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家へ帰ろう(うちへかえろう) [外国映画]

 ユダヤ人の仕立て屋アブラハム(ミゲル・アンヘル・ソラ)は、第二次世界大戦時にポーランドで迫害され、戦後、アルゼンチンに移り住んだ。彼は、強制収容時の後遺症で片足が不自由だった。

 88歳になった彼は、自分では望まないものの、子供たちの勧めで、高齢者用施設に入ることになったが、その入居日に、ブエノスアイレスから故郷であるポーランドを目指して旅に出る。というのも、彼には、第2次世界大戦時、ユダヤ人である自分がホロコーストから逃亡したとき、彼をかくまって救ってくれた親友に、自分が仕立てた最後のスーツを渡すという人生の約束があったからだ。


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 彼は、飛行機で隣り合わせた青年に助けられ、その次はマドリッドのホテルの女主人(アンヘラ・モリーナ)にお世話になる。この女主人が、めっぽう明るくて、魅力的な人だった。


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 それから、パリからドイツへ列車で行くとき、ドイツを通らずにポーランドへ行きたいと言い張り、駅の案内所でもめた。アブラハムは、フランス語も英語もできないので、話が通じず四苦八苦していた。


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 そんなアブラハムを見かねて声をかけてくれたのは、ドイツ人の文化人類学者の女性だった。


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 彼女はプラットホームに布切れを敷き、アブラハムを列車に乗せた。そして「ドイツ人は皆、ヒトラーやホロコーストを恥じているわ」とアブラハムに告げるのだった。
 

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 ポーランドに着いたものの、アブラハムは体調不良で倒れ、病院に運び込まれる。そして、そこで親切な看護師に介抱される。そして、親友の家のある住所まで、彼女が車を運転して、付き添ってくれる。が、アブラハムは、無事親友に巡り合うことができるのだろうか……。

 監督のパブロ・ソラルス監督は、ユダヤ系アルゼンチン人で、彼の祖父はホロコースト経験後、生涯「ポーランド」という言葉を口にすることすら拒んだ。監督は、祖父の複雑な思いを観客と共有したいという強い思いがあったのだそうだ。

 ホロコーストとヒトラーは、人類にとって忘れてはならない、負の遺産である。けれどもこの映画はその重いテーマを、アブラハムという魅力的な老人が、行く先々ですばらしい人々に巡り合い、最後の人生の目的を果たすという、感動的なロードムービーに仕上げたのだ。主役のミゲル・アンヘル・ソラは、実際は60歳だが、メイクで88歳の老人に変身している。観終わったあと、温かい満たされた気持ちで、映画館を後にできる作品である。

原題:EL ULTIMO TRAJE (THE LAST SUIT) 監督:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ、 アンヘラ・モリーナ、 オルガ‣ボラズ、
ナタリア・ベルベケ、 マルティン・ピロヤンスキー、 ユリア・ベーアホルト
2017年 スペイン/アルゼンチン





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2018年度の好きな映画5本 [外国映画]

昨年の鑑賞作品の中から、好きな映画を5本選びました。

1 ボヘミアン・ラプソディー   

  QUEENのフレディー・マーキュリーを主人公に、1970年のQUEEN結成時の様子から始まって、1985年のライヴ・エイド出演までの出来事と彼らの演奏を、ほとんどが、本物のQUEENの楽曲の音源を使用して創りあげた作品。フレディーを演じたラミ・マレックの演技がすばらしく、他のメンバーも生き写しともいうべき出来上がりである。
  フレディー・マーキュリーのロックミュージシャンとしての魅力や才能が、アメリカ人俳優ラミ・マレックによって、余すところなく表現された。加えてフレディーの、繊細で寂しがりやの性格、家族と恋人への愛、QUEENメンバーとの友情、孤独や病気との葛藤など、様々な側面が、非常にわかりやすく描かれている。QUEENの音楽を知らない人々にも感動を与え、11月公開から、未だに上映が続いてる。
  先ごろ、ゴールデングローブ賞の発表があり、ラミ・マレックが主演男優賞を獲得し、作品賞(ドラマ部門)も受賞という快挙! ラミが受賞スピーチの最後に「この賞は、フレディー・マーキュリー、あなたのものだ!」といったので、胸が熱くなりました。

 映画を観て以来、you tubeで彼らの楽曲を聴くのはもちろんのこと、フレディーはじめ、ブライアン・メイとロジャー・テイラーのインタビューも多く聴きました。その中でブライアンとロジャーがフレディーについて語っている内容を書いておきます。


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現在のブライアンとロジャー(二人ともいい顔になってますね)

ブライアン「彼が亡くなってからいつも思いだすのは、フレディーの温かさだね。彼は決して時間
      を無駄にしなかった。今でも彼の存在は、懐かしい家族を思い出すように、いつも自
      分のまわりに感じるよ。」

ロジャー 「フレディーから学んだことはたくさんあるよ。世間では、彼の派手な部分が大きく報
      道されたが、フレディーが音楽家として、すぐれた人間だったことを忘れないでほし
      い。彼はジミ・ヘンドリクスやプリンスなど、多くのロックミュージシャンが好き
      だったし、バレエやオペラについても、精通していたんだよ」

 これはインタビューのほんの一部にしかすぎませんが、2人のフレディーに対する愛情が感じられて、いいなと思います。
 2人がインタビュアーに、今一番大事だと思うものは何ですかと質問されて、「今現在、生きてることさ」と答えたのが印象的でした。

「ボヘミアン・ラプソディー」のレビュー全文は、こちらから。数曲のヒット曲も貼ってますので、よかったらお楽しみくださいませ。
 https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-11-27


2 しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

 「しあわせの絵の具」はカナダでもっとも愛されたフォークアート画家モード・ルイスの夫婦愛の物語を、サリー・ホーキンスとイーサン・ホークの共演で映画化した作品。モードの描く絵がとても温かく、素朴で素敵なのだ。


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 モード・ルイスご本人と二人の家


 カナダ東部のノバスコシア州に住むモード・ルイス(サリー・ホーキンス)は、子供のころから重度のリウマチで手足が不自由だった。彼女は、叔母に絵を描くことを禁じられ、独立しようと職を探した結果、家政婦募集のビラを目にし、住み込みで働く決心をする。しかし、雇い主は漁師の男、エベレット(イーサン・ホーク)で、孤児院育ちで、無骨、不愛想だった。が、モードは、ここで働くことを決心する。そして家事の合間に、家の中に絵を描き始める。

 エベレットはモードを、最初は家政婦としてしか、見ていなかったが、モードにの優しさに段々惹かれていき、二人はとうとう結婚する。


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  イーサン・ホークとサリー・ホーキンス

 ある日、エベレットが捕った魚をいつも買いに来る、サンドラ(カリ・マチェット)という女性が、二人の家を訪ねてくる。サンドラは美術関係の仕事をしている人だった。そこで彼女は、初めてモードが家中に描いた絵を観て、彼女の才能を見出し、絵の制作を依頼するのだった。

 そしてモードの絵は少しづつ売れ始めるが、二人は小さな家に住み続けた。二人は夫婦仲良くつつましく暮らしていくのだった。

 住んでいた家全体が、モードの作品で、扉、雨戸、壁、外壁、ティーポットなどに描かれた、素朴な絵がすばらしい。作品や二人の家は、現在はノバスコシア美術館に展示されているとのことだ。


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 ノバスコシア美術館に展示されているモードとエベレットの家


 モード・ルイスは不幸な生い立ちではあったが、心の美しさ、優しさを失わなかった人なのだと思う。そしてそれが主人のエベレットも幸福にしていったのだ。二人とも世間的には貧しい暮らしながら、夫婦として仲良く幸せに暮らした。愛情こそが、最も大事なものだということ教えられた気がする。

レビュー全文です。モード・ルイスの、他の絵も観られます。
https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-03-23


3 ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

 ゲイリー・オールドマンが、とうとうアカデミー賞主演男優賞をとった作品です!彼のチャーチル、そっくりだと思いました。ゲイリーを変身させた特殊メーキャップ・アーティスト辻一弘さん
はアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞!日本人として誇らしかったです。


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 この作品は戦時内閣の閣議記録を基に、チャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの27日間を描いたものです。

 1940年5月、第二次世界大戦初期。独裁者ヒトラー率いるナチス・ドイツの前にフランスは陥落寸前で、英国にも侵略の脅威が迫っていた。そんな中、新首相に就任した前海軍大臣のウィンストン・チャーチル。国民には人気があったものの、度重なる失策で党内はもちろん国王ジョージ6世(ベン・メンデルソーン)からも信頼を得られず、弱音を吐く彼を妻のクレメンティーン(クリスティン・スコット・トーマス)は優しく叱咤する。

 チャーチルは、勝利を目指して徹底抗戦を誓うが、戦況は悪化の一途を辿っていく。そしてドイツ軍に追い込まれた英国軍が、ついにフランス・ダンケルクの海岸で絶体絶命の状況を迎える。英国への上陸もいよいよ現実の脅威となる中、犠牲を回避すべくドイツとの和平交渉を主張する外相ハリファックス(スティヴン・ディレイン)の必死の説得を受けるチャーチルだった。

 ヒトラーとの和平交渉か、あるいは徹底抗戦か。思い悩むチャーチルに、ジョージ6世は街へ出て庶民の声を聴けとアドバイスする。そして、チャーチルはロンドンのアンダーグラウンド(地下鉄)に乗り込み、乗客に語り掛けるのだった。そして、国民の多くの声をつかんだチャーチルは、迷いを捨てて徹底抗戦を開始するのだった。

 チャーチルは読書家で、生涯に43冊を著した文筆家でもあり、回顧録ではノーベル文学賞まで受賞している。さらに大戦勃発前にヒトラーの自伝を読み、存在を危険視していたということだ。読書こそ、チャーチルの判断力の源だった。


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 ベン・メンデルソーン&クリスティン・スコット・トーマス&ゲイリー・オールドマン 


 これは映画としても、たいへん面白く創られていて、キャステイング、脚本とも申し分のないできである。キャストも適材適所でよかったと思う。すばらしい作品でなので、ご覧になったら、面白いと思いますよ。。

レビュー全文。
https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-04-29


4 シェイプ・オブ・ウォーター

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 ギレルモ・デル・トロ監督作品です。私はこの人のファンなので、楽しみにしていました。 
 
 政府の極秘研究所で掃除婦をしているイライザ(サリー・ホーキンス)は、ある日掃除をしているときに、水槽に居たアマゾンの奥地から運ばれた“クリーチャー”(半魚人)に出会う。

 言葉を話せないイライザは、一目で気に入ったクリーチャーに食料を運んだり、音楽をきかせたりしているうちに心が通じ合う。しかし、冷酷な軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)は容赦なく“彼”を虐待し、果ては、上官に生体解剖を提案する。イライザは無謀にも“彼”を救出すると心に決めるのだが……。

 デル・トロは小さいころ「大アマゾンの半魚人」(1954年)をみて、映画はもとより、奇怪でユーモラスなギルマン(半魚人)の形姿をとても気に入ったそうだ。それがこの映画に生かされたらしい。

 この映画の魅力は、いくつかの水中撮影シーンである。イライザは、浴槽のある部屋全体を、ドアの下の隙間にタオルをギューギュー詰めにして水で満たし、彼(クリーチャー)とに抱き合うシーンは幻想的でとても美しい。

 狂気に満ちた軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)は、典型的な中産階級で、家には美人の奥さんとかわいい子供たちがいる。それなのに、自分の出世のためには人間や生き物を痛めつけても何とも思わない。まるでナチの将校のような人間だ。

 ストリックランドはイライザとジャイルズがクリーチャーを海に逃がしにいったことに感づいて後を追い、あげくの果てに海までやってくる。愛し合うイライザとクリーチャーの運命は……。


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 ギレルモ・デル・トロの描くファンタジーは、いつも残酷さがつきものだ。この「悪」の存在ゆえに、良きもの美しい心がとても際立って、観客の心を虜にするのではないかと思った。面白い映画だった。
 
 第90回アカデミー賞監督賞、作品賞その他2部門でも受賞。これに先立ち、ベネチア国際映画祭でも金獅子賞を受賞しています。

レビュー全文。
https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10


5 万引き家族

 邦画はほとんど観てませんでしたので、1本だけです。

 東京の下町、高層マンションの谷間に、取り残されたように建つ古い平屋。家主である初枝(樹木希林)の年金を目当てに、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏・じょうかいり)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を、臨時の仕事で稼いでいるが、それでも十分ではなく、時々万引きで物を補充するという家族で、社会の底辺にいるような一家だった。 

 だが、この家族には暗さがなく、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子(ゆり)を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることになる。休日は家族全員で、楽し気に海に行ったりもするほど、仲が良かった。


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 だがある日、初枝おばあさんが突然亡くなり、お葬式も出せない彼らは、狭い庭におばあちゃんを埋めた。この事件をきっかけに、家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密が明らかになっていく。

 こんな境遇だったら、すごく暗いストーリーになりそうだが、そこが是枝監督のうまさなのだろうか、それとも樹木希林、リリー・フランキー、安藤サクラの演技力なのだろうか。少しも暗くなかった。特にこの3人のやり取りは、ユーモアがあり思わず吹き出してしまうほどだった。樹木希林、リリー・フランキー、安藤サクラの演技や掛け合いは、すばらしく自然で絶妙の間だった。祥太を演じた城桧吏(じょうかいり)も、少年の純真さがよく出ていたと思う。

 温かい家族だが、それぞれにいいかげんで、社会人としては失格ではある。しかし、このようにしか生きられない人々なのだと、最後はあきらめというか、妙に納得させられた不思議な作品だった。

 底辺の生活をしているという設定なので、家の中の様子などは、ビジュアル的にはちょっと見づらいところはあるかもしれないが、それがリアルさを産んでいるのだろう。

 情のある人々だが、生きていくためにはお金がいる。夫婦とも臨時の仕事で稼いではいるが、けがをしたり、人員整理でやめさせられたり、思うようにいかない。だから、万引きをしなきゃいけなくなる。それを悪いとは思ってないところがある。生きていくためには仕方がないのだろうか。

 一体これは、誰が悪いのか。男の子を捨てた親、女の子に虐待する普通の暮らしをしている母親、そんな人たちより、リリー・フランキーと安藤サクラが演ずる夫婦のほうが、よほど温かいでしょう。(責任感があるかどうかは別として)
 是枝さんは、そんな社会の矛盾をこの映画で表現して、問題提起したのだと思います。まことに面白い作品でした。


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 ちなみに、是枝裕和監督、この作品で、2018年度カンヌ映画祭「パルムドール賞 (最高賞)」受賞しています。上手い役者ぞろいで、映画としてもよくできています。機会があったらご覧になってください。






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メアリーの総て [外国映画]

 「フランケンシュタイン」は、人造人間の話だというのは知っていたのですが、それが女性によって書かれたものだとは、知りませんでした。


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 その人の名はメアリー・シェリー、有名な19世紀の詩人のパーシー・シェリーの恋人で、のちに奥さんになる人物。


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 メアリー・シェリー(エル・ファニング)

 メアリーは作家で思想家の父ウィリアム・ゴドウィン(スティーブン・ディレイン)と、早くに亡くなった思想家の母(イギリスの社会主義思想家でフェミニズムの提唱者)の間に生まれた。彼女は継母とはうまくいかなかったが、その連れ子のクレア・モント(ベル・ハウリー)とは実の姉妹のように仲がよかった。


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 メアリー・シェリー(エル・ファニング)とクレア・モント(ベル・ハウリー)
 
 メアリーは、継母との確執のため、義妹クレア・モントとともに、父の友人の家に預けられ、そこで天才詩人パーシー・シェリーと出会う。たちまち二人は激しい恋に落ちる。このとき、メアリーは18歳、パーシーは24歳という若さだった。


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 メアリー(エル・ファニング)とパーシー(ダグラス・ブース)

 シェリーは、富裕な貴族層出身だったが、妻子持ちで、生活力のない男である。そして妻とメアリーに3人で暮らそうなどと、大真面目に提案するような人物だ。メアリーの父はこの関係に激怒し、それから逃れるために、メアリー、パーシー、そしてクレア・モントはフランス・スイスへ渡る。が、お金が底をついたため、イギリスに戻ってくるのだった。


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 1815年、メアリーはシェリーとの間の最初の子を出産する。けれども子供は、生後11日で亡くなってしまう。1816年、彼らはバイロン卿を頼って、スイスのレマン湖のほとりへと向かった。


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 クレア・モント(ベル・ハウリー)、メアリー・シェリー(エル・ファニング)、
 パーシー・シェリー(ダグラス・ブース)、バイロン卿(トム・スターリッジ)

 バイロンの別荘ディオダディ荘で、雨が降り続いた夏、皆が屋内に閉じこめられていた折、バイロンは「皆でひとつずつ怪奇譚を書こう (We will each write a ghost story.)」と提案した。


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 メアリー、 クレア・モント、 バイロン卿、 ジョン・ポリドリ(ベン・ハーディ)、
 パーシー(ダグラス・ブース) 


 この時に生まれたのが、メアリー・シェリーによるゴシック小説の古典的名作として名高い「フランケンシュタイン」である。「吸血鬼」(バイロン卿の友人ジョン・ポリドリの作)も書かれた。
 メアリーはバイロン卿の屋敷にいる間に、当時はやりの、死んだカエルの足を、電気ショックで動かす実験をみたり、それについて、バイロンやシェリーが人造人間もできるのでは、などと言う議論をしたりしているのを聴いていた。それらのことや、自分自身の不幸な人生への想いが、「フランケンシュタイン」という小説として結実したといわれている。


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 この本が出版されるとき、当時は新人の出版物は匿名か有名な作家の名前でしか出版できなかった。メアリーは匿名で出版するが、その出版パーティーの時、夫のパーシー・シェリーがこの作品は、妻であるメアリーの作だとその場に居る人にアナウンスするシーンが描かれている。

 ここにきて、パーシー・シェリーもやっと、メアリーの役に立ったというわけである。そしてメアリーはパーシーとの間に、男の子も出産している。


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 この映画ではまだ若い俳優たちが、自分たちと実年齢の近い文豪たちを演じているのも興味深い。主演のエル・ファニングは、メアリー・シェリーという、運命に翻弄される女性を美しく、力強く演じている。この時代において、本を出版するということは、本当に大変なことだったのですね。
 パーシー・シェリー役のダグラス・ブースやバイロン卿役のトム・スターリッジもとてもいい演技で魅力的だったと思う。これから、この3人がどんな風に花開いていくのか、その行方に注目していきたいものだ。

 ともすれば、名前だけ知っていることで終わってしまいそうな、19世紀に花咲かせた文豪たちの私生活や、「フランケンシュタイン」の生まれたいきさつがよくわかって、大変興味深い映画だった。 


 肖像画
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    メアリー・シェリー              パーシー・シェリー

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    バイロン卿


原題:MARY SHELLEY 監督:ハイファ・アル=マンスール  出演:エル・ファニング、
ダグラス・ブース、 トム・スターリッジ、 ベン・ハーディ、 スティーヴン・ディレイン、 
ベル・ハウリー
2017年 イギリス/ルクセンブルグ/アメリカ





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ボヘミアン・ラプソディー [外国映画]

 学生時代、私はポップスは聞いていたのですが、どういうわけか、ロックを聴かなかったのです。それで、クイーンも知りませんでした。昨年12月、「ボヘミアン・ラプソディー」を観て、そのことを心から後悔しました。知っている曲が多数ありました。ロックを聴かない人でも彼らの曲は耳馴染があるという、巨人バンドだったのですね。


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 1970年のロンドン、フレディー・マーキュリー(ラミ・マレック)は、インドからの移民であることや、自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
 ある日、彼がバンド「スマイル」の演奏を聴きにいったとき、そのバンドのギタリストのブライアン・メイ(グウィリム・リー)と、ドラマーのロジャー(ベン・ハーディ)に出会う。ちょうど、バンドのヴォーカルが急にやめて、二人は困っていた。フレディーは自ら、代わりになると自分を売り込んだ。


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 1年後、ベーシストのジョン・ディーコン(ジョー・マッゼロ)が加わり、バンド名は「クイーン」に決まった。そんななか、フレディーはメアリー(ルーシー・ボイントン)と出会い一目惚れし、婚約する。そして、セカンドアルバムのシングルの楽曲「キラー・クイーン」が大ヒットし、クイーンは相当知られた存在となり、いよいよ、世界に出ていこうとしていた。


LIAR (1973)
https://youtu.be/oU7rqB9E_0M

Seven Seas Of Rhye (1974)
https://youtu.be/qJFZfibRf7k

KILER QUEEN (1974)
https://youtu.be/2ZBtPf7FOoM


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 そして彼らは、1974年4月に、先輩格のバンドとともに、アメリカツアーを経験し、その次の1975年4月に初来日を遂げる。このとき、日本の女性ファンが大勢空港に駆け付け、一番驚いたのは、メンバー本人たちだったそうだ。日本のファンは、クイーンがまだ世界的に何物でもなかった頃より以前に、その魅力に気付いたのだ。(ファンの熱狂ぶりは、1985年5月の、最後の来日まで続いた。)


手をとりあって(TEO TORRIATTE) (1976)
QUEENが日本のファンのためにつくった日本語の歌詞が入っている名曲。(ブライアン作曲)
https://youtu.be/WDynFluHPJs


 4人のメンバーは、互いに刺激しあい、意見を戦わせながら、次々と革新的な名曲を世に出していく。そしてついに、ロックとオペラを融合させた型破りな楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」が完成する。しかし、せいぜい3,4分が限度だった時代に、6分という異例の長さの曲に、ラジオでかけられないとレコード会社の猛反発を受ける、彼らだった。
 けれどもフレディーはそのCDをラジオのDJの友達のところに持ち込み、ラジオで「ボヘミアン・ラプソディー」をかけてもらう。
 たちまち「ボヘミアン・ラプソディ」は大ヒットとなり、イギリスで9週連続チャート1位を記録。


Bohemian Rhapsody
https://youtu.be/fJ9rUzIMcZQ


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 その後、Queenは、世界各国でコンサートを行い、ビッグバンドへと成長を遂げるのだった。

「A Day At The Race」より
Somebady To LoveLive at Miltonkeynes Bowl (1982)
https://youtu.be/v8L3TCXsyX4


「News Of The World」より
We Are The Champions
https://youtu.be/04854XqcfCY


We Will Rock You Live At Budapest
https://youtu.be/E8_ig4SPAak


「JAZZ」より
Don't Stop Me Now (1978)
https://youtu.be/HgzGwKwLmgM






 1983年、フレディーはミュンヘンでソロ作品の制作を開始する。それはそのときパーソナル・マネージャーだった男の勧めだったが、それがバンドとの間に亀裂を招き、一時フレディーは仲間たちと離れる。
このときは、ロジャーもソロアルバムを制作していた。それで、QUEENの解散の危機がうわさされた。

 また、メアリーとも別れ、彼女は新しい恋人を作る。だが、メアリーはその後もフレディーの友達として、親身なアドバイスをし生涯、彼の支えとなるのだった。


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   メアリー役のルーシー・ボイントンと、フレディー役のラミ・マレック


 結局、ソロアルバムは、契約金を上回るほどは売れなかった。その時のパーソナル・マネージャーは、フレディを他のメンバーや、関係者や、友人とも隔離しようとした。ようやくフレディもそのことに気付き、彼を解雇し、働き詰めの、荒れた生活に終止符を打つ。

 そして、1985年のウェンブリー・スタジアムで開催の「ライヴ・エイド」で再び4人で「クイーン」として登場し、聴衆の大喝采を浴びるのだった。しかしこのときすでに、フレディーの身体はエイズに侵されていたのだ……。


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 この「ライヴ・エイド」のシーンが圧巻だった。映画の観客はまるでその瞬間にウェンブリー・スタジアムに居るかのような錯覚をする。そして、演奏が始まったら、演じているラミ・マレックはフレディー・マーキュリーその人だった!


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 この作品に出演した役者たちは、皆、本物に限りなく近づいていた。特に、主演のラミ・マレックの努力に感動。彼はフレディーより背も低いし、よく見ると顔も違うのだが、フレディーにしか見えなかった。そしてラミは、自信にあふれたカッコいいフレディーだけではなく、彼の繊細は面や、寂しがり屋の性格もよく表現していた。すばらしかった。ラミ・マレックのインタビューをみていたら、彼自身がとても繊細なところのある人だとわかる。

 この映画の良さは、フレディー・マーキュリーという人の優しさが、愛が、そして彼の知られざる孤独が、描かれているところである。彼は家族に対して友人に対して、そしてファンに対して、限りなく優しく温かい人なのだ。

 フレディーは魅力あるロックンローラーではあるが、その人生は人間関係に悩み、希望、夢、失望、葛藤、悲しみに満ちていた。生身の人間だ。それが存分に描かれ、様々な困難を越えていくフレディーの姿が、私たちに感動を与えるのである。パンフレットの中にあった言葉だが「居場所のない者、悩めるもの、弱きもの、名もなき者」のために、歌い続けてくれたフレディー・マーキュリーに心からの喝采を贈りたい。


公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/


映画のエンドロールで2曲流れますが、そのうちの1曲「THE SHOW MUST GO ON」です。フレディーの心の叫びをお聴きください。

「THE SHOW MUST GO ON」
https://youtu.be/t99KH0TR-J4


原題:BOHEMIAN RHAPSODY 監督:ブライアン・シンガー 出演:ラミ・マレック、
ルーシー・ボイントン、 グウィリム・リー、 ベン・ハーディ、 ジョー・マッゼロetc.
2018年 イギリス/アメリカ
 


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Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男 [外国映画]

 英小説家チャールズ・ディケンズによる傑作「クリスマス・キャロル」の誕生秘話を描いた感動ファンタジー。家族が集まり贈り物を交換し、お互いの幸せを祈るクリスマス。そんな聖なる夜のルーツには、ディケンズ作「クリスマス・キャロル」の影響があるとのことだ。


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 1843年、小説家のチャールズ・ディケンズ(ダン・スティーブンス)は、以前はヒット作を連発していたが、最近はヒット作を生み出すことができず、家族と貧乏生活を送っていた。


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 ダン・スティーブンス(「美女と野獣」やTV「ダウントンアビー」に出演)


 ところがある日、ディケンズ家のメイドでアイルランド出身のタラ(アナ・マーフィ)が、子どもたちに語って聞かせるアイルランドのクリスマスの物語を偶然耳にしたディケンズは、この物語にインスピレーションを得て、新作の構想を練り始める。

 
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  タラ(アナ・マーフィ)とディケンズ(ダン・スティーブンス)

 新作の執筆に没頭するディケンズは、小説の世界に没入し、現実と幻想の境界線が曖昧になっていく。街で偶然出会った老人からイメージがふくらみ、偏屈でケチな実業家という主人公のイメージが固まっていく。出版までの期限が迫る中、主人公の名前を考えていた彼が“スクルージ”とひらめいた時、目の前にそのが主人公のスクルージ老人(クリストファー・プラマー)が現われる。


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   スクルージ(クリストファー・プラマー)

 過去、現在、未来をつかさどる3人の幽霊も出現する。


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 ディケンズには、隠された幼少期の暗い記憶や、実父(ジョナサン・プライス)との確執などがあり、彼は自身の問題と向き合っていく。そして小説を書き進める間に、彼は家族の大切さに気付き、やがて自身の小説「クリスマス・キャロル」に思いを託す。クリスマスは大切な人たちと過ごすべきだという考えが彼の心の中にあふれ、父親を許し、家族皆でクリスマスを祝うのだった。


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 そして小説「クリスマス・キャロル」は、ベストセラーとなり、ロンドン中の多くの人々が、クリスマスを家族で祝うという習慣をもつようになるというストーリーである。

 ディケンズの人物像がおもしろく、昔の出版業界の事情も覗けるし、1840年頃のロンドンの街の様子などがリアルに伝わってくる映像だ。酷評家としてのサッカレーも描かれている。
 ディケンズの家でのクリスマスパーティーで、小さくてきれいな人形芝居を子供たちに見せるシーンなども、凝っていて楽しかった。色々なものが盛り込まれていて、いい映画だったと思う。
 
 ちなみに、私、ココは、大阪府下の図書室に所属して、物語を語ること=ストーリーテリングのボランティアを行っております。近くの小学校や公共図書館におはなしを語りに行きます。それで、↑のアイルランド人のお手伝い、タラには、とても共感しました。

 では、私からのクリスマスのプレゼントとしてJohn Lennonの「Happy Christmas」をお贈りします。どうぞお聴きくださいませ。


    https://youtu.be/sbKQ7nXx0o8
    「Happy Christmas」by John Lennon


    A Merry Christmas To You!


            from ココ


原題:THE MAN WHO INVENTED CHRISTMAS  監督:バハラット・ナルルーリ 
出演:ダン・スティーブンス、 クリストファー・プラマー、 ジョナサン・プライス、 
モーフィッド・クラーク、 アナ・マーフィ
2017年 アメリカ





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チューリップ・フィーバー 肖像画に込めた愛 [外国映画]

 「チューリップ・フィーバー」とは何なのか。この映画の題名を観たとき、さっぱりわからなかった。これは17世紀のオランダで、チューリップの新種が発見されるたびに、その球根の値段が、家一軒分ほどの価値になったという、いわゆるチューリップ・バブルの時代のラブ・ストーリーである。


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 17世紀のオランダで、修道院育ちの貧しい少女ソフィア(アリシア・ヴィカンダー)は、運よく親子のように年の離れた豪商コルネリスに見初められ結婚し、豊かで安定した暮らしを送っていた。


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 ある日、コルネリスが夫婦の肖像画を無名の画家ヤン(デイン・デハーン)に依頼する。若く情熱的なヤンとソフィアはすぐに恋に落ちる。


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 デイン・デハーンとアリシア・ビカンダー


 ヤンが、ソフィアとの未来のため、希少なチューリップの球根に全財産を投資したことから、彼らの運命は思わぬ方向へと動いて行く。


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 これから、ヤンとソフィアの運命はどうなっていくのだろうか。この先、コルネリス家のお手伝いの女性や彼女の恋人、怪しい医者がからんできて、しかもストーリーの展開が予測できないような、アッと驚くドラマチックな物語になっていくのだ。
 

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 結局、ソフィアは修道院にもどり、ヤンと別れるのだが、最後は登場人物の誰も、不幸にならないという筋書きになっている。気持ちのいい映画である。

 ヤンを演じたのが、アメリカ人俳優のデイン・デハーン。若いときのディカプリオにちょっと似ているような感じがした。これから色々活躍できそうな人で、楽しみだ。

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 主役のアリシア・ビカンダーは、スウェーデン人で、かなりの人気女優だと思う。小柄なところが私は気に入っている。

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 ソフィアの夫コルネリス役にクリストフ・ワルツ、チューリップを栽培する修道院の院長役にジュディ・デンチが共演。両者ともさすがの存在感である。

 映像もオランダの昔の街の喧騒が伝わってくるような感じで、リアル感があり、よかったと思う。

 フェルメールの絵画の世界から抜け出してきたような、美しい青の衣装もとても素敵だった。

原題:Turip Fever  監督:ジャスティン・チャドウィック  出演:アリシア・ビカンダー、
デイン・デハーン、 ヤン・ファン・ロース、 ジャック・オコンネル、
ホリデイ・グレインジャー、 トム・ホランダー、 ジュディ・デンチ
2017年 アメリカ・イギリス




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プーと大人になった僕 [外国映画]

 高校生のとき、英語の教科書にA・A・ミルンの「Winnie-the-Pooh」の一節が載っていました。その挿絵の可愛らしさから、大好きになりました。この映画は、オープニングのタイトルバックの背景に、原作の絵を動画にしたものが流れます。懐かしくて、もっとこのアニメーションを観ていたかったです。

 私はディスニーのアニメは観ていないのですが、この映画のプーさんをはじめ、登場する動物のぬいぐるみは全て、原作の挿絵に近いかなという感じを持ちました。


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 ディズニーの人気キャラクター「くまのプーさん」を、初めて実写映画化した作品です。大人になったクリストファー・ロビンが、日々の忙しさに家族の大切さを見失っているときに、プーと奇跡的な再会を果たし、忘れてしまっていた大切なものを思い出していくというストーリーです。


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児童文学者石井桃子さんが翻訳の際使用した資料。A・Aミルンの原作本の「100エーカーの森」の挿絵。この絵の背景と、登場人物(動物?)の動画が、映画の最初のタイトルバックに流されます。


 少年クリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)は、“100エーカーの森”で、親友のプーやその仲間たちと楽しい毎日を送っていたが、やがてロンドンの寄宿学校へ転校することに。“きみのことは絶対に忘れない”と固く誓ってプーと別れたクリストファー・ロビンだったが……。

 そして大人になったクリストファー・ロビンは、妻のイヴリン(ヘイリー・アトウェル)と娘マデリン(ブロンテ・カーマイケル)とともにロンドンに暮らしていた。しかし仕事が忙しくて、家族とは、すれ違いの日々が続いていた。そんなある日、ロンドンの公園で、かつての親友プーと驚きの再会を果たす。プーは100エーカーの森から現代社会に迷い込んできたのだった。
 

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 仲間たちが暮らす”100エーカーの森”へ戻れなくなったプーのために、クリストファーは、プーと一緒に、あの森へ向かう。そこで、大人になったクリストファー・ロビンは、森の仲間たち、ピグレット、イーヨー、ティガー、ラビット、オウル(ふくろう)などに再会し、楽しかった昔を思い出すのだった。そしていかに今の、家族をかえりみない生活が、おかしなものであるのかを思い知った。

 のんびり屋のプーの言葉に思わずハッとするのは、自分もそうなっているからかもしれない。例えば「何もしないことは、最高の”何か”につながる」「(ドアは)必要なところにあるんだ」「どこかへ行きたいと決まっていると、”どこか”が来てくれる」など。
 
 「何もしないこと」が私はできなくなっているかもしれません。スケジュールが次々と決まって、それをこなすのに精一杯です。本当に大切なことをおろそかにしていないか、少しゆっくりして考えてみるべきかも。

 今、英語版「Winnie-the-Pooh」を読んでいます。高校生でも読める簡単な英語に、素敵なイラストが満載です。よかったら読んでみてくださいね。

原題:CHRISTOPHER ROBIN 監督:マーク・フォスター 出演:ユアン・マクレガー、
ヘイリー・アトウェル、 ブロンテ・カーマイケル、 マーク・ゲイティスト、
声の出演: プーとティガー=ジム・カミングス、 ピグレット=ニック・モハメッドetc.
2018年 アメリカ



Winnie the Pooh

Winnie the Pooh

  • 作者: Alan Alexander Milne
  • 出版社/メーカー: Reclam Philipp Jun.
  • 発売日: 1988/01/01
  • メディア: ペーパーバック



Winnie-The-Pooh, the Original Version

Winnie-The-Pooh, the Original Version

  • 作者: A. A. Milne
  • 出版社/メーカー: Ishi Press
  • 発売日: 2011/07/30
  • メディア: ペーパーバック



The Complete Tales of Winnie-The-Pooh

The Complete Tales of Winnie-The-Pooh

  • 作者: A. A. Milne
  • 出版社/メーカー: Dutton Books for Young Readers
  • 発売日: 1996/10/01
  • メディア: ハードカバー



The House at Pooh Corner (Winnie-the-Pooh)

The House at Pooh Corner (Winnie-the-Pooh)

  • 作者: A. A. Milne
  • 出版社/メーカー: Puffin Books
  • 発売日: 1992/08/01
  • メディア: ペーパーバック



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オーシャンズ8 [外国映画]

 あの人気シリーズ、「オーシャンズ11」のダニー・オーシャンの妹が、この映画の主役デビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)なのだそうです。女性版金庫破りのおはなし。ゴージャス感がハンパないですよ。


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 そのデビー・オーシャンが刑務所の中で計画していたのは、毎年5月の第一月曜日の夜、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されるチャリティイベント「メットガラ」で、セレブが付ける時価1億5000万ドルのダイヤモンドネックレスを盗むことと、もう一つの目的だ。


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 サンドラ・ブロックとケイト・ブランシェット。すごくきれい!でも今回は、サンドラが主演なので、ケイトはちょっと一歩ひいて、演技してたと思う。
 

 デビーは仮釈放後、相棒のルー(ケイト・ブランシェット)に声をかけ、ファッションデザイナー(ヘレナ・ボナム・カーター)、宝石職人、盗品売買のエキスパート、天才ハッカー(リアーナ)、スリ等、ダイヤ強奪作戦を実行に移すべく、最高のメンバーを集めるのだった。


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 抜かりのない下準備と、やがて訪れる作戦実行当夜、防犯カメラの死角を狙った強奪の瞬間がどのようなものか、見ものだ。


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 アン・ハサウェイとヘレナ・ボナム・カーター。アンは相変わらず目が大きい。誰かに似ているなと思ってたのだが、サンドラのセリフで、「あんたの目って、バンビみたいね」というのがあって、それだ!とおもいました。この映画、女性が思いっきりカッコいいんですが、1人、ヘレナだけが、コメディアンヌ。彼女の上手い演技があってこそ、この作品が活きてきます。


 小道具といっていいのか、老舗宝石工房、カルティエが映画のために制作した重量感たっぷりのダイヤネックレスがとにかくすごい!ため息がでます。こんな豪華な宝石を撮影のためにつくって、提供してくれるなんて、映画というものが、外国では高い地位を占めているということだろう。

 それから、女優さん達の豪勢なドレスにもご注目。ブランドファッションのオンパレードです。サンドラ・ブロックは、アルベルタ・フェレッティのシースルードレスで登場。ケイト・ブランシェットは、エメラルドが縫い込まれたジバンシィのジャンプスーツ、アン・ハサウェイはヴァレンチノのホットピンクのドレス等々。

 でも、リアーナは、ドレッドヘアにストリートファッションといういでたち。そこら辺のアメリカ娘って感じで、私はリアーナとは気が付かなかった。彼女は天才ハッカー役で、かなりのカッコよさ。


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 サンドラの右隣が、リアーナ


 念入りなメイクとコスチュームで感情を押し隠し、目的のためなら平気で相手を欺く女たち。そして、自分を陥れた人間には、必ず復讐するのだ。

 女性の美しさ、そしてそれぞれの才能のカッコよさを描いて、とても楽しい作品だった。数年後でも、続編が創られたらいいなと思う。


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原題:OCEAN'S 8 監督:ゲイリー・ロス  出演:サンドラ・ブロック、 
ケイト・ブランシェット、 アン・ハサウェイ、 ヘレナ・ボナム・カーター、リアーナ、 
ミンディ・カリング、 サラ・ポールソン、 アウクワフィナetc.
2018年 アメリカ





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ファントム・スレッド [外国映画]

 ダニエル・デイ=ルイスが引退するとは! この「ファントム・スレッド」が最後の作品となるのだそうです。ちょっと信じられない気持ち。やはり「立つ鳥跡を濁さず」の心境なのでしょうか。



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 以下、レビューはあらすじを書いていますので、映画を見たい方は先にご覧になって、お読みくださいませ。






 1950年代のロンドン。ファッション界の中心に君臨する天才的仕立屋レイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス)は、徹底した完璧主義の男だった。彼はある日、別荘のある田舎のレストランで、ウェイトレスのアルマ(ヴィッキー・クリープス)を見初める。


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 そして、自身のドレスにあう完璧な体型を持った彼女をミューズに迎えるのだった。


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 (ダニエル・デイ=ルイスの裁縫のシーンは完ぺきだった。それもそのはず、彼はこの映画のために、ニューヨークのオートクチュールデザイナーの工房で、1年間修行して服作りをマスターし、卒業制作作品として、奥さんのためにグレーのイブニングドレスをつくったとのこと。) 


 最初は、裕福な男性が身分の低い女性と出会い、女性を花開かせるラブストーリーなのかと思っていた。しかし、レイノルズがアルマに求めたのは、彼女の体型だけ。恋愛感情はなく、アルマはまるで道具のように扱われるのだった。しかしアルマは、彼のドレスを身にまとい美しさと輝きを備えていく。


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 彼女は甘いロマンスを期待していたのに、そういうものに見向きもせず、自分の厳格な規則を守り続けるレイノルズに大きな不満を持つ。そしてアルマはあることを計画する。それは、レイノルズのために料理をつくって、その料理の中にキノコからとったわずかな毒を混ぜ、それを彼に食べさせるというものだった。

 
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 おりしも大事な顧客の、ある国の王女様のウェディングドレスが、もう一息で完成するというときに、レイノルズはアルマの料理で体調に異変が起こり、そのウェディングドレスを汚してしまうのだ。


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 ドレスをつくり直すお針子さん達のシーンも、すごいものがあった。レイノルズの工房で働く職人役には、実際の仕立て職人を起用したのだそうだ。すごく手が早いので、びっくりした。


 アルマは、レイノルズを心を込めて介抱する。そしてさすがの、頑固一徹で完璧主義なエゴイストの男も心を動かされ、ついにアルマにプロポーズする。


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 けれども結婚してみると、やはり年齢差は歴然としてあり、アルマがパーティーに行きたいと言っても、レイノルズは疲れているので、静かにしていたいという。喧嘩になって、アルマは1人でパーティーに出向くのだった。

 やはり心配になったレイノルズはアルマを迎えに行く。そして、レイノルズの心を虜にしたアルマは、彼を優しく支配するのである。それは、食事に例のものを加減して混ぜ込むことによって……。


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 オートクチュールのすばらしいドレスの数々に目を奪われた。アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞したマーク・ブリッジスの手によるものだ。彼は衣装の裁断や縫製にはかなり気を使ったとのことだった。こんな美しい衣装を着ることができるのは、女優冥利につきるというものでしょうね。

 さて、この作品はなかなか怖いストーリーだと思う。最初はアルマがレイノルズに夢中になるのだが、一向に振り向いてくれない彼を振り向かせるために、キノコの毒を使うとは。女性は怖いというべきか。そしてその毒によって体調不良になった彼を、献身的に介抱して、惚れさせるというのは、何とも恐ろしい話ではないだろうか。

 これはラブストーリーなのか、それとも女性が男性を支配する物語なのか。最初はレイノルズが、アルマの気持ちを思い測ることなく、彼女をドレスを作るためにマネキンのように扱ったことに問題があったと思う。けれど、彼女がキノコの毒を使ってレイノルズの心を自分に向かせたのが、アルマの怖いところだ。これからもアルマは、レイノルズを支配し続けるのだろうか。女性の念というのはすごいものだ。

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 衣装のデザイン画

 実をいうと、私がダニエル・デイ・ルイスをカッコいいと思ったのは、「ラスト・オブ・モヒカン」を観たときです。あのときは、彼も若かった。これからはダニエルの新作を観られないのが、とても残念です。


原題:PHANTOM THREAD 監督:ポール・トーマス・アンダーソン 
出演:ダニエル・デイ=ルイス、 ヴィッキー・クリープス、 レスリー・マンヴィルetc.
2017年 アメリカ




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さよなら、僕のマンハッタン(The Only Living Boy in New York) [外国映画]

 ある青年が色々な人と出会い、様々なことを経験し、そして大人たちの愛情を感じることによって、青春の迷いから抜け出していくというストーリーです。いい映画でした。「(500)日のサマー」でジョセフ・ゴードン=レビット(今回は出演していません)を見出した、マーク・ウェブ監督作品です。サイモン&ガーファンクルの「ニューヨークの少年(The Only Living Boy in New York)」をはじめ、色々な名曲が作品中に流れます。


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 5代目ジェームズ・ボンドのピアーズ・ブロスナン、 ジェフ・ブリッジス、 ケイト・ベッキンセイル、 シンシア・ニクソン(「エミリ・ディキンスン」主演)というそうそうたるベテラン俳優が出演しています。彼らの演技を観るだけでも面白いです。

 主演はカラム・ターナー、「アサシン・クリード」に出演した英国人の若手俳優です。主人公のトーマスはかなり繊細な青年で、大学卒業後、なかなか自分の進む道が見つからず思い悩む。まさに誰もが歩んできた青春の1ページを振り返ることができるかもしれません。この年代の青年の、頼りなさや揺れ動く心を、カラム ・ターナーは等身大で演じていたのかと思うくらい、役に合っていると感じました。


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 大学を卒業して、大きくて快適な実家からアパートに移ったトーマスは、隣室に越してきた、初老のちょっと変わった、W・F・ジェラルドと名乗る不思議な男性(ジェフ・ブリッジス)と親しくなり、自分が困ったとき、アドバイスを受けるようになる。


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 カラム・ターナーとジェフ・ブリッジス

 ある日トーマスは、ガールフレンド(カーシー・クレモンズ)と出かけたレストランで、父親のイーサン(ピアーズ・ブロスナン)が美人の女性(ケイト・ベッキンセイル)と逢引しているのを見かける。そして、隣人のジェラルドの言葉に従って、父の愛人ジョハンナに近づく。


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 ケイト・ベッキンセイルとカラム・ターナー
 
 その後、トーマスはジョハンナの大人の魅力にハマっていくのだった。

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 彼には年相応のガールフレンド、ミミ(カーシー・クレモンズ)がいたが、彼女は別に付き合っている男性がいて、なかなか思うようにならない。


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 こんな風に何をやっても上手くいかない時って、若い時は結構ありましたよね。トーマスの場合、母親(シンシア・ニクソン)が精神が不安定なんです。とてもきれいな人なんですけど。その理由は、最後になって明かされ、そうだったのかと思います。


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 シンシア・ニクソンとカーシー・クレモンズ 

 私はやはりピアーズ・ブロスナンが気になりました。かのジェームス・ボンドがどんな風になっているのか。確かに顔にしわが増えましたが、父親役もよかったです。年齢を重ねても、魅力的でした。


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 ピアーズ・ブロスナンとカラム・ターナー(ロケ地:グランドセントラル・オイスターバー&レストラン) 

 トーマスを巡って、ジェラルド(ジェフ・ブリッジス)と父親イーサン(ピアーズ・ブロスナン)が彼に注いでくれる愛情が、トーマスの窮地を救います。そこがとても感動的でした。

 観終わった後、暖かい印象が残る作品でした。時が解決してくれることってあるし、人間自分の気持ちに正直に生きるのが一番なのだと思いました。

 音楽がとてもすばらしいです。サイモン&ガーファンクルをはじめ、ボブ・ディラン「ジョハンナのヴィジョン」、ルー・リード「Perfect Day」、ビル・エヴァンス「Peace Piece」、ザ・ヘッド・アンド・ザ・ハート「All We Ever Knew」etc.

 多分もう上映しているところはないかもしれませんが、DVDでご覧になったら楽しめると思います。

原題:The Only Living Boy in New York 監督:マーク・ウェブ 出演:カラム・ターナー、
ジェフ・ブリッジス、 ピアーズ・ブロスナン、 ケイト・ベッキンセイル、 
シンシア・ニクソン、 カーシー・クレモンズetc.
2017年 アメリカ




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