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フェルメール展(大阪天王寺美術館) [アート・カルチャー]

 今月の12日が、大阪のフェルメール展の最終日でした。朝の用を済ませ、お昼前に、長蛇の列に並ぶのを覚悟で、「大阪天王寺美術館」へ急ぎました。この美術館は「あべのハルカス」の近くにあります。少し並びましたが、すぐに入館できました。

 フェルメールは、静謐な作風と、特徴的な光の表現で知られ、世界中を魅了する17世紀オランダの画家です。本展では、そのフェルメールの作品を、同時代のオランダ絵画とともに紹介していました。まずは、同時代のオランダ絵画を紹介します。


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 「手紙を読む女」  ハブリエル・メツー 1664- 年頃 
  これは、手紙を読む女性と、その召使が描かれていて、背景の海の荒れ模様が、手紙の内容を知らしめているとのこと。


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 「人の居る裏庭」  ビーテル・デ・ホーホ  1663-1665年頃


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 「本を読む老女」  ヘラウト・ダウ     1631-1632年頃
この老女の顔や服装、装飾品が大変精密に描かれている。高価な様の衣装やアクセサリーから、老女がお金持ちであることが、想像できる。
 

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 「家族の情景」   ヤン・ステーン     1665-1675年頃


 展示されていた同時代のオランダ絵画は、ネット上にも画像がなくて、ホームページ上もこの4点しか、表示されていませんでした。色々いい絵がありました。


 そして細い通路を抜けると、フェルメールの部屋です。照明を少し落とした部屋に、作品が浮かび上がっていました。今までの部屋とは違って、絵が光を放っているように感じました。
 他のオランダ絵画は、フェルメールの絵のように、それ自体が光を放っていると感じることはありませんでした。やはりフェルメールは特別だと思います。この記事の絵の写真では、はっきりわからないかもしれませんが、人物を浮かび上がらせるような手法は、フェルメールが確立させたのだろうと思います。



 ところで、現存するフェルメール作品は35点ともいわれていますが、本展では日本初公開となる「取り持ち女」など6点が集結。西日本では過去最大規模のフェルメール展でした。では年代順に観ていきましょう。


 フェルメール作品の中で、最も大きく、最初期作のひとつ。画中ではキリストが、家事を心配するマルタをよそに、座ってキリストの教えを聞こうとするマリアを讃えている。光と影の戯れ、人物の特徴づけ、幅広で厚く絵の具をのせた筆さばき。ユトレヒト派の画家からインスピレーションを受けたと考えられる。フェルメールにはめずらしい大きなサイズや主題から、特別な依頼を受けて制作されたものと推測される。

「マルタとマリアの家のキリスト」158.5×141.5 1654 - 1655年頃 
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 次の「取り持ち女」(日本初公開)は、宗教画から風俗画への転換期に当たる重要な作品で、画面の左端に描かれた男性はフェルメールの自画像であるという説が有力だそうです。
 初期作の1つである本作は、フェルメールがはじめて描いた風俗画。女性は今まさにお客から金貨を受け取るところです。彼女を明るく照らす光、表情や手の動きなど、後にフェルメールが確立する表現の萌芽がすでに見られます。

「取り持ち女」143×130 1656年
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 薄暗い室内に一人腰掛ける女性はリュートを抱え、弦をかき鳴らす。左手でペグをつまみ、音階を整えている。遠く窓の方に視線を向ける様子は、窓越しに何かを見つめているのか、それとも耳を澄まし、音を追うことに注力しているのか。机の上には楽譜らしきものが重なるように置かれ、壁には、ときに絵の中で、愛する人が遠い彼方にいることを示唆する地図が描き込まれている。

「リュートを調弦する女」51.4×45.7    1662 - 1663年頃
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 17世紀のオランダでは郵便制度の発達に伴い手紙でのやり取りが盛んに行われました。毛皮付きの黄色い上着姿の女性は、机に向かい羽ペンを走らせている真っ最中である。ふと筆を休めた彼女は、絵の前に立つ我々を見つめるかのようにこちらに顔を向けます。穏やかな光の中で優しく微笑む女性。耳元の真珠のイヤリングに光の粒が輝く。当時、人々が憧れ、親しんだ手紙をめぐる情景を、フェルメールは美しい女性像を通じて描き出しています。 私ココは、この絵の印刷版を買いました。これに合う額を見つけなくては。

「手紙を書く女」45×39.9 1665年頃
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 「恋文」は大阪展のみの公開。後期作のひとつである本作は、部屋の手前からまるで中を覗き込むように描かれている。 明るい室内でシターンを膝に乗せ、手紙を受け取る女主人。 訳ありげな表情を浮かべる女主人に、お手伝いの女性はいたずらっぽく微笑み、どこか親しげな雰囲気がただよう。 練り込まれた構図と物語性の高さが際立つ本作は、1971年、盗難の憂き目に遭うが13日後に発見され美術館に戻されたそうです。よくぞ戻ってきてくれましたね。そうでないと、今回観られなかったのですから。

「恋文」44×38.5 1669 - 1670年頃
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 幻想のような現実を描き出すことにおいて、フェルメール作品は、他に類を見ない芸術的なレベルに到達した。描かれる人物はしばしば寡黙で動きが少なく、絵画に厳粛でミステリアスな雰囲気をもたらしている。この絵画はフェルメール後期の最も独創的な作品のひとつ。召使いの女性が窓の外を眺めている間に女主人が手紙を書いている。床には、この時代のやりとりで使われたであろう赤い封印、スティック状のシーリングワックス(封蝋)などが落ちている。

「手紙を書く婦人と召使い」71/1×60.5 1670 - 1671年頃
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 世界屈指の人気を誇る画家フェルメールですが、熱狂ぶりが始まったのは、実は近年になってのこと。フェルメールは作品点数が少ないことから、美術ファンの間でもルーベンスやレンブラントほどには知られていませんでした。世界的なブームは、1995-96年に米国ワシントンとオランダのデン・ハーグで開かれたフェルメール展に端を発します。この展覧会でフェルメール人気が一気に広まったそうです。

 やはり最終日に行けてよかったです。でなければ、次はいつまとまったものが観られるのか、わかりませんから。ラッキーで幸せな1日でした。

 (なお、絵画の解説は、美術館のホームページによります。)






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