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君の名前で僕を呼んで(DVD +本) [外国映画]

 舞台は1980年代のイタリアの避暑地。緑の風景が美しく、池や石造りのプールの水、澄んだ海が、爽やかさを演出します。街には人が少なく、別荘は広いけれども華美ではありません。必要最小限のアンティーク家具が置かれているからか、とても素敵です。こんなところだったら、本当にゆったりした時間を過ごせると思います。



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 アンドレ・アシマンの同名小説を原作に、「日の名残り」「眺めのいい部屋」の名匠ジェームズ・アイボリーが脚本を執筆しました。第90回アカデミー賞脚本賞受賞。さすが、ジェームス・アイボリーですね。恋愛を描くことに長けている人だと思います。



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         ティモシー・シャラメとアーミー・ハマー



 夏。家族と北イタリアの避暑地にやって来た17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、クラシック音楽のピアニスト&編曲家だった。そして、大学教授の父(マイケル・スタールバーグ)が別荘に招いた24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と出会う。



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  エリオの家族、母、父、エリオ(後ろ向きのストライプシャツの人、ティモシー・シャラメ)、オリヴァー(ブルーのTシャツの人、アーミー・ハマー)


 エリオは、オリヴァーに会ってから、今まで同性にいだいたことのない感情を彼にいだく。しかしオリヴァーは、ぶっきらぼうに「あとで(Later)」というのが口癖で、すぐにどこかへ去っていき、なかなか優しくエリオと関わってくれなかった。



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 別荘には近隣の人達も出入り自由で、きれいな女の子たちもよく来ていた。オリヴァーはハンサムなので、女の子たちにとても人気があった。エリオもまた付き合う女性がいた。彼らは皆で一緒にテニスをしたり、庭のプールで泳いだりして楽しんだ。



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       (映画のロケ地、イタリアの都市クレマのセリオ川)


 オリヴァーはある日の夕食のあと、家族の前で「映画でも観に行かないか」とエリオに声をかけてきた。自分はまだ来て間もないので、一緒に行く人がいないからと。
 それから2人は自転車で町まで行き、書店に行って本を買ったり、散策したり、カフェでお茶を飲みながら過ごしたりするようになった。エリオにとって、これは幸福な時間だった。しかし、オリヴァーはほとんど話さないし、態度を変えることもなかった。



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 あるとき、エリオとオリヴァーは、父やその仕事仲間の教授たち、友人と海に行き、古い石像が沈んでいるのを引き揚げる作業を手伝った。それはとても美しい像だった。彼らが来る前に、エリオのつまらない一言で、オリヴァーが怒ってしまった。
 オリヴァーの無言に耐えられず、エリオは思い切って「停戦しようよ」といって、オリヴァーに握手を求めた。彼は笑いながら、石像の腕を自分の手の代わりに差し出すのだった。


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   このシーンは美しく、しかもユーモラスなのでとても好きなシーン。


 エリオの気持ちはもう限界に来ていた。彼は何度も書き直したメモを、自分の部屋の隣のオリヴァーの部屋のドアの下にすべり込ませた。「沈黙には耐えられない。話がしたい」。それから、しばらくして部屋に戻ると、机の上に自分がオリヴァーに書いたメモが置かれてあって、エリオの字の下に、オリヴァーの返事があった。「もっと大人になれ。真夜中に会おう」。この夜、2人の恋は成就する。

 けれども、オリヴァーがニューヨークへ帰るときがとうとうやってきた。2人はイタリアの都市で最後のバカンスを楽しむ小旅行を計画し、その旅行は理解ある両親からプレゼントされた。そして二人は……。

 クリスマス、オリヴァーから久しぶりの電話があり、エリオが受話器を取った。そして、オリヴァーから告げられたことに、エリオが流す涙が、心に残るラストシーンだった。


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 オリヴァーはエリオの彼に対する想いを利用して、彼を自分に引き付けようとはしなかった。むしろ、世話になっている教授の息子を、大切にしているだけだとでも言いたいかのように、彼はエリオに接していく。繊細で純粋な相手のことを思いやり、傷つけないように自制心を持つ。しかし、自制心を上回るものが、エリオから彼に告げられた時、2人は結ばれる。

 とても感動的な作品だった。これこそが、恋愛なのだと思った。障害があるからこそ、想いは深くなっていく。なんと切ない物語だろう。本当の恋愛とは、相手のことを自分のことのように想うこと。この映画の題名は、自分と相手が混然一体となってしまい、何の垣根もなくなるという意味なのだそうだ。「君は僕で僕は君」という意味。



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 映画を観てから小説を読みました。小説は、エリオの気持ちの動きや変化を細かく描写しています。一方、オリヴァーの気持ちの描写はほとんどありません。ほんの短い言葉でやっと彼の気持ちがわかりました。映画は、セリフとしてのオリヴァーの気持ちはほとんど描かれていませんが、演技によって伝わるところがあります。
 小説を読み進むと、風景描写や登場人物の顔が映像となって浮かんできます。そして、心理描写もわかりやすいです。映画を2度楽しめる感じ。けれど、長い小説なので、途中ちょっとダレるかもしれません。が、細かく描写されているからこそ、主人公たちの気持ちがよくくみとれるように思いました。

 この本の続編も出版されています。タイトルは「Find Me」。翻訳はまだ出ていませんし、映画になるかどうかもわかりませんけれど、ぜひ映画で続きをみたいものです。


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 ティモシー・シャラメの次の作品は「The King(キング)」。ヘンリー5世のことを描いた映画です。Netflixで11/1から配信。彼の麗しい王族スタイル&たくましい甲冑姿が観られます。予告編も観ましたが面白かったです。この作品は、東京では映画館上映もされていたそうですが、大阪ではなかったのが残念です。

 一方、アーミー・ハマーが演じたオリヴァーですが、小説の中では彼は近所の白血病の少女を可愛がって、いつも散歩に行ったり話し相手になっていたというというエピソードも盛り込まれています。映画ではカットされていましたが、これがオリヴァーの人間的な優しさをよく表現していました。


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 アーミーは元々、真面目でシャイな人のように感じました。シャラメ君よりずっとシャイで、優しい感じがしました。映画の最後のほうに、駅に電車が到着して、プラットフォームで二人が離れ離れになるとき、オリヴァーはエリオを抱きしめます。そのシーンは、兄でもなく友達でもない優しさが込められていて、アーミー・ハマーの演技の確かさをみたように思いました。

 この魅力的な俳優二人だからこそ創れた、いつまでも心に残る名作だと思います。
  
原題:CALL ME BY YOUR NAME 監督:ルカ・グァダニー 脚本:ジェームス・アイボリー
出演:ティモシー・シャラメ、 アーミー・ハマー、 マイケル・スタールバーグ、
アミラ・カサール、マルシアetc.
2017年度 イタリア / フランス / ブラジル / アメリカ




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