォイスを持っています。
フレディがスペインのオペラ歌手モンセラート・カバリエと共演した「バルセロナ」というアルバムがあります。(1988.10.10発売。すべてフレディの作曲)このCDがすごくいいのです。

表題曲の「バルセロナ」は、1992年のバルセロナオリンピックのテーマソングとなりました。
そして開会式の時、フレディとモンセラが歌うはずだったのですが、彼が1991年に亡くなったため、代わりにモンセラとホセ・カレーラスとのデュエットで歌われたとのことです。
この映像の中のフレディは、ヒゲをそっていて若々しく、活き活きとして素敵です。では彼のすばらしい歌唱力をご堪能ください。

Freddie Mercury & Montserrat Caballé - Barcelona (Live at La Nit, 1988)
https://youtu.be/hkskujG0UYc


そして、もう1曲アルバムから、これはバラードで私の大好きな曲です。
「How Can I Go On」
Freddie Mercury & Montserrat Caballé - How Can I Go On (Live at La Nit, 1988)
https://youtu.be/ksNoe8W2jTc


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                      モンセラート・カバリエ&フレディ・マーキュリー

当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの、モンセラート・カバリエと互角の歌唱、本当にフレディはすごい!モンセラのハートもガッチリつかんでる感じ。フレディは自信にあふれてますね。あれだけの巨大ロック・コンサートをこなしてきたからこそ、なのでしょう。
映画「ボヘミアン・ラプソディー」の大ヒットのおかげで、フレディは復活して、またもやロック界を闊歩しているなと感じます。私は、これからもずっとフレディとQueenを聴き続けるでしょう。

おまけとして、レアな2曲を紹介しておきます。どちらもアルバム「Sheer Heart Attack」より。

Lily Of The Vally(谷間の百合)
https://youtu.be/2LGujYR8omQ

Flick Of The Wrist(Live 1974)
https://youtu.be/XrIZQ3CLLbU



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この写真は、Queenがデビューした当時、お金がなかったので、フレディの住んでいたフラットで撮影したもの。寄せ集めのインテリアですが、なかなか面白い写真になっていると思います。


今回も、お付き合いいただきありがとうございました。ではこの辺で。





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